土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
79 巻, 4 号
通常号(4月公開)
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構造工学,地震工学,応用力学
論文
  • 佐藤 顕彦, 西崎 到, 冨山 禎仁, 北根 安雄, 杉浦 邦征
    2023 年 79 巻 4 号 論文ID: 22-00138
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,強化繊維に炭素繊維とガラス繊維を用いたハイブリッドFRP引抜成形材の屋外暴露による力学性能の低下と微細構造の変化を評価することを目的とした.CF/GFハイブリッドFRP引抜成形材を,茨城県つくば市にて2年および21年間暴露し,回収した供試体の外観観察,力学物性試験,SEM観察,IR分析を実施した.試験の結果,引張強度,せん断強度,曲げ強度が屋外暴露により低下し,その中でも90°方向の引張・曲げ強度の低下が顕著であった.さらに塗膜の有無による比較を行い,90°方向の引張強度と面内せん断強度で塗膜による保護効果を確認した.SEM観察からは,塗膜による樹脂脱落抑制効果が見られたが,暴露21年目では塗膜に微小な空隙が生じ保護効果が減少している可能性があることが明らかとなった.

土木計画学
論文
  • 福島 直樹, 佐々木 邦明, 上坂 克巳, 小菅 英恵
    2023 年 79 巻 4 号 論文ID: 22-00031
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     高齢運転者が健康状態に問題を感じながらも,代替的な移動手段が確保できないことから,運転を継続しているとの報告がなされている.このことから,高齢運転者の運転頻度は,個人的な要因だけでなく,地域的な要因が影響していることが指摘されてきた.そこで本研究は,教習所での高齢者講習時のアンケート調査で得られた,高齢者の目的別の運転頻度データを用いて,高齢運転者の運転頻度とアクセシビリティ,ウォーカビリティなどの地域の移動環境との関係性について検証を行った.ロジスティック回帰分析によって両者の関係を分析したところ,複数の目的の運転頻度において,地域のアクセシビリティ指標やウォーカビリティ指標が有意な係数を持つことが確認され,地域移動環境と高齢運転者の運転頻度に関係性があることが示された.

  • 杉本 達哉, 高田 観月, 高山 雄貴, 髙木 朗義
    2023 年 79 巻 4 号 論文ID: 22-00115
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     近年,空間経済学に基づく理論の計量分析への応用が進められている.しかし,その分析枠組は,我が国の長期的な人口分布変化の傾向1)(e.g., 大都市の人口増加)とは真逆の“地域間輸送改善は必ず地方都市の人口を増加(大都市の人口を減少)させる”という結果しか出力しない2).これは,輸送改善の影響の適切な予測が不可能であることを意味する重要な課題である.本研究は,企業間の価格競争を考慮できる独占的競争理論3)を応用することで,この課題を解決する計量分析手法を開発する.そして,日本を対象とした計量分析により,本手法が“地域間輸送改善が大都市の人口を増加させる”という結果を出力できることを示す.

  • 涌井 優尚, 酒井 高良, 赤松 隆
    2023 年 79 巻 4 号 論文ID: 22-00301
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,一起点多終点ネットワークにおける経路選択DUE配分の効率的解法を開発した.具体的には,まず待ち行列にpoint queueを仮定したうえで,DUE配分を線形相補性問題として定式化した.そしてこの問題と等価な最適化問題に対し,大規模問題に適用可能な効率的アルゴリズムを提案した.数値実験を通して提案解法は,既存研究における数値計算例を大幅に上回る規模の巨大ネットワークに対しても,素朴な解法の100倍から1000倍程度以上の計算効率を誇り,かつきわめて高精度な均衡解が計算できることが示された.

  • 酒井 高良, 涌井 優尚, 赤松 隆
    2023 年 79 巻 4 号 論文ID: 22-00341
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,超大規模離散空間におけるFujita-Ogawa (FO)モデルの効率的数値解法を提案する.具体的にはまず,FOモデルにおける主体の確定的選択行動をランダム効用理論(ロジット・モデル)に基づき一般化した確率的FOモデルを提示する.続いて,この確率的FOモデルの等価最適化問題を導出し,さらにその問題が,企業の立地分布を決定するマスター問題と,家計の居住地・勤務地分布を決定するサブ問題とに階層分解できることを明らかにする.ここで,サブ問題はエントロピー正則化付きの最適輸送問題,マスター問題は制約条件付き非凸計画問題の数理構造を持つ.これらの数理構造を活かし,サブ問題に対してはバランシング法を,マスター問題に対しては加速勾配法を適用する階層的最適化アルゴリズムを構築する.

  • 韓 旖睿, 白 琳, 孫 氷玉, 湯淺 かさね, 池邊 このみ
    2023 年 79 巻 4 号 論文ID: D1-0112
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     雪形は「山腹の雪の消え具合によってできる形」として定義されているもので,かつては農事暦として利用されてきたが,農耕の進歩などにより各地で伝承が消えつつある.2005年の『農林水産業に関連する文化的景観の保護に関する調査研究報告書(文化庁)』では,「独特の気象によって現れる景観」と「複合景観」にて6座の山の雪形を文化的景観候補として選出されたが,文化的景観の条件との整合性から,まだ認定されているものはない.本研究では,a)全国の雪形とその分布の特徴の把握,b)雪形データベースの構築及び評価項目の設定,c)全国の雪形の景観特性の分析と類型化,d)雪形に関する産業・文化特性と景観特性の相関性の明確化,以上4つの目的を通して雪形の価値評価について検討したものである.

建設材料と構造
論文
  • 青木 宏明, 高橋 秀明, 田邉 成, 前川 宏一
    2023 年 79 巻 4 号 論文ID: 22-00225
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     塩分を含む地下水の流入による地中RC構造物の鉄筋腐食が報告されている.地中構造には地盤沈下等の外荷重が作用する場合もあり,塩害劣化の影響が重畳した場合の予測は重要性を増してきている.本研究では鋼材腐食させたRC中空円形試験体の8割を地中に埋設した載荷実験を行い,地中拘束下における外荷重の影響を調べた.その結果,地中円形トンネル構造の変形能と耐力は鉄筋腐食の影響はあまり顕著ではないが,先行曲げひび割れに沿って断面を貫通するせん断破壊が生じる場合があることを示した.このせん断破壊形態は,鉄筋の腐食域に非対称性があると,腐食域以外の健全部で起こり得ることを示した.さらに,曲げひび割れに沿う後続のせん断破壊のせん断耐力は,先行の耐力式を下回る場合があり,維持管理における留意点を明らかにした.

  • 西澤 辰男, 寺田 剛, 藪 雅行, 小梁川 雅, 竹内 康
    2023 年 79 巻 4 号 論文ID: 22-00309
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     FWD試験によってコンクリート舗装の荷重支持性能を評価するための逆解析法において,重錘落下によるFWD荷重の動的効果が構造評価に及ぼす影響について調べた.土木研究所円形走行路にコンクリート舗装を建設し,49kN換算輪数520万輪を走行させながら定期的にFWD試験を行った.このFWD試験結果を静的逆解析法と本研究で新たに開発した動的逆解析法によって解析し,劣化Stage,層弾性係数,曲げ応力を求めた.中央部の劣化Stageはほぼ同様の評価となった.目地部においては動的逆解析法による方がやや厳しい判定となったが,劣化が進んだ場合はほぼ同様であった.曲げ応力については,動的逆解析法による方がやや大きな値となった.層弾性係数についてはばらつきが大きく両者に明確な相関は得られなかった.

土木技術とマネジメント
論文
  • 平野 誠志, 加賀谷 悦子, 宮里 心一
    2023 年 79 巻 4 号 論文ID: 22-00238
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     著者が所属する道路関連会社において,2020年4月から5月にかけて20名の新型コロナウイルス感染者が発生し,クラスターと呼ばれる感染者の集団が発生した.本研究では,事前に策定された既存の感染症BCPに基づき実施した対策について,レジリエンスによる再評価を実施した.すなわち,感染症リスクを低減し感染拡大から回復する力を「レジリエンスの大きさ」,実際の感染者や濃厚接触者,自宅待機者などが通常業務に及ぼす影響を「損害の大きさ」と定義し,両者を比較した「総合評価」を用いて対策の妥当性の再評価を行った.さらに,再評価結果および既存の感染症BCPの準用結果を用いて,新型コロナウイルス感染症を対象にしたBCPに反映すべき対策の提案を行った.

  • 貝戸 清之, 竹末 直樹, 水谷 大二郎, 小林 潔司
    2023 年 79 巻 4 号 論文ID: 22-00255
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     近年,包括的民間委託による下水処理施設の管理事例が増加している.下水処理施設のアセットマネジメントの継続的改善を目指す場合,包括的民間委託による維持管理費用の低減や管理の効率化の効果を定量的に評価するとともに,ベストプラクティスを抽出し,管理・運営方法を改善することが重要となる.そこで本研究では,費用効率性に基づき下水処理施設の包括的民間委託導入効果を定量的に評価する.具体的には,確率的費用フロンティアモデルを用いて推定した費用効率性パラメータの分布をノンパラメトリック検定により比較することにより,包括的民間委託導入効果を定量化する方法論を提案する.当該方法論を全国の下水処理施設の維持管理費用や処理水量で構成されるデータベースに適用し,実際の包括的民間委託の導入効果を定量化する.

  • 剣持 三平, 小泉 淳
    2023 年 79 巻 4 号 論文ID: F5-0093
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     価値という言葉はさまざまな使い方をされており,その意味するところは必ずしも同じものとはなっていない.本研究は土木事業の合理的な整備のために,土木構造物のもつさまざまな価値を明らかにすることを目的としている.まず,土木構造物の現状を整理するとともに,一般的に考えられている価値を分類して,その中から土木構造物にとくに関係が深いと思われる価値を抽出した.つぎに,それらを実例とともに示し,土木構造物の価値構造を提示した.最後に,土木構造物の価値向上に向けた土木技術者の取組みについて言及したものである.

環境と資源
論文
  • 中澤 高師, Trencher Gregory , 辰巳 智行, 長谷川 公一
    2023 年 79 巻 4 号 論文ID: 22-00254
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,日本における二酸化炭素排出実質ゼロ宣言の波及過程を明らかにし,気候変動政策の転換を引き起こしたメカニズムの一端を解明することである.政策波及研究の知見に基づき,国と自治体の双方向の垂直的な影響,自治体間の水平的な波及過程,国際都市ネットワークからの波及,その他の促進/阻害要因を,日本政府を含む全国的な波及過程研究と神奈川県の事例研究から明らかにする.半構造化インタビューと文献資料調査の結果,まず国際都市ネットワークに繋がる先進的自治体が宣言し,それに注目した国が自治体へ宣言を呼びかけ,宣言自治体の増加が国によるゼロ宣言の一因となり,自治体の宣言がさらに促進されていくという,垂直的波及と水平的波及の連鎖過程が明らかになった.

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