土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
80 巻, 22 号
特集号(土木情報学)
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
特集号(土木情報学)論文
  • 高橋 一義, 中村 健, 千田 良道
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22001
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
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     積雪寒冷地域の道路除排雪業務は,担い手の高齢化や人手不足という課題を背景にICTの活用が進められている.しかし,除雪タイミングを判断する除雪パトロールのデジタル化は立ち遅れている.除雪パトロールのデジタル化を推進する手段として,道路・路肩の積雪状況を3D点群化する車両搭載型のMMSは有用である.本研究では,LiDARが安価に入手可能であることより,除雪パトロールへ導入可能な低コストなMMSの実現性を検討するため,安価なGNSS/INSを用いたMMSを開発し,MMS点群の地図座標精度を評価した.ボアサイト校正後のMMS点群の地図座標精度を街区多角点を用いて評価した結果,その絶対精度は0.085m(3D),0.032m(2D)となった.この値は,商用MMSには及ばないものの,安価なLiDARとGNSS/INSを用いても数cmの位置精度をもつMMSが実現可能であることを確認した.

  • 山野 亨, 荒木 義則, 河村 圭
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22002
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     高度経済成長期に集中的に整備された社会資本は一斉に老朽化が進むため,今後は施設の維持管理が課題であり,点検結果の適切な可視化による現地状況把握は重要である.著者らは砂防堰堤の変状部位に接近して撮影する点検写真を砂防堰堤3次元モデルに貼り付けることで,施設全体に対する変状の位置・方向・大きさを把握する手法を開発したが,点検写真をSfM/MVS処理(以下,SfM処理と呼ぶ)で後処理する必要があるという課題があった.そこで本稿では,携帯端末を用いた3次元再構成アプリにより生成される3次元モデルとSfM処理により生成される3次元モデルを比較するとともに,3次元モデルをGISに取り込む手法を検討した.

  • 早川 健太郎, 黒台 昌弘, 蒔苗 耕司
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22003
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     建設現場の働き方を改革するための抜本的な対策が期待されている.その対策として,現場内の動きを数値化して労働生産性を評価する手法は有効である.本研究では,まず現場技術者へのヒアリング調査に基づき,施工管理の5つの要素であるQCDSEにおける注目ポイント(技術者は現場のどこを注視しているか)を洗い出して系統的に整理し,施工管理指標として数値化(KPI)できることを示した.次に,QCDSEのうちD(工程)とS(安全)に着目し,建機の稼働率や危険リスクを可視化するシステムを構築してダム現場への適用を図った.現場技術者の視点からシステムの運用効果を評価した結果,現場技術者の管理作業を省力化できることやこれまで見逃していた事象が抽出できることが明らかとなり,開発した施工マネジメントシステムの有用性が確認できた.

  • 田内 裕人, 酒井 崇之, 大塚 義一, 中野 正樹
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22004
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,豪雨による外水氾濫を対象に,災害廃棄物の発生量・組成・空間分布を瞬時に予測できるシステムを提案するものである.システムにおけるすべての機能と必要なデータベースはオンラインのGoogle Colab上で実装しており,システム使用者は浸水深のGISデータのみをアップロードするのみで,煩雑な環境構築を行うことなくただちに災害廃棄物発生状況の推定ができる.本システムを豪雨災害で被災した2019年の長野県長野市および2020年の熊本県人吉市に適用した結果,廃棄物の組成ごとの発生量に誤差を含むものの,解析の高速性と災害廃棄物の空間分布においては妥当性が確認できた.以上の理由から,本システムは地方自治体の災害廃棄物処理の実行計画策定を支援できるものと考えられる.

  • 高橋 浩司, 白川 龍生, 長沼 芳樹, 佐野 至徳
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22005
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     積雪期の道路管理においては,道路横の斜面等での積雪深の変化を適切に把握することが重要である.積雪深を計測するには,近年活用事例が増えているUAV-SfM測量が効率的だが,無雪期の点群と位置を正確に重ね合わせる必要があるため,積雪斜面で安定的に恒常的な地上基準点を複数設置することは難しいと指摘されていた.そこで本研究では,UAVの測位方式の違い,斜面上に設置する地上基準点の数の違いに着目し,その計測精度を検証した.結果,(1)RTK搭載型UAVを用いること,(2)地上画素寸法を1cm相当で撮影すること,(3)地上基準点を2点以上配置しSfM解析で使用することを条件に,積雪深の計測誤差は+6.4cm(8%)に抑えられ,実用上問題ないことを確認した.このことから,積雪期のUAV-SfM測量における地上基準点設置作業の効率化が図れることを明らかにした.

  • 橋本 尚史, 日高 菜緒, 野中 哲也, 小畑 誠
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22006
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     近年,都市高速道路の新たな路線の建設などの際に様々な制約条件により,大幅に偏心した橋脚などこれまでにない複雑な構造の適用が必要になることがある.このような構造の載荷試験をするにあたり,面外(橋軸)方向の載荷によりこれまでに見たことないようなねじり変形を伴う複雑な局部座屈の発生などが想定されることから,従来の変形計測方法では変形箇所の予測や斜めの変形取得が容易でないことが考えられる.そこで本論文では,大偏心のコンクリート充填鋼製橋脚に対する面外(橋軸)方向の載荷実験において,ねじり変形を伴う局部座屈形状の正確な把握を目的として,高精度点群データが取得可能なハンディスキャナを用いた計測の有効性を検証することにより,今後の活用の可能性を検討したので,ここに報告する.

  • 今井 龍一, 山本 雄平, 中原 匡哉, 姜 文渊, 神谷 大介, 中畑 光貴, 小橋 幸貴
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22007
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     現行の歩行者交通量調査では,調査断面を通過する歩行者を人手により計数する手法が一般的なため,調査日や時間帯が限定される.近年,ビデオカメラで撮影した動画像を用いた調査事例が増えているが,個人情報やプライバシーへの配慮が必要である.そこで,対象とする歩行者を3次元の座標点の集合として計測できるLiDARが注目されている.しかし,反復型のLiDARでは,計測範囲を網羅的に計測できず当該調査への適用が困難である.そこで本研究では,計測範囲を網羅的に計測可能な非反復型のLiDARで計測した点群データから深層学習を用いた歩行者交通量調査を試行した.歩行者の計数結果より,正解率が低い場合で67.2%,高い場合で84.7%であることから,非反復型のLiDARで計測した点群データを用いた歩行者交通量調査への適用可能性があることが明らかになった.

  • 今井 龍一, 中村 健二, 塚田 義典, 梅原 喜政, 新名 恭仁, 庄司 康太
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22008
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     我が国では,i-Constructionの推進に伴い,地物の表層を3次元的に捉えた点群データの取得機会が増大している.特に,多視点画像から点群データを生成できるSfMが注目されている.しかし,SfMは,各画素のRGB値より計算される特徴量の類似度に基づき対応点や自己位置を推定するため,一面白色の壁等の色情報の変化が乏しい対象物では,点群データの生成が困難である.

     既往研究では,プロジェクタを用いて対象物に模様を投影し,SfMによる点群データの点数と精度を向上させる手法を提案したが,実際に存在しない凹凸が発生する課題がみられた.そこで,本研究では,点群データの生成に有効な模様を試作し,橋脚模型を使用した実証実験により有用性を確認した.その結果,考案手法により,レーザ機器と比較し誤差10mm以内の点群データをSfMで生成できることを明らかにした.

  • 今井 龍一, 山本 雄平, 中原 匡哉, 神谷 大介, 姜 文渊, 中畑 光貴, 住吉 諒
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22009
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     我が国では,自動車交通量調査の効率化に向け,調査にAIを導入している.この調査でナンバープレートを認識できれば,車両の流動計測も可能となり,調査を高度化できる.しかし,路肩の高所から撮影した動画像では,ナンバープレートが傾いた状態で映り込むため,正面向きに補正する必要がある.補正する手法として射影変換があるが,ナンバープレートと車両が同系色の場合,射影変換の基準点を取得できない.そこで,本研究では,ナンバープレートに必ず表記される一連指定番号の4桁目の位置を基準とした射影変換により正面向きに補正し,ナンバープレートのすべての文字を抽出する手法を開発した.実験の結果,500枚中479枚の画像ですべての文字を抽出できた.今後は,本手法を適用して異なる地点間で同一の車両を特定する交通流動調査への展開を図る.

  • 今井 龍一, 山本 雄平, 姜 文渊, 中原 匡哉, 神谷 大介, 野村 圭哉
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22010
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     イベントや災害時に群衆の人数を計数することは,事故を未然に防ぐために重要である.近年,深層学習を用いて人物を計数する技術が発展し,様々な手法が開発されている.しかし,群衆の動画像は様々な条件で撮影されているため,自動で最適な人数計数手法を選択して適用することは困難である.

     本研究では,人数計数手法の検出結果の傾向の違いに着目し,回帰分析を用いて人数を推計する手法を考案した.検証の結果,回帰分析によって人数計数手法ごとの弱点を補完し合うことで,極端な誤検出や検出漏れが緩和され,より正確に人数を推計できることが判明した.

  • 木村 延明, 皆川 裕樹, 福重 雄大, 吉永 育生, 馬場 大地
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22011
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,予測時間の迅速性などの観点からリアルタイム予測に利用される長・短期記憶(LSTM)を対象に,モデルに関する不確実性を可視化するために,LSTMにベイズ推定の代替手法を導入したベイジアンニューラルネットワーク(BNN)を構築した.本モデルは低平地の排水管理に利用される遊水池の水位予測に適用された.BNN構築のために,ネットワーク内のノードをランダムに切り替える手法であるMonte Carloドロップアウト(MC Dropout)とサンプリング手法であるStochastic Gradient Langevin Dynamics(SGLD)の2つの代替手法を採用した.MC Dropoutでは最適なドロップアウト率(=0.3)を選定し,従来型モデルと比較して,予測時間が短い場合に,期間最大洪水時の排水期間で約 10%の予測精度の改善が見られた.SGLDも同様な結果であった.確信区間を含めた両手法の予測結果の比較では,特にピーク水位付近でMC Dropoutの方が幅広でスムーズな時間変化を示した.

  • 中原 匡哉, 山本 雄平, 今井 龍一, 石濱 裕幸, 澤城 光二郎, 井藤 博章, 山岸 真理
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22012
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     開削工事で設置される土留め壁に過剰な負荷がかかっている場合,目視でその変状を判断するのは難しく,土留め壁が崩壊する事故が発生している.そのため,既存研究では,土留め壁の内部にセンサを設置する手法や表面にターゲットを設置してTSを用いて変状を定量的に計測する技術が提案されている.しかし,導入にかかる費用や工数が膨大となる課題や網羅的に変状を計測できない課題がある.

     本研究は,リアルタイムに計測対象の3次元データを網羅的に計測できる廉価なLiDARに着目し,土留め壁の変状を検出する手法を提案した.実験の結果,非反復型の計測方式のLiDARと提案手法を用いることで,土留め壁の表面に発生した変状を検出できることを明らかにした.今後は,実際の建設現場に適用し,現場導入に向けた課題の整理と提案手法の改良を目指す.

  • 小林 亘
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22013
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     道路冠水の水位を予測できれば,道路利用者の安全な通行経路の決定,道路管理者の通行規制の効率化に役立てられる.本研究では,道路冠水の予測に,連続式水位計に比べて低コストかつ省スペースな水検知器(浸水センサ,冠水センサ)を利用し,しかも,使用する情報を水検知器からの情報と雨量に絞り,さらに平易なアルゴリズムを使用することで実用的な道路冠水予測を目指した.水検知器では得られる水位情報は限られるため,本論文では単純化したモデルによる水位予測手法を提案した.この手法を2023年6月台風2号の降雨とさいたま市内の2か所の水検知器の情報に適用して予測を行ったところ,予測は水位変化のおおまかな形状を捉えていた.加えて,道路冠水予測を可視化する情報システムによって道路管理者から実用上の意見を聴取した.

  • 今井 龍一, 中村 健二, 塚田 義典, 梅原 喜政, 石川 健太
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22014
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     道路管理者は,道路舗装の状況を把握するため,路面性状調査や目視点検を実施しているが,労力および費用の面で課題を抱えている.そこで,ドライブレコーダやスマートフォンで撮影した道路舗装の動画像を深層学習により解析する技術が注目されている.しかし,既存研究では,教師データの正確性が低い課題や路面に写り込んだ影がひび割れの検出精度を低下させる課題があった.

     本研究では,路面性状調査結果に基づく深層学習モデルを構築するとともに,機械学習を用いて4K解像度の動画像から影を除去することで,簡易的にひび割れ率を算出する手法を考案した.そして,実証実験を通じて,目視による精度と同等の約6割の精度で路面性状調査結果のひび割れ率を算出し,簡易的に道路舗装のひび割れを点検できることを明らかにした.

  • 塚田 義典, 中原 匡哉, 梅原 喜政, 田中 成典, 武内 克樹, 中井 瑞基
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22015
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     近年,国土交通省ではBIM/CIM原則適用を掲げ,設計事業のデジタル化や3次元モデルの活用を推進している.これらのデジタル化に伴い,関係者間のデータ共有や活用が容易になることで設計・施工のみでなく,維持管理においても生産性の向上を目指している.しかし,橋梁等の既設構造物は計測データをもとに3次元モデルを作成する必要があり,専門的な知識や多大な労力を要する.そのため,既存研究では,遺伝的アルゴリズムを用いて橋梁部位ごとの点群データとテンプレートモデルからパラメトリックモデルを自動で生成する手法が提案されているが,処理時間を要する課題がある.そこで,本研究では,深層学習を用いて橋梁部位の点群データからエッジを構成する点を推定したうえでワイヤーフレームモデルを生成することで,既存研究と比較して高精度かつ高速にパラメトリックモデルを生成する手法を提案する.

  • 平井 聡雄, 羽柴 秀樹, 園部 雅史
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22016
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     住宅地の緑被環境を評価する指標として,行政では緑被率や沿道部の緑化率を使用している.しかしながら,これらは植生の有無のみを評価しており,植生分布の偏りや育成状況の多様性などは十分に反映されていない.ここでは,住宅地の道路沿道部の緑被環境に着目し,高分解能衛星画像から得られた植生の連続性を加えた指標を新たに用いることで,植生の維持管理の調査における効果が検討された.その結果解析画像上の植生セル間を関連づけるための重力モデルと該当セル自身の植生活性度を示すNDVI値を関連づけることにより植生状況を反映した指標値を提案し,これまでの指標値と比較してその有効性が確認された.また,提案する指標値を用いて千里ニュータウンの植生環境を地区ごとに街路樹を含む道路と含まない道路に分けて評価し,その効果が考察された.

  • 杉本 賢二
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22017
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     東日本大震災の被災地域では広域で大規模な復興事業が実施されたが,それに伴う地形改変の量やその空間分布は明らかではない.本研究では,震災直後と現在のDEMとを用いて,標高差分から復興事業による地形改変を空間分布として推計した.その結果,宅地造成や嵩上げによる標高変化や,道路建設による切土盛土といった,人為的な地形改変を可視化した.地形改変量は岩手県で6.29億m3,宮城県で5.96億m3と推計され,宮古市から東松島市までの地域で改変量が多いことが示された.また,震災前後の用途地域を用いた面積あたりの地形改変量(改変強度)を算出した結果,宅地造成が行われた住宅用途で大きな改変強度となった.これは,露天掘り採掘や土砂採取といった人為的地形改変と比較すると強度は小さいが,復興事業が広域で実施されたことから大規模な地形改変が行われたといえる.

  • 道川 隆士, 佐々 高史, 重田 将宏, 吉村 倖平, 藤繁 航, 北澤 隆一, 名古屋 淳, 金谷 武伴, 和田 智之
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22018
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     本論文では,トンネル検査における打音検査を撮影した動画から,ハンマー打撃位置をデジタル化する手法を提案する.提案手法は,動画を入力としてハンマー打撃時のキーフレーム画像を音声解析によって抽出する.各キーフレームに対して物体検出技術により打撃位置を推定するとともに,基準となるラボフレーム画像とのホモグラフィ変換によってラボフレーム画像の座標系における座標値を計算して統合する.統合されたデータは,打撃点の位置,打撃時刻および打撃音で構成されており,追加の解析によって,打撃の分布や,判断根拠を定量化できる.本論文では,提案手法が熟練点検員との比較等,点検員の技量評価への応用が可能であることを示す.

  • 松田 知樹, 高橋 亨輔, 井面 仁志
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22019
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     本研究では複合現実(Mixed Reality:MR)を用いて,住民が自分たちの町の被災イメージを構築しやすくすることで災害を自分事にすることを支援するシステムを開発する.本システムを用いて,ハザードマップの想定や被災者の過去の記憶を基に災害状況を再現する.また,本システムでは再現した被災イメージを複数の住民間で共有することで,コミュニケーションをとりながら災害を再現することができる.本研究では,地域住民を対象とした評価実験を行い,アンケートや意見交換会にて本システムの有効性を検証した.その結果,災害をイメージする点や災害を自分事にする点でMRを用いたシステムの有効性が確認できた.

特集号(土木情報学)報告
  • 原田 紹臣, 武井 千雅子
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22021
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     近年,再生可能エネルギーの導入が世界的に進んでいる中,我が国における風力発電事業の推進は重要な使命の一つである.その際,事業に関係するステークホルダーや地域住民等と合意を図ることは必須であり,特に,事業によって生じる環境変化の予測やそれらの可視化は重要な技術的課題である.一方,PLATEAU建物等のデジタル技術を活用したBIM/CIMの有効活用が期待されている.本稿では,近年のメタバース技術を活用した可視化資料による事業説明の手法等について提案している.なお,効果的な合意形成を図るため,多大な仮想空間情報を円滑に更新できるシステムを提案した.また,これらの可視化技術を活用して,発電施設設置に伴う影の影響予測結果や施工方法等に関する説明手法について提案した.さらに,事業者等へのアンケートヒアリングにより,これらの可視化に関する有効性について示唆された.

  • 飯塚 洸貴, 田村 悠太郎, 佐田 達典, 江守 央
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22022
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,QZSSのセンチメータ級測位補強サービスCLAS(Centimeter Level Augmentation Service)の測量での利用を検討するため,既知点上での測位における再初期化後の測位解の検証を行った.CLASのFix解取得開始時刻から180秒(エポック)までのデータを幾つかの時間帯で平均し,平面直角座標X,Y,標高Hの既知点座標からの較差,RMS誤差の評価を行った.実験の結果,CLASのX座標,Y座標の較差は許容値である±2cm以内が最大で約75%,約67%,標高Hの較差は許容値である±3cm以内の割合は最大で約30%となった.RMS誤差はX座標,Y座標では10エポック平均値が1エポック値よりも低減するが,20エポック平均値,30エポック平均値では増加し,60エポック平均値以降では緩やかに減少,180エポック平均値が最小となった.

  • 今井 龍一, 中村 健二, 塚田 義典, 梅原 喜政, 岡本 拓也
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22023
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     道路管理者は,道路舗装の損傷を把握するため目視点検や路面性状調査を実施しているが,人手不足や費用面の課題がある.そこで,車載カメラで撮影した動画像に深層学習による画像解析を適用し,わだち掘れを検出する手法が注目されている.既存研究では,一眼レフカメラやビデオカメラ等を用いた手法が実証されているが,手軽に利用できるドライブレコーダやスマートフォンの動画像を用いて検出できると,インフラDXの加速化が期待できる.

     本研究では,ドライブレコーダとスマートフォンで撮影した4Kの動画像の輝度を表すガンマ値を補正し,深層学習による画像領域分割を用いてわだち掘れを検出する手法を考案した.その結果,Mask R-CNNは誤検出が,YOLOv8は検出漏れが少ないモデルを構築でき,実用化に向けて有用な示唆を得た.

  • 加藤 創大, 山口 裕哉, 岡本 直樹, 岩上 弘明, 佐田 達典, 江守 央
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22024
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     近年モービルマッピングシステム(MMS)を用いた3次元点群の計測が普及してきた.レーザスキャナの計測方式には飛行時間(ToF)方式と位相差(PS)方式がある.既存研究ではPS方式レーザスキャナの方がToF方式より精度が高いとされている.一方,PS方式では標識など,反射強度の高いものでは特有のノイズであるノニウスジャンプが発生し,形状が正確に把握できない場合がある.そこで本研究ではPS方式のレーザスキャナを搭載したMMSにて色および表面素材の異なるターゲット板に対してレーザ計測を実施し,レーザの入射角度ごとに反射条件・素材条件によるノイズ及びノニウスジャンプの発生状況を調査しその対処法を検討した.その結果,塗料塗布素材,反射素材ともに入射角度60°で計測するのが望ましいことが示された.

  • 角田 直嵩, 尾﨑 平, 窪田 諭, 檀 寛成, 安室 喜弘
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22025
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     熱中症のリスクを定量的に評価する上でひとつの基準であるWBGTは,地球の気温上昇やヒートアイランド効果に伴う熱中症のリスク増大という現代の課題への対応策として重要な情報となっている.環境省が提供するWBGT情報は一般にWebでも公開されるが,個々の市民が身の回りの生活空間や作業環境における熱中症リスクを把握するには空間的・時間的に密度の低い情報である.あらゆる場所で日向と日蔭でのリスクの違いや分布および,時刻による変化がわかれば,個々の行動や作業の計画も立てやすい.本研究では,公開情報基盤である3Dデータと気象情報データを利用して,地域や時間を問わず,具体的な現場における日照条件を計算し,グローバルイルミネーションによる写実的な陰影をレンダリングしたCGを基盤として,ピクセル毎にWBGTを推定する.ゲームエンジンを活用した実装により逐次的に変動する暑熱環境に対してリアルタイムにWBGT分布を可視化し,Web上で配信するシステムを開発した.

  • 村岡 叶夢, 窪田 諭, 安室 喜弘
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22026
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     アフターコロナにおいても,重症化リスクの高い高齢者等への感染対策の継続が重要視され,依然として人の混雑度合を知る需要は高い.モニタカメラで人を検知する技術は,広域においては,カメラの設置台数にコストがかかり,網羅性にも限界があった.本研究では,施設管理の観点から,定期的な警備巡回業務の中で運用することを想定し,移動しながら全天球カメラの配信映像を録画して得た画像を利用して,人の分布を定性的に表示する方法を提案する.SfMに基づくカメラの追加アライメントと,機械学習による人物検出・追跡処理により,施設内のフロアマップ上での人物位置を求め,マッピングをすることで人の分布を定性的に可視化した.広域なエリアでも並行して人の分布情報をオンライン上で更新でき,システムの実用においては有用性を示した.

  • 谷口 寿俊, 境田 伸哉, 三谷 泰浩, 本田 博之, 坂上 慎一
    2024 年 80 巻 22 号 論文ID: 23-22027
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

     高速道路構造物の維持管理では,各種情報を3次元モデル上に空間的に統合して活用するための様々なプラットフォームが提案されている.プラットフォームを構築することで,橋梁や舗装等の異なる構造物の情報を位置情報を用いて一元的に管理できる.一方,特殊橋のように複雑な構造を持つものは,詳細な3次元モデル化が困難であり,点検記録における位置情報の表記ゆれや不足も相まって,プラットフォームの構築は容易ではない.そこで本研究では,特殊橋を対象として,部材毎に詳細度を変える新たな3次元モデル化手法および位置情報の規則化による点検・補修情報とモデルの統合手法を提案し,維持管理での活用に適した情報統合プラットフォームを構築した.そして本プラットフォームによる情報の可視化や時空間的な分析を行い,構築した情報統合プラットフォームの維持管理における有用性を明らかにした.

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