土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
79 巻, 3 号
通常号(3月公開)
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構造工学,地震工学,応用力学
論文
  • 浅野 拳斗, 宇佐美 勉, 葛 漢彬, 渡辺 孝一
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00098
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     2種類のCT形鋼断面の両端ピン支持単一ブレース材11体を用いて,正負交番の繰り返し中心軸および偏心軸載荷実験ならびに解析を行った.主要な検証項目は,(1)細長比の大きいブレース材に対する初期横荷重法の適用性,(2)部材座屈と局部座屈の連成座屈に対するひずみ照査法の適用性である.(1)に関する実験は,両端のクレビスの回転摩擦の影響が大きく,履歴曲線は,回転摩擦が切れるまでは両端固定の解析,回転摩擦が切れた後は両端回転自由の解析結果に概ね一致した.回転摩擦が切れるのは,部材座屈が生じた変位に概ね一致し,急激な荷重低下が生じ始める点でもあった.(2)に関する予測結果は,局部座屈発生位置に相違はあるものの,ひずみ照査法あるいは解析によってある程度の精度で予測可能であることが分かった.

  • 神野 巧矢, 山口 隆司, 浅野 貴弘, 伊川 嘉昭, 小山 雅己, 水内 將司
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00119
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     既設鋼橋の性能回復・向上を目的に,高力ボルト摩擦接合を用いて鋼部材を付加する当て板補修・補強が行われている.本研究では,曲げを受けるI桁下フランジ当て板補修・補強部の荷重伝達区間に着目し,当て板厚やボルト間隔がそれに及ぼす影響を明らかにするため完全弾塑性解析を実施した.また,部分欠損補修における当て板の配置が補修効果に及ぼす影響を検討した.結果,荷重伝達区間は,当て板厚およびボルト間隔が小さいほど短縮された.また,ボルト間隔が小さいほど結果的に荷重伝達区間に必要なボルト本数が増加するため,すべりを生じた本数は減少した.本解析の部分欠損補修では,当て板を片側に1枚とするのではなく,2面摩擦として両側に当て板厚が半分の当て板を2枚とすることで荷重伝達区間を短縮でき,欠損部の応力をより低減できた.

  • 杉山 裕樹, 川崎 雅和, 金治 英貞, 八木 知己
    2023 年79 巻3 号 論文ID: A1-0719
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究では主径間650mを3径間有する多径間連続斜張橋の主桁構造に対して,一般的な扁平六角形鋼床版1箱桁断面に代わり,維持管理性および構造合理性の向上を目的に超高強度繊維補強コンクリート床版を用いた端2箱桁断面を提案する.提案構造に対して,耐荷性能の観点から,扁平六角形鋼床版1箱桁との構造特性の違いを明らかにし実現性を確認する.さらに,端2箱桁を実現する上での重要な課題である耐風安定性について,風洞試験による種々の断面形状に対する検討を行い,実現性のある主桁形状を提案する.活荷重および温度荷重に対して構造設計し,扁平六角形鋼床版1箱桁との比較により,提案構造は実現可能な構造であることを確認した.また,バネ支持試験およびフラッター解析により,フラッターに対する耐風安定性を確保可能な断面形状を示した.

河川・海岸・海洋工学と水文学
論文
  • 田鍋 颯一, 久加 朋子, 清水 康行, 山口 里実, 橋場 雅弘, 土田 宏一, 諏訪田 光浩, 今 日出人, 岡安 努
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00153
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     2018年9月,北海道胆振東部地震により厚真川流域で多数の斜面崩壊が発生した.本研究では地震後の厚真川での土砂輸送特性と河床への影響の把握を目的とし,(1)現地データより地震前後の浮遊砂輸送特性の変化を整理すると共に,(2)それら結果を基に同一流量条件下にて浮遊砂供給条件の異なる定常流一次元不等流河床変動計算を行った.結果,崩壊地面積が大きい支川ほど土砂生産量(主に0.075mm以下)が多く,厚真川本川でも浮遊砂量の増加が確認された.数値解析によると,崩壊地から流入する浮遊砂成分の大半は河道内に堆積せず,河口から流出した.ただし,厚真大橋での観測流量が既往最大値を超えた360m3/s程度まで増加すると,河口~4km上流の区間において細粒成分の堆積に伴い河床材料が細粒化する可能性も確認された.

  • Tracey H. A. TOM , 間瀬 肇, 武田 将英, 原 知聡, 金 洙列, 河村 裕之, 大熊 康平
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00308
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,混成堤断面形状パラメータを用いて,無次元平均波力強度の予測,および衝撃砕波波力の発生が判定可能な機械学習モデルを提案する.ただし,学習用の実験データは多くないため(スモールデータ),データの重複を認めてサンプリングする復元抽出法によるアンサンブル学習を試みた.ベースとなる機械学習モデルはANNとXGBoostの2種類を用いた.無次元平均波力強度の算定結果と実験結果を比較すると,相関係数とRMSEは,ANNでは0.96, 0.15,XGBoostでは0.96, 0.14となり,ほぼ同程度であった.無次元平均波力強度が2を超えたときに衝撃砕波力が発生すると判定したときの的中率は,ANNモデルで99%,XGBoostで97%であった.

ノート
  • 羽田野 袈裟義, 荒尾 慎司, 野田 誠
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00285
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     従来のゲートの水理検討は流量評価を第一とし,ゲート操作のための直接情報を与える研究は殆ど皆無である.本研究は,ゲート操作ではゲート開度の陽形式表現が最も重要な情報と考え,スルースゲートからの自由流出と潜り流出の両方について,水理学の基礎式に基づき,所定の流量とゲート上(下)流の水深に応じてゲート開度を決定する方法を提案している.自由流出について,運動量の定理に基づきゲート上流水深と所望の単位幅流量(限界水深)に見合うゲート開度を求める式を導いた.潜り流出については,Henryの取扱い方法から出発し,ゲート上・下流水深と所望の単位幅流量に見合うゲート開度を求める4次方程式を導いた.得られたゲート開度の計算結果は広範囲の室内実験の結果を良好に再現した.

地圏工学
論文
  • 佐野 和弥, 伊藤 和也, 田中 剛, 末政 直晃, 小浪 岳治, 谷山 慎吾
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00204
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     宅地擁壁の中でも空石積擁壁の地震時被害が多く発生している.しかし,施工性や施工費に課題があり宅地擁壁に最適な補強方法は存在しない.そこで,擁壁の天端から縦方向に斜杭を打設し,補強材頭部と擁壁上部を一体化させ,補強材の役割の一部を既存擁壁に担わせる簡易な耐震補強法を考えた.本研究では,その補強方法について,補強領域の大きさや補強材設置角度が補強効果に与える影響を検討するため,遠心場での傾斜土槽実験を実施した.その結果,斜杭と擁壁の距離を短くした補強擁壁では補強材に大きな引張方向の軸力が,擁壁には圧縮力が働くことで高い補強効果が見られた.一方,斜杭と擁壁の距離を長くした補強擁壁では補強領域内で崩壊が発生する内部崩壊の発生が見られた.

  • 太田 啓介, 冨田 佳孝, 高木 翔太, 中村 貴久, 中島 進
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00236
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     流動化処理土は,従来より土木材料として幅広く使用されているが,鉄道盛土としては列車荷重の繰返し作用に対する累積変形特性や乾燥に対する長期的な安定性が明確になっておらず,限られた箇所での適用となっている.本研究では,列車荷重作用下での流動化処理土について,保護層を設けた盛土の提案構造における変形特性,施工時の転圧荷重の影響,保護層の乾燥対策効果について検討を行った.その結果,細粒分質砂を母材とした流動化処理土について,本提案構造において,流動化処理土への作用応力を応力比で 0.15 以下,かつ処理土密度を 1.60 kg/cm3以上とすることで,列車荷重の繰返し作用に耐えうる盛土となること,若材齢時であっても転圧荷重が強度発現を阻害することはないこと,粒調砕石による保護層を施すことで乾燥を防止できることを把握した.

  • 井原 壮, 菊池 喜昭, 野田 翔兵, 永井 裕之, 龍岡 文夫
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00253
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     大粒径土粒子を含む現場盛土材の締固め特性を得るには,現場盛土材を用いた大型締固め試験が必要であるが,その実施には多くの制約がある.このため,大粒径土粒子を除去した試料で室内締固め試験を実施し,得られた乾燥密度をWalker-Holtz式(W&H式)で補正して大粒径土粒子を含む盛土材の締固め密度を推定するのが一般的である.しかし,W&H式の補正方法では除去した土粒子の重量比率が大きくなるほど推定誤差が大きくなる.本研究では,複数の盛土材をせん頭粒度調整により最大粒径を変化させて室内締固め試験を実施した.その結果,W&H式の推定誤差には,細粒分含有率と礫分の粒子形状の影響が大きいことがわかった.また,W&H式を補正して,大粒径土粒子を含む盛土材の締固め密度を予測する方法を提案した.

  • 松島 亘志, 室山 拓生, 木川田 一弥
    2023 年79 巻3 号 論文ID: C-0610
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     ブルドーザーによる土砂敷き均し作業の効率化と将来の自動運転を目指し,本研究ではリアルタイムフィードバックが可能な敷き均し高速シミュレーターを開発した.まず,実機による敷き均し実験および個別要素法解析での土砂観察により,(1)押し出し土砂量が少ない場合は,土砂がブレード前面に局所的に盛り上がる,(2)押し出し土砂量が多い場合は,土砂マウンド中にすべり面が形成され,上部土砂が剛体的に押し出される,(3)押し出された土砂によってマウンド前面に形成される急斜面が崩壊する,という3つのメカニズムを確認した.その上で,このメカニズムを基にした敷き均しアルゴリズムを構築し,その解析結果を,個別要素法解析および実機実験の結果と比較したところ,リアルタイム解析が可能な計算速度で,妥当な解析結果が得られることがわかった.

土木計画学
論文
  • 五三 裕太, 福島 秀哉
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00025
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     本稿は,河川管理と地域再生の連携推進に向けた計画概念「河川文化アプローチ」の実践課題に対応するため,日本の「かわまちづくり」施策における河川管理施設の計画検討プロセスの特徴を明らかにすることを目的とし,河川利用推進を図る護岸改修が計画された肱川かわまちづくり第1期計画での整備内容の議論の特徴を分析した.研究の結果,肱川かわまちづくりの関係者の特徴を示し,協議会・ワークショップを通じた整備内容の検討経緯と各関係者の意見の関係を明らかにした.以上から,日本の「かわまちづくり」における計画検討初期段階での河川利用の状況に詳しい主体の参画,および地域住民の河川に対する関心が高いタイミングでの計画検討の展開の重要性を示し,「河川文化アプローチ」の実践展開で留意すべき関係者の特徴と地域特性を指摘した.

  • 太瀬 隆敬, 岡村 敏之
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00029
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     開発途上国では自家用車・オートバイの普及が急速に進んでいる.経済成長に伴いオートバイから自家用車中心へシフトすると想定されてきたが,アジアでは,経済成長を経ても自家用車への転換が緩やかな都市や,自家用車の普及が先行しながらオートバイが追従・逆転した都市が確認されている.本研究は,アジア大都市における自家用車・オートバイの保有率を整理し,両者の普及経緯について,道路整備と都市規模の観点より分析する.

     分析の結果,私的交通の普及パターンに影響を及ぼす要因として,人口密度と道路整備水準が考えられ,市街地が高密かつ道路空間が限られている都市ではオートバイから自家用車への転換が行われない可能性が示された.交通政策への提言にあたり,道路面積に関するデータの重要性が示唆された.

  • 青木 俊明
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00037
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,社会基盤整備の住民説明会における住民側発言の一般的傾向を把握することを目的とし,NIMBY性を持つ14事業の議事録を用いて,住民側参加者の発言内容を分析した.分析の結果,NIMBY性の高い事業では,住民側の発言が多様であり,発言数も多くなる傾向がうかがえた.決定手続き,リスク管理,決定への疑義,誹謗中傷に関する住民発言が増えることも示唆された.特に,NIMBY性の高い事業では,誹謗中傷や各種の疑義といった攻撃的な発言が参加者から多く発されていた.これらを踏まえ,厳しい質疑が予想される場合には,説明者側は心理面も含めた準備を行い,誠実で分かりやすい説明を行うことや,平素から信頼醸成に努めることにより,協議の厳しさが軽減される可能性が考察された.

  • 金森 紘代, 藤井 聡
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00039
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     土地の境界と所有者を明らかにする「地籍」の整備は,災害からの早期復旧,都市開発や公共インフラ整備の迅速化に大きく貢献する.しかし市町村主体で行われてきた地籍調査事業の進捗率には大きな地域差があり,日本全域では対象面積の半分を超えたにすぎない.地籍整備を推進すべく,国は様々な施策を打ち出しているが,それらは現場の作業効率促進に主眼がおかれ,不動産登記制度を母体とするわが国の地籍整備遅延の本質的な問題について,十分な議論がなされていない.本稿では,既往調査や過去の記事,国会・市町村議会の会議録から得られた知見を整理し,総合的に考察した結果,現行法制度ならびにその実質運用,そして1951年の事業開始時より幾度となく指摘されてきた地籍調査事業への国予算の不足が,整備遅延の原因であることを明らかにする.

  • 波床 正敏
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00055
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     スイスではBahn 2000という幹線鉄道政策が1987年に開始され,最小限の投資による新線建設や路線改良等によって主要駅での乗り継ぎ利便性を大きく向上させ,乗客数を伸ばした.本研究に至る研究において政策実施の直前直後を比較する分析を行ったが,政策背景調査の不足,政策実施前に行われた試行的な施策の分析の未実施,政策実施直後の2005年には未整備区間が残存した等の課題があったため,本研究はそれらに対応したものである.本研究の結果,Bahn 2000実施前の1982年において主要路線で増便と等間隔ダイヤ導入が行われ,待ち時間や乗り継ぎ時間等が大きく削減されたことがわかった.また,政策実施後の評価を2015年に変更したことでその間に路線整備が進行し,乗り継ぎ改善効果をより正確に評価できた.

  • 溝口 哲平, 谷口 綾子
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00081
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     移動中の活動による移動の不効用低減・効用増進効果は,従来,活動種類や道具・機器をもとに検討されてきた.本研究は,移動中の活動が行われる“理由”と持たれる“認識”を「移動中の活動の主観的意味」(SMTM)と呼び,どういったSMTMが移動の不効用低減・効用増進効果を有するのかを検討した.SMTMと移動時間短縮意向との関連を調べた結果,移動中の活動は,“暇つぶし”ではなくその活動を行うこと自体を目的に,“行いたいと思って”行われる場合,移動時間の維持を,“暇つぶし”が目的である,あるいは“行いたいと思って”行われない場合,短縮を希望する方向に寄与することが分かった.移動の不効用低減・効用増進効果は前者の場合のみ有すると推察される.

  • 鈴木 渉, 中村 文彦, 有吉 亮, 田中 伸治, 松行 美帆子
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00169
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     鉄道駅での改札通過データには,乗車券単位で駅での入出場の情報が長期的に記録されており,利用頻度や利用時刻といった個人単位の交通行動データの取得が可能である.そこで本研究では,昨今の急速な社会情勢の変化に伴う,個人ごとの利用頻度や利用時刻の変化に着目し,習慣的な鉄道利用減少の特性を明らかにすることを目的とする.まず,各々の変化量と,年齢や性別,券種といった個人ごとの属性との関係性を整理した.そして,重回帰分析を用いて,習慣的な鉄道利用が減少した人の中でも,定期利用でなくなった若年層の利用習慣の変化がより大きい可能性があること,また定期利用でなくなった若年層であるほど乗車時刻が変化した一方,定期利用を続けており年齢の高い層ほど乗車時刻が変化していない可能性があることを,定量的に明らかにした.

  • 結城 拓海, 佐々木 葉
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00191
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,東日本大震災に関連して整備された国営追悼・祈念施設を含む震災復興祈念公園の一つである石巻南浜津波復興祈念公園を対象として開園後約半年の時点での来訪者に対するアンケート調査を実施した.これによって来訪者の属性,状況,利用行動,印象の観点から利用実態を明らかにした.さらに,来訪者の認識に基づいた来訪者像の分類を行った結果「日常利用追悼」,「象徴的追悼伝承」,「防災学習特化」,「場所記憶追憶」,「レクリエーション重視」,「不定形想起」と解釈した6類型が抽出された.これらは外部から観察可能な単独の指標によって説明されうるものではなく,来訪目的や園内での行為との関係を反映したものであることを具体的に説明した.

建設材料と構造
論文
  • 中山 岳彦, 斉藤 成彦, 佐藤 賢之介
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00258
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     RC部材の接合部は鉄筋が過密配置となり,その干渉から生産性を低下させる原因となっている.橋脚フーチングと杭基礎との部材接合部においては,フーチング下面鉄筋と杭基礎鉛直方向鉄筋の干渉がしばしば生じる.しかしながら,その破壊挙動は複雑であるため,詳細検討がなされず鉄筋干渉の改善がないのが現状である.そこで本論文では,杭基礎フーチングのせん断破壊挙動を明らかにするために,剛体バネモデルを用いて非線形数値解析を行った.実験試験体との比較により解析の妥当性を示したうえで,せん断破壊挙動の詳細な考察を行い,フーチング下面の鉄筋配置の影響について検討を行った.さらに杭が多列配置されるような実構造物スケールの杭基礎フーチングについて解析を行い,鉄筋干渉を避け生産性が改善できる配筋の可能性を示した.

土木技術とマネジメント
論文
報告
  • 山野 亨, 桐山 魁, 岡本 修, 猿渡 雄二, 荒木 義則, 森安 貞夫, 高田 知典, 河村 圭
    2023 年79 巻3 号 論文ID: F3-0127
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     近年,多大な人的被害を及ぼす豪雨に伴う激甚な土砂災害が起こっている.土砂災害発生時には,迅速な土砂災害調査が必要である.そこで我々は,マルチバンド受信機を使用することで,作業効率や調査員の安全性の向上を目指す災害調査支援システムを開発している.本稿では,広島県の災害復旧現場において,開発するシステムに使用する受信機の測位性能を評価する.劣悪環境下における定点測位精度の確認を目的とした砂防堰堤における実験では,水平方向の測位結果のばらつきが22mm(2DRMS)以下であることを確認した.森林中の測位性能の確認を目的とした森林中における実験では,水平方向の測位結果のばらつきが0.65m(2DRMS)以下であることを確認した.この結果,土砂災害調査におけるマルチバンド受信機の有用性が確認できた.

環境と資源
論文
  • 大槻 順朗, 乾 隆帝, 野田 洋二, 皆川 朋子, 一柳 英隆
    2023 年79 巻3 号 論文ID: 22-00112
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル フリー

     海・河川域双方を生息場とする通し回遊魚3種(カマキリ,シマウキゴリ,スミウキゴリ)を対象に,海・河川水温を加味した気候変動による影響を評価した.1980年代~2010年代の水温の公共観測値を1級水系ごとに整理し,沿岸・河川河口域の月別の平均値と変動勾配を得た.水温を含む生息環境条件を説明変数とし,生息有無を評価するモデルを構築し,変数の重要度を比較した.また,構築したモデルで将来の想定水温での生息可能性を評価した.その結果,カマキリ,スミウキゴリでは2月海水温,シマウキゴリでは4月河川水温が生息確率へ最も強く影響する水温に抽出された.水温の変動勾配は海域(+1.29℃/100yrs)よりも河川河口域(+3.93℃/100yrs)で大きく,将来の想定水温では3種ともに河川水温上昇による制限がより強いことが示唆された.

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