土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
79 巻, 9 号
通常号(9月公開)
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地圏工学
報告
  • 嶋田 洋一, 前田 知就, 杉江 茂彦, 高橋 真一, 照井 太一, 古関 潤一
    2023 年79 巻9 号 論文ID: 22-00284
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

     斜め自立土留め工法は,通常直立に構築される土留め壁を傾斜させることにより主働土圧を低減し,支保工を省略した自立形式の土留め構造である.筆者らは本工法を深い掘削工事に適用するために,斜め控え壁による補強構造を付与して壁剛性を高め,地盤のせん断抵抗による変位抑制効果を期待した「斜め控え壁式土留め」の設計法及び施工法を提案し,実工事に適用した結果を検証した.設計法に関しては,斜め土留め壁に作用する土圧と斜め控え壁の効果を考慮した設計法を提案し,その適用性を遠心模型実験,施工時計測結果,及び計測結果の逆解析結果に基づき検証した.さらに,3次元FEM解析により斜め控え壁による変位抑制効果を確認した.施工法に関しては,鋼矢板を用いた斜め控え壁の圧入機による施工を計画し,実工事において適用性を確認した.

土木計画学
論文
  • 森田 将彬, 佐々木 邦明
    2023 年79 巻9 号 論文ID: 22-00194
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

     近年,都市部の浸水や河川の氾濫,土砂災害といった被害が甚大化する事例が相次ぎ,水害へのさらなる対策強化が求められている.その一方で,国土交通省および都道府県が定める浸水想定区域において,人口や世帯数が全国的に増加している.多くの都市で,災害リスクを避け都市機能を集約させるといった,都市計画マスタープランが立案されているにもかかわらず,適切に機能していないと考えられる.そこで,近年になって浸水被害を経験した地域の地価や人口・世帯数などに着目し,水害の経験や浸水想定が及ぼした影響を,DID分析を用いて検証した.その結果,浸水被害は人口や地価に対して正の効果をもたらしており,水害の経験が必ずしも地域の人口の減少や地価の低下につながらず,増加する影響を与えていることが示された.

  • 田口 俊夫
    2023 年79 巻9 号 論文ID: 22-00290
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

     首都高速道路横羽線の横浜都心部への延伸部分を地下化した事案は, 一旦都市計画決定した高速道路事業を変更したものである.首都高速道路を所管する建設省と高速道路と路線で競合する市営地下鉄を所管する運輸省, そして首都高速道路公団と神奈川県に対して, 都心部再開発の軸線として大通公園を構想する横浜市が主導して 1968年から一年間に及ぶ総合的調整作業を行った.自治体が都市景観の保全という地域的価値観を掲げ, 路線的かつ構造的に競合する都市インフラ事業を総合的に調整した.地域の価値観により都市づくりを総合的に実践するため, 飛鳥田一雄市政は都市プランナー田村明を招き企画調整室を立ち上げ, 総合的調整の事務局とした.当研究の目的は, それまで詳細が不明であった高速道路地下化に関わる総合的調整過程を明らかにすることである.

  • 薄 雪晴, 寺部 慎太郎, 柳沼 秀樹, 海野 遥香, 鈴木 雄
    2023 年79 巻9 号 論文ID: 22-00327
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

     モータリゼーションの進展や人口減少,高齢化を背景に,多くの都市の空洞化が進行している.地域経済の活性化を推進するため,まちの賑わい創出の検討が重ねられている.既往研究では,商業や歩行者空間整備に着目した研究が多い.しかし,公共施設に関する分析が不十分である.そのため,本研究は首都圏の市を対象として,居住,行政,交通,商業の4種類の拠点の周辺における各公共施設の立地状況を評価し,公共施設の立地とまちの賑わいとの関係を明らかにした.今後,都市を開発する時に,商業施設の立地分析は当然重要ではあるが,公共施設の立地についての分析も重要であることを示した.

  • 杉本 達哉, 杉浦 聡志, 高山 雄貴
    2023 年79 巻9 号 論文ID: 23-00091
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,交通混雑を考慮したFujita and Ogawa (1982)型の定量的都市経済モデルを開発する.そのために,開発したモデルにポテンシャル関数が存在することを示したうえで,その性質を利用した効率的な数値解析手法を提示した.そして,開発したモデルを使った二次元格子状空間下での解析により,本モデルが複数都心の形成を表現できることを示した.さらに,1,656地点・11.7万リンクからなる金沢都市雇用圏を対象とした,具体的な解析例を通じて,本モデルが複雑な道路ネットワークを含む計算を効率的に実施できることを明らかにした.

建設材料と構造
論文
  • 高橋 智彦, 金廣 琴乃, 土屋 智史, 石田 哲也
    2023 年79 巻9 号 論文ID: 22-00365
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,腐食環境にある既設構造物を対象として,今後の合理的な構造物の運用と維持管理を支援する解析的検討について取りまとめたものである.具体的には,供用開始から35年以上が経過した桟橋上部工を対象に,材料と構造を連成したマルチスケール統合解析を適用して,建設時からの塩害劣化進行を評価した.その際,過去に実施した劣化調査に加え,薄板モルタルによる飛来塩化物イオン量と構造物周辺の気象計測を追加実施して,概ね等価な長期評価用の作用履歴を推定した.それにより,現時点での変状を再現するとともに,複数のシナリオのもとでの塩害劣化に対する将来予測を実施した.さらに,耐荷力評価の一例として,材齢100年時に床版中央を静的に押抜く載荷解析を行い,塩害による材料劣化後の残存耐荷力評価を行った.

  • 橋本 雅行, 高橋 修, 小野 秀一
    2023 年79 巻9 号 論文ID: 23-00031
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

     橋面舗装の打換え工事において,舗装切削が既設の防水層や床版コンクリートに少なからずダメージを与える要因となっており,既設の防水層は,健全な状態であっても橋面舗装の基層と同時に再施工されるのが実状である.本研究ではこれらを課題として挙げ,防水層上の基層を薄層状態で残存させる切削工事を想定し,残存層を再利用することについて検討した.この残存層は,ひび割れなどの損傷が生じている可能性が高いものの,既設の防水層と床版コンクリートが健全であれば,新設時に近い状態まで不透水性を回復させることで,中間層として再利用できる可能性がある.このことから,残存層の不透水性の回復手法について検討し,有効性を評価した.その結果,アスファルト乳剤浸透工法は,残存層のひび割れを閉塞し,不透水性を回復できることを確認した.

土木技術とマネジメント
論文
  • 小濱 健吾, 山岸 拓歩, 橋詰 遼太, 田山 聡, 貝戸 清之
    2023 年79 巻9 号 論文ID: 22-00101
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

     降雨に伴う斜面災害に対する道路利用者の安全を確保するために,適切な通行規制の実施が重要となる.本研究では,通行規制の基準となる雨量指標値の設定のために提案されている通行規制基準値の設定方法の枠組みの高度化を図る.具体的に,斜面災害の発生予測モデルとしてハザードモデルを提案し,災害の発生時点を正確に把握できない不可観測性に対処する.また,通行規制に用いるべき雨量指標を土中水分量と降雨強度の観点から検討する.さらに,同モデルに適合したリスク管理指標として「見逃し件数」と「規制時間」を採用し,規制基準値設定モデルを定式化する.最後に,実在する高速道路区間における斜面災害履歴,巡回点検履歴,降雨履歴を用いた適用事例を通して,本研究で提案する方法論の有用性を検証する.

  • 高橋 浩司, 白川 龍生, 長沼 芳樹, 佐野 至徳
    2023 年79 巻9 号 論文ID: 22-00139
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

     積雪寒冷地での道路管理においては,既往の防雪対策を適切に評価することが重要である.防雪設備周辺の吹きだまり等を計測するには,近年活用事例が増えているUAV-SfM測量が効率的だが,積雪環境特有の条件から点群作成の可否や精度低下などの問題点が指摘されていた.そこで本研究では,雪面の雪質や下向き短波放射(明るさの基準),積雪表面の反射率に着目し,使用するカメラのセンサーサイズや撮影高度を変化させ,点群作成の可否とその精度を検証した.その結果,積雪環境下においても,点群が欠けることなく無雪期同様に作成できることを確認した.また,推定値と実測値の比較により,相対誤差の平均値−4%,標準偏差2%が得られた.このことから,吹きだまりを対象とした場合,実用上は問題ないことを明らかにした.

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