土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
79 巻, 11 号
通常号(11月公開)
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構造工学,地震工学,応用力学
論文
  • 栗原 幸也, 高橋 圭一, 相澤 敦武, 中村 直樹, 佐伯 昌之
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 22-00230
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     送電鉄塔の代表的な経年劣化事象の一つである基礎変位について,効率的かつ定量的な健全性評価を実施するため,傾斜計を用いたヘルスモニタリング手法の開発を進めている.現在,全国数十箇所の実設備にて傾斜角の変化量をモニタリングしているが,その閾値は設計用の有限要素解析コードを用いて暫定的に定めたものである.本論文では,現行の閾値の妥当性を確認するため,実規模の試験鉄塔を用いた強制基礎変位試験を行い,基礎変位と応力部材の傾斜変化の関係を確認した.また,基礎変位とひずみの関係を調べることで,傾斜変化の閾値における安全性を確認した.さらに,傾斜変化の最適な計測位置についても検討した.

  • 田村 洋, Aleena SALEEM
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 22-00261
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     繰返し塑性変形が発生した鋼材(母材)の表面では,複数の小さな表面亀裂が縞状に並んだ表面亀裂群がしばしば見受けられる.この表面亀裂群は,鋼材表面を起点とする極低サイクル疲労亀裂の発生源となり鋼部材の終局挙動に大きな影響を与えていると考えられる.本論文は,極低サイクル疲労亀裂の発生過程で現れる表面亀裂群の基本的な形成メカニズムを,分岐理論的な見地から考察するものである.具体的には,大振幅ひずみを付与する繰返し載荷実験と弾塑性解析の結果に基づき,載荷の過程で形成される微視的な表面高さ分布に関する空間的周期性の変化によってとらえ,表面不安定モードとしての塑性じわが表面亀裂群の形成に関与している可能性を検討している.

  • 松野 正見, 利根川 太郎, 奥井 義昭
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 22-00332
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     橋梁の伸縮装置は,道路利用者に直接影響を及ぼす重要な部材であるにも関わらず,橋梁の付属物としての位置づけであったためか,これまで構造の見直しがあまり行われていない.本研究は,鋼製フィンガージョイントの合理化構造を提案し,提案した構造のFEM解析を行うことで妥当性の確認を行った.次に,実物大の疲労試験を実施し,必要な疲労耐久性が確保できているか確認を行い,本構造における累積損傷を基にした疲労強度の一考察を行った.最後に,本伸縮装置の設計法を確立するために,応力の伝達機構の解明を行った.

  • 丸山 健司, 稲荷 優太郎, 長谷 俊彦, 神田 智之, 加藤 秀章
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 23-00099
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     橋梁の維持管理の観点から,橋梁用積層ゴム支承には長期の供用期間を確保するための高い耐久性が要求される.一方で,供用中のゴム支承の点検ではゴムのオゾン劣化に起因すると考えられる亀裂の発生事例が報告されている.この様な経年変化による損傷を受けたゴム支承の性能や残存耐力を把握することは,ゴム支承の維持管理において重要である.本研究では超高減衰ゴム支承(HDR-S)を対象として,有限要素解析(FEA)によるひずみ分布や,剥離面を有するモデルの解析結果を元にオゾン劣化による亀裂の進展範囲について検討した.さらにオゾン劣化による亀裂を模擬した供試体の破断特性を評価し,ゴム支承形状や亀裂深さと破断特性の関連性について考察した.

  • 加藤 宗, 久積 和正, 冨永 知徳, 楊 曜華, 長山 智則
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 23-00112
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     振動モード計測により構造物の健全性を評価する際,機械学習等の回帰手法が有効となるが,十分なデータ量の確保のため,数値解析により教師データを生成する場合がある.この場合,学習時のデータ条件への過学習により,実構造物に対する計測値を入力とした場合にモデルの推定精度が低下する恐れがある.本論文では,減肉に高感度な局部振動モード特性から部材板厚を推定する機械学習モデルの精度向上を目的として,学習時と推論時のモード特性の差異をFEAおよび計測試験により定量評価し教師データの拡張を行うモデル構築手法を提案する.数値解析に対する検証により,差異の量に応じたモデルの推定精度を明らかにしたうえで,部材計測値に提案手法を適用したところ,従来手法と比べ板厚推定誤差が40%以上低減されることが確認された.

  • 榎本 照久, 吉良 恭平, 塩井 章久, 山本 大吾, 岡本 泰直, 姫野 岳彦, 杉村 直人
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 23-00117
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     ゴム支承のオゾン劣化によって発生する亀裂の深さについて老化加速試験により検討した.亀裂深さの進展は,オゾン濃度が大きく伸長率が小さい時に速くなり,伸長率が12%以上における亀裂深さは,オゾン曝露時間,オゾン濃度,伸長率を組み合わせた1個のパラメータで相関できることが分かった.また,表面からの測定が容易な亀裂長さから,亀裂深さを推定するための相関関係を検討した.この結果,オゾン曝露時間が比較的短く亀裂長さが飽和する以前の段階では,亀裂の深さと長さの間にべき乗則が成り立つことを見出した.さらに,亀裂長さの成長が停止しても深さ方向への成長は継続することが明らかとなった.

  • 那須川 佳祐, 升井 尋斗, 車谷 麻緒
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 23-00190
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     本論文では,鉄筋コンクリートの詳細なメゾスケールモデルの作成から,非線形メゾスケール解析までを行える方法を開発し,鉄筋コンクリートはりのメゾスケールにおける3次元破壊挙動をできるかぎり忠実に再現することを目的とする.メゾスケールモデルの作成では,異形鉄筋の3次元形状に加えて,ボロノイ分割法を利用して粗骨材の3次元形状と粒度分布を再現する.モルタルと粗骨材で構成されるコンクリート相には,異種材料を表現可能な損傷モデルを適用し,コンクリートのメゾスケールにおけるひび割れ進展挙動を再現する.曲げ破壊型およびせん断破壊型の鉄筋コンクリートはりの4点曲げ実験と同様の数値実験を行い,メゾスケールにおける複雑な3次元破壊挙動を再現するとともに,シミュレーション結果と実験結果が定量的に一致することを示す.

土木計画学
論文
  • 宮﨑 友裕, 森田 哲夫, 木之下 僚太郎
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 22-00166
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,DMOによる観光満足度調査の際,来訪前の期待度を合わせて収集・分析することで,DMOが自地域の代表的な観光施設の評価・改善点の把握につなげることを試行した.調査では道の駅の各機能について,来訪者の事前の期待度と来訪時の満足度,総合満足度を各5段階で収集した.集計・分析の結果から,「道の駅」来訪者の期待度の強い項目として駐車場・トイレ・物産品販売を得た.道の駅総合満足度を目的変数とした重回帰分析による満足度モデルでは,駐車場の満足度と期待度の差分を有意な説明変数として得た.来訪者は駐車場に関して事前に道の駅の他の機能に比べ強く意識している可能性が示された.期待度が大きい項目では,事前の情報提供の改良等により総合満足度を向上できると考える.

  • 金森 紘代, 藤井 聡
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 22-00205
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     開始から70年以上が経過している地籍調査事業だが,その進捗率は52%にとどまり,残り138,361km2とされる地籍調査の全域完了に要する事業費や期間は明らかになっていない.本研究は,地籍調査の全域完了を見据えた事業計画策定の一助とするため,残る調査対象地域における事業費の試算を行うものである.試算手法としては,公開されているGISと固定資産に関するデータをもとに「地籍調査事業費積算基準書2022年版」に則り全国の残事業費を積算する.その結果,調査完了に必要な費用は約6.43兆円であり,現行の年間事業費ベースでは今後243年を要することが示された.そのうえで事業完了を現実のものとするための具体的な改善策について検討する.

  • 三村 泰広, 山岡 俊一, 富永 哲史
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 22-00334
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     近年,地方都市では財政上の課題を背景に道路整備や維持管理における住民の当事者意識の重要性が叫ばれている.当事者意識の醸成を図るに当たり,まずは道路に対する価値意識の理解が不可欠である.本研究は,特に住民に身近な生活道路に対する価値意識を把握しようとするものである.東海3県に居住する調査会社のモニター(n=1,039)を対象に,生活道路に求める価値を調査した.結果,地方都市に住む住民は,生活道路の価値として,安全・安心であること,高齢者や子供,障害者といった交通弱者の使いやすさ,通りやすさを重視していることを示した.また,これらの価値に対する意識の高さが,当該道路の維持管理における当事者意識の高さと相関するとはいえず,むしろ,行政主導で維持管理すべきとする意向の高さと相関していることを示した.

  • 羽佐田 紘之, 長谷川 大輔, 本間 裕大, 佐野 可寸志, 大口 敬
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 22-00347
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     目的地として訪問するだけの魅力を有する施設は,その整備効果を多角的に検証することが望まれている.本研究は,訪問に費やす移動費用を表すトラベルコストに基づいて,訪問移動が生じるのに必要な各施設の効用値や消費者余剰を算出し,目的地となる施設自体が有する価値を評価する手法を提案する.同時に,嗜好の異質性を考慮し,効用値が共通であるセグメントへの訪問者の分類も行う.ETC2.0データから構築した茨城県内の道の駅への訪問移動データへと適用し,訪問数は少ないものの有する価値の大きい道の駅の存在や,道の駅の魅力度向上に寄与する機能を明らかにした.提案手法は,inverse shortest paths problemモデルにより代替施設との競合関係の考慮が可能な新たなるトラベルコスト法と位置付けられる.

  • 河野 達仁, 嶌 万希音, 祢津 知広, 水谷 大二郎
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 23-00030
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     各自治体には財政制約があり,社会基盤維持補修費が高くなると,他の支出を圧迫する影響や追加的財政収入により生じる死荷重といった公的資金の限界費用(MCF)を考慮する必要がある.本研究では,内生的に変化するMCFを考慮して橋梁の補修施策の動学的最適化を行う.数値分析の結果,1)MCFが低い状況では予防保全の割合が高く,MCFが大きいと事後保全のみの施策が最適となる.2)時間割引率が高いと事後保全のみが最適であり,時間割引率が低いとMCFが低いと予防保全と事後保全の組合せが最適である.3)劣化した橋梁が多い場合,早期補修を行う必要があり,将来世代の効用が現世代よりも高くなる.4)ライフサイクルコスト最小化施策はMCF>1の状況の施策と異なり厚生損失を生むことを示す.

  • 瀬木 俊輔
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 23-00140
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,建設産業の役割を明示的に考慮した動学的確率的一般均衡モデルの定式化を行い,国土の災害リスクと,建設産業の最適な規模(資本ストックや雇用者数)の関係を分析する.分析の結果,以下の知見が得られる.長期にわたり災害に見舞われていない平常時において,災害リスクの存在が建設産業の最適規模を増やすかどうかは,家計のリスク回避性向に依存する.リスク回避性向が高い場合には,平常時の建設産業の最適規模は増え,リスク回避性向が低い場合には,最適規模は減る.日本においては,災害保険のリスクプレミアムの高さを考慮すると,災害リスクの存在は,平常時における建設産業の最適規模を増やすと考えられる.災害リスクの向上が顕在化したときには,可能な限り速やかに,建設産業の規模を最適な水準まで拡大すべきである.

建設材料と構造
論文
  • 染谷 望, 望月 紀保, 大谷 俊介, 曽根 幸宏
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 23-00036
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     電気防食状態にあるコンクリート中の鋼材の腐食速度を管理指標とするためには,電気防食状態の腐食速度評価手法の確立が必要である.筆者らは電気防食状態にある湿潤環境におけるコンクリート中の鋼材の腐食速度評価手法として,RAP法(Reciprocating Anode Polarization Curve Measurement Method)を提案しているが,大気環境でのRAP法の評価精度は未検討であった.本研究ではモルタル試験体を用いた室内試験より,RAP法の大気環境における評価精度を検討した.RAP法は,自然腐食状態および電気防食状態ともに,既往研究で用いられるターフェル外挿法と比較して精度が向上することを確認した.

  • 大原 涼平, 下村 匠
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 23-00062
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     シラン系表面含浸材を用いたひび割れ補修による水分浸透抑制効果を把握するため,シラン系表面含浸材を塗布したひび割れを有する供試体を屋外暴露し,質量の経時変化を測定した.その結果,ひび割れを有する供試体にシラン系表面含浸材を塗布した場合,ひび割れによる吸水の促進を抑制することが明らかとなった.また,温湿度の変動・降雨・ひび割れの影響を考慮したコンクリートの水分移動解析を用いた検討より,シラン系表面含浸材を用いたひび割れ補修による水分浸透抑制効果は含浸部の吸水の抑制と乾燥・吸湿時の水分移動の低減であることを明らかにした.

  • 丸山 記美雄, 上野 千草
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 23-00136
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,アスファルト混合物が水の存在や凍結融解が作用することで受ける影響を実験に基づいて定量的に評価することにある.室内試験によって,アスファルト混合物は水が浸透し凍結融解作用を受けることで,骨材飛散やひび割れに対する抵抗性が低下することを確認した.さらに,その影響程度を定量的に評価した結果,凍結融解作用が及ぼす影響は水分の含浸のみが及ぼす影響と比べても大きなものであると評価された.また,凍結融解作用はアスファルト混合物の空隙を増加させるが,アスファルトモルタル内部に元々存在する空隙を拡大させるだけでなく,骨材とアスファルトモルタルの境界面に沿って新たに空隙を形成しながら進行することや,混合物の骨材粒度や使用するアスファルトの種類によって凍結融解抵抗性が異なるなどの知見も得られた.

土木技術とマネジメント
報告
環境と資源
論文
  • 毛利 光男, 馬場 直紀, 青木 陽士, 平澤 卓也
    2023 年79 巻11 号 論文ID: 23-00045
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,実機による枯葉剤ダイオキシン汚染土壌の実証試験において土壌洗浄の浄化性能を定量的に評価したものである.サイクロンによるダイオキシン除去率は67~87%(平均79.2%)であったが,後段のフローテーションによって除去率は91~97%(平均94.0%)へ大きく向上した.土壌洗浄によって16,000pg-TEQ/gまでの汚染土壌から住宅地(300),緑地・公園(600),商業地・工業地(1,200)のいずれかの基準を満足する浄化土を実際に産出できることを実証した.回収される浄化産物(浄化土+粗粒分)の割合は元土壌の59~74%(平均65%),濃縮残渣の割合は26~41%(平均35%)であり十分な減容化効果が認められた.濃縮残渣の濃縮倍率は1.3~3.8の範囲にあり平均は2.4であった.

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