土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
79 巻, 13 号
特集号(地震工学)
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特集号(地震工学)論文
  • 坂井 公俊
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13001
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     全国の地盤調査結果をもとに,地表面地震動の特性を効率的かつ適切に表現可能な標準地盤データに関する検討を行った.この時には,膨大な地盤調査の結果を用いて,地盤の固有周期Tgと地盤上限震度Kfを指標としたクラスタリングにより各地盤を分類するとともに,各分類を代表する地盤情報を抽出する.その結果,今回抽出した50地点の地盤データを用いて地表面地震動を算定することで,全国の地盤データを網羅的に用いることで得られる地表面地震動の確率特性を良好に表現できることを確認した.さらに,今回構築した全国の地盤応答解析データを活用することで,新たな解析モデル構築を行わずに地表面地震動を効率的かつ適切に評価可能であることも確認した.

  • 幸左 賢二, 服部 匡洋, 本橋 英樹, 原田 隆典, 佐々木 達生, 渡邊 学歩
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13002
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     阿蘇大橋の落橋原因については地震動,斜面崩壊,地盤変位などの様々な要因が考えられる.ここでは有力な原因の一つである,阿蘇大橋付近で発生した一次崩壊土,二次崩壊土が阿蘇大橋に及ぼす影響について評価した.LPおよびドロ-ン計測データを用いた地震前後の地形変化分析によると,一次崩壊土および二次崩壊土により単位幅あたり510m2(8m幅では61200kN)の土砂がアーチ付近の下流側に作用したと考えられる.また簡易式およびS-Hモデルを用いた数値解析によると,これらの土砂の移動による衝突力により,アーチ橋の端柱が終局に至り,その結果アーチ橋梁全体が崩壊に至る可能性が指摘できる.

  • 土井 達也, 豊岡 亮洋, 斉藤 雅充, 和田 一範, 名波 健吾, 福本 守
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13003
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     都市部に多く存在するロッキング橋脚を有する鉄道橋梁の地震時の落橋防止は喫緊の課題である.また,桁の応答変位を制御し,復旧性能を向上させることも重要である.しかし,これらの2つを達成するためには制振装置と落橋防止装置の2つを設置する必要があり,桁座のスペースの制約上,困難な場合がある.そこで著者らは,狭隘な桁座に設置可能で,制震機能と落橋防止機能を兼用できるデバイスを開発した.本研究では,まず要素実験により鋼棒群の非線形特性を確認した.次に,実験結果に基づいて非線形特性を設定し,実際の橋梁モデルを用いて制震機能,落橋防止機能が発揮されることを確認するとともに,提案装置の桁および桁座への取付け部の構造について検討した.

  • 和田 一範, 坂井 公俊
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13004
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     橋りょう・高架橋群の地震時連成挙動を解析的に評価する方法としては,3次元骨組モデルが有効であり,特定の構造物群を対象に評価した事例は多数存在する.ただし,設計実務で延長の長い橋りょう・高架橋群の地震時連成挙動を評価するためには,解析モデルの自由度にも配慮する必要がある.そこで,橋りょう・高架橋群の地震時連成挙動を簡易かつ適切に表現できるモデル化方法を検討した.具体的には,通常の耐震設計で用いられる設計振動単位ごとの質点モデルを基に,それを連ねた簡易なモデルを構築し,周波数応答関数や応答波形について3次元骨組モデルと比較した.その結果,線形挙動の範囲では,支承部での鉛直軸回りの回転挙動を表現することで,柱やく体を質点に集約した簡易なモデルでも地震時連成挙動を概ね表現できることがわかった.

  • 穂積 克樹, 酒井 久和, 梶谷 義雄
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13005
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     集落へのアクセス手段が断たれる孤立化を防ぐ斜面崩壊対策は重要である.本研究では斜面状況を記録した防災カルテ・安定度調査表などのデータを整備し,共分散構造分析,ロジスティック回帰分析,SMOTEによる斜面崩壊確率評価式を提案した.既往災害におけるテストデータに適用した結果,複数のデータベースや分析手法を組み合わせると,法面・自然斜面の崩壊的中率が向上することが確認できた.次に和歌山県における南海トラフ想定地震時について法面・自然斜面の崩壊確率より,緊急輸送道路の途絶確率を推定した結果,沿岸部・内陸部の北部で途絶する確率が高い値を示した.さらに「田辺市龍神行政局」と災害時に備えた「備蓄基地(災害救助物資保管場所)」の2地点を結ぶ2ルートを対象に,優先的に対策すべきルート・対策箇所を示した.

  • 千田 知弘, 村上 海翔, 寺澤 貴裕, 植田 健介, 佐藤 京
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13006
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     積層されたゴムと鋼板が接着剤で一体化される構造を有するゴム製支承の設計に際しては,ゴムの破断より先に接着剥離を生じさせないことが極めて重要であり,道路橋支承便覧では,JIS K 6256-2:2013を用い,90°剥離強さが7N/mm以上であることを確認するよう求めている.一方,水平変位が作用している状況下における実際のゴム製支承の内部応力状態は未だ明らかになっておらず,上記試験法を適用しての評価に,潜在的な課題が残されている現状にある.

     そこで本論文では,試設計した4種類のゴム製支承,90°剥離強さ試験,一面せん断試験を対象に,超弾性パラメータと接着層を考慮したFEM解析を実施し,各試験体に生じる内部の応力状態を明らかにした上で比較評価を行い,より良い接着力評価方法を検討した結果を報告する.

  • 吉原 隆, 海野 寿康, 松丸 貴樹, 仙頭 紀明
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13007
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     本研究では,外力によって容易に粒子破砕を生じる火山灰質粗粒土を対象に,要素力学試験(圧密・排水単調せん断試験,等方圧密試験)および振動台を用いた模型盛土斜面の崩壊実験を実施することで,排水単調せん断および等方圧密による粒子破砕挙動と,模型盛土斜面の崩壊による粒子破砕挙動を粒度試験により把握した.各種粒度試験結果から,要素力学試験における排水単調せん断過程および崩壊後の模型盛土斜面のすべり面における粒子破砕挙動を定性的に比較した結果,排水単調せん断過程および崩壊後の模型盛土斜面のすべり面における各種粒径区分含有率の増加倍率はともに中砂分,細砂分および細粒分で大きく,特に細砂分において高い増加倍率を示し,同様の傾向を示すことが明らかになった.

  • 佐々木 達生, 木村 幸治, 後川 徳哉, 物袋 幸雄, 湯原 誠, 豊茂 雅也, 筒井 啓太, 冨田 二郎, 松本 裕介
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13008
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     橋の建設が計画される位置に過去の断層活動による破砕帯が存在する.断層活動による地震が発生した場合,断層変位による基礎の永久変位が予測されるが,断層変位が生じたとしても橋としての機能を維持するために,橋として甚大な被害を防ぐことが要求される.本検討は,近傍に断層は存在するものの,位置は不明瞭とされる箇所に計画される橋を対象として,地震動と重畳して作用する断層変位の影響を評価した橋梁形式の選定を行うことを目的としている.静的漸増解析による断層変位に対する変位追随性を把握した上で,断層情報に基づいて生成した断層変位を含んだ入力地震動を用いた時刻歴応答解析を実施した.この結果,断層変位に対する変位追随性に優れる橋梁形式が,必ずしも重畳する地震動に対しても構造的に有利とならないことが明らかとなった.

  • 上田 恭平, 芹川 由布子, 井上 和真
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13009
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     2011年東北地方太平洋沖地震や2016年熊本地震では埋立地等において地盤の液状化が発生し,多くの直接基礎建物が沈下や傾斜といった被害を受けた.本研究では,隣接建物の影響は考慮せずに検討対象を1棟の直接基礎建物に限定し,自然地盤が本質的に有する土質物性の空間的不均質性を考慮したうえで,液状化による建物被害の発生メカニズムについて数値解析的に検討した.その結果,液状化に伴う直接基礎建物の沈下・傾斜評価において地盤物性の空間的不均質性の影響が無視できず,基盤面や地表面に傾斜がなく,地震動が正負対称であっても,振動後の過剰間隙水圧の消散過程が地点により異なるために建物の傾斜被害が誘発されることが明らかとなった.

  • 八上 晃, 鍬田 泰子, 大室 秀樹
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13010
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     液状化時の埋設管の浮上りは,液状化による浮力がトリガーになり,管周辺の地盤が管底部へ回り込むことによって浮上が継続するメカニズムであることが模型実験や解析を用いた既往研究から明らかにされている.数値解析技術が進展しているものの,地盤の回り込み現象を精度良く評価できる方法は限られている.また,既往の模型実験は,管断面に対して水平加振した場合がほとんどである.本研究は,液状化時に地盤が管下へ回り込むことによる浮上りへの影響を評価するため,管模型の埋設条件を同じにして管断面と管軸面のそれぞれの方向に水平加振実験を行い,加振方向による埋設管の浮上りの差異を明らかにした.液面揺動の影響を受けない場合には,管断面に水平加振した時の浮上り量よりも管軸方向に水平加振した時の浮上り量は0.5~0.87倍小さくなった.

  • 川田 草貴, 西岡 英俊
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13011
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     直接基礎には,死荷重等の鉛直荷重による常時の作用に加えて,地震時には水平方向慣性力の組み合わせによって基礎底面に作用する荷重に偏心・傾斜が生じる.この場合の極限鉛直支持力は偏心・傾斜が無い場合と比べて低下することが分かっており,いくつかの評価方法が提案されているが,地震時の載荷経路においても既存の評価方法が適用できるのかについては検討の余地がある.また水平方向の載荷が鉛直方向の変位に与える影響については詳しく分かっておらず,定量的な評価方法の開発と検証が必要である.そこで本研究では砂地盤上の直接基礎橋脚模型を対象に,地震時の載荷経路を模擬した水平交番載荷実験を行った.その結果から,いくつかある地震時の極限支持力の評価方法や,水平載荷と残留沈下量の関係を決めるパラメータなどを調べた.

  • 寺迫 太陽, 兵動 太一, 掛川 智仁, ハザリカ へマンタ , 前田 翼
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13012
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     地震応答解析等に用いられるせん断弾性係数を間隙比や有効拘束圧の関数で評価する式はさまざま提案されているが粒径の揃った砂や粘性土のみが多く,実地盤の粒度は広く分布しており,幅広い細粒分含有率を有する土に対する提案はまだ少ない.本研究では,2018年スラウェシ島地震で液状化したと推察される非塑性細粒分を多く含む現地土の細粒分含有率を変化(0〜75%)させた供試体を作製してベンダーエレメント試験を行い,せん断弾性係数を算出し,評価を試みた.その結果,通常の間隙比ではなく,細粒分の一部が粗粒分の骨格構造に寄与すると考える等価骨格間隙比を用い,寄与率を骨格構造が変化する細粒分含有率ごとによって場合分けを行い,決定する事で幅広い細粒分含有率の土に対してせん断弾性係数の評価式の提案を試みた.

  • 三神 厚
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13013
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     本研究は,強震計が設置され地震応答が得られることを前提とした構造物について,しばしば観測される中小地震による構造物の線形応答記録の機械学習から,大地震時の構造物の損傷検知を即時に行うことを目指したものである.トリリニアモデルにより非線形を考慮した構造物モデルに,中小地震による構造物の地震応答記録を自己符号化器(オートエンコーダ)に学習させウェイトを確定したネットワークに対し,大地震を想定した構造物の非線形応答記録を幾つか適用したところ,得られる異常度指標としての再構成誤差の値は,構造物の損傷レベルに応じて大きくなった.これにより,機械学習を用いて大地震による構造物の損傷を即時に検知することの可能性が見出された.

  • 飛田 哲男, 山本 航
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13014
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     本研究では,畳込みニューラルネットワーク(CNN)による深層学習を用いて微動スペクトルを分類する手法を提案する.さらに,この手法により地動観測点の特定を試みる.まず数値解析により,複数の1次元モデル地盤に対しランダム波を与え,得られる地表面加速度スペクトルをカラースペクトル画像化して深層学習を行った.その結果,99%以上の精度で地盤モデルを特定できた.次に,8地点のK-NET観測点で得られた50gal以下の地震動による地震動H/Vスペクトル比を用いて同様に分類を試みたところ,95%以上の精度で観測地点を特定できた.誤分類した地震動は,震源距離が大きいなど特殊な地震動であった.さらに,学習済みのCNNに対しK-NET観測点で観測した常時微動H/Vスペクトル比を用いたところ,精度は平均50%程度であったが,観測地点ごとにばらつく結果となった.

  • 佐々木 義志, 永井 秀樹, 堤内 隆広, 三橋 祐太
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13015
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     本研究では地中に埋設された屈曲部を有するRC製ボックスカルバートを対象に大規模モデルを作成し,片方の耐震継手が屈曲部に近接するように非対称に設置された場合および荷重の載荷方向を変えた場合における挙動の評価を試みた.検討の結果,耐震継手が非対称である場合には,屈曲部に近接させた耐震継手に変形が集中することでRCカルバート本体に生じる損傷が抑制されることを確認した.また,荷重の載荷方向に依らず屈曲部付近には大きな損傷は生じない一方,載荷方向に直交する一般部の壁面において最も厳しい評価となることを確認した.

  • 小野寺 周, 坂井 公俊, 豊岡 亮洋
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13016
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     内陸活断層による地震では,強震動による慣性力とともに,地表に現れる断層変位が同時に構造物に作用する場合がある.しかしながら,慣性力と地表断層変位を同時に受ける構造物の地震時挙動には未解明な部分が多い.そこで本検討では,鋼製のラーメン模型に対して慣性力と断層変位を同時に作用させた振動台実験を実施し,同時作用下における構造物の挙動を把握した.さらに,著者らがこれまで検討してきた慣性力と地表断層変位の影響を同時に考慮可能な構造物の挙動評価手法を用いて,実験の再現解析を実施した.その結果,地表断層変位が構造物の動的応答に及ぼす影響は無視できない可能性があること,上述した評価手法によって慣性力と断層変位が同時に作用した構造物の地震応答値を適切に算定可能であることを明らかにした.

  • 高木 翔太, 佐藤 武斗, 松丸 貴樹, 冨田 佳孝, 濱田 吉貞, 塩谷 敦
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13017
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     既設鉄道盛土の耐震診断で用いる土の強度に関する設計用値(以下,設計用値)は,現地の盛土より採取した不攪乱試料もしくは密度検層等に基づく再構成試料を使った三軸試験により設定することを基本としている.現状の設計用値は,軌道から離れた代表点で採取した試料の調査結果に基づき設定し,列車の繰返し荷重に伴う盛土の密実化等の既設盛土の不均一性を考慮できない.

     本研究では,耐震診断手法の高度化を行うことを目的として,表面波探査により面的に評価したせん断波速度分布および不飽和状態での強度特性を考慮する設計用値の評価方法について検討した.その結果,表面波探査を用いることで盛土内部の密度分布を推定でき,不飽和土の強度特性を考慮した盛土の耐震性評価を行うことで,従来よりも合理的な耐震診断が可能となることを確認した.

  • 寺澤 貴裕, 佐藤 京, 畠山 乃, 小室 雅人
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13018
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     本研究では,地震により基部に損傷が生じたRC橋脚の復旧対策として,アラミド繊維シートによる巻き立て補修が行われた場合の復旧後のRC橋脚の耐震性能に関する評価を目的として,RC橋脚模型試験体に対して正負交番載荷実験を実施した.ここでは,地震による被災を想定した損傷として,限界状態2に相当する損傷を正負交番載荷によって与え,その後にひび割れ注入およびアラミド繊維シートによる巻き立てを施した後に,再び正負交番載荷を行うことで,補修後のRC橋脚の耐震性能に関する評価を行った.その結果,本試験体の仕様では,被災損傷後の巻き立てによる補修においても,RC橋脚の耐震補強における照査基準となるH14道示の耐震性能が確保できることを確認した.

  • 池澤 雄之介, 榎本 忠夫, 安原 一哉, 半根 隆巳, 小暮 直親, 田中 富智夫, 北相模 剛
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13019
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     近年,老朽化した橋梁や未修繕の橋梁が増加傾向にあり,地震時に大きな被害を受けることが懸念されている.本研究では,桁下空間をEPSにより中詰めすることで橋梁としての機能は一部(もしくは全て)制限されるものの老朽化した橋梁を補強することができるフォームサポート工法に着目し,その耐震性能を評価するために振動台模型実験を行った.その結果,単径間・多径間橋梁の模型に対してEPSを用いた補強を行うことで,地震時における背面盛土の残留沈下量,橋台の側方変位量が抑制されることが明らかとなった.しかし,多径間橋梁模型では,橋台に作用する土圧の一部が中詰め材料を介して橋脚にも作用した可能性があり,補強により橋脚の地震時側方変位量の増大が生じた.

  • 籠嶋 彩音, 劉 ウェン, 丸山 喜久, 堀江 啓
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13020
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     2016年4月熊本地震では,熊本県熊本地方を震源とするMw6.2の地震が発生し,その約16時間後に同地域を震源とするMw7.0の地震が発生した.本研究では,地震による建物の被害状況を効率的にかつ安全に把握する方法として,航空レーザ測量データを深層学習することによって建物被害検出モデルの構築を試みた.本震前後に収集した航空レーザ測量データに対し,深層学習のアルゴリズムの一つである畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を適用し,ネットワーク構成を変えながら最良のモデルの検討を行った.その結果,正答率が90%を超えるモデルを構築することができた.

  • 渡辺 高志, 有賀 義明, 市山 誠, 西本 安志
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13021
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     沿岸域に立地する構造物は,施設の重要度に応じて大地震発生時に生じる津波に対する安全性の確保を図る必要がある.また,構造物が津波衝突を直接受けることで,壁体などの構造部材に損壊を生じ,施設機能の復旧が困難となることを防ぐことが重要である.

     津波荷重は衝突時の慣性力と流れから受ける抗力の両方を含むが,衝撃的な波圧には慣性力の影響が大きいため,衝突時の角度や構造物の側面勾配によってこれを往なすことで大きな緩衝効果を得ることが出来る.著者らはこの緩衝効果の確認のために津波模型実験を実施しており,現象の理解と相補的な妥当性確認の観点から実験の再現解析を行った.津波衝突により発生する波圧に対し,構造物の側面勾配がなす効果をSPH法による数値解析で評価し,解析と実験の結果を比較して現象について考察した.

  • 北島 佑, 庄司 学
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13022
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     2016年熊本地震では橋梁―添架管路―地盤系に被害が生じ,これらの連成応答の被害メカニズムの解明が求められている.そこで,益城町に位置する代表的な橋梁―添架管路―地盤系に本震相当の強震動を作用させ連成応答の特性を明らかにした.その結果,1) 添架管路の応答は橋梁の中央支間部で抑制されるが橋台・橋脚近傍では増大すること,2) 橋台近傍の添架管路の被災には橋台背面盛土と橋桁・橋台・橋脚との間の異なる連成振動による橋軸方向の軸応力の発生が寄与している可能性があること,3) 橋脚近傍の添架管路は橋桁が橋脚・杭基礎に比べて相対的に大きく振動することにより応答が増大すること,が明らかとなった.

  • 奈良 樹, 後藤 浩之
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13023
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     地震波形の類似度評価は地震工学および地震学における重要な要素の一つである.近年,地震波形の類似度評価の新たな指標としてワッサースタイン計量を用いることが提案されている.ある問題においてワッサースタイン計量が有効であることは示されているが,地震工学の分野において波形の類似度評価の指標としてワッサースタイン計量を適用した研究はなされていない.本研究では,センブランス解析に対してワッサースタイン計量を適用し,平均二乗誤差を用いる旧来の手法との比較を行った.旧来の手法では,多峰性の問題からグリッドサーチなどの計算コストの大きい大域的探索が必要であったが,ワッサースタイン計量を評価関数として用いた場合では,計算コストの小さい局所探索のみでも大域的最適解への収束性が一定程度あることが示された.

  • 藤岡 健祐, 廣江 亜紀子, 大住 道生
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13024
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     道路橋示方書では,L2地震動を考慮する設計状況において,適切に地震応答特性が評価できる場合には,免震橋のように複数種類の部材に非線形化を考慮してよいとしている.ただし,具体な条件等は示されておらず,それらの明確化に向けては,各種の不確実性が橋の応答に与える影響を明らかにする必要がある.本稿では,支承部に免震支承又は制震ダンパーを用いた2パターンの構造系の動的解析により,支承部の二次剛性が部材のばらつきと地震応答との関係に及ぼす影響について考察した.その結果,支承部の二次剛性が免震支承と比して小さい場合,免震橋に比べ応答評価の信頼性が低下する傾向があることを示した.

  • 勝目 進之介, 藤倉 修一, 大藪 宏文, Visal THAY
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13025
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     本研究で対象とするシングル球面すべり支承は,凹型球面上をスライダーが摩擦の影響を受けながら滑る免震支承である.すべり系支承は,速度・温度・面圧依存性を有しているが,摩擦係数の大きさによって,これらの摩擦特性が異なる.動的挙動を把握するためには,すべり面における摩擦係数の違いによる振動応答特性を明らかにするとともに,それぞれの摩擦特性を適切に評価する必要がある.そこで,本研究では摩擦係数の異なる2種類のスライダーを用いて振動台実験を行った.その結果,低摩擦型は中摩擦型の摩擦係数の概ね1/2となり,摩擦の影響を受けて相対変位は大きかった.さらに,摩擦係数の各種依存性を考慮した再現解析を行い,速度依存性を考慮することで,考慮しない場合と比べて,実験結果を良く再現することができた.

  • 千田 知弘, 中沢 正利, 若槻 直暉, 馬越 一也, 松井 友希
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13026
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     著者らは,2016年4月に発生した熊本地震を機に,地盤変動に起因するアバットの滑動によって,橋梁にどのような損傷が生じ得るのかをアーチ橋を中心にFEMで評価してきたが,最近,トラス橋にも甚大な損傷を生じさせ得ることが分かってきた.

     そこで本研究では,ワーレントラス橋を対象に,地震時の地盤変動によって,下弦材に橋軸方向,橋軸直角方向,斜め方向のそれぞれの方向に強制変位が生じた場合,どのような損傷が生じ得るのか,構造の安定性が確保されるのかを,弾塑性静的解析および地震応答解析により検討した.弾塑性静的解析では,最大でも0.22m程度の強制変位で構造不安定を生じ,特に橋軸方向への変位が弱点となること,および下横構の大変形が主要因となることを示した.また,地震応答解析でも同様の挙動と傾向が見られた.

  • 畠山 琴羽, 植村 佳大, 高橋 良和
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13027
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     2022年3月の福島県沖地震において,東北新幹線の2層式RCラーメン高架橋の中層梁損傷が広範囲で確認された.一般的に,2層式高架橋における中層梁損傷は,柱部の損傷低減に繋がるとされているが,当該地震で確認された中層梁の損傷モードはせん断破壊型であり,理想とするエネルギー吸収性能が発揮されていないといえる.また,中層梁損傷が高架橋の耐震性能に与える影響についての検討は過去に実施されているが,中層梁損傷が地震後の列車走行性に与える影響についての検討事例は見当たらない.そこで本研究では,構造物の耐震性能と社会へ提供されるサービス水準の定量的関係に関する検討の一例として,中層梁の損傷モードの違いに着目した数値解析を実施し,構造物の耐震性能と地震後の列車走行性に与える影響の定量化に向けた検証プロセスを示した.

  • 小林 巧, 河原井 耕介, 大住 道生
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13028
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     超過作用下で機能が損なわれない又は早期復旧できる道路橋を実現するために崩壊シナリオデザイン設計法が提案されており,それを実現する手段として耐力階層化鉄筋を用いたRC橋脚(以下,耐力階層化橋脚)が検討されている.その一環として,現行基準に基づくRC橋脚や耐力階層化橋脚の材料特性及び地盤特性の値をばらつかせた動的解析(計1,200ケース)を行い,それらがシナリオに及ぼす影響を検討した.その結果,現行のRC橋脚はレベル2地震動に対して9割以上の信頼性で橋脚基部が塑性化する,狙い通りのシナリオになるよう設計されていることを確認した.一方,超過地震動に対して,耐力階層化を考慮しなかった設計では多くが橋脚の限界状態3を超過するが,耐力階層化橋脚では9割以上の信頼性で倒壊を回避するシナリオへと誘導できることが示された.

  • 石井 洋輔, 八木 悟, 山田 雅行, 坂口 剛, 中尾 吉宏
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13029
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     盛土構造物の地震時挙動を精度良く評価するためには,対象の振動特性や構成する材料の動的変形特性を詳細に把握する必要がある.しかし,盛土構造物の地震観測事例は少なく,実地震時の盛土構造物の固有周期や減衰特性,さらには構成する材料の動的変形特性を検証する必要がある.本研究は,平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震で震度6強程度の記録が観測された河川堤防を対象に,盛土構造物の工学的基盤と盛土天端の観測記録を用いて部分空間法に基づくシステム同定を実施し,盛土構造物の固有周期と減衰特性の経時的な変化を評価することで盛土材料の動的変形特性を推定した.推定結果は,地盤調査より評価される動的変形特性と概ね一致した.

  • 石井 洋輔, 中尾 吉宏
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13030
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     道路橋示方書・同解説には,既往実験結果等に基づいて設計に用いる減衰定数が示されており,実橋の地震観測記録を用いた減衰特性の算出結果は直接反映されていない.現行基準で設計された道路橋の減衰特性を検証するためには,十分な知見が蓄積されておらず,実測記録を踏まえて減衰特性などの設定値の検証を進めていく必要がある.本研究は,橋をケーススタディとして,橋全体系で多点観測された記録を用い,部分空間法に基づくシステム同定により橋の固有振動数と減衰特性を算出した.本研究で実施したシステム同定より,橋全体系を構成する要素である地盤や支承部の固有周期や減衰特性を算出できる可能性が示唆された.

  • 石井 洋輔, 山田 雅行, 荒木 正之, 中尾 吉宏
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13031
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     道路橋は,全体系の複雑な挙動を観測することが困難であり,地震時挙動観測の高度化が課題であった.本研究は,道路橋の全体系の地震時挙動を解明することを目的として,MEMS式加速度センサーを道路橋の複数個所に設置するとともに,多点の地震時挙動の観測に適した無線通信を用いて構築し,橋全体系の複雑な挙動を観測する強震モニタリングシステムを開発した.観測システムは,多数のセンサーを扱うことに適した通信システムやリレー伝送を構築することで,屋外で多数の観測記録を無線で回収できる準リアルタイムの橋の多点連続観測を可能にした.強震モニタリングシステムで観測された記録は,波形解析にも十分使用できることが確認され,橋全体系の複雑な挙動を捉えることができた.

  • 曽我 恭匡, 服部 匡洋, 佐々木 達生, 鬼木 浩二
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13032
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     筆者らは,フーチングレス構造の杭基礎一体型鋼管集成橋脚に関して,実験及び解析の両面で耐震性能を評価し,また,柱部と杭基礎を一体形式として「はり-ばね」で表現したフレームモデルを用いる設計手法を提案している.一方,道路橋基礎の分野では,以前より地盤種別や地盤調査方法の違いによる地盤物性値のばらつきを設計法に考慮するための研究が進められてきており,地盤物性値のばらつきが杭基礎を対象とした動的解析の結果に与える影響が確認されている.

     そこで,本稿では地盤抵抗物性値の不確実性が杭基礎一体型鋼管集成橋脚の設計に及ぼす影響について,従来のRC橋脚や鋼製橋脚との違いによる比較,評価を行った.その結果,杭基礎一体型鋼管集成橋脚の地盤物性値のばらつきの影響度は従来の橋脚形式と同程度であることが明らかとなった.

  • 三善 佑斗, 上田 知弥, 津田葉 涼太, 植村 佳大, 高橋 良和
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13033
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     大型構造物の性能を評価する際,実験・解析を融合させたリアルタイムハイブリッドシミュレーション(RTHS)が有効だと考えられる.一方,大型構造物を対象としたRTHSでは,解析モデルの大規模化が避けられず,計算負荷増加に伴ってリアルタイムで実施すべき実験への影響が懸念される.そこで本研究では,解析部分の計算負荷増加がRTHSの結果(変位,速度,加速度)に与える影響について検討した.その結果,解析部分の計算負荷の増加に伴って,実験部分の速度・加速度の再現性が低下する可能性を示した.またこの傾向は実験部分における応答速度レベルが大きいほど顕著であり,大型構造物を対象としたRTHSを実施する際には注意が必要であることを示唆した.

  • 西野 風雅, 伊野 将矢, 島田 貴文, 西岡 英俊
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13034
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     開削トンネルの耐震設計では構造物と地盤の相互作用を適切に考慮する必要がある.本研究では,地震時の相互作用によって生じる函体表面力(せん断力,垂直力,およびその偏心量)に函体と周辺地盤の剛性比が及ぼす影響に着目し,砂地盤に似た非線形特性を示すアルミ棒積層体内に2方向ロードセルを有した函体模型を埋設し,函体が支持層に着底した条件でのせん断土槽実験を実施した.その結果,支持層に着底された条件では函体と地盤の剛性比がせん断力に及ぼす影響は小さいことが確認された.一方,剛性比は垂直力の偏心量に大きく影響し,相対的に函体剛性が大きい場合には下床版の偏心量が大きくなり,函体剛性が小さい場合には,主に側壁の垂直力がせん断変形を相殺する方向への偏心量に影響することがわかった.

  • 羽場 一基, 澤田 昌孝, 渡辺 和明, 堀 宗朗
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13035
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
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     断層変位対策の第一歩はその発生位置を予測することであるが,主断層の活動に伴って副次的に形成される副断層の発生位置を推定することは難しい.本論文では,大規模FEMを用いた地震動解析により浅部の岩盤の応力を評価し,その岩盤応力に基づき副断層の発生位置を推定した.まず,FEMを用いた運動学的な地震動解析における面震源の設定方法を定式化し,副断層の評価で重要な断層近傍の応答の評価を可能にした.その上で,2014年長野県北部の地震を対象とした地震動解析を実施し,岩盤の応力及び強度と地表断層変位の関係を整理した.その結果,応力と強度の比として定義される局所安全係数を用いることで,各震源モデルに対して副断層が発生する可能性がある領域を推定できることが分かった.

  • 大越 靖広, 庄司 学
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13036
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     2016年熊本地震のように複数回の大きな地震動を経験した場合,先行の地震荷重に対しては十分な耐力を有しており損傷を制御できても,後続の地震荷重に対してどの程度の耐震性能が残存しているか,すなわち,これから起こるであろう地震に対する残存耐震性能については,先行した地震による載荷履歴と残存性能の関係が十分に明らかになっていない.本研究では,橋梁の単柱式RC橋脚に着目して,先行した地震による載荷履歴が,道路橋示方書で示されている限界状態のどの範囲にあるかをパラメータとして後続の地震荷重に対する正負交番載荷実験を行い,RC橋脚の残存耐震性能について検討を行った.

  • 名波 健吾, 和田 一範, 坂井 公俊
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13037
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     鉄道では,2018年大阪府北部地震等において,地震後の被害状況の把握やその後の復旧作業等に時間を要し,早期運転再開の観点で課題が浮き彫りになった.今後,地震時の復旧性に関する構造物の性能評価がより重要になってくると考えられる.そこで本検討では,構造種別,損傷レベルに応じた地震時の復旧日数を把握するための基礎的な検討として,復旧日数の統一的な評価を試みた.具体的には,まず過去の地震における復旧事例に基づいて体系的な整理を行った.さらに既往の事例では数に限りがあるため,構造種別,損傷レベルに応じて復旧に必要な工種を整理するとともに,各作業に要する日数を積算した.その結果,積算に基づく復旧日数は実事例の復旧日数と概ね整合していることを確認した.

特集号(地震工学)報告
  • 栗田 哲史
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13038
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     表層地盤の強震時地盤増幅特性において,上下動については水平動ほどに関心を持たれない傾向にある.これは,多くの構造物の設計において水平動を主として考慮してきたことによると思われる.しかし,近年PGAの大きい地震記録が計測されてきており,上下動についても十分に考慮すべき状況が増えてくるものと考えられる.そこで,本研究では2018年北海道胆振東部地震における強震動記録の上下動に着目し,表層地盤の増幅特性について検討した.同地震の震源近傍に位置するKiK-net観測点を対象として,強震動記録と弱震動記録との比較により,上下動の表層地盤増幅特性についてP波群とS波群とで異なることを示した.特に,強震時にその傾向が顕著に表れることが分かった.

  • 橋本 隆雄, 恩田 敦史, 小山 悠, 池本 敏和, 石作 克也, 松尾 拓, 前田 和徳
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13039
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     横浜市山手・打越地区では慶応3(1867)年に外国人居留地として開放されて以来,道路の開削や宅地造成に伴って各所に大小の崖地が生じ,石材の長手と小口が交互に配置されるブラフ擁壁が整備されるようになった.このブラフ擁壁は,今もなお山手・打越地区に数多く現存し主要な景観要素になっている.しかし,横浜市中区打越地区の住宅地では,石材の老朽化が進行し豪雨によりブラフ擁壁の崩壊が生じた.そこで本研究では,今後の首都圏直下地震や南海トラフ巨大地震,ゲリラ豪雨等に備え,山手・打越地区のブラフ擁壁の現状を把握するために変状調査及び模型振動台実験を行った.その結果,勾配が急な擁壁が非常に危険であり,その対策工法としてアンカーによる補強対策が有効であることが明らかとなった.

  • 川崎 佑磨, 井上 和真, 大川原 大智, 小西 優真, 山元 沙貴, 木暮 悠暁, 浅見 健斗
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13040
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     本稿は,安価かつ小型のIoTセンサを活用した実橋梁の構造ヘルスモニタリングに関する取り組みを報告するものである.対象橋梁は,RC床版と5本の主桁を有する2径間連続桁橋であり,供用後18年が経過している.IoTセンサは,シングルボードコンピュータであるRaspberry Piにカメラモジュールやひずみゲージを接続し,USBスティック型データ通信端末によってインターネット回線に接続し,遠隔操作を可能としたものである.また,このIoTセンサは太陽光発電によって稼働するため,電源敷設工事や重機などを用いずに人力のみでIoTセンサの設置・稼働が可能である.このIoTセンサを活用して,RC床版下面のひび割れと積層ゴム支承の支承変位の長期計測を開始した.IoTセンサの設置から1か月間で得られた画像およびひずみの計測データについて報告する.

  • 江口 拓生, 後藤 浩之, 栗間 淳, Anirban CHAKRABORTY
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13041
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     2022年3月16日に発生した福島県沖の地震により,相馬市付近では相馬港や松川浦北側の地域を中心として被害が生じた.本稿では,被害が生じた地域の地盤震動特性を調査することを目的として,臨時余震観測を実施した.相馬市付近の複数地点のサイト増幅特性を,臨時余震観測点とサイト増幅特性が既知の強震観測点の同時記録のスペクトル比を取ることによって評価した.その結果,相馬市付近の広い範囲において,サイト増幅特性のピーク周波数が0.6Hz付近に存在することが確認され,周囲と比べて被害や液状化の程度が大きかった地域では,ピーク振幅が比較的大きいことも確認された.また,ピーク振幅の値が,表層地盤のS波インピーダンスと強く関係している可能性が示唆された.

  • 藤岡 光, 藤倉 修一, Visal THAY , 運上 茂樹, 渡瀬 博
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13042
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,地震により被災した橋脚の復旧性能向上を目指し,プレストレスにより残留変位を低減し,断面コア部に鋼管を配置することにより損傷部を速やかに補修可能とするPC橋脚構造を提案する.提案構造に対して正負交番載荷実験を行い,基本的な耐震性能や復旧性能を検証した.実験結果から,鋼管を有するPC橋脚では,復旧性能が向上する程の残留変位低減効果は確認されなかった.載荷終了後,鋼管に破断や座屈等の損傷は確認されず,残留変位を低減できれば地震後速やかに損傷部を補修できる可能性を示した.また,RC部材の履歴特性としてTakedaモデルによるM-φ関係を用いた実験の再現解析を行い,緊張材の軸力変動による影響を考慮できない問題点はあるが,実験結果をある程度再現できた.

特集号(地震工学)ノート
  • 梶 貴紀, 橋本 国太郎
    2023 年 79 巻 13 号 論文ID: 22-13043
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル 認証あり

     既往の研究では,地震などによって繰返し載荷を受ける高力ボルト摩擦接合継手に関して,載荷変位の違いや表面処理の違いによる挙動の違いは示されているが,載荷速度がすべり挙動へ及ぼす影響はよく分かっていない.そこで本研究では,その影響を明確にすることを目的とし実験供試体や表面処理は同一条件の下,1Hz,0.05Hz,0.001Hzを1周期とした3ケースの載荷速度を設定し単調引張載荷および繰返し載荷実験を行った.実験の結果,すべり荷重やすべり係数に速度依存性が見られ,載荷速度が大きいと,すべり荷重もすべりや摩擦係数も大きくなる傾向となったが,ある速度以上となると若干の低下が見られた.また,10サイクル以上の載荷を与え続けると,どのケースにおいても減少率は小さくなり,すべり荷重やすべり係数が収束していくことが分かった.

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