土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
80 巻, 4 号
通常号(4月公開)
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
河川・海岸・海洋工学と水文学
論文
  • 羽田野 袈裟義, 荒尾 慎司, 永野 博之
    2024 年 80 巻 4 号 論文ID: 23-00165
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/20
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     堰を有する河川の治水計画や管理では堰水理の多面的な検討が必要である.しかし既往研究のほとんどは流量評価に終始し,治水上の関心事である堰上流水位を見積もる研究はごく少数である.またある流量に対して堰上流水位を所定の値に保つ堰高を見積もる試みは皆無といえる.本研究では,形状が単純で定式化が見込まれる刃形堰上の潜り越流について,著者らの以前の研究成果を組み合わせ,関与する水理量である越流量,堰上流水深,堰高のそれぞれを堰下流水位とそれ自体以外の上記水理量2個の合計3個から計算する式を導いた.得られた上記水理量の計算式は既往の系統的な実験の結果を良好に再現した.

  • 道奥 康治
    2024 年 80 巻 4 号 論文ID: 23-00218
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル 認証あり

     石積み堰の貯留(堰上げ)・流量制御機能,流体力,減勢効果,水質浄化特性を検討した.石積み堰では透過・伏没・越流などの流況に応じ6種類のRegimeが出現する.石積み堰と同一諸元の不透過堰を参照ケースとして不定流解析を実施し,増水・減水時やピーク時における石積み堰の水位・流量制御機能を評価した.次に,構造物に作用する流体力各成分を求め,石礫の内部抗力が生成される石積み堰の運動量欠損が不透過堰とは異なる点を示した.堰の全区間におけるエネギー収支は石積み堰と不透過堰で大差はないが,内部抗力が生成される区間では 2 つの堰でかなり異なることを明らかにした.さらに,礫間接触酸化の浄化実験に関する知見を援用して石積み堰の汚濁物質除去率を推算し水理量や構造諸元と自浄機能との関係を求めた.

  • 間瀬 肇, 渡辺 健, 渡辺 啓生, 佐藤 兼太, 井口 真生子, 原 知聡, 武田 将英, 金 洙列
    2024 年 80 巻 4 号 論文ID: 23-00260
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究は波浪予報値の的中率の定義を明確にし,また予報値の誤差を定量化して,海上作業可否の前日判断を行うための方法を検討した.そして,秋田港と常陸那珂港を対象として,前日判断の具体な方法を示した.その結果,最も簡単で容易な判断法は,対象地点における観測値の予報値に対する誤差を調べ,誤差の2乗平均平方根値(RMS)を用い,予報値にRMSを加えた値が作業限界波高より小さいか否かにより判断する方法であった.また,防波堤設計等において従来より用いられる安全率を用いる方法を検討した結果,本研究で提案した確率的評価によって求めた安全裕度は安全率法による予報値の割増し量(2割)とほぼ一致することを示し,安全率法を次善の方法として提案した.

地圏工学
論文
  • 高柳 剛, 馬目 凌, 藤原 将真, 佐藤 亮太, 内藤 直人
    2024 年 80 巻 4 号 論文ID: 23-00226
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル 認証あり

     積雪地帯の斜面では,融雪期に融雪水や季節外れの降雨を誘因として土砂災害が生じることがある.本研究では,このような融雪災害の危険度をより的確に評価する観点から,斜面上の積雪が斜面安定性に及ぼす影響を検討した.具体的には,積雪の透水特性,強度特性などを室内試験により把握し,その上で,積雪を伴う高さ1mの盛土模型を対象とした散水模型実験を実施し,盛土の水分応答および変状を観察した.さらに,この積雪を伴う盛土模型を対象として,有限要素法による飽和・不飽和浸透流解析および斜面安定性解析(せん断応力低減法)を実施した.その結果,積雪は融雪水の発生源となる一方で降雨の盛土内への浸透を多少抑制する効果を発揮し,また積雪は盛土のり面の表層を拘束して斜面安定性を向上させる効果を発揮する場合があることを確認した.

報告
  • 佐々木 隆光, 末政 直晃, 伊藤 和也, 島田 俊介
    2024 年 80 巻 4 号 論文ID: 23-00268
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,非アルカリ系溶液型注入材による改良土の三軸圧縮試験において,ひずみ速度と背圧が強度および変形特性に与える影響を把握することを目的とし,排水・非排水条件にて試験を実施した.その結果,三軸圧縮試験では一軸圧縮試験における破壊ひずみ付近にて降伏点が見られ,その後ひずみ硬化挙動を示した.この降伏点は排水条件に関わらず,ひずみ速度が高いものほど大きくなるが,最大軸差応力はひずみ速度が低いものほど大きくなるひずみ速度依存性を示した.また,非排水条件下において降伏点は背圧の増加に伴い低くなるが,最大軸差応力は背圧の増加に伴い発生する負圧が高くなり,これが骨格を拘束することによって大きくなることが示された.

土木計画学
論文
  • 松場 拓海, 武田 陸, 宗 健, 谷口 守
    2024 年 80 巻 4 号 論文ID: 23-00087
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル 認証あり

     COVID-19流行以降,テレワークの進展などにより人口の地方分散が期待されている.しかし,実態としては大都市圏郊外への分散がより顕著である.実効力のある地方居住施策を行うためには,流行下で発生したこれら地方分散や郊外分散につながる転居意向(以下,「分散型」転居意向)の実態を定量的に捉えることが重要である.本研究では,COVID-19流行下の三大都市圏における「分散型」転居意向の発生要因について分析を行い,さらに地方への転居意向と郊外への転居意向の発生要因を定量的に比較した.その結果,テレワークの実施頻度が高いほど「分散型」転居意向が発生しやすい傾向にあるが,その行き先としては地方に比べ郊外を志向する傾向にあることがわかり,テレワークを軸とした地方居住施策の課題を新たに明らかにした.

  • 吉田 護, 太田 貴大, 神谷 大介
    2024 年 80 巻 4 号 論文ID: 23-00089
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,国土に占める災害想定区域(洪水浸水想定区域,土砂災害警戒区域,津波浸水想定区域)における土地利用の推移過程の特徴を1976年から2016年までの土地利用細分メッシュデータを用いて明らかにした.結果として,災害想定区域では「建物」用地は国土全体まではいかないまでも増加傾向にある一方で,「田」は国土全体と同水準で減少傾向にあったことが明らかとなった.また,自然的・農業的土地利用から「建物」用地への推移過程については,洪水浸水想定区域では「田」から,土砂災害警戒区域では「田」と「森林」から,津波浸水想定区域では「田」や「畑」からの推移が主であり,災害想定区域の「建物」用地の拡大を防ぐため,災害想定区域に応じた自然的・農業的土地利用を優遇する施策の必要性が示唆された.

  • 山邊 矢嗣, 石橋 知也, 豊丹生 拓真
    2024 年 80 巻 4 号 論文ID: 23-00095
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,選定基準6を含む重要文化的景観(以下,重文景)をケーススタディの対象に〈本質的価値〉の特徴と保護規制の課題を明らかにすることを目的とし,重文景の保存活用に関わる計画書等を用いた分析ならびに所管自治体担当者へのヒアリングをおこなった.その結果,〈本質的価値〉の記述内容,〈重要な構成要素〉の種類と特定要件,保存活用の方針,景観計画で定められた景観形成基準を一覧できる表を作成し,参考資料としての有用性を示した.重文景の〈本質的価値〉を,生活生業との関わりが見かけ上確認できない要素についても継続・変化を含めた履歴の総体として捉えること等を指摘した.保護規制における定性的な記述による方針・基準は関係者間で解釈・認識の相違が発生する等の課題を明らかにした上で,その対応策を検討した.

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