遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
22 巻, 4 号
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症例報告
  • 名嘉山 一郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年22 巻4 号 p. 97-100
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル オープンアクセス

     男性乳癌の診療にあたっては遺伝的背景を念頭に置いた適切な情報提供が不可欠だが,十分な検討をされることはいまだ少ない.今回,生殖細胞系列BRCA2に同一病的バリアントを認めた男性乳癌2例を経験した.男性乳癌は女性と比較すると発症年齢が高く,ホルモン受容体陽性・浸潤性乳管癌かつ進行癌であることが多く,この2例でも同様であった.また,ともに乳癌や膵臓癌という遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer;HBOC)関連癌の家族歴があった.このバリアントは,日本人を含む東アジア人集団での創始者バリアントであることが示唆されている比較的頻度の高いものであった.一方,血縁者とくに娘たちへのHBOCに関する情報提供,遺伝カウンセリング等の適切な対応を進める必要があるが,結果判明後1年を経過しても血縁者の遺伝学的フォローが開始されておらず,男性乳癌における遺伝情報の共有の困難さが浮き彫りとなった.

  • 一木 愛, 野村 秀高, 箕浦 祐子, 幅野 愛理, 金子 景香, 植木 有紗, 中島 健, 金尾 祐之
    原稿種別: 症例報告
    2023 年22 巻4 号 p. 101-105
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル オープンアクセス

     Lynch症候群(Lynch syndrome;LS)は,常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の形式をとり,適切な診断とサーベイランスにより,発端者ないし血縁者のがんの早期発見・治療を実現する可能性がある.とくに生殖年齢のLS患者において,子宮内膜癌の早期発見・治療は妊孕性温存可否にかかわる重要な問題である.今回,不妊治療中に30代前半で子宮内膜癌が発見され,MSH2の病的バリアントを認めLSと診断された2例を経験した.両者ともに早期癌であったが,子宮全摘,術後化学療法を要する段階であった.当該患者の血縁者が当院でLS関連腫瘍の治療をし,濃厚な家族歴にもかかわらずLSの診断に至っていなかったために,当該患者の適切な診断・サーベイランスの機会が得られず早期発見が困難となった可能性が否定できない.子宮内膜癌のより早期な診断にて妊孕性温存治療実施の可能性もあった.発端者の適切な診断はその血縁者にも重大な影響を与え得ることから,遺伝学的な診断に基づいた正しい医療介入が望まれる.

  • 勝部 暢介, 佐治 重衡, 岡野 舞子, 石野 淳, 高橋 昌一, 後藤 政広, 牛尼 美年子, 菅野 康吉, 吉田 輝彦, 野水 整
    原稿種別: 臨床経験
    2023 年22 巻4 号 p. 106-111
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル オープンアクセス

     血管肉腫は希少がんの1つであり,おもに成人の皮膚,軟部組織,乳房,骨,肝臓,脾臓などに,一部は下大静脈や肺動脈,大動脈に発生することが知られている.海外では家系内に血管肉腫が多発する例がいくつか報告されているが,本邦では家族性あるいは遺伝性血管肉腫に関する報告はみられない.今回,同胞で血管肉腫を発症した1家系を経験した.発端者は40歳時に心臓血管肉腫と診断された女性である.その後,発端者の兄が50歳時に肝血管肉腫と診断された.海外の報告では,POT1遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントが血管肉腫の発症に関与することが示唆されている.今回は,本症例に対する遺伝学的検査の内容に文献的考察を含めて報告する.

  • 井上 慎吾, 鈴木 哲也, 浅川 真巳, 芦沢 直樹, 中田 晴夏, 中山 裕子, 矢ケ崎 英晃, 石黒 浩毅, 斎藤 亮, 平山 和義, ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年22 巻4 号 p. 112-116
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル オープンアクセス

     切除不能進行膵臓癌に対する生殖細胞系列におけるBRCA1/2の遺伝学的検査は,PARP(poly ADP-ribose polymerase)阻害薬の適否を決めるコンパニオン診断として認可を得たが,遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome ; HBOC)の確定診断にもなることが十分に認識されていない.BRCA2の病的バリアントを有する切除不能進行膵臓癌2例の遺伝カウンセリング(genetic counseling ; GC)を経験した.症例1は,60歳代女性の発端者で検査前後2回のGCが契機で,血縁者に前立腺癌が発見された.症例2は検査結果判明後に,60歳代男性発端者の娘と息子がGC目的で来談した.初めて遺伝性腫瘍と知り動揺をみせ,その後来談していない.GCは検査前から必要で,血縁者内でHBOCの認識を共有すべきである.

臨床経験
編集後記
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