生体医工学
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Annual57 巻, Abstract 号
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  • 村田 将春
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S225_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    胎児心拍数陣痛図(CTG)は分娩中に生じうる児の低酸素やアシドーシスをいち早く発見する「分娩監視装置」として今日の周産期医療で広く用いられている。しかしそのCTG波形の判定は一定の基準があるものの医師や助産師の目視と経験に基づいてなされており、検者間誤差が大きくや偽陽性率が高いことが明らかになっている。これまでにもCTG波形の判定にコンピュータによる解析を用いた試みはなされているものの満足する成果は得られていない。筆者らはCTG波形の判定にAIを導入することを着想し、東京工科大学、九州大学、熊本大学と共同研究を開始した。本研究では6つの分娩施設から38,072例のデータを収集し、出生前のCTG波形と出生時の臍帯動脈血pHおよびAPGRスコアを解析して、CTG波形から児の低酸素やアシドーシスを予測する人工知能(AI)の樹立をめざしている。本研究が実用化すると、より安全な産科医療が実現するだけでなく、医療費のコスト削減や医療現場の負担軽減も可能となる。従来の医療従事者による判定との成績比較など、本研究の現状および課題について報告する。

  • 柴田 千尋
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S225_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    子宮内の胎児は様々な原因により低酸素状態やアシドーシスに陥ることがある.それらを早期発見し低酸素脳症や脳性麻痺のリスクを低減させるため,利用されている指標に胎児心拍数陣痛図がある.CTG は周産期医療において胎児の状態予測に広く用いられているが,目視により予測を行うため検者の技量などに左右されやすい.その結果,偽陽性率は高くなり不要な帝王切開や機械分娩の増加につながっていると考えられる.本研究では胎児心拍数陣痛図判読の補助技術として近年発展著しい人工知能データを利用し,正常か異常か胎児の状態を波形から予測する.結果の評価については,人工知能技術による予測精度と医師の予測精度の比較によって行い,典型症例の有効性検証も合わせて行う.人工知能技術として画像認識に有効な NIN を教師あり手法で,また AutoEncoder を異常検知手法で利用することとし,訓練データには典型症例を,テストデータには訓練データと被りがない典型症例と医師との比較用のランダムピックデータを用意する.実験結果の評価を ROC カーブと AUC にて行い報告する.

  • 亀田 弘之, 相田 紗織
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S226_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    人工知能の研究は、コンピュータの黎明期まで遡ることができ、また、コンピュータの発展状況に強く関連している。本講演ではまず、コンピュータ発展の歴史を概観するとともに、1970年代の人工知能ブームと現在の人工知能ブームの本質的差異について述べ、現在のAI技術の社会的意義や今後の動向について論じる。さらには、最先端のAI技術応用の1例として、創薬プロセスの高度化を目標とする「iPS由来がん幹細胞自動検出システム」の研究・開発を紹介する。この研究は筆者らが従事しているものであり、まだ発展途上のシステムではあるが、システム開発を通じて様々な技術的課題が見えてきているので、それも合わせて報告する。最後に、AI、機械学習、データサイエンスが産科医療へどのように貢献できるのかについても言及したい。

  • 寺田 隆哉, 井口 普敬, 高関 二三男, 松下 聖一, 高松 一史, 竹内 敏夫
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S226_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    【背景】カスタムメイド人工股関節カップの開発に取り組んでいる.生体内での長期安定性の面から材料は純チタンに着目した.純チタンは加工が困難だが,積層造形の条件最適化により複雑な形状も可能となった.一方,積層造形した純チタンの力学的安全性の評価データはこれまでほとんど存在しなかったため,力学的試験を試みた.【方法】EOS社M280を用いてに純チタンの丸棒材を積層造形し切削加工して引張試験片を作成した.圧延材も同様に試験片を作成,引張試験を行った.【結果】積層材は引張強度が605MPaと圧延材の436MPaと比較して約38%強度が高くなったが,のびは積層6.4mmに対し圧延8.7mmと約26%悪くなった.【考察】強度と伸びの差は,レーザーの加熱溶融凝固過程での結晶構造に原因があると思われる.カップの力学的安全性では疲労試験が重要だ,引張試験結果から両者に差はないと予想される.現在試験中だが,両者に差がない途中経過データが得られている.【結論】積層造形による純チタン材は人工股関節カップの用途としての力学的安全性に問題はなかった.本発表では他の取組みについても報告する.

  • 井田 直貴, 住倉 博仁, 太田 圭, 野村 岳志, 本間 章彦
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S227_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    体外循環を管理する上で,循環流量低下の原因などを検知するために,回路内の圧力測定が有効となる.現在の圧力測定方法は,体外を循環する血液から直接測定する観血式測定法であるが,測定部分での血栓形成や,誤操作による空気引き込みなどの問題点があげられる.本研究では,回路で使用されるチューブが回路内の圧力により変形していると仮定し,この変形量から,チューブ内の圧力を非観血的に推定する方法の開発を目的とした.体外循環時の圧力管理は,ELSOが定めるガイドラインによると,送血圧は400mmHg以下,脱血圧は-300mmHg以上となることを推奨している.流量低下とともに,圧力がこの範囲を超えると,回路内塞栓などの異常が疑われる.今回,回路内が異常圧力の場合において,非観血的に回路内の圧力を推定可能か検討した.実験は,3/8inch人工心肺用チューブの外周部を密閉し,チューブ内の圧力P1(-600 ~ 700mmHg)に対する密閉内の圧力P2を計測した(図a).その結果,P1=400mmHg以上でも線形性が保持された(図b).陰圧時も同様に,-300mmHg以下で線形性を示した.このことから,提案した測定方法を用いて,回路内の異常圧力が検知可能であることが示唆された.

  • 井上 尚紀, 田村 安孝, 柳田 裕隆
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S227_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    本研究は、局所的に強力な超音波を照射し熱を発生させ、細胞を死滅させるHIFUと呼ばれる治療法で使用されている超音波プローブの開発を行っている。現在前立腺がん治療用に用いられているHIFU用超音波プローブは単一の焦点位置に音波が集束するため、医師が機械的に操作を行う必要がある。この操作は時間がかかり、患者と医師ともに負担が大きい。そこで我々は電子的な操作で焦点位置の変更を行うHIFUシステムを考案し、評価までを行っている。考案されたシステムは、任意の点に焦点を持つフレネルパターンを計算、電子制御しそのパターン通りにリニアアレイを駆動させるものである。このシステムの導入により、焦点位置の素早い変更が可能となっている。本研究では音圧分布測定と熱量評価実験の2つの実験を行い、フレネルゾーンプレートによる超音波の集束を任意の位置にコントロールできるかの確認と、発熱に必要な出力パワーを評価した。結果、フレネルゾーンプレートの駆動パターンを変えることによって超音波の集束点を任意の空間に発生させることができた。また、本実験で用いたリニアアレイを使っての発熱には現在の2倍程度の出力パワーが必要であることも分かった。

  • 長島 優, 徳重 真一, 岩田 淳, 戸田 達史
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S228_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    [背景]パーキンソン病(PD)は振戦・筋強剛・無動・姿勢反射障害を運動症状とする神経変性疾患であり、根治療法のない難病である。PDの歩行障害は、前傾前屈姿勢で小刻み歩行となる特徴があり、特に歩き始めの第一歩が出にくいすくみ足は、転倒・骨折を通じて患者を要介護状態に陥れる大きな臨床的問題である。またすくみ足は薬物療法に反応せず、治療困難である。[目的]奇異性歩行とは、進行方向の床面上の目印の存在によってすくみ足が軽減し、歩行障害が改善するPD患者の特徴である。本研究では、奇異性歩行を誘発してPD患者の歩行障害を改善する眼鏡型ウェアラブル装置を開発した。[方法]本装置は、搭載するデプスカメラから得られる三次元奥行き情報を用いて周囲の状況を臨機応変に認識し、奇異性歩行を誘発する視覚的目印を、透過型スマートグラスを用いて患者の視界に重ね書き表示する。これにより、患者の動きに追随してリアルタイムに視覚的目印を更新し、奇異性歩行を誘発できる。[結果]本装置は、段差や凹凸のある現実的な住環境でPD患者の歩行障害を改善できる。本装置を実際のPD患者へ装着し、歩行中の視覚的目印提示の概念実証に成功した。

  • 中島 義和, Jiang Jue, 相馬 芳男
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S228_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    近年,レーザ光によるプロジェクションマッピングの適用範囲は拡大しており,手術支援システムにも応用されつつある.しかしながら,従来のシステムは,臓器の位置姿勢移動や変形を補償しておらず,臨床導入にまで至っていない.我々は,レーザ光プロジェクタと高速CCDカメラを用いて脳の術中変形を計測するシステムを開発してきた.今回,そのシステムにプロジェクションマッピング機能を実装したので,報告する.臓器変形は Phase shift 法で行った.レーザ光プロジェクタから正弦波パターンを照射した.位相を変えて複数パターンを照射して,高速CCDカメラで計測した.複数の位相パターンより脳表面のレーザ光反射率を補償して脳表面形状を再構築し,また同時に計測した脳表面のテクスチャ画像を形状に付与して脳形状モデルを構築した.脳モデルから血管パターンを抽出し,対応づけを行い,脳の3次元的変形量を求めた.求めた変形量に従い,計算機内の術情報モデルを変形させ,レーザ光プロジェクタで投影した.脳に外力を与えて変形させ,またそのときの変形量を提案するシステムで計測し,変形推定誤差を算出した.推定誤差は 1.1 mm 以下であった.

  • 神澤 祐輔, 荘 敬介, 鷲尾 利克, 矢野 智之, 加藤 峰士, 荒船 龍彦
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S229_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    LILJ(Laser Induced Liquid Jet)は液体ジェットを高速に射出し,腫瘍破砕と細血管の温存を両立する治療デバイスである. LILJを形成外科領域に応用するため,微小バブルを巻き込んだバブル型LILJを開発し,破砕力が向上することを確認した.しかし,微小バブルを加えたことによる破砕力向上の詳細なメカニズムは十分明らかではない.本研究ではジェットにより組織内に生成される液だまり現象の内部を解析することにより,破砕力向上の機序を解析することを目的とする.液だまり内部は直接計測することはできないが,破砕組織と液体が混濁状態であるため,破砕組織が多ければ液だまり内の粘性は高くなると考えられる.そこで,粘性力の高さを破砕効果と仮定し,液体ジェットが対象組織に侵入して液だまりを形成する一部分を定常流モデル化し,液だまり内部を計測と数値シミュレーションにより解析を行った.破砕領域が大きい時,予測した粘性力,圧力は高くなる事を確認した.これより,破砕領域内部を定量的に評価できる可能性が示唆された.

  • 鷲尾 利克, 鈴木 志歩, 佐野 史弥, 黒田 輝, 荒船 龍彦, 松前 光紀
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S229_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    レーザーを生体組織に照射し、生体組織に吸収された光で組織温度を上げる温熱療法は、対象となる組織の性状とレーザーとの相互作用による温度上昇を精緻に把握することが、安全・確実な治療に必要となる。本研究では、数値計算を用いて、レーザー照射とそれに伴う温熱現象のシミュレーションを行った。可能な限り解剖学的構造を再現することを考慮し、100万元程度の数値計算を簡便に行うことを目指した。光と生体の相互作用は高散乱・低吸収体である生体組織においては、光拡散方程式で定式化される。また、温熱と生体の相互作用は、生体伝熱方程式で定式化される。物理的な現象は、光と生体の相互作用では、ピコ秒での現象であるのに対し、温熱と生体の相互作用では、早くてもミリ秒と考えられる。2つには109ほどの違いがあり、光に関する現象を定常とし当該の数値計算を行った。温熱計算の各ステップの最初に光拡散に関する計算を行った。そこで求めた光フルエンス率と、光学特性値の吸収係数との積を温熱計算の熱源とした。計算では文献より求めた光、温熱特性値それぞれについて、温度依存性を想定しその有無による温熱域の比較を行った。

  • 稲田 シュンコ
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S230_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    アトピー性皮膚炎や乾癬のような難治性皮膚疾患の治療には光線療法が用いられている。しかし、現在の光線治療器は次のような欠点がある。疾患部位のみを照射できない。照射時に皮膚が非常に熱くなる。効果的なピーク波長域は明らかでない。この問題を克服するためUV-LED(365 nm)光線治療器を開発した。システムは低温照射や自由自在に疾患部位のみをピンポイント照射などの機能を持たせた。従来のランプ式光線治療器を用いて、同照射面積時の消費電力、照射強度均一性などの特性、マウスによる被検体への体温および皮膚表面温度上昇の評価、病原細胞のアポトーシス(細胞死)誘導を比較した。その結果、いずれもUV-LED光線治療器が優れた特性を示した。特筆すべき結果は、ランプ式光線治療器で照射したマウスの体温は40.5℃、皮膚表面温度は60℃に達して、熱射病に陥り死亡した。一方、UV-LED光線治療器で照射したマウスは死亡せずに体温および皮膚表面温度は一定に安定した。アポトーシス誘導は同等のアポトーシス割合を示した。病原細胞に対して波長365 nmのUV-LEDは充分に効果があることを明らかになり、安全な光線治療が可能であることを示した。

  • 欅田 正樹, 原田 敦, 山中 雄介, 水野 善之
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S230_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    ドライバーの疾患による事故を防ぐには、心電信号といった生体情報の取得が有用となる。そこで非拘束で心電信号を取得可能な容量結合型心電センサの開発を行っている。同方式のセンサにおける課題として、静電気帯電時に顕著に現れるノイズが挙げられる。そこで本研究では、静電気由来の上記ノイズの発生メカニズムを明らかにする。まずシート電極とステアリング電極との電位差(差動出力信号)、各電極とグラウンドシートとの電位差(各電極の出力信号)を検出する回路を作成し、被験者を帯電させた際の各信号を解析した。結果、各電極の出力信号から、グラウンドシートと人体間の結合容量の変動に伴うノイズ、各電極と人体間の結合容量の変動に伴うノイズが確認された。そして差動出力後もノイズが残存した要因として、前者ノイズがコモンモードノイズであり、不平衡により残存したこと、後者ノイズがノーマルモードノイズであり、大腿、及び手の帯電量、動きの違いにより残存したことが示唆された。また上記3つのノイズ要因をできるだけ排除可能な構成として、ステアリング上に2つの電極を配置し、左右の手から信号を検出した結果、ノイズが50%以上減衰した。

  • 竹内 伸行, 松本 昌尚
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S231_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    我々は知覚痛覚定量分析装置(PainVision PS-2100,ニプロ)によりレーザー照射が知覚閾値(最小感知電流値)と痛覚閾値(最小痛み電流値)に与える影響を検討しているが、分析装置の電極脱着を伴うため、接触抵抗の変化や受容器とのズレ等が生じ結果に影響することが推察された。本研究は電極脱着に伴う最小感知電流値と最小痛み電流値のtest-retest信頼性を明らかにすることを目的とし、本庄総合病院倫理委員会の承認を得て実施した。対象は健常成人10人の一側上肢で検者は1人とした。分析装置の電極を前腕掌側に貼付しマーキングした。最小感知電流値と最小痛み電流値を計測した後、電極を取外し、マーキングに合わせ再度貼付して両電流値を再測定した。本定量分析装置は3回測定しその平均値を採用するため級内相関係数(1,3)(ICC1,3)にて検者内信頼性を検討した。結果、最小感知電流値はtest8.7±3.0μA、retest9.0±3.3μAでICC(1,3)は0.953(p<0.001)、最小痛み電流値はtest57.1±30.0μA、retest66.0±38.8μAでICC(1,3)は0.929(p<0.001)であった。知覚痛覚定量分析装置は電極を脱着しても、マーキングして位置を合わせることで高い測定信頼性を保つことができると示唆された。

  • 小川 良磨, Ramadhan BAIDILLAH Marlin, 川嶋 大介, 武居 昌宏
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S231_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    【背景】リンパ浮腫の診断基準は、ステージ0からステージIIIまでの臨床病期分類がある。リンパ浮腫のステージ0では、間質液にアルブミンのよどみが生じることで、血漿中水分が間質液へ移動し、リンパ浮腫のステージIが発生する。リンパ浮腫治療には、リンパ浮腫の早期発見が重要であるが、現存の機器では検出困難である。【目的】本研究目的は、我々が開発したリンパ浮腫検出装置(以下EIT測定装置)の前実験として通常浮腫実験を行い、既存の測定機器を用いて測定効果の評価を行う。【方法】EIT測定装置の測定精度評価のため、日常生活でできる浮腫の測定を行った。通常状態と様々な姿勢を維持した後,軽い運動後のそれぞれにおいて,四肢をInbodyや周囲径による測定,及びEIT測定を行った.【結果】EIT測定結果より、通常状態と、長時間の姿勢維持、運動後状態の測定を行った結果、下腿部に水分量の変化が確認され、他の測定機器との相関性も確認できた。

  • 比嘉 昌, 速水 隆太郎
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S232_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    力の計測装置としては、歪みゲージを用いたロードセルが広く使われている。その他、静電容量変化を利用した薄型センサや、圧抵抗効果を利用した圧センサなども市販されている。本研究では、磁力によるHall 効果を利用したHall Effect Sensorを使用し、3次元の力を計測するシステムの構築を目的とする。3次元デジタルHall Effect Sensorと永久磁石のペアを適切な位置に配置し、3ペア方向を変えて配置した3軸力センサを設計した。また地磁気の除去のため、磁石から離れた位置に、リファレンスセンサとしてサ単体で配置した。それぞれのセンサからの入力信号の数による測定精度の違いについて検討した内容について報告する。

  • 森脇 健司, 藤崎 和弘, 杉浦 寿史, 笹川 和彦
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S232_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    カテーテルデバイスの力学特性は治療成績に密接に影響するため,客観指標としてデバイスと血管の間の力計測は重要であるが,多点での実計測はコストやサイズの観点から難しく,力分布はもっぱら計算シミュレーションにより予測されている.一方,我々はフレキシブルな圧力センサシートを開発しており,これまでにデバイスと血管モデルの間にシートを挿入することで圧力分布が定量計測できることを示した.本研究では,センサシートがあらかじめ包埋された血管モデルを作製し,カテーテルシミュレータとしての応用可能性を検討した.センサシートはパタニングした2枚の銅-ポリイミド積層フィルムで感圧体を挟むことで作製した.図の通りの工程で,内径3 mmのセンサ内蔵中空ブロックを作製した.内部でバルーンを拡張すると,どの測定点もほぼ同じ圧力を検出し,バルーン圧の増加に従いセンサ検出圧も増加した.一方,エレメントと呼ばれる楔がついたバルーンを拡張すると,楔部の圧力が周辺部より高く検出された.楔部の形状や材質によって応力集中の様子が変化すると考えられ,本シミュレータによってそのスリップ防止能や石灰化血管拡張能が客観評価できると期待する.

  • 尾野 恭一, 小山 崇, 大場 貴喜, 岡本 洋介, 大野 浩司, 山本 洋己, 田中 俊彦
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S233_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    ベッドマットの下に置いた非接触センサーから得られた生体信号をフィルタリング処理及びスペクトル解析を組み合わせることにより、心拍数(HR)、心拍規則性(HBS)、心音(HS)、呼吸数(RR)、呼吸リズム安定性(RRS)、呼吸振幅不安定性(RAuS)、チェーンストークス型呼吸(CSR)、いびき(Snore)、体動(BM)、体の位置(BP)、体動回数(BMF)等を定量的に評価するシステムの開発を行った。心拍数及び呼吸数は、終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)によって検出されたものと、ほぼ同等であった。本システムによって予測される無呼吸低呼吸指数(AHI)は、PSGによるAHIと高い相関が得られ、睡眠時無呼吸のスクリーニングとして応用できる可能性を示した。また、心拍規則性の定量化により睡眠中に生じた発作性心房細動を検知することができた。さらに、睡眠リズムの安定性、体動、いびき等の生体信号から予測される睡眠の深さは、PSGによって得られるものとほぼ同等の値を示した。これらの検出能力を生かすことにより、在宅での見守りのほか、疾患スクリーニングへの応用が可能になると考えられる。

  • 小川 愛実, 三田 彰
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S233_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    高齢化に伴い予防医療の重要性が高まっている。生活自立度の維持において特に重要な運動機能の評価指標として歩行評価が広く実施されている。中でも歩行時の関節モーメントは部位毎の筋活動を反映しており、各関節にかかる負荷を定量的に示すことが可能である。関節モーメントは一般に床反力計および三次元動作解析装置を用いて計測される床反力情報と関節角度情報を剛体リンクモデルに代入することで求められる。しかし、医療機関などの計測環境では自然な歩行を取得することが難しく、日常的に行われる歩行を把握することが困難である。そこで本研究では居住空間で日常的に関節モーメントの計測を行うため、居住空間への導入が困難な床反力計を用いない手法を提案する。建築の構造計算に用いられるたわみ角法を用いた関節モーメント推定手法を新たに考案し、その基礎検討として膝関節モーメントにおいて従来手法による推定値と比較を行った。提案モデルでは関節角度のみを入力として膝関節モーメントを推定可能であり、三次元動作解析装置と床反力計から算出した値と高い相関を示した。今後は被験者を増やし、更なる検討を重ねたい。

  • 早野 順一郎, 木曽原 昌也, 湯田 恵美
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S234_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    心拍数フラグメンテーション(HRF)は、心電図が洞調律を示すにも関わらず、R-R間隔時系列に頻繁(多くの1拍毎)に極値が出現することを特徴とする洞機能障害の一つである。 心拍変動解析による迷走神経機能の評価は、心拍変動の高周波(HF、0.15-0.4Hz)成分が迷走神経によってのみ媒介されることを前提として仮定しているが、HRFが存在するとそれによるR-R間隔変動もHF成分の一部として測定され得るために、HF成分による迷走神経機能の評価を混乱させる要因となる。 本研究では、24時間心電図ビッグデータ、Allostatic State Mapping by Ambulatory ECG Repository (ALLSTAR)の心電図より、HRFの指標であるpercentage of inflection points(PIP)を用いて、年齢によるHRF発生状況とHF成分の評価に対する影響を調べた.その結果、HRFは小児期(0~20歳)および80歳以降に増加し,PIPの増加とともにHF成分パワーにしめるHRFの割合が15%から30%と増加していることが推定された。PIPが60%を超える時には.SDNN.LF,VLFのパワーにもHRFによる増加分が5~30%含まれていると推定された.

  • 山田 喜之, 小野 弓絵, 鈴木 達也
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S234_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    運動・認知機能のリハビリテーションにおいて、音楽が参加者の意欲の向上や疲労感の軽減に与える影響は大きい。我々は、音楽の好感度を脳活動から定量化することを目的に、高齢者施設等でも計測が可能な機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いて、音楽の好感度に関連して活動する皮質部位の同定を行った。健常若年被験者15名に対し、被験者毎に選択された好きな曲と嫌いな曲3曲ずつで構成された2種類のプレイリストを聴取させ、その際の両側頭部聴覚野周辺の脳活動を合計38チャンネルで計測した。fNIRSデータは、各曲に対する主観的好感度に基づくブロックデザインを用いた一般線形モデル解析によりβ値を算出した。各チャンネルで得られたβ値を大脳皮質上の賦活マップへ変換し、SPMグループ解析を行うことで、被験者間に共通する脳活動部位を特定した。FDR補正条件(p<0.05)において、左側頭部の一次聴覚野ならびにブロードマン43野に有意な共通活動が確認でき、音楽の理解やコミュニケーションにかかわる脳活動を反映していると考えられた。この結果から、左側頭部の脳活動の強度を指標として、聴取中の好感度の判定を行えると考えられる。

  • 瀬野 宏, 富井 直輝, 山崎 正俊, 本荘 晴朗, 柴田 仁太郎, 佐久間 一郎
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S235_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    心室頻拍や心室細動といった致死性心室性不整脈の原因として,心臓内に発生する旋回性の電気的興奮波(Spiral Wave: SW)が知られている.これまで我々はコンピュータシミュレーション上で,SWの中心点である旋回中心と組織境界を接続するような線状の局所冷却を行うことでSWが停止する可能性を示した.本研究では,動物標本を用いたex vivo実験において,線状局所冷却によるSW停止を確認することを目的として,心臓の興奮様態を光学計測すると同時に,心臓表面の局所冷却が可能な局所冷却システムを構築した.冷却性能評価のため,アクリルアミドゲル製の生体ファントムに対して模擬的な冷却実験を行い,そのときの温度変化を熱電対及び感温液晶で計測した結果,構築した局所冷却システムは,冷却開始から10秒間で4℃程度の冷却が可能であり,また約幅8 mmの局所的な冷却が可能であることがわかった.以上の結果から,構築した局所冷却システムによって,ウサギ心臓標本に対して妥当な冷却速度で局所的な冷却が可能であると考えられる.本発表では,実際にウサギ心臓標本に対して局所冷却を試行した結果についても報告する.

  • 馬目 信人, 篠原 修二, 鈴木 康大, 朝長 康介, 光吉 俊二
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S235_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    近年,情報処理技術の向上に伴い豊富な計算資源と機械学習手法による病態分析が盛んに行われている.一方,多くの先進国においてメンタルヘルス不調が問題となっており,手軽に健康状態をチェックできる技術が求められている.本研究では,パーキンソン病(PD)患者を対象として,計算量が少なく高速に稼働し,収集したデータを逐次的に学習していくことのできる学習ベクトル量子化(LVQ)を用いて少ない音声データからPD患者を識別できるかを検証する.本実験では,被験者188名(PD患者124名,健常者64名)から得られた756の“a”の長母音音声データを対象とする.手順として,はじめにデータをランダムにシャッフルする.次に,半分を学習データ,半分をテストデータとし,学習データの中からデータを一つずつ逐次的に学習する.学習には,各音声データから抽出したMFCC等を含む753の音声特徴量を用いた.手法には,初期学習率0.3,0.1,0.05とした際のLVQ1,OLVQ1を用いた.手順を10万回試行しAccuracyの平均値を算出した結果,学習データ数50で0.71,学習データ数350で0.75となった.これは,LVQを用いることで少ない学習データからPD患者を識別できる可能性を示唆する.

  • 田淵 元太, 平野 陽豊, 浜崎 健太, 三戸 景永, 曽 智, 神谷 諭史, 中村 隆治, 佐伯 昇, 河本 昌志, 東 幸仁, 吉栖 正 ...
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S236_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
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    【目的】著者らは血管内皮機能評価法として,虚血反応性充血後の血管拡張能をオシロメトリックの原理を用いて計測するenclosed zone flow-mediated dilation (ezFMD) 検査を提案している.しかし,血管拡張は血管内皮機能による血管壁弛緩だけでなく,血圧変動にも影響される.そこで本研究では,ezFMD検査における血圧変動に依存しない新しい血管内皮機能評価指標を提案する.【方法】広島大学・医の倫理委員会承認のもと,事前にインフォームド・コンセントが得られた健常群25名(27.6±13.6歳),動脈硬化ハイリスク群21名(56.0±15.3歳)を対象としezFMD検査を行った.カフ印加圧とカフ容積脈波から血圧変動を考慮したパラメータである血管粘弾性を推定し,血管粘性を血管剛性で除した補正粘性の駆血前後での変化率を血管内皮機能の評価指標としてROC解析を行った.【結果】各群での提案指標の平均は,健常群116.4±122.9%,動脈硬化ハイリスク群2.1±43.2%であり,2群間に有意差を確認した(p = 1.8 × 10-6).また,AUC値は提案指標で0.85,従来法では0.62であった.【結論】提案した補正粘性変化率により,血圧変動に依存せず血管内皮機能を評価できることが明らかになった.

  • 秋吉 駿, 古居 彬, 平野 陽豊, 隅山 慎, 棟安 俊文, 三戸 景永, 曽 智, 笹岡 貴史, 吉野 敦雄, 神谷 諭史, 中村 隆治 ...
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S236_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
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    【目的】ヒトの疼痛を客観的に定量評価することを目的として,著者らは末梢交感神経活動を反映する血管剛性と電気刺激時の主観的疼痛度の間に有意な関係があることを見出した.本報告では,血管剛性から筋交感神経信号の分散を非侵襲推定し,推定した分散から主観的疼痛度をより高精度で客観的に定量評価する方法を提案する.【方法】広島大学・医の倫理委員会承認のもと事前にインフォームド・コンセントが得られた健常成人男性22名(22.7±1.0歳)を対象に皮膚電気刺激実験を行った.刺激中の心電図,血圧,指尖容積脈波から求めた血管剛性を用いて筋交感神経信号の分散を推定した.その後,ウェーバー・フェヒナー則を用いて筋交感神経信号の分散と主観的疼痛度の関係をモデル化し,モデルによる推定値と実測値との相関解析を行った.比較のため,血管剛性と主観的疼痛度の間においても同様の解析を行なった.【結果】筋交感神経信号の分散から推定した主観的疼痛度と実測した主観的疼痛度の相関は,血管剛性の場合と比較して上昇した(提案法: r = 0.60, p < 0.001, 血管剛性: r = 0.47, p < 0.001).【結論】提案法は主観的疼痛度を従来法より高精度かつ客観的に定量評価可能であった.

  • 樋口 政和, 中村 光晃, 篠原 修二, 大宮 康宏, 高野 毅, 赫 寛雄, 三苫 博, 光吉 俊二, 徳野 慎一
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S237_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    日本でのパーキンソン病有病率は人口10万人あたり約120~130人で,高齢者に限定するとさらに高いことが知られている.高齢化社会が進む中,病気の早期発見や進行度を簡便に把握することが重要である.最近注目されている音声を用いた手法は非侵襲であり手軽に行えるという利点がある.本研究では,医師によって評価されたパーキンソン病患者の重症度を音声から判別し得る新たな指標を提案する.長母音的な定常音声ではなく読み上げ音声を使用しており自由発話での検知が期待できる.音声分析のため,東京医科大学病院においてパーキンソン病患者20名を対象に17種類の定型文読み上げによる音声を録音した.患者を修正版Hoehn&Yahrステージスコアから判定された重症度によりグループ分けし,音声から6552種類の音声特徴量を算出した.相関分析などにより特徴量を選定後,多項ロジスティック回帰分析により重症度判別指標を作成した.得られた指標を用いて患者毎に発話単位の判別を行い多数決によって重症度を判別した結果,90%の精度で患者を重症度別に分類することができた.これにより提案指標はパーキンソン病の重症度を判別する新たな評価指標となりうることが示唆された.

  • 鈴木 康之, 川崎 壮一朗, 野村 泰伸
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S237_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    ヒト身体運動の制御メカニズムを探るうえで,モーションキャプチャシステム(MCS)を利用した身体動作解析は大変有効な手段である.MCSで計測された身体特徴点上に貼付されたマーカの時空間情報から身体各部位の位置および姿勢の時間変化を推定し,ヒト身体のマルチ剛体リンクモデルと同化することで,関節トルクをはじめとする神経制御メカニズムの理解に重要な手掛かりが得られる.貼付されたマーカの身体骨格に対する相対位置は,筋肉の膨隆や皮膚の変形によりしばしば変化する.これはSoft Tissue Artifact(STA)と呼ばれ,姿勢推定精度低下の一要因となる.STAの影響を除去あるいは軽減する姿勢推定アルゴリズムの開発が試みられているが,具体的な解決策は未だ見つかっていない.我々は先行研究で歩行のような周期運動中のSTAは周期的であることを明らかにした.本研究ではSTAの周期性に着目し,周期運動中に計測されたマーカデータからSTAの影響を除去して身体姿勢推定を行う新アルゴリズムを開発した.このアルゴリズムを利用した身体運動動作解析により,より精度の高い身体運動制御メカニズムの理解が期待される.

  • M Faizal Amri, Wilaiprasitporn Theerawit, Yagi Tohru
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S238_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    This research discusses how the steady state visual evoked potentials (SSVEP) is influenced by auditory stimulus and applies its findings towards engineering applications such as brain-computer interfaces. In the experiment, each subject is instructed to look at a flashing image with or without amplitude modulated (AM) sound. During this experimental task, electricalencepharogram (EEG) is measured in order to detect SSVEP and auditory steady-state response (ASSR). The preliminary results show that the SSVEP power seems to be suppressed by AM sound.

  • 又吉 淳二, 比嘉 広樹
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S238_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    非侵襲型ブレイン・コンピュータ・インタフェースでは,精度の問題や即応時間などの問題がある.本研究では,上下左右の方向判別を行うことを目的に,事象関連電位(ERP)P300に着目し,その判別について検討を行っている.今回,健常被験者に視覚刺激を呈示した際のERPを取得し(図1),反応が大きい電極を選定した後,P300の有無を判別する学習器を作成,オフライン/オンライン判別の結果から各アルゴリズムにおけるERPの有用性を検討した.判別アルゴリズムには,線形判別分析(LDA),サポートベクタマシン(SVM)を用いた.学習の結果,各アルゴリズムでの学習率は94%程度となり,オフライン判別実験の結果はLDAでは83.3 %,SVMでは75.0 %となった.オンライン判別の結果はLDAでは60.4 %,SVMでは47.9 %であった.判別率の低下の理由としては,1方向に絞れていない結果がオフライン判別実験よりも多くなってしまったことや,過学習があげられる.今後は方向の絞り込みや信号処理部分の工夫を行い,システムの向上を行う.

  • 富井 直輝, Jiao Jiaming, 山﨑 正俊, 佐久間 一郎
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S239_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    近年,心房細動に対する焼灼治療効果を高めるため,カテーテル上の複数電極の計測信号から,心臓の興奮様態を可視化する,多電極マッピングシステムが開発され診断に用いられているが,治療成績は未だ十分と言えない.既存システムでは,電極位置の興奮タイミングに基づき,空間補間処理によって計測領域全体の興奮タイミングを可視化する.一方で,興奮タイミングからは心筋の興奮からの回復特性が解析できない点,また空間補完処理を行うため再構成画像の空間解像度に限界がある点が課題として考えられる.そこで本研究では深層学習を応用し,疎な配置の電極信号から,興奮回復特性を表す膜電位マップを推定する新たなマッピング方式を検討した.心臓電気生理シミュレーションで模擬計測した信号を入力,その際の膜電位分布を出力とする学習データとし,畳み込みニューラルネットワークを学習した結果,平均誤差1.8mVで各計測点の膜電位が推定可能であった.膜電位の変化域である-90mV~20mV程度と比較し,高精度な推定結果であると言える.本検討により電極信号に基づく膜電位マップ推定の可能性が示された.

  • 坂本 寛和, 孫 光鎬, 松井 岳巳, 桐本 哲郎
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S239_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    肺機能検査は換気能力や肺病の有無を調べる呼吸器検査の1つであり、スパイロメーターを用いて計測する。同装置は、高価であり、取り扱いが簡便でないため、臨床外来ではこれを用いる機会は少ない。また、スパイロメーターは接触測定であること、測定に手間がかかることが課題として挙がる。本研究では、ToF(Time of Flight)カメラを用いた呼吸機能の非接触計測を提案する。ToFカメラは撮像対象までの距離を算出でき、胸郭変動と呼吸変動に相関関係があるため、ToFカメラで時間変動に応じた胸部の変位を測定して呼吸をモニタリングする。非接触でToFカメラによる呼吸機能の計測性能を評価するため、安静時の呼吸数と肺機能検査の肺活量測定の指標である1秒率(Tiffenaeu,Gaensler)を算出した。リファレンスとして呼吸バンド・スパイロメーターと同時計測を行い、記述統計・Bland-Altman解析により結果を評価した。呼吸数算出は計測誤差1.66%、Bland-Altman解析の95%信頼区間は-4.31~3.92bpmの範囲となった。肺機能検査は計測誤差がTiffenaeuの1秒率が15.1%、Gaenslerの1秒率が7.82%となった。計測結果から、ToFカメラを用いて高精度な呼吸計測が可能であることを示した。

  • 野山 駿介, 渡邉 英一, 金子 美樹, 中江 悟司, 清野 健
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S240_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    心臓の拍動間隔のゆらぎである心拍変動には自律神経機能が反映されており,心疾患患者の予後予測に役立つ情報が含まれている.従来は,研究者のアイデアに基づいて心拍変動時系列から様々な特徴量が抽出され,予後予測モデルの構築が行われてきた.一方で,近年のニューラルネットワークモデルの発展は,データから特徴量の自動抽出を可能にしている.そこで,本研究では,心不全患者の生命予後の予測において,代表的な心拍変動指標を用いたモデルと,事前の特徴量抽出を行わないニューラルネットワークを用いたモデルの予測能を比較した.特徴量抽出に基づく予測では,SDNN,フラクタル指数などの代表的心拍変動指標11種類を計算し,ランダムフォレストを用いて予測モデルを構築した.また,ニューラルネットワークを用いた分析については,深層学習モデルの一つであるQuasi-Recurrent Neural Network (QRNN)を用いた.検証の結果,QRNNによる予測は従来の心拍変動指標を用いた予測と同程度の予測能を示した.また,追加の検証の結果,QRNNと心拍変動指標を組み合わせることで予測能が向上する可能性があることが示された.

  • 李 俐, 中村 亨
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S240_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    我々はこれまでに,日本全国から集められた約8万人の24時間3軸体幹加速度データベースを用いて,加速度データから高精度に睡眠覚醒判定・睡眠指標の導出が可能なアルゴリズムを構築し,日本人の日常生活下における睡眠指標の年齢,性別依存性を明らかにした.本研究では,同データベースを利用し,季節や気温や湿度などの生気象学的要因が日常の睡眠に及ぼす影響を検討した.解析対象データは,71045人(年齢10-89歳,男性44.7 %)とし,先行研究での提案手法により睡眠指標(ここでは,睡眠効率,睡眠潜時,中途覚醒時間についてのみを記載)を導出した.全ての睡眠指標で顕著な季節性が確認され,特に夏季に有意な睡眠効率の低下(約3.2%)と睡眠潜時の延長(約2.4分),中途覚醒時間の増加(約10.8分)を確認した.さらに気温,湿度と睡眠指標との相関を検討した.その際,性別と年齢,季節(月)は,共変量として調整した.平均気温と睡眠効率との間に有意な負の相関,睡眠潜時と中途覚醒時間には正の相関が確認された.また,湿度と睡眠効率との有意な負の相関を確認した.これらは,気温と湿度の上昇が睡眠の質を低下させることを示唆する.

  • 吉武 亮, 辰田 昌洋, 加藤 諒, 京相 雅樹
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S241_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    犯罪捜査では生理学的な指標を用いた秘匿情報の検出が行われている。現在、使われている生理反応は、呼吸、心拍である。しかし、自律神経系の指標は刺激に対する反応が遅いため、虚偽検出に適しません。そのため、犯罪捜査における秘匿情報検出の分野で中枢神経系の反応検出が注目されている。その中でも誘発脳波であるP300を用いた秘匿情報検出が有望視されている。同期加算では判定までに時間がかかるため、単一試行での検出が求められているが、単一試行時の脳波は雑音の影響を受けやすいという問題点がある。そこで本研究では、単一試行時のP300検出のための特徴抽出方法の検討を行った。画像提示によるオドボール課題により標的刺激時、非標的刺激時のP300を計測し、その後計測した脳波の特徴抽出を行った。今回、特徴抽出には離散ウェーブレット変換を用い、基底関数を変えて抽出能力の評価を行った。特徴抽出能力の評価は、ニューラルネットワークによる単一試行時の標的刺激、非標的刺激の判別能力で評価した。

  • 上條 弘幹, 加藤 綾子, 作佐部 太也, 山崎 一徳, 矢口 俊之
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S241_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    現在,カフを用いる血圧計が広く普及しているが,カフの装着が必要なことや強い圧迫感があることから,就寝時における連続的な血圧モニタリングには不向きである.しかし,夜間高血圧症の診断及び治療のために就寝時の血圧モニタリングが必要とされている.この問題を解決するために,非接触かつ無意識下で血圧を測定する方法が求められている.近年,画像解析を用いて血圧を推定する試みが注目されているが,その多くは環境光下で撮影し,可視光波長を解析しているため,就寝中など薄暗い中では光量が少ないことから計測が困難である.そこで本研究では,就寝時において近赤外照明下で撮影した画像を用いて血圧を推定するシステムの開発を目的とする.具体的には,就寝の妨げにならない近赤外照明を用いて顔を撮影し,顔領域の輝度値変化から脈波変動情報を取得し,その脈波伝播時間から収縮期血圧を推定する.本報告では,血圧の変動成分を取得することを目的として動画像から取得した脈波伝播時間と家庭用血圧計から取得した収縮期血圧の関係性を検討した.その結果,提案する脈波情報取得法により血圧変動と脈波伝播時間変動に関係性があることが示された.

  • 池崎 由加里, 加藤 諒, 辰田 昌洋
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S242_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    白内障は加齢によってほとんどの人が発症するため、国民病とも表現される眼病であり、日本国内での手術件数は年々増加し年間約100万件を超えている。しかしこの白内障は、細微鏡検査と一般的な視力検査による眼科医の主観的評価によって診断される。本研究では、視覚刺激によって脳波に現れるN170に着目し、視認性における症状の度合いの客観的評価を目指す。 白内障の初期症状を模した濃淡や霞みを段階的に刺激画像に反映させた際の健常者における潜時の変化を測定し、解析した。N170は、被験者の状態に左右されやすく安定した計測が難しいこともある。今回、計測した波形においてフィルタ処理を追加し、解析についてN170とP100のピーク間隔を相対潜時とする検討を行った。結果、先行研究における従来の抽出方法と比較すると、短時間でかつ安定した解析結果が得られたまた、ある一定のコントラストレベルまではコントラストレベルの減少とともに、N170の潜時は増加する傾向が確認できた。

  • 田村 花織, 堀 潤一
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S242_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    触覚刺激によって誘発した事象関連電位P300を利用したブレインコンピュータインタフェース(BCI)を開発した.ピエゾ式触覚刺激装置で左右の人差し指に複数の刺激を提示し,被験者は1つの刺激に注目することによりP300を誘発した.閉眼時,脳波の変動電位であるアルファ波がP300に影響を与え,BCIの確度も低下することが懸念される.よって,本論文では触覚刺激BCIにおいて,視覚情報が確度に与える影響について調査した.具体的には,閉眼時と開眼時ならびに注視点注目時の事象関連電位の振幅,スペクトルならびに確度の比較を行った. 開眼時では30インチディスプレイに白色ノイズ映像,注視点注目時には開眼時に用いた白色ノイズ映像に注視点を設けた映像を呈示した.結果,アルファ波が表れやすい閉眼時に比べ開眼・注視点注目時では,アルファ波の抑制が確認できたがP300の振幅に被験者ごとのばらつきが大きくなった.また,確度は開眼時に約79 %,注視点注目時に約80 %となり,閉眼時の89 %と比較して低下した.以上より,アルファ波はBCIの確度に影響を与えず,実験に集中しやすい閉眼時に確度が向上すると考えた.

  • 後藤 武, 堀 雅弥, 加藤 尚嵩, 花田 慶乃, 加藤 隆太郎, 小笠原 順子, 橋場 英二, 福田 幾夫
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S243_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    【背景】補助循環施行中必要不可欠な抗凝固療法により,大量出血を認めたが,離脱救命し得た症例を経験したので報告する.【臨床経過】患者は66歳,体重49kg女性.PF比60未満の重症インフルエンザA型肺炎に対して右大腿静脈から21Fr脱血,右内頸静脈から16Fr送血を行い,ヘパリン400IU/hの抗凝固療法,血流量2.6L/min/m2補助による静脈脱血-静脈送血体外式膜型人工肺(V-V ECMO)を導入した.ACT160秒程度で順調にECMO管理していたが,導入9日目にHb4.3g/dlに達する後腹膜から腹腔内への出血を認めた.導入10日目に内腸骨動脈分枝の出血に対する血管内治療による動脈塞栓術施行したが,著明な横隔膜挙上と血胸を伴い,一回換気量1ml/min/kg程度の換気困難を呈した(図).その後抗凝固療法の減量ならびに大量輸血による凝固因子の補充,血液浄化による除水を行い,導入26日目出血制御ならびに酸素化能の改善を認めECMO離脱となる.【結論】本症例ではECMO管理中に適切な抗凝固療法を行っていたにも関わらず,後腹膜腔内大量出血から横隔膜挙上を伴う換気困難を呈した.血管内治療ならびに凝固因子の大量補充などの積極的な治療により出血を制御し救命し得た症例を経験した.

  • 神谷 千津子, 小倉 正恒, 斯波 真理子, 吉松 淳
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S243_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    【背景と方法】家族性高コレステロール血症(FH)は、高LDLコレステロール血症による動脈硬化から、若年で冠動脈疾患を発症するリスクが高い疾患である。軽症例はスタチンなどの薬物治療、ホモ接合体重症例はLDLアフェレーシス(LA)の適用となる。妊娠女性においては、血中脂質が増加する一方、胎児への影響を考慮し、スタチンの内服回避が好ましい。FH合併妊娠における妊娠中LAの有効性と安全性について後方視的に検討した。【結果】6人8妊娠に妊娠中LAを行った(表)。ホモ接合体の4人は妊娠前から、その他の2人は、冠動脈疾患を有するため妊娠中にLAが開始された。妊娠後期にはLA頻度を増やし、半数で血圧低下などの合併症に対し、吸着法(DSA)から二重膜濾過法(DFPP)への変更が必要であった。冠動脈病変を持つ2例で不整脈などを認めたが、新たな虚血性合併症は無かった。全例満期産で、在胎不当過小児(SGA)を2例に認めた。【結論】DSAでは、妊娠後半に血圧低下や気分不良が出現しやすいが、DFPPへの変更で症状を回避できた。妊娠中も適切にLAを施行することにより、周産期の虚血性合併症なく分娩管理が可能であった。

  • 加藤 尚嵩, 後藤 武, 小笠原 順子, 長沼 紘平, 大湯 和彦, 成田 将崇, 橋場 英二
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S244_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    [背景]肺胞腔内に蛋白が異常に貯留する肺胞蛋白症の治療法として,肺内を洗浄する片側全肺洗浄(Unilateral Whole Lung Lavage:UWLL)があり,一般的に治療効果を治療前後の胸部X線画像の濃淡を目視で評価している.今回,洗浄効果を画像解析により定量評価した.[方法]UWLLを施行した 37歳男性,74.9 kgと55歳男性,75.0 kgの2例のUWLL前後に撮影された胸部X線画像を解析した.ImageJを用いて肺野領域を手動でトレースし関心領域を設定した.そして,左右肺それぞれの濃度ヒストグラムを作成した.また,症例ごとに領域内の平均ピクセル数を算出し比較検討した.[結果]肺野内の濃度ヒストグラムをFig.1に示す.UWLL後でヒストグラムのピークが左方移動し,症例ごとの平均ピクセル値がUWLL前後でPt.1では124.5±28.9から110.8±29.7,Pt.2は116.5±26.3から104.0±33.6に減少した.[考察]濃度ヒストグラムは左方移動し平均ピクセル値も減少したことによりX線の透過性が亢進したことを示す.このことからUWLLにより異常分泌物が排出され肺内の含気率が増加し透過性が改善したと考える.[結語]UWLL前後のX線胸部写真を定量解析することで洗浄効率を評価する一助になると考える.

  • 須田 竜一郎, 海保 隆, 柳澤 真司, 西村 真樹, 小林 壮一, 岡庭 輝, 岡 義人, 町田 拓, 大塚 将之
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S244_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
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    【緒言】Fournier gangreneは,外陰部,会陰部に生じる急速進行性の感染症であり,しばしば敗血症性ショックを合併し,治療には迅速性が重要である。Hydrosurgery System:HSは高圧水流を利用したdebriedmentを行う新しい医療技術であるが、今回、Versajet-II(Smith & Nephew社製)を用いたHSにより迅速な括約筋温存のdebriedmentが可能であった重症Fournier gangreneの1例を経験したので報告する。【症例】56歳男性.主訴:発熱・会陰痛・意識障害.身体所見より重症Fournier gangreneおよび敗血症性ショックと診断し,緊急手術を行った.陰嚢から会陰にかけての皮膚の硬結部より2cmのマージンをとって壊死組織を切除した.次いで,残った壊死組織に対しVersajet-IIを用いたHSによるdebriedmentを行った.壊死組織が除去されるに従って健常組織が出現するのを容易に確認可能であり、括約筋の温存も容易であった.手術時間は36分,病院到着からICU入室までの時間は2時間7分であった.会陰創に対し第29病目に植皮術を施行し,第48病日軽快退院となった.遠隔期においても括約筋障害を認めていない。【結語】HSは,迅速かつ組織選択的なdebriedmentに有用であった。

  • 米山 美鈴, 和多田 雅哉, 森 晃, 入江 喬介
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S245_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    乳がんは病期Ⅰ,Ⅱでの5年生存率が90%を超える。その為、乳がんは早期発見が重要である。また、早期発見には定期的な検診が有効である。しかし、超音波検診は検査精度が検査者の技量によって左右されやすく腫瘍の見逃しが起こる可能性がある。また、超音波画像が局部的で全体像が捉えがたいため、腫瘍の位置情報が不明確である。従って、本研究では乳がんの超音波診断の問題点の解決を目的として、乳房検診用の補助機器の開発を行う。本稿では、乳房上でのプローブの動作について検討した。はじめに、検査時の体勢の検討を行った。検査時の体勢では乳房組織を固定するために、仰臥位が適していると考えた。次に、検査時の体勢を踏まえて、プローブの動作方法について検討した。プローブの動作としては、回転走査が最も有用であると考えた。また、複数回の回転走査を組み合わせることで乳房全体の断面画像が取得可能になる。これにより乳房内部の腫瘍の位置情報が明確になると考えた。また、回転走査を行う補助機器の要求動作ついて検討し、それらの動作を実現する補助機器の提案を行った。

  • 小川 恵美悠, 荒井 恒憲, 熊谷 寛
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S245_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    動脈硬化狭窄に対するバルーン血管形成術では、バルーン内圧力により血管壁繊維を破断させて血管内腔を拡張させる。拡張のためには繊維破断が必要であるが、過度の損傷が起こると合併症を生じる。血管壁繊維破断を定量的に評価が可能であれば治療中に合併症を生じるような過度の繊維破断を未然に検知し防ぐことができる。血管壁繊維に破断を生じると、微小な亀裂により血管壁の散乱係数が増加する。この散乱変化を検知することで血管壁繊維破断のモニターが可能であると考えた。摘出されたブタ頸静脈健常血管を用い、波長633 nmおよび1164 nmのレーザーを血管壁に照射し、バルーン拡張中の後方散乱光を経時計測した。拡張中の血管径をビデオ撮影により計測し、継時的な拡張率の変化と後方散乱光の変化を同時計測した。拡張による血管壁繊維破断に伴う後方散乱光の上昇傾向が見られ、光による血管形成術中の塑性変形モニタリングの可能性が示唆された。 

  • 大竹 裕介, 松井 岳巳
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S246_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    浴槽内での溺水事故件数は増加傾向にある.原因の一つとして入浴中の睡眠が挙げられており,浴槽溺水事故防止用睡眠モニターを開発した.本研究ではドップラーレーダーを用いて,自律神経活性指標であるHRV(心拍数変動指標)の変化を非接触で求め,入眠を事前に検知するシステムを開発した.予備的検討として,給湯しない浴槽(110x68.5x55cm)に入った健常な男子大学生7名(平均年齢22.3歳)に入眠を促し,心電図を用いて入眠事前検知の可否を検証した.入眠時刻は脳波や眼電図を用いた睡眠ポリソムノグラフィにより求めた.その結果,入眠直前に心拍数とLF/HFの低下,HFの上昇傾向が認められた.これらの自律神経指標を説明変数として用いて線形判別式[Z=0.09HR+ 0.99lnHF+3.22LF/HF-18.38(Z>0:覚醒,Z<0:睡眠,Z=0:入眠)]を構築し,入眠の事前検知を行ったところ実際よりも平均で2.8分前,最大で6分前に入眠を検知できた.また,周波数24GHz,出力10mWのドップラーレーダーを浴槽外壁面の臀部に当たる位置に設置し,心拍の非接触計測を行ったところ心電図と同等の心拍数,HRVが得られた.浴槽内での心拍の非接触計測により睡眠による溺水事故を防ぐ可能性が示唆された.

  • 瀬野 晋一郎, 渡辺 篤志, 木暮 英輝, 小林 博子, 嶋津 秀昭
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S246_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    痛みは、生体の主観的要素を反映した不快な感覚であるが、刺激による炎症や組織損傷の恐れを示す警告信号として重要な役割も担う。McGill Pain Questionnaire(MPQ)は最も有名な痛みの評価法の1つであり、痛みの性質を言語的表現で分類する。しかし、痛みの表現には国や地域、言語などで異なる問題が存在する。そこで、本研究では独自に考案・開発した複合電気刺激システムを用いてMPQで表現される疼痛感覚の質的要素に対する具現化を試みた。本システムは3種類の感覚神経線維(Aβ線維、Aδ線維、C線維)が有する周波数特性の違いを利用して2000 Hz、250 Hz、5 Hzに固定した正弦波を単独または複合的に出力可能な刺激装置である。疼痛感覚の誘発は個人の各周波数刺激に対する知覚感度の測定後、各電流値を任意の倍率へ増幅して、それらを単独あるいは組み合わせた複合刺激として与えて実施する。本研究ではボランティア学生の左前腕部を対象に電気刺激で誘発される疼痛感覚を日本語版MPQで分類させた。実験の結果、5Hz、250Hzの単独刺激では負荷に伴い拍動痛や電撃痛など様々な痛みの性質が誘発された。また、複合刺激では5Hzを含めた場合に拍動痛が顕著に現れる傾向を認めた。

  • 篠原 修二, 戸田 裕之, 中村 光晃, 大宮 康宏, 樋口 政和, 高野 毅, 斎藤 拓, 谷知 正章, 光吉 俊二, 吉野 相英, 徳野 ...
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S247_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    近年のスマートフォンの普及に伴い,音声データを用いた病態解析が注目を集めている.スマートフォンを用いた音声分析は非侵襲的であり,手軽かつ遠隔的に利用できる.本研究では,大うつ患者を対象として音声分析によるうつ重症度測定の可能性を検討する.まず大うつ病患者を対象に,17種類の定型文の読み上げ音声の録音と,専門医師によるうつ病用ハミルトン評価尺度(以下HAMD)を用いた重症度測定が行われた.次に各音声からゼロ交差率とハースト指数の関係性に基づく音声指標(Major Depression Voice Index:以下MDVI)を抽出した.MDVIとHAMDの得点に有意な相関がみられた(r=0.47,p<0.01).HAMDの得点によって患者を,正常(7以下),軽症(8~16),中等症以上(17以上)の3群に分けた.各群のMDVI平均値は各々-0.045(n=65),-0.057(n=16),-0.073(n=9)であった.正常群と軽症群および正常群と中等症以上群の間に有意差がみられた(各々p=0.094,p<0.001).このように,MDVIによるうつ重症度測定の可能性が示唆された.

  • 大宮 康宏, 中村 光晃, 篠原 修二, 樋口 政和, 髙野 毅, 浦口 智貴, 光吉 俊二, 三條 信夫, 徳野 慎一
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S247_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    高齢化社会において認知症の有病率が増加しており,早期発見と予防的治療が重要である.疾患の診断支援として,音声を用いた分析は,非接触で,特殊な専用装置を必要とせず,手軽にかつ遠隔的に行えるという利点がある.本研究では,アルツハイマー型認知症(以降,ADと呼ぶ)を対象として,音声分析に基づいた患者の検出の有効性を検討する.実験では,6病院において健常者57名とAD患者42名を対象に診察室で13~17種類の定型文を読み上げた音声を録音した.次に,音声から7,440種類の音響特徴量を抽出し,診断名と録音施設が同じ音声を用いて環境依存が懸念される特徴量を除外した.そして,音声による健常者とAD患者の分類アルゴリズムの作成では,3病院の音声を用いてWekaに実装されているJ48決定木により分類アルゴリズムを構築し,別の3病院の音声を用いて検証した.その結果,発話ごとの分類結果から被験者ごとに多数決によって分類した性能は,健常者とAD患者の分類が81.4%であり,感度と特異度は0.946と0.591であった.これは,分類アルゴリズムは健常者とAD患者を精度良く分類できており,音声分析に基づいた疾患検出の有用性を示唆している.

  • 玉元 由果莉, 藤江 建朗, 中村 英夫
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S248_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    【目的】睡眠段階評価法として睡眠ポリグラフ検査(PSG)があるが,PSGはセンサ装着や結果の解析が煩雑で,技師及び患者への負担が大きいという問題がある.そこで本研究では,PSGと1ch,もしくは2ch脳波での睡眠段階判定結果に差異がみられるかについて比較し,精度の評価を行うことを目的とする.【方法】若年男性5名に対してPSGを行った.データを2名の判定者が,PSG,1ch脳波,2ch脳波の3パターンで睡眠段階を視察判定し,一致率とκ係数を用いて比較を行った.【結果】各判定者のFullによる睡眠段階一致率は84.2±3.9%,κ係数は0.73±0.07であった。少数脳波チャンネル(1ch,2ch)による一致率は82.6±3.1%,κ係数0.70±0.08であり,PSG少数脳波チャンネル間での有意差は認められなかった.睡眠段階別の比較では,少数脳波チャンネルはPSGよりレム睡眠を過大に判定する傾向が見られた.【考察・結論】本結果より,各条件での睡眠段階一致率に有意な差は認められなかった.よって,少数の脳波電極でも睡眠段階推定の可能性は示唆された.判定の差異は眼電図や筋電図の混入は考えられるものの,睡眠異常候補者の検出には実用できる程度の精度を得られたことが確認された.

  • 松本 辰也, 新岡 宏彦, 熊本 康昭, 三宅 淳, 田中 秀央, 高松 哲郎
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S248_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    癌の治療方針を決定するためにはリンパ節転移を正確に把握する必要があり、病理医による術中の迅速診断が行われるケースがある。しかしこの診断は病理医不在の施設では行えない。また、術中迅速を行っている施設では病理医の負担となっている。そこで近年、リンパ節転移診断への人工知能(AI)の利用が検討されているが、それらはHE画像の解析であり、迅速診断に適していない。本研究では、AIによるリンパ節転移の迅速検出法を開発した。【対象・方法】ヒトの胃癌転移リンパ節を対象とした。組織表面への透過性が低い深紫外光の性質を利用して、組織表面のみの蛍光画像を取得した。テルビウムイオンを用いて組織・細胞構造を短時間でコントラストよくイメージングできる新規の蛍光染色法を開発し、HE画像と類似する組織画像を迅速に取得した。また、得られた蛍光画像をAIにより解析し転移巣を検出し、その結果を同一リンパ節組織のHE画像のAI解析結果と比較した。【結果・討論】AIを用いた蛍光画像解析による転移巣の検出精度は、病理医やAIがHE画像を解析し転移巣検出を行った場合の精度と同程度であった。蛍光画像のAI解析による迅速リンパ節転移診断の実現が期待される。

  • 橋村 圭亮, 山下 樹里, 鎮西 清行, 金子 伸行, 牛久 哲男, 小関 義彦
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S249_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    病理診断において,切片の薄切,染色は既に自動化されており,また顕微鏡画像の自動診断の研究も多数行われている.一方で,病理検体を顕微鏡で観察できる大きさに切り出す(切り出し)作業は現在でも手作業で行われているため,病理診断の迅速化や省力化の妨げとなっている.そこで我々は,病理検体切り出し作業の自動化に向けて,大腸がん病理検体切り出し作業における切り出し領域の推定法の開発に取り組んでいる.今回、深層学習を用いた推定法の検討を行ったので報告する.画像認識方法として一般的な畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いる.このような深層学習では多くの学習データ(入力データと教示データ)が必要となる.そこで本研究では,東京大学医学部附属病院が保管する病理検体切り出し作業前の検体の画像(入力データ)と,切り出し部位や割線を記録した画像(教示データ,図)の過去10年分(約2000件)を用いることとした.これまでに,高解像度な病理検体画像に対応するU-net構造を持つニューラルネットワークのプロトタイプを構築した.今後,前述のデータを用いた学習を行い推定法の構築と評価を行う.

  • 田中 敦子, 根本 充貴, 甲斐田 勇人, 木村 裕一, 永岡 隆, 山田 誉大, 花岡 宏平, 石井 一成
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S249_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    【目的】臨床的価値の高いFDG-PET/CT画像診断における医師の負担軽減及び診断精度向上のため、FDG-PET/CTの画像パターンに対する異常検知処理に基づく頸胸部病変の自動検出法を提案する。【手法】FDG-PETは、糖代謝亢進を反映し腫瘍部位では異常集積を呈する。そこで提案法では、CTの閾値処理及びモルフォロジ処理にて左右肺野を自動抽出し、肺野を基準に縦隔領域を自動抽出する。次に領域ごとの健常組織画素値に関する統計モデルを用いた異常検知による病変候補の検出を行う。異常検知に用いる統計モデルは健常画像の画素(HU, SUV)の2次元正規分布モデルとし、マハラノビス距離を異常度として計測する。左肺、右肺、縦隔で個別に算出した異常度の閾値処理にて病変候補を得る。得られた候補領域から微小体積のものを削除し、腫瘍が疑われる部位を検出する。図に病変検出例を示す。【結果】臨床撮像された食道癌、肺癌の10症例の全身PET/CTを用いて提案法の評価実験を行ったところ、検出感度94.7%(18/19病変)、過検出数14.0個/例の性能が得られ、提案法の有用性を確認した。【結論】今後の課題は、病変検出感度の改善や誤検出病変候補の削減処理の追加が挙げられる。

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