生体医工学
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Annual58 巻, Abstract 号
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  • 山口 湧斗, 金城 知志, 木戸 倫子, 長倉 俊明
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 469
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    透過膜の特性を簡易計測できる装置の開発を行った。この装置は水圧を印加し、水位を測定することで、単位時間に流出した水の量を測定する装置である。これにより透過膜の濾過係数と膜孔の半径を算出することができる。濾過係数は水位と管の断面積より算出でき、膜孔の半径は水位と膜厚を計測することにより算出することができる。計測用濾過膜をゴムシートではさみ、上方より100cmH2O~150cmH2Oの静水圧を印加する。単位時間にその水圧で濾過された水の量を、細管内の水位を計測することにより水の移動量を計測するシステムとした。そして、測定装置の精度を評価するために特性が既知のセロファン膜(膜厚:41.0μm)を用いて、濾過係数を算出すると、理論値にほぼ一致した。よって透過膜の濾過係数の計測評価に用いることが可能だと示された。この装置を用いて、材料の異なるX社製の透過膜(膜厚:52.6μm)を測定したところ、濾過係数はセロファン膜と同等であったので様々な透過膜にも適応できると考えられる。さらに、この計測装置は準備時間が短く、水の蒸発、気泡の残留が起こり難い改良をしたので、時間のかかる透過膜の特性を簡易的で60%の時間を短縮した計測システムとすることができた。

  • JASNI NURSYARIZAH AMIRAH, Hiroki Sato
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 470
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Functional Near-Infrared Spectroscopy (fNIRS)is a neuroimaging technique to measure cortical hemodynamics related to functional activation. fNIRS was used to obtain time-averaged phase differences between spontaneous low-frequency oscillatory changes in oxygenated hemoglobin(oxy-Hb)and deoxygenated hemoglobin(deoxy-Hb). This phase difference was referred to as hemoglobin phase of oxygenation and deoxygenation(hPod). Recent study(Watanabe et.al, 2017)in infants demonstrated that hPod is sensitive to the development of the cortex in different behavioral states and stimulus. However, hPod in adults during resting and active state are still uncertain. Therefore, this study aims to validate dynamic changes of hPod in frontal and occipital cortex of adults during resting-state, presence of visual stimuli and verbal WM task by using NIRS. Results showed that hPod during resting-state were (3.57,3.12[rad]), visual stimuli (3.96,3.37[rad]) and verbal WM task (3.69,3.29[rad]) in frontal and occipital cortex, respectively. This study suggests that hPod in adults are in stable antiphase pattern in both resting and active state.

  • 下村 理雄, 磯野 正太郎, 船瀬 新王
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 471
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    我々日本人は集中力を高めるためや作業効率を向上させる目的でハチマキを頭部に巻くことがしばしばある.しかしながら,実際に集中力や単位時間あたりの作業量を向上させるかを検討した研究は未だない.そこで我々は本稿においてハチマキを巻くことによって集中力と作業効率を上昇させる効果があるかを検討する.本研究においては二種類のタスクをハチマキのあるなしで成績に変化があるかを検討する.一種類目のタスクとして内田クレペリン検査を行う.これはハチマキが集中力に影響を与えているかを検討するために行う.このタスクにおいては,一行あたりの回答数と正答数,正答率に着目する.二種類目のタスクとしてペグボードテストを行う.これはハチマキが指先の作業量に影響を与えているかと検討するために行う.このタスクにおいては一定時間内にペグをボードに挿入することができた数を成績とする.結果として,内田クレペリン検査の成績はハチマキの有無で大きな差をみることができなかった.回答数,正答数及び正答率をハチマキの有無でt検定を行ったところ,回答数,正答数,正答率において有意差をみることができなかった.ベグボードテストの成績もハチマキの有無で大きな差をみることができなかった.挿入数をハチマキの有無でt検定を行ったところ,有意差をみることができなかった.本結果は,ハチマキによって集中力や作業効率は変化しないことを示唆していると考える.

  • 磯野 正太郎, 下村 理雄, 船瀬 新王
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 472
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    日本において運動会の生徒や学校の入学試験の受験生はしばしば頭部にハチマキを装着する.ハチマキの装着する行為は「精神の統一」や「気合いの向上」等の精神的な効果や,「額から出る汗をハチマキに吸収させ顔に垂れてこないようにする」という実用的な効果があると言われている.我々はさらにハチマキには装着者への運動や認知の能力の向上を促す効果があると考えている.そこで本研究では認知能力の向上に着目した実験タスクを構築し,ハチマキの有無で成績に差違があるかどうかを検証する.本稿では,参考の二次方程式を呈示し表示された第二項の符号と第三項の符号が同符号か異符号かを判別する実験タスクを行う.その際,二次方程式の上部に「同符号」ないしは「異符号」と表示される.二次方程式に上部に表示された符号の状態と二次方程式の符号の状態が同一である場合に被験者は即座にボタンを押す.本実験課題を行った際の正答率と反応速度に着目する.本実験タスクの結果,ハチマキをしなかった場合の正答率が97.08%であるのに対して,ハチマキをした場合の正答率が98.98%と正答率が向上した.ハチマキをしなかった場合の正答率とハチマキをした場合の正答率をt検定にて検定を行ったところ,p<0.01で有意差を得た.本結果より,頭部にハチマキを装着すると「規則に従って物事を正確に判別するための認知能力」が向上することが示唆された.

  • 久保田 康佑, 眞田 笑吉, 吉田 和弘, 酒井 利奈, 氏平 政伸
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 473
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【背景】体内埋め込み材料として用いられているチタンは、骨との親和性が高い事から癒着を引き起こしデバイスの抜去に難渋するという問題がある。そこで優れた生体適合性と硬度を有するDiamond Like Carbon(以降DLC)をチタンにコーティングすることで骨との癒着を防止する材料になり得ると考えた。本研究は、DLCコーティングが骨形成抑制へ与える影響をin vitro試験により評価することを目的とした。【方法】純チタン2種プレートにイオン化蒸着法によりDLCコーティングを施した。比較対照には純チタン2種を用いた。細胞にはマウス頭蓋冠由来骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)を用いた。培養液は α-MEM [10 % ウシ胎児血清、1 % 抗生物質添加]を用い、37℃、5 % CO 2インキュベータ内で培養した。骨形成抑制評価は、DLCおよびチタンプレートにそれぞれ培養面積0.3 cm2となるシリコン製チャンバーを取り付け、6 × 104 cells/mlの細胞懸濁液を0.2 ml/wellで播種し、4日間培養を行った。培養後、血球計算版を用いて細胞数を数え、ラボアッセイTMALPを用いることで単位細胞数当たりのALP活性を算出した。【結果・考察】DLCコーティングチタンのALP活性はチタンに比べて有意に低い値を示した。これより、DLCコーティングチタンは骨形成を抑制する可能性が示唆された。

  • 桐原 佑司, Zugui Peng, Hiromu Miyata, Kenta Shimba, Yoshitaka Miyamoto, To ...
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 474
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    In recent years, special attention has been paid to the artificial skeletal muscle. Its transplantation is expected to be useful for treatment of a variety of diseases. However, compared with living tissues, artificial skeletal muscle shows a smaller contraction force. One of the solutions for this problem is to insert magnetic nanoparticles into artificial skeletal muscle cells to support their contraction by utilizing magnetic field. Though encapsulating the magnetite in cationic liposome is previously considered necessary, the cationic liposomes possibly has an adverse effect on cells. For this purpose, we examined the amount of magnetite nanoparticles in the medium and the number of cells responding to the magnet field. Our results show that the number of cells responding to the magnet increases when the amount of magnetite increases, but it is not proportional.

  • 関根 一光, 馬場 麻人, 浜田 賢一
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 475
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    我々はこれまで,生体内インプラントとしてチタン微粒粉の焼結によるチタン多孔体の開発を進めてきたが,多孔体構造のその拡大された材料表面積をより効果的に活用するため,早期の細胞接着性とそれによる癒合促進を目的とした表面処理を併せ持たせた,ハイブリッドチタンスキャフォールドの開発を行なっている。本課題はこの構造を骨代替材料としての応用を目的に評価検討をおこなった。チタン多孔体試料は,ふるい調整した球形チタンに対し,歯科用ワックスを溶解混合し,円盤型に成形した。冷却後に1,100℃焼結することでチタン多孔体を作成した。また同円盤サイズの純チタン片を対照群とした。試料片は未処理群,水酸化処理後のウレタン様処理をおこなったものを処理群に分類した。評価として,1) 骨芽細胞様細胞の播種による24時間および48時間での細胞接着性評価2) 5週齢ラットの頭蓋骨への埋入後,1週後および2週後に対皮下,および対骨の引き抜き性試験と組織切片評価,をそれぞれおこなった。1) 処理群は未処理群と比して約40%の接着細胞の増加が確認され,また多孔体試料では内部空孔への細胞の侵入も確認された。2) 純チタンの対照群は対皮下,対骨のいずれにおいても摘出時に脱落するほどの強度で高い癒合性は確認できなかった。多孔体試料では対皮下,対骨いずれにおいても癒合強度が処理群>未処理群となり,その差はいずれもおよそ1.3倍程度であった。

  • 川田 徹, 李 梅花, 鄭 燦, 西川 拓也, 羽山 陽介, 上村 和紀, 杉町 勝, 末原 達, 澤田 賢志, 上之原 美奈子, 田中 哲 ...
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 476
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【背景】腎交感神経は腎血管を収縮させて尿量を減らす方向に作用する。しかし、これまでの正常血圧のWistar-Kyotoラットを用いた研究から、内因性に全身の交感神経活動が増大し、能動的に血圧が上昇する状況では、血圧上昇による圧利尿が優位になり、尿量が増えることが分かっている。【目的】腎神経の有無が動脈圧反射を介する利尿に及ぼす影響を高血圧自然発症ラット(SHR)にて検討する。【方法】SHR (n=6)において麻酔下に腎血管周囲にフェノールを塗布し、片側腎除神経を行った。術後4~7日目に麻酔下の急性実験を実施した。大腿動脈よりAPを測定し、左側腹部切開で内臓交感神経を剖出し、ワイヤー電極を装着して交感神経活動を測定した。左右の尿管にそれぞれカテーテルを挿入し、分時尿量を測定した。両側の頚動脈洞圧受容器領域を体循環系から分離して、サーボポンプを用いて内圧を60~220 mmHgの範囲で変化させ、内臓交感神経活動、体血圧、正常側及び除神経側の尿量変化を調べた。実験終了後に腎組織ノルエピネフリン濃度を測定し、除神経側で正常側の10%以下に低下していることを確認した。【結果】体血圧と尿量の関係を直線回帰したところ、正常側と除神経側とで有意差は無かった[0.129±0.046 vs. 0.160±0.032 (μL/min/kg)/mmHg]。これらの値はWistar-Kyotoラットに比べて小さかった。【結論】SHRでは圧-利尿関係の傾きが小さく、交感神経による利尿の調節能も悪化している。

  • 鈴木 立人, Octavio Zamudio Lopez, Nikolaos Papadosifos, Derrick Boampong, ...
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 477
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    The aim of this study is to investigate how soft footway reduce the risk of knee problems and encourage walking. Two vulcanized multilayer Mondo tracks were investigated as soft footways, compared with a concrete surface. The hardnesses of the soft footways were 58 (Red) and 55 (Blue) in shore A, and the thicknesses were 6mm and 13.5mm respectively. Vertical ground reaction force (vGRF) was analysed by an insole pressure sensing system (Tekscan Fscan). Three middle-aged participants joined a pilot experiment. The results showed low impact at heal strike as the 1st peak of the vGRF was dropped in all participants. A sedentary participant showed reduced first peak and raised second peak in vGRF on the Blue surface. This sedentary participant had better shock absorbing at heal strike and better kicking at toe off. We are now analysing extended number of participants cases.

  • 堀田 蛍, 菅原 俊継, 大西 新介, 山下 政司, 清水 久恵
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 478
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    ドクターヘリやドクターカーなどの普及によりプレホスピタル診療が増加しており、外傷患者を屋外で診療する機会が増えている。外傷患者の場合、循環血液量が減少するため、輸液が必要となることがある。また、循環血液量の減少に伴い低体温に陥りやすく、血液凝固障害を悪化させることから、輸液を加温することが推奨されている。昨冬、道内においてドクターヘリによる外傷患者の救助活動中、屋外気温が-10℃以下という低温環境下で輸液が試みられ、チューブ内で輸液が凍った経験をした。そこで本研究では、低温環境下で輸液温がどの程度低下するのかを調べ、輸液温の低下の防止策を検討することとした。本報告では、北海道の冬季の屋外で輸液を行うことを想定して、0℃以下に保たれた実験室で40℃に加温した生理食塩水、酢酸リンゲル液を用いて10分間の輸液を行い、輸液温の時間変化を測定した。このとき、チューブ内を流れる輸液の温度を、輸液チューブの患者接続部内側に挿入した熱電対で1分毎に測定した。その結果、輸液温は時間経過に伴って低下し、10分後には屋外気温に近づくことが分かった(温度差0.2~1.2℃)。10分後の輸液バックの温度を測定すると30℃以上を保っていた。輸液はチューブ内で冷やされてしまい、患者の体内へ送られるまで加温した温度が保たれていないことが示されたため、輸液チューブの加温または保温が必要であると考えられた。

  • 荒毛 将史, Hiroyuki Ohta, Aki Trusuhara, Yasushi Kobayashi, Nariyoshi Shin ...
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 480
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Measuring event-related potentials (ERPs) is a useful method to understand cognition in goal directed behavior. Recently, extracting ERPs from the events occur in the simulated and real environments has drawn attention. However, such a method is still not practical because it is difficult to record event markers with EEG. To measure ERPs elicited by task-related events in the simulated environment, the functions for generating event markers were implemented in the control program of the first-person shooter game with the immersive virtual reality. To test this, EEG was recorded while participants playing the game. As a result, error related negativity (ERN), correct related negativity (CRN) and N2-P3 elicited by shooting-related events were extracted. ERN and P3 amplitudes were correlated with the individual performance. The generators of ERPs were estimated in the regions consistent with the previous studies. Those results will contribute for evaluating cognitive function by ERPs in the simulated environment.

  • 山村 隆晟, 篠原 健太, 木戸 倫子, 長倉 俊明
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 481
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年病院での、様々な薬品の臭いや利用者からの体臭、排泄臭、ゴミ臭、排水臭などが問題になっている。そこで、これらの臭い成分を除去するために光触媒である酸化チタンの酸化分解反応に着目した。 酸化チタンには主にアナタース型、ルチル型、ブルッカイト型の三種類の結晶構造があり、先行研究で使われていたルチル型に加え、本研究ではアナタース型酸化チタンも用いて臭気除去の比較検討行う。酸化チタンは酸化分解反応が発生する際に、悪臭などの有害物質が水分子と二酸化炭素に分解されることを利用し、本研究では湿度と二酸化炭素濃度を測ることで臭気成分の評価をした。 臭気物質には病院で一般的な気化エタノールを用い、これは完全に分解されると二酸化炭素と水が産生される。測定方法は密閉容器に気化エタノールを入れ酸化チタンに紫外線を照射する。そして、その際のエタノール濃度とアセトアルデヒド濃度をガラス検知管で二酸化炭素濃度を赤外線二酸化炭素濃度計、水蒸気量を半導体湿度計を用い、それぞれ計測し、酸化チタンの酸化分解反応を評価する。それと同時に複数のパネラーを用意し官能試験でルチル型の装置とアナタース型の装置で同様の計測を行った。 その結果、ルチル型よりアナタース型の方がエタノール濃度が減少し、酸化物である水蒸気量が増加しているので、エタノールの分解が促進しているので有機物分解能力が高いと確認できた。

  • 土井 滉太, 篠原 健太, 木戸 倫子, 長倉 俊明
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 482
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    病院内には、様々な臭いが存在している。臭いを感じた脳は、興奮し安静が保てなくなるばかりか医療スタッフの職場環境として好ましく無い。そうした中で不快な臭いを除去することは、医療の質が保たれるだけでなく病院環境の点からも好ましい。例えば、酢酸は人工透析装置の洗浄にも使われており病院内で幅広く使用されている。酢酸は刺激臭であるため除去することが望ましい。 そのため本研究では、酸化チタンの酸化分解反応を用いて臭気除去を行った。酸化チタンは380nm以下の紫外線が照射されると、そこに存在する臭気物質が酸化分解反応を起こし、最終的にH2OとCO2に分解する。本研究では密閉された測定容器内に酢酸の気体を入れ、酸化チタンによる酢酸の分解反応をガラス検知管で酢酸濃度を測定し、同時に二酸化炭素濃度、水蒸気量も計測することで臭気分子の減少と分解分子の増加を計測した。またさらに臭いの強さは、感覚的なものであるため、定量化するために臭気気体を希釈してヒトの嗅覚で判定する6段階臭気強度法による官能試験も行った。酢酸臭気の減少を臭気官能試験による時間経過で確認した。これらの定量的測定結果より、酸化チタンによる酢酸の分解を定量的に確認できた。

  • 安井 誉, 篠原 健太, 木戸 倫子, 長倉 俊明
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 483
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    (はじめに)化学物質による臭気は病院でも問題視されており、薬剤や病気特有の臭気などが多数存在している。有害物質を含んだ臭気の除去は患者環境や医療の質の向上に繋がると考える。しかし、医療現場では限られたスペースしかなく、大型の空気清浄機を設置する場所はあまりない。(目的)そこで先行研究にて臭気除去の確認がされてきた酸化チタンを用いて小型で臭気除去能力の高い装置の設計、開発を行う。これにより限られた環境での運用を目指す。酸化チタンは光触媒の一種で紫外線を照射することにより光触媒に接触した臭気物質に酸化分解反応が発生して分解が行われる。(結果と結論)改良の重要なの点は臭気の臭気物質が酸化チタンの表面に接し、紫外線との反応が効率よくなることなので、取り込む空気の流れ、紫外線の照射方法、分解効率の良い酸化チタン膜の作成等の改良を行った。さらに分解効率の良い結晶構造の異なるルチル型からアナターセ型への変更、光触媒と紫外線光源との距離の変更や380nm付近の波長を出すUV-LEDの変更を検討している。往来の装置では電流 1.07A 電圧 14.3Vであったが、電力等の最適化を行うことにより分解効率が改善した。

  • 福原 真一, 岡 久雄
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 484
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年、本邦でのスポーツや運動への関心が高まっており、スポーツの参画人口の増加やその市場の拡大が見込まれている。スポーツ等での運動能力は最大筋力や繰返し回数、最高タイム等の量的な評価項目がほとんどであり、直接的には対象筋の収縮能力を評価していないことが多い。筋の機械的活動を反映する筋音図(MMG)と電気的活動を反映する筋電図(EMG)はそれぞれ筋収縮の入出力信号と捉えられることから、MMG / EMGは筋収縮時の筋固有の利得すなわちパフォーマンスの指標として解釈することができる。そこで本研究は、リカンベントバイク・ペダリング中の内側広筋にMMGとEMGの同時計測が可能なMMG / EMGハイブリッドセンサを取り付け、負荷を漸増させたときのMMG/EMGが筋収縮のパフォーマンス指標となり得るかを検討した。健常成人男性10名を対象に、ペダリング負荷を30から150Wまでの4段階として、各負荷30rpm一定にペダリングを維持した。その結果、ペダリング負荷が高負荷になるにしたがってMMG / EMGは減少する傾向が見られた。高負荷では一定のペダリングスピードを維持するためにより努力してペダリングしなければならず、運動に対する筋の予備能(余力)が低下していると考えられる。このことから、低~高負荷でのMMG / EMGの変化は動的運動中の筋のパフォーマンスの推移を反映していることが示唆された。

  • 石川 宏輔, 原 一晃, 赤木 友紀, 中川 桂一, 佐久間 一郎, 富井 直輝, 小林 英津子
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 485
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    自動手術におけるマニピュレータ操作や医師による腹腔鏡下手術の際には,腹腔鏡画像からの視覚的フィードバックを基にhand-eye coordinationを行っている.しかし,2次元画像からの術具の3次元的な位置姿勢推定が困難であるため操作精度に限界がある.近年,深層学習(deep learning, DL)を用いて画像内の術具関節位置検出に基づく位置姿勢推定が提案されているが,関節位置等の中間情報の推定精度に位置姿勢推定の精度が影響され,ロバスト性が懸念される.そこで本研究では単眼腹腔鏡画像のみから,深層学習を用いて術具の位置姿勢を直接推定する事を目的とし,シミュレーションを用いた検討を行った.術具位置姿勢は,腹腔鏡座標系(X:画像右方向,Y:画像上方向,Z:光軸奥行き方向)における先端座標(x,y,z),及び術具長軸方向を表すベクトル(ux,uy,uz)からなる6次元の位置姿勢ベクトルで定義した.術具の奥行き方向が正(uz>0)の範囲内でランダムに生成した位置姿勢ベクトルと,そこから3Dレンダリングによって生成した術具画像を学習データセットとして用いた.ニューラルネットワークにはResNet18の後段に全結合層を2層連結し,上記位置姿勢ベクトルを出力する深層回帰モデルを用いた.結果,平均位置誤差24.91±9.46 mm,平均方向誤差20.5±8.4 degの結果が得られた.以上よりDLによる単眼画像からの手術器具の位置姿勢推定の可能性を示した.

  • 岩本 侑哉, 丹羽 悠介, 河中 治樹, 小栗 宏次
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 486
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    計量カップを用いない尿量計測手法として,これまでに画像処理を用いた液体流量推定が提案されている.この手法では排尿時に空中に放出された尿を撮影し,その各画像内で液体流脈線を放物線近似することで多重円柱モデルに当てはめて総流量を求める.しかし,先行研究では男性用小便器を想定して計測装置が構築されていた.多重円柱モデルの前提条件である液体の運動平面と画像投影面との幾何学的並行性から,これを洋式便器に組み込む際には画像センサを便座上面に配置する必要があるが,それは現実的ではない.また,男性用小便器と被計測者の位置関係にも強い条件を課しているが,洋式便器を用いて普段通りの排尿をさせる際にはその条件設定にも再考が必要である.そこで本研究では,洋式便器で普段通りの排尿をした際の流量計測を目指して,多重円柱モデルを適用できる画像センサの組込み方法を提案する.まず,複数の男性で洋式便器に座ったときの尿道口の位置を調査し,尿が放射されて洋式便器内に入ってから便鉢に当たるまでの液体の存在範囲を求めた.そして,補高便座を用いて画像センサの設置スペースを確保するとともに,排尿の存在範囲を計測対象とできるレンズ仕様を検討した.加えて,人が便座上に座った際には便鉢空間は暗くなるため,便鉢内にLED照明を組み込むことで,被計測者が計測を意識することなく普段通りに行った排尿を計測可能にする組込みを実現した.

  • 枝並 佳佑, 孫 光鎬, 桐本 哲郎, 黒沢 正樹, 松井 岳巳
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 487
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    レーダを用いた非接触生体計測は,接触式に比べ簡易かつ長時間にわたり生体情報を取得できる点から有益である.心拍動や呼吸運動による胸・腹壁の微小な変化をレーダで捉え,出力信号を周波数解析することで1分間の平均呼吸数と心拍数を算出する.しかし,レーダから計測された心拍と呼吸信号には心拍変動や情動変化など有用な生体情報が含まれ,心拍と呼吸信号を分離し,より詳細な時系列信号の解析が望まれている.レーダ信号から心拍と呼吸信号の分離手法として,心拍信号(0.8~3.0Hz)と呼吸信号(0.1~0.6Hz)の周波数成分が異なるため,バンドパスフィルタを用いた手法が一般的である.しかし,フィルタ処理による波形のなまりから,心拍信号に含まれる心拍間隔(RRI)などの生体情報が損なわれる傾向がある.本研究では,2台のレーダ信号に対して独立成分分析(ICA)を用いることで,統計的に独立となるように心拍と呼吸信号の分離を試みた.まず,ドップラーレーダの出力信号から独立成分分析を行う数理モデルを導入した.また,レーダに関しては干渉の影響を考慮し,10GHzと24GHzの異なる周波数帯域のドップラーレーダを使用した.提案法の分離精度を確かめるため,心電計を基準として心拍間隔指標と心拍波形のピーク点ごとの時間誤差を算出することにより評価を行い,提案法の心拍信号において心拍間隔の高精度な測定可能性を示した.

  • 佐藤 敏夫, 鈴木 亮也, 巻田 浩輝, 奥 知子, 山内 忍, 本橋 由香
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 489
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    我々は、血液凝固に影響を及ぼすエアトラップチャンバの要因を(1)チャンバ長さLP、(2)流入口角度θ、(3)濾過フィルタ形状の3点に絞り、血液凝固が発生しにくい理想的なチャンバ形状を提案することを目指している。今回の報告ではまず、模擬凝固塊を作製し、それがエアドリップチャンバの濾過フィルタで捕捉されることによって回路内圧が上昇するという凝固過程の模擬について検討した。また、静脈側エアトラップチャンバの(1)チャンバ長さLP、(2)流入口角度θ、(3)濾過フィルタ形状の違いが血液凝固に及ぼす影響についても調査した。まず、牛乳に酸を加えることで牛乳タンパク質が凝固して模擬凝固塊が生成され、それが濾過フィルタで捕捉されることで、血液回路内圧が徐々に上昇する血液凝固過程をうまく模擬することができた。次に、試作した6種類のチャンバの凝固完了までの時間TCOAGを調べたところ、濾過フィルタ形状がメッシュ型については、チャンバ長さLPが短くなるほどTCOAGが長くなり、凝固が発生しにくい傾向があることがわかった。また、3Dプリンターで試作した流入口角度θ=30°のチャンバを試作し、回路内圧上昇に要する時間を調べたところ、θ=30°のチャンバの方が0°のチャンバより回路内圧上昇に要する時間が長くなった。この結果から流入口角度についても、血液凝固の発生を抑えることができる最適流入口角度が存在する可能性が示唆された。

  • 三堀 雅弥, 奥 知子, 山内 忍, 本橋 由香, 佐藤 敏夫, 阿岸 鉄三
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 490
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    生体音分析装置Bio Sound Analyzerを用いて測定した嚥下音をウェーブレット変換することによって定量的かつリアルタイムで嚥下機能を評価するための新しいスクリーニング検査方法を提案している。これまでの嚥下音測定と嚥下造影画像の同時測定結果から、嚥下音は3つの音(第1音、第2音、第3音)によって構成されていて、これらの時間的位置関係を表すSwallowing Function Parameter (SFP)を導入することでより嚥下機能が判定することができるようになった。これまでに被験者の喉表面の輪状軟骨直下気管外側上に加速度センサを装着して嚥下音を採取したが、第2音は常に明瞭に得られるものの、第1音と第3音が得られないか、あるいは得られても振幅が極端に小さいケースが散見され、嚥下音測定の安定性と再現性に問題があった。そこで嚥下音を常に安定して採取するための方法を検討した後、温度の異なる水ゼリーが嚥下機能に及ぼす影響について調査した。その結果、第1音と第3音採取用センサ装着位置は舌骨直上が妥当であり、性差に関わらず嚥下音を良好に採取することができるようになった。また、温度の異なる水ゼリーのテクスチャー試験を実施し、温度の違いがゼリー食の物性と嚥下動態に及ぼす影響を調査したところ、SFP値は20℃の水ゼリー嚥下時に最も低下したことから、嚥下障害患者にゼリー食を用いる際には、温度の違いによる硬さの変化を十分に考慮する必要があると考えられた。

  • 佐々木 一真, 新江 義正, 奥 知子, 山内 忍, 本橋 由香, 佐藤 敏夫, 阿岸 鉄三
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 491
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    我々は維持透析患者のVascular Access(VA)に加速度センサを装着し、生体音分析装置を用いて測定したシャント音から、周波数領域における経時変化を定量的に表す正規化相互相関係数Rを用いた新しいVA機能評価方法を提案している。維持透析患者のVAでは、大量の血液が動脈から静脈に急速に流れ込むため、動静脈吻合部(ArterioVenous Fistula:AVF)付近や狭窄部位では流速が速く、ジェット様の流れや乱流・渦流が発生し、血管壁を振動させることでシャント音が発生するといわれている。また、AVF近傍の静脈が狭窄好発部位と報告されているが、血流状態とシャント音の音響特性について実験的に検証した報告はあまり見当たらない。今回は、径狭窄率の異なるAVFモデルの吻合部下流の流出静脈で擬似シャント音を測定・分析するとともに、管内の流れを粒子画像流速測定法を用いて可視化し、血流状態がシャント音の音響特性に与える影響を明らかにすることを試みた。その結果、径狭窄率が低い場合の吻合部下流では、流れが層流で、擬似シャント音は低周波数成分が主成分の音であった。その一方で、径狭窄率が高くなるにつれて流れが大きく乱れ、渦流を形成し、擬似シャント音は高周波数成分が主成分の音に変化していたことから、シャント音の音響特性には管内の流れの変化が影響を及ぼしている可能性が示唆された。

  • 鈴木 博子, 佐々木 優貴乃, 奥 知子, 山内 忍, 本橋 由香, 佐藤 敏夫
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 494
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    へばりつき現象は、血液透析用ダブルルーメンカテーテル(DLC)の臨床使用上に大きな問題となっている。そこで我々は、へばりつき現象の発生を抑圧できるDLCの先端形状に関する検討を行ってきた。本研究では、生体血管のヤング率に近いと言われているブタの下大静脈を用い、生体に近い条件でへばりつき現象の発生を再現、かつ定量的に評価できるシステムについて検討した。作製したシステムを用いてブタ下大静脈内に水を循環し、ブタ下大静脈中心部に先端部が位置するようにコアクシャル型DLC(CO-DLC)を留置した。DLCからの脱血流量200mL/minに設定し、ブタ下大静脈内の循環設定流量を300mL/minから50mL/minずつ下げていった時の実流量と脱血圧をそれぞれ測定した。DLCをサイドホール型DLC(SH-DLC)とエンドホール型DLC(EH-DLC)に変更した場合の実流量と脱血圧の連続測定を行い、3種類のDLCの比較を行った。また、末端孔の開孔率の変更によるへばりつき現象の変化の検討を行うため、既存のCO-DLCの末端孔の開孔率を変化させた。開孔率の変更方法としては、内筒の外径を変更するために、内筒に両面テープを巻きつけ、その上からセロハンテープを巻きつける。更にその上に塗料を塗って、テープが剥がれないようにコーティングを行った。これをシステムを用いて、循環設定流量を変化させた時の実流量と脱血圧をそれぞれ連続測定した。

  • 山内 忍, 奥 知子, 本橋 由香, 佐藤 敏夫
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 495
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    人工心肺回路の脱血側では狭窄部で圧力損失が大きくなり、送血側では血液回路内で最も内径が小さい送血カニューレ部で圧力損失が大きくなり、脱血回路狭窄後や送血カニューレ先端部でキャビテーションが発生し、キャビテーション気泡の崩壊時に血液の溶血が発生すると言われている。本研究では、人工心肺装置操作中の血液回路に発生し、溶血の原因と言われているキャビテーションを、ルミノールの発光現象を観察することで可視化する目的とする。人工心肺脱血回路として一般的に用いられている1/2インチチューブを人工心肺用ローラーポンプに装着し、チューブ内にルミノール溶液を循環させた。ローラーポンプ吐出側のチューブを鉗子で狭窄し、脱血回路狭窄後に気泡が発生する様子と、ルミノールの発光現象を、デジタル一眼レフカメラを用いて撮影した。結果として、狭窄後に気泡の発生が観察されたが、ルミノールの発光現象は観察できなかった。発光現象が見られなった原因として流れが影響している可能性が考えられたため、超音波発生装置を用いて流れがある状態でのキャビテーション発生について実験を行った結果、流れがある状態でも音響的キャビテーションによってルミノールの発光現象を観察することができた。本実験より、血液回路内に発生した気泡については発光が観察できなかったため、音響的キャビテーションのようなエネルギーがないことが示唆された。

  • 藤巻 雅博, 清 来夢, 根武谷 吾, 吉田 和弘, 酒井 利奈, 氏平 政伸
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 496
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

     移植医療において高い成功率を得るためには,使用される生体組織や細胞の生存状態を管理する必要がある.現在,それらの保存方法の1つとして冷温(0~4℃)が用いられるが,冷温による能動輸送停止に伴う細胞膜完全性の喪失や不可逆的な機能低下(細胞障害)により短時間で生存率が低下する.そこで本研究では,冷温保存における非侵襲的かつリアルタイムな細胞生存率の評価手段として電気インピーダンス計測の利用を実現するために,基礎的検討を行った.電極付きチャンバに単層培養したラット心臓横紋筋細胞の試料を4℃で0~48 h保存し,任意時間の細胞生存率評価と細胞の電気インピーダンス周波数特性計測(10~100 kHz)を行った.また,細胞生存率は水溶性テトラゾリウム塩により評価された(WST-8).その結果,細胞生存率は冷温保存0~6 hで急激に低下し,6~24 hでは保存時間が長くなるにつれて更に低下し,それ以降は低値でほぼ一定となった.同様に,電気インピーダンスも冷温保存3~6 hで低下がみられた.これらのことより,冷温保存によって細胞膜の完全性が喪失しその結果,細胞障害により生存率が低下し,同時に,細胞膜のコンデンサ機能の喪失により電気インピーダンスが低下したと考えられた.よって,単層培養細胞の冷温保存において,保存時間の経過に依存した細胞生存率の低下を電気インピーダンス計測でリアルタイムに捉えられる可能性が示唆された.

  • 土井根 礼音, 瀬田 広明, 本間 章彦, 福井 康裕, 坂牧 孝規
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 497
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    操船シミュレータは、陸上において、実際の船橋を模擬し、被訓練者の操船状況に応じて船外の風景を提示する訓練装置である。多くの被訓練者は、床が揺れていないにも関わらず、船舶動揺があるような感覚を覚える。本研究の目的は、操船シミュレータが提示する波浪映像に対する生体の立位姿勢動揺の影響を解明することである。被訓練者の立位姿勢動揺の解析は、生体の頭部および腰部の加速度・角加速度、重心動揺、エネルギー消費量について行った。本研究では、重心動揺の解析は、重心動揺の軌跡を前後・左右方向に分解し、左右方向の軌跡長に対する前後方向の軌跡長の比と、その回帰直線の傾きを指標とする方法を考案した。操船シミュレータで模擬する船舶は、長さ39.8m、幅9.0mの高速船とし、オートパイロットで針路を0°、船速を15kn、無風、波は高さを3m、周期を8s、波向きを180°、135°、90°とした。比較実験として、船舶が停止し、波のない状態についても再現した。実験は実験協力者8名を対象として実施した。加速度・角加速度およびエネルギー消費量は、波向きの違いによって、有意差は検出されなかった。重心動揺は、波向きに応じて、重心動揺が異なることが示された。操船シミュレータの被訓練者の感じる立位姿勢動揺は、小型船舶乗船時と同じ身体的な運動量として検出することは難しいが、波浪映像の波向きに応じた重心動揺として検出されることが確認された。

  • 奥 知子, 山内 忍, 本橋 由香, 佐藤 敏夫, 阿岸 鉄三, 島崎 直也
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 498
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    血液浄化療法において十分な脱血量を確保することは、浄化効率を維持するためにも重要である。透析用留置針は、穿刺時の痛みやバスキュラーアクセスの荒廃、止血時間を考慮すると、細径の留置針を用いることが理想的であるが、細径の留置針では設定した脱血量と実流量に差が生じ、浄化効率が低下するとの報告がある。我々は、細径でも脱血量を十分に確保できる留置針の開発を目的として、数値流体力学(Computational Fluid Dynamics : CFD)を導入し、理論的な検討を実施してきた。本報告では、流路の形状に着目しストレートタイプとハイフロータイプ留置針の実流量と吸引圧、留置針内の圧力分布を測定した。また、ハイフロー留置針のCFD解析を行った。その結果、ストレートタイプとハイフロータイプを比較すると、ハイフロータイプの方が設定流量と実流量の差が小さかった。また、同じ吸引圧でもハイフロータイプの方が実流量を確保できることが確認された。さらに、留置針内の圧力分布は、留置針先端では差異はないが、先端から50 mmではストレートタイプに比べハイフロータイプの吸引圧は小さかった。よって、ハイフロータイプ留置針の場合、針基部における吸引圧が針先端へ効率的に伝達されていることがわかり、流路の形状が吸引圧に影響していることが確認された。ハイフロータイプに対するCFD解析結果と実流量測定結果はよく一致し、CFD解析の有効性が確認できた。

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