生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
Annual58 巻, Abstract 号
選択された号の論文の376件中151~200を表示しています
  • 冨永 真由, 賀谷 彰夫, 新田 尚隆
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 254
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    カテーテル出口部の感染問題を解決するため、皮膚に貼り付け可能な平面超音波振動子を用いて体内に留置されたカフ表面の酸化チタン粒子に超音波を照射し、活性酸素種(ROS)の生成が促進される効果を利用した感染防止システムの研究が行われている(冨永ら:第58回日本生体医工学会大会(2019))。これまで、ROS生成の可能性は示されたが、経皮的な超音波照射を行う際の安全性を確保しつつ、ROS生成を最大化するための条件の探索は行われてこなかった。そこで本研究では、この条件の探索を行った。試作した平面超音波振動子は、中心周波数500 kHz、直径45 mmの円形であり、PZT両面には電極とリード線が取り付けられ、放射面は厚さ0.1 mmのシリコンシートで被覆されたものである。ROS生成の評価として、希釈メチレンブルー(MB)溶液15 mlと粒径250 nmの酸化チタン粒子(5 ~ 30 mg)の懸濁液をポリスチレンカップに入れ、その底面から1 ~ 3 Wの強度の連続波超音波を5 ~ 15分間照射した。照射後の懸濁液から、遠心分離により粒子のみを除去し、分光光度計を用いてMB溶液の吸光度を測定した。また安全性の評価として、IEC60601-2-37準拠の温度評価ファントムを用いて放射面の温度上昇を測定した。その結果、今回探索した条件の範囲では、放射面の温度上昇を抑制しつつROS生成を最大化する条件として、1Wの超音波強度、10 mgの酸化チタン粒子量、15分間の超音波照射時間が抽出された。

  • 永嶋 裕也, 伊藤 大剛, 小倉 亮, 富永 孝紀, 小野 弓絵
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 255
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    我々は脳卒中患者の自宅における転倒防止や歩行機能の改善を目的として、院内で自宅環境を再現し歩行訓練を行う仮想現実(Virtual Reality(VR))システムの開発を行っている。本研究ではVR空間内の壁や家具(オブジェクト)との衝突情報のフィードバック(FB)が歩行様式に与える影響を調査するために、若年健常者を対象に自宅環境を模擬したモデルルームVR内の自由歩行訓練を行い、オブジェクトとの衝突回数、歩行時間、歩数の変化を調査した。VR空間の提示にはスタンドアロン型ヘッドマウントディスプレイを用い、被験者はオブジェクトが配置されたモデルルーム内を一周する歩行テストを4回連続で行った。壁や家具などのオブジェクトと衝突すると視覚、聴覚、触覚の多感覚FBが付与されるFBあり群(n = 16)と、付与しないFBなし群(n = 20)を設けた。初回と4回目の歩行を比較した結果、FBあり群では衝突回数の減少数が1.0回,FBなし群では0.0回(中央値)となり、FBあり群で減少していたが、有意差は認めなかった。歩行時間、歩数も同様の結果であった。これは、被験者の歩行機能が正常で歩行前後の衝突回数の差が少なかったことに加え、FB有り群の被験者数が少なく検出力が十分ではなかったことが原因として考えられる。今後FBあり群の被験者を増やし、FBの効果についてさらに検討を行う必要がある。

  • 吉田 雅毅, 宮本 裕一, 戸井田 昌宏
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 256
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    PDT(光線力学治療)は表在性早期肺がんの治療に適応されているが、PDTは深部に達した腫瘍には適応外である。使用するレザフィリンの光吸収率が最も高いピーク波長は405nmだが、その光波長ではヘモグロビンの吸収が大きいため組織の深達度は低い。本研究ではその問題点に着目し、近赤外光を励起に用いる2光子励起PDTの探索を目的とした。通常、光励起は吸収波長で行う1光子励起である。しかしピークパワーの大きい場合には吸収波長の2倍の励起光でも光励起が生じるが、励起効率は非常に低い。だがレザフィリンの光吸収波長である405nmでは吸収率がとても高いので810nmによる2光子励起の効果が期待できる。一方664nmの倍波長である1328nmでは664nmの光での吸収率がそれほど高くないが、光散乱減衰は810nmよりは小さい。このため2光子励起レザフィリンPDTにおいて810nmと1328nmの2光子励起効率を比較する。このため光源として両波長発振可能で高ピークパワーが得られる波長可変光源としてNd:YAG SHG励起KTP-OPOを開発した。出力鏡を入れ替えることでシグナル光またはアイドラ―光を選択し、KTPの位相整合角の調整により810nmないし1328nmへ制御する。今回シグナル光では800nm~900nm、アイドラ―光では1300nm~1550nmの波長可変域および810nm、1328nmにおいてそれぞれ最大平均出力200mW、ピークパワー200kWが得られた。

  • 玉野 敬五, 北野 蒼作, 小松崎 俊彦, 田村 昌也, 松本 勲, 内藤 尚, 田中 志信
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 257
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    体腔鏡下手術は低侵襲な手術方法であり,術後のQOL向上を期待できる事から, 開腹・開胸手術に代わり近年急速に普及しつつある.しかしこれらに用いられる手術器具は大部分が直管部で構成され,可動範囲の制限や器具同士の干渉,死角の発生などの問題がある.これらを解決するために種々の多関節マニピュレータの開発が試みられているものの,機構が複雑でシステム全体が大がかりで実用化には至っていない そこで本研究では,簡易構造で任意の関節を自由に屈曲可能な体腔鏡手術支援用多関節マニピュレータの具現化を最終目標とし,関節部に外部磁場により剛性を変化させることができる「磁気粘弾性ゲル:MRG」を利用したマニピュレータを新たに考案し,昨年はその構造概要や性能試験結果,またMRGの特性等について報告した.今回はコイル部での発熱量の低減を目的として,永久磁石と電磁石を併用した新構造関節部を考案し,磁気回路シミュレーションを行った.その結果,電磁石への電流印加により永久磁石の磁場を十分に打ち消せていることが確認できたため,上記の解析結果に基づいたプロトタイプを作成した.この新構造関節部を用いて屈曲試験等を実施し,電流印加前後における剛性変化の大きさや屈曲角度の差について検討した結果,従来関節の性能を維持しつつ通電時間を大幅に短縮可能であることが確認された.

  • LIU Wenrui, Keiichiro Honda, Yoshikatsu Tanahashi, Noriko Tsuruoka, Ha ...
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 258
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    During urethral lithotripsy, a flexible ureteroscope is inserted into the kidney through urethra and bladder. The calculus inside the kidney is crushed by laser transmitted through an optical fiber which is inserted through channel of the ureteroscope. Because of the complex and elaborate structure in the kidney, sometimes it is hard for an ureteroscope which has a fixed optical fiber to reach the targeted calculus. In order to solve this problem, an actuator device was fabricated which has the ability to control the laser irradiation position precisely in the view of ureteroscope by bending the optical fiber with SMA (Shape Memory Alloy) wires. In this study, the structure of the device was improved to enable bending in any direction by slacken SMA wires. The new performances of it such as bending angle and response time were measured to confirm the functions.

  • 和唐 純平
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 259
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    赤外線サーモグラフィは,現在の医療現場では殆ど利用されていない.近年,スマートフォンに専用のカメラを装着する,携帯性に優れた簡便な方式が,建築現場や電気設備の点検で利用されている.この携帯性のあるサーモグラフィにより,サーモグラフィの利用範囲は拡大すると思われる.医療現場,特に形成外科領域においては,大腿皮弁の穿通枝検索の際,スマートフォンを用いた赤外線サーモグラフィ(FLIR one)でHot spotを示す箇所が,ドップラー検査で反応のあった箇所と,高い相同性が示された.そこで,当院及び関連施設で2018年4月から2019年12月までに,臀部,下腿,腹部に皮弁作成を試みた11症例に対し,術前にFLIR oneを使用し,Hot spotにドップラー検査を施行した.全30箇所のHot spotに対し,24か所でドップラーを聴取した.感度は100%,特異度は80%で,高い相同性を認め, 視認性が良く,携帯性に優れた.またドップラー検査と併用することで, 穿通枝検索の時間が短縮された. 経済的かつ非侵襲的に,症例ごとの穿通枝皮弁の血行動態を術前に予測することも可能と考えられた.さらにあらゆる医療従事者により,創傷をモニタリングするモダリティとしての可能性もあると考えた.

  • 金子 晃太郎, 鈴木 孝司, 千葉 慎二, 鷲尾 利克, 矢野 智之, 荒船 龍彦
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 260
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    乳房再建における乳房形状の定量的な評価指標は未だ確立されておらず,それに伴う術後乳房形状の整容性低下が課題として挙げられている.我々は乳腺切除前と再建術中の三次元形状差分情報を求め,局所の形状差情報を患者の皮膚表在へプロジェクションマッピングするシステムを開発し既報にて報告した.本システムを用いた形成外科専門医によるシステム評価により,計算処理が煩雑であること,形状情報がより迅速に把握できることが望ましいなどの課題が明らかとなった.そこで本研究では術前ではなく左右の対側の乳房形状を基準に,形状差情報をリアルタイムに計算してプロジェクションマッピングに反映させる高速投影システムを開発することを目的とした.KinectV2にて計測できる3次元形状情報のうち従来使用したSTLではなく2次元の深度画像であるDepth Mapを利用し,特定のフレームで計測したDepth Mapと現在のDepth Mapの輝度値差分を導出し,プロジェクションマッピングすることとした.システム評価として,まず患者を模擬したマネキン上半身を手術ベッドに設置し,乳房部分を取り外して再建中の形状差を再現し,システムを適用して計測と投影実験を行った.プロジェクタの投影方向に制限は生じるが,従来必要だった三次元形状データ上への形状差分テクスチャ貼り付け工程無しに,形状差情報を皮膚表在へ投影が可能となったので報告する.

  • 中野 由香梨, 寺澤 靖雄
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 261
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【目的】経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を皮質に与えると、脳の働きが増強されることが報告されている。人工視覚では、連続的に刺激を与えるとフォスフェンが見えにくくなることが知られているが、我々はtDCSによりこれが軽減できないかと考えた。本研究では、tDCS前後の網膜への連続電気刺激を評価した。【方法】ウレタン麻酔下のNormalラット(n = 3)の右側視覚皮質を露出させ、皮質に導電性ゲルを通じ陽極tDCS(0.1 mA、10 min)を印加した。皮質へのtDCS前後の電気誘発電位(EEP)を記録した。EEPは、ラットの左眼網膜に連続電気刺激(0.5 ms, cathodic-first, 100発, 20 Hz)を与えることで応答する誘発電位を視覚野より記録した。加算回数は40回とした。各刺激後15 ms付近のネガティブ側ピーク(N1)、30 ms付近のポジティブ側ピーク(P1)の差を本研究ではEEPと定義した。【結果】ピークが明瞭になる21~100発目のEEP平均値を分析に使用した。tDCS前と比較し、tDCS後はEEPの振幅が有意に減少した(p< 0.01, paired t-test)。【考察】EEPが減少したことから、tDCSにより網膜への刺激電流閾値が高くなることが推測される。今後は、tDCSを陰極刺激にすることや人工視覚が対象とする疾患のモデル動物を用いて評価を行う予定である。

  • 川村 勇樹, 大政 光史, 山本 衛
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 262
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    人工股関節は、大腿骨に挿入されるステムと骨盤に設置される寛骨臼カップで構成されている。また、寛骨臼カップは高分子材料製のインナー部と金属製のアウター部に分けられる。ステムの先端は人工骨頭と呼ばれる球状の構造となっており、寛骨臼カップと接触している。このような人工股関節には、脱臼が生じるという課題が残されている。脱臼が生じた場合は再手術が必要となるなど、患者への負担が増加することになる。そこで、我々は構造的に脱臼を防ぐ人工股関節を提案している。本研究では、有限要素法を用いて人工股関節に脱臼が生じる際の引抜き力を解析的に求め、脱臼防止能力と負荷方向との関連について検討した。脱臼防止機構としては、寛骨臼カップが人工骨頭を包み込むことで、容易に脱臼が生じることを防いでいる。有限要素ソフトウェアANSYS 17.2を用いて、人工股関節の有限要素モデルを作成した。インナー部は超高分子量ポリエチレン、人工骨頭とアウター部にはチタン合金の材料定数を割り当てた。寛骨臼カップの底面を固定し、人工骨頭を0°(水平方向)、30°、60°、90°(鉛直方向)方向に引き抜いた。解析の結果、90°方向の引抜き力が最も低値を示した。一方、60°を超えて水平方向に近づくと、急激に引抜き力が増加した。以上の結果から、鉛直方向の引抜き力を評価することで、脱臼防止の評価が可能であるが明らかとなった。

  • 岡本 英治, 矢野 哲也, 関根 一光, 三田村 好矩
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 263
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    背景と目的:大動脈弁位置埋込み軸流型補助人工心臓の経カテーテル設置化にはポンプ外径を8mm以下にする必要がある.しかし,軸シールを必要としない第2世代ポンプでの実現は難しく,第1世代ポンプ化が避けられない.そこで,本研究では,第1世代ポンプとするカテーテル設置式軸流ポンプ用に新たに磁性流体軸シールの開発を行った.方法:開発した磁性流体軸シールは外径4mm×長さ3mmで,外径モータ回転軸に永久磁石を装着し円筒状磁性体の中を回転させる構造とすることで,従来に我々が開発してきた磁性流体軸シールの回転軸の磁性材料化やポールピース構造を回避し,製作が容易な構造とした.また,注入する磁性流体の量が耐圧に影響を与えず,磁性流体注入も容易であることが特徴である.結果:有限要素法磁場解析の結果,従来のポールピース構造をもつ同寸法磁性流体軸シールの耐圧が理論上562mmHgに対し,簡易製作型磁性流体軸シールは理論上432mmHgの耐圧となった.現在,圧力115mmHgを印加し回転速度8000rpmで耐久試験を行っており,2019年12月末現在で120日以上の耐久性を示しており,実験を継続して行っている.結語:カテーテル設置式軸流型血液ポンプ用に開発した製作容易型磁性流体軸シールは,人工心臓用非接触軸シールとして良好な特性を有している.

  • 賀澤 佳奈, 住倉 博仁, 鈴木 憲治, 本間 章彦
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 264
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    小児の先天性心疾患の外科的治療方法の一つとして,右室流出路再建が広く行われている.特にexpanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)を用いた小児用肺動脈人工弁の開発に関する研究が行われており,これら人工弁には生体適合性,抗血栓性,長期耐用性が求められている.ePTFEは高い生体適合性を有しているが,抗血栓性や長期耐用性に関しては流体力学的特性が関与していると報告されている.本研究では,小児用肺動脈人工弁の流体力学的特性を評価可能な性能評価技術の開発を目的とした.今回,小児右心系模擬循環回路を用いて,人工弁の開閉運動を撮影し,画像処理により開口率を算出し検討を行った.模擬循環回路は,人工弁, 拍動ポンプ,チャンバ,リザーバから構成し,人工弁は,ePTFE製小児用二葉弁(14mm)と比較対象として生体弁(19mm, マグナ,カーペンターエドワーズ)を使用した.実験は,体重5 kgの小児を想定し,循環条件を心拍数120 bpm, 収縮期比35 %, 肺動脈圧20-7 mmHg, 流量700 mL/minに調整した後,人工弁の開閉運動をビデオカメラにて下流側より撮影した.撮影後画像処理を行い,弁輪内部の全面積に対する開口面積の割合を開口率として算出した.その結果,人工弁の最大開放時の開口率について,生体弁は38.9±0.4 %,二葉弁は31.6±0.7 %であった.本検討により,画像処理による小児用人工弁の性能評価が可能であると示唆された.

  • イ インミン, 玉川 雅章, 小波石 崚介
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 265
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    本研究においては、これまでに開発された血液中のたんぱく質の生化学反応を伴う濃度輸送方程式を用いた血栓予測のCFD解析手法である差分法(FDM)と、血栓に大きく関与すると思われる血小板の凝集を組み込んだ散逸粒子法(DPD)を両方用いて、凝集現象が血栓予測に及ぼす影響について、血栓の可視化実験データをもつオリフィス管内流れについて数値解析的に調べた。また、粒子法においては、粒子数の増加、すなわち計算時間の大幅な増大を防ぐために、少ない粒子で計算できる仮想粒子を用いた手法を用いた。この2つの計算手法をハイブリッド手法とするために、アルゴリズムの中に2つを組み込み、オリフィス管内流れに適用した。計算の結果、化学反応を伴う濃度輸送方程式の差分法で行った場合とハイブリッドで行ったもので比較したところ、血小板の粒子の数を計算時間を加味して十分に取れない場合は、血小板凝集の影響を加味しても、変化が小さいことがわかった。しなしながら、仮想粒子のモデル化を改善することで、血栓生成の予測精度を上げる可能性も示された。

  • 深谷 碧, 白石 泰之, 井上 雄介, 山田 昭博, 佐原 玄太, 工藤 剛実, 相澤 康弘, 山家 智之
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 266
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    人工心肺用ローラポンプ使用時における溶血リスク軽減のために、ローラポンプ圧閉度の定量評価が求められている。我々は、機械的ストレス算出に必要となるチューブ内の流路形状を赤色濃淡画像から可視化するシステムを開発した。このシステムは、リニアアクチュエータ、アクリルで作製したローラとレースウェイ、模擬血液粉末で着色した溶液、3/8 インチの塩化ビニルチューブを用い、圧閉されたチューブ内赤色濃淡画像をカメラで撮影し、数式処理システムにて流路形状を構築するシステムである。本研究では、圧閉度可視化システムの精度を評価するために、赤色濃淡画像から計測された流路断面の厚みと、同じ圧閉条件下にて硬化させた高精細転写用シリコーン断面の厚みを比較した。なお、硬化させたシリコーンは3次元形状測定機にて測定した。実験の結果より、可視化システムで計測された流路断面の厚みとシリコーンの厚みを比較すると、流路断面形状がよく近似でき、線形関係が得られた厚み領域で示されることがわかった。ただし、流路断面の厚みが120 μm以上の場合、赤色濃淡画像から推定された流路断面形状はシリコーン転写3次元形状と比べて低値を示した。これらのことから、本システムでは圧閉されたチューブ内の狭小流路については高精度の3次元形状を構築できると考えられた。

  • 伊藤 菜乃, 原 伸太郎, 周 ファンユ, 松尾 陽一, 増田 造, 高井 まどか
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 267
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    現在、外側灌流型人工肺は非対称構造の中空糸膜を使うことが一般的だが、多孔質膜同様に中長期の使用では血漿がガス側に漏れてしまう。血漿漏れを防ぐためガス透過性の高いシリコーン中空糸均質膜と生体由来材料である架橋型2-Methacryloyloxyethylphosphorylcholine(MPC)ポリマーを組み合わせることで、この問題を解決しようと考えた。人工肺への応用において、シリコーンが持つ高いガス透過性を損なわないことが必要であるが、本コーティングがガス透過性に及ぼす影響は明らかになっていない。本研究の目的は血液接触の1つとして人工肺への応用を目指し、シリコーンの表面に架橋型MPCポリマーを修飾したときの酸素透過性と血液適合性の両立を図ることである。今回はシリコーンに架橋型MPCポリマーを修飾したときの酸素透過性への影響を評価した。酸素透過性試験にはコンタクトレンズなどで使用されている電気化学法を使用した。具体的には0.7Vの定電圧を付加した時の電流値の値を用いてグラフを作成し、各シリコーンの酸素透過係数を計算した。シリコーンの1つであるSylgard184では、酸素透過係数が358 barrer であることが確認できた。今後は、架橋型MPCポリマーの修飾条件を変更して実験を行う予定である。

  • Chou FangYu, Shintaro Hara, Takashi Isoyama, Tsukuru Masuda, Madoka ...
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 268
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Silicone elastomer (SE) materials are commonly used for biomedical devices. However, unwanted reactions including immune cell adhesion and blood clotting occur easily on the unmodified SE surface because the hydrophobic property induces non-specific protein adsorption. Previously, the coated of phosphorycholine-based crosslinking-type polymers (cross-MPC copolymer) on SE can reduce protein adsorption successfully. In this study, the SE plates and tubes were coated with the cross-MPC copolymer by alkaline treatment as a pre-treatment. The coated-polymer membrane on SE were evaluated with fluorescence of Rhodamine 6G, hydrophilicity evaluation, and protein adsorption. For the hemocompatibility evaluation of polymer-coated SE, the polymer coated SE tubes and SE tubes were circulating with pig blood for 1 hour at 37 Celsius degree in fluidic condition (shear stress = 2782 mPa) with the loop-system. As the results, the copolymer was coated successfully on SE with alkaline treatment to reduce the protein adsorption and prevent the blood clotting.

  • 有末 昌央, 伊賀 大剛, 浮本 凌, 奥 雅貴, 石田 采実, 邉見 圭佑, 栗谷川 友里, 藤原 千尋, 小川 武人, 山本 健一郎, ...
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 269
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    序論:シングルニードル透析(SN透析)とは、穿刺針1本を用いて脱血と返血を交互に行う血液透析治療法である。その透析効率は血流量や再循環で大きく変化するが、再循環率を透析治療中に実測することは困難である。そこで我々は透析時の静脈圧の時間変化から再循環率を推算する方法を検討した。

    方法:設定血流量200mL/min、透析液流量500mL/min、脱血と返血の切り替えの設定静脈圧上限/下限250/100mmHgで実験した。穿刺針は外径15G、16G、17Gを用いた。再循環率は静脈圧の時間変化から求める方法と回路内3箇所における濃度から推算する方法(3点法)を比較検討した。なお、尿素を溶解した牛血を用いた。

    結果・考察:静脈圧はいずれの穿刺針径においても、返血開始時に急速に減少した後、緩やかに減少していた。静脈圧波形を比較すると17Gで返血開始直後の静脈圧の減少速度が最も大きかった。これは、穿刺針が細いほど脱血回路に引き込まれる血液量(再循環)が増えたためと考えられる。次に3点法による再循環率は17Gで最も大きな値となった。静脈圧の急激な減少が緩やかな減少に遷移する変曲点を求め、再循環率を推算したところ、3点法と静脈圧法による再循環率はほぼ一致する傾向が認められた。

    結論:SN透析における再循環率が静脈圧の時間変化から推算され、それが透析効率へ及ぼす影響を定量的に評価できると示唆された。

  • 高木 章仁, 岩井 ひかり, 佐藤 美香, 福島 正義, 小倉 亮介, 森 光一, 小熊 規泰, 岩永 進太郎, 黒岡 武俊, 中村 真人
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 271
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    薬剤を投与する方法として、針なし注射による注入法が近年注目されている。針無し注射は針を用いず、オリフィス孔から高速で液体を噴霧することで体内に注入が可能である。また、そのオリフィス孔が針径より小さいため、従来の注射よりも痛みの軽減が出来るとうたわれている。また、高圧の注射溶液は組織間を流れるように通過するため、抵抗性が低い組織で薬物がより分布することから、ワクチンやインスリンのような組織的に吸収される成分を含む薬剤に対して、通常の注射よりも広範囲に薬剤が送達されやすいと知られている。このような特徴から、皮膚に対してのみならず、臓器治療における薬物投与デバイスの一つとして利用できる可能性を考え、今回基礎的な検討を行った。本実験では、ブタ腎臓を対象に蛍光塗料を針無し注射で注入し、吐出溶液量やバネの力を変化させた際の、注射溶液の浸透・拡散性を評価した。さらに、造影剤を含む溶液を腎臓へ注入後、CTおよびMRIで観察することで、吐出された溶液の分布を評価した。その結果、腎臓に対しても針無し注射により薬液を注入することが可能であり、針無し注射のバネの力が腎臓組織への溶液の浸透・拡散性の違いに影響していることが見出された。さらに、腎臓内部の構造自体がこれらに影響していることも観察された。これより、針無し注射を新たな臓器治療用の薬物投与デバイスとして利用することが可能であると期待できる。

  • 玉元 由果莉, 藤江 建朗, 吉田 政樹, 中村 英夫
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 273
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,2名の熟練睡眠分析技士と自動解析による単一チャネル脳波での睡眠段階精度について比較することである.睡眠段階評価法として睡眠ポリグラフ検査 (Polysomnoglaphy;PSG)がある.最近ではスクリーニングを目的とした少数チャネル脳波による睡眠段階分析法への期待も増している.その状況を鑑み,技士や自動解析による睡眠段階の分析結果の正確性を定量的に検討していく必要がある.本研究では10名の健常男性被験者のPSGを測定し,それらの内1チャネル(C4-A1)の脳波について睡眠段階分析を実施した.結果,技士間では一致率が83.1±4.3%(mean±SD)となり,自動解析結果でもほぼ同程度の一致率となった.このことから,単一チャネル脳波でも睡眠段階分析の正確性はスクリーニング法として十分な能力を有することが示唆された.

  • 田村 侑大, 根本 充貴, 木村 裕一, 永岡 隆
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 274
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    メラノーマは予後が悪いがんであり、腫瘍厚が1 mm増加するごとに5年後の生存率がおよそ2割低下する。一方、早期メラノーマのほとんどは完治できるため、早期発見が重要な疾病である。現在は医師の肉眼によって診断がなされている。そのため、診断は医師の主観に依存しているため、定量的な診断指標が求められている。我々はhyper spectral imager(HSI)で計測されたhyper spectral data(HSD)を用い、スペクトル解析の一種であるspectral angle(SA)のentropy値を診断指標としたメラノーマ診断システムを開発している。しかしながら、HSIは1次元の波長情報及び2次元の位置情報を同時に取得できることから、市販のカメラに比べて装置が複雑となり大型かつ高価となる傾向にある。そこで、メラノーマの診断に適した波長のみを解析することで、装置の小型化と廉価化ができると我々は考えている。9つの波長帯から3波長を選択し、RGBとして割り当て疑似カラー画像を作成する。疑似カラー画像からSAを算出、SAの確率度数分布からentropyを算出する。entropyと腫瘍部の対称性パラメータを診断指標としてsupport vector machine(SVM)を用いて診断性能を解析した結果、500 nm、620 nm、710 nmの組み合わせで77.8±11 %の正診率を達成した。本研究ではさらに色パラメータなどの画像特徴量を診断指標に追加し、SVMを用い鑑別した結果について報告する。

  • 平野 銀次, 根本 充貴, 木村 裕一, 永岡 隆
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 275
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    メラノーマは悪性度が非常に高く、早期発見・早期治療が求められている。早期のメラノーマは良性の色素性病変に酷似しているため、鑑別することが非常に困難である。しかしながら、今もなお皮膚科専門医が目視で診断しており、定量的診断指標が求められている。本研究では色情報と位置情報を同時に記録することができるハイパースペクトラルイメージャーと畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を組み合わせ、メラノーマの診断支援システムを開発する。560×680×210 (横×縦×波長数)のハイパースペクトラルデータから抽出された16×16×201のパッチをネットワークに入力する。病変部位が25%以上を含むパッチのみを対象としている。ネットワークは畳み込み層とプーリング層、全結合層などを含む、計7層の構造を採用する。メラノーマか否かの判断は、各症例内でパッチの予測数を多数決することで決定する。5分割交差検定を採用し、感度、得意度、正診率が算出される。メラノーマ88例、非メラノーマ114例の合計202例を対象にパッチ処理されたデータで、学習、検証した結果について報告する。

  • 金澤 祐斗, 永岡 隆
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 276
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    メラノーマは悪性黒色腫とも呼ばれる表在性腫瘍の一種である。近年欧米で患者数が急増しており、予防や治療に対する社会的な関心が高い。また、皮膚がんによる死亡の8割がメラノーマによるものであり予後が悪いがんとして知られている。メラノーマはメラニンを生成する細胞であるメラノサイトが悪性化したものであり、腫瘍の厚さが1mm厚くなるごとに5年生存率が約2割低下する。一方で、早期メラノーマは完治できる可能性が高く、早期発見が重要である。現在は、医師が目視で診断しており、より高精度かつ定量的な診断が求められている。本研究では、ハイパースペクトラルイメージャー(HSI)と呼ばれる装置を用いメラノーマを診断する。HSIで計測されたデータをハイパースペクトラルデータ(HSD)と呼び、医師の目視による診断では認識することのできない細かい色の変化を観察することができると我々は考えている。本研究室では、人工知能を用いたメラノーマの診断支援システムの開発に取り組んでいる。HSDは膨大なデータ量を持つために、データの縮約が必要である。本研究ではその縮約の手法として主成分分析を採用する。主成分分析を使うことにより、データのばらつきが大きい部分に着目しやすい。主成分分析で得られるスコア画像を利用し、人工知能でメラノーマを鑑別した結果について報告する。

  • 中津 康平, 盛田 健人, 小橋 昌司
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 277
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    現在,本邦では約70万人の慢性関節リウマチ患者が存在し,毎年数万人ずつ増加している.リウマチの進行度は,mTS(modified Total Sharp)という単純X線画像から計測できるスコアで定量化できるが,各指関節のスコアを手動で決定するには膨大な作業時間を要するため,臨床現場ではほとんど使用されていない.そのため,mTSスコアの導入によるリウマチ診断の質の向上のため,mTSスコアを自動で計測するシステムが求められている.我々はこれまで,サポートベクターマシン(SVM: support vector machine)による手指関節位置自動検出法(SVM関節検出法と呼ぶ)およびサポートベクター回帰(SVR: support vector regression)を用いたmTSスコアの自動推定法を提案した.本研究では,これらの精度向上のため,手指関節と指先の位置関係をモデル化した統計的形状モデル(SSM: statistical Shape Model)で最適化する検出法(SVM-SSM関節検出法)を提案する.また,アノテーション済みの指関節切り出し画像をクラスタリングし,学習データから外れ値を除外することで,mTSスコアの推定精度を向上する.提案手法を90名のリウマチ患者の単純X線画像に適用した結果,指関節を94.5%,指先を83.3%の精度で検出した.また,mTSスコアに関しても精度の向上が見られた.

  • 小出 達哉, 長井 力, 佐川 貢一, 神谷 浩
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 278
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    本報告では、赤外線カメラによる穿刺対象模擬血管の自動抽出と非接触血管位置の3次元推定を行い、小型穿刺ロボットにより模擬血管に自動穿刺するシステムを提案する。穿刺対象とする模擬血管は、長さ、直線性、太さなど考慮して決定する。模擬血管の3次元位置は、2台の赤外線カメラを使用して血管像を撮影し、2つのカメラで撮影した血管像を通過する3次元平面の交線によって表現する。採血ロボットは、ロボットアームを上下移動させるスライド機構1台、ロボットアームを構成するラジコン用の小型サーボモータ4個、穿刺針を直線運動させるアクチュエータ1個により構成した。ロボットアームは、肩関節および肘関節に配置したサーボモータにより、穿刺針の水平面内での2次元位置を制御する。また、手首関節には2つのサーボモータを使用して、穿刺針の方位角および伏角を制御する。さらに、直動アクチュエータにより、穿刺針を針の軸方向に直線運動させる。これにより、任意の位置に置かれた模擬血管を穿刺することが可能となる。また、模擬皮膚および模擬血管は、赤外線カメラによって撮影した人の腕の血管と同等に見えるように試作した。穿刺対象とする模擬血管を自動的に選択し、選択された血管の3次元位置を計測して、採血ロボットにより模擬血管に自動穿刺する実験を行った結果、注射器のシリンジを引くことにより逆血が見られたことから、自動穿刺が成功したことが確認された。

  • 神山 英昇, 北間 正崇, 清水 久恵, 山下 政司, 小島 洋一郎, 菊池 明泰, 奥山 豪, 清水 孝一
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 279
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    人工透析治療では自己血管内シャントが必要であるが,治療に伴う負荷が血管の狭窄や閉塞を助長することから,日常の適切な管理が重要である.しかし現状の管理手法は,主観性や侵襲の面で問題がある.これに対し我々は,近赤外光による定量的かつ非侵襲的な管理手法の開発を進めている.この手法では,前腕長軸に沿って両側面から線状の近赤外光を入射し,前腕内部を拡散した後に出射した光を前腕上部のカメラで受光し血管透視を行う.これまでの検討では,血管に様々な狭窄が発生した場合を想定した試料で実験を行い,提案手法が局所的な血管内径変化の検出に有用であることを示してきた.これらの検討では,血管走行は前腕長軸方向と一致することを前提としていた.しかし実際のヒト前腕部では,これらの方向は必ずしも一致しない.そこで本研究では,成人前腕部を模擬するファントム試料において,前腕長軸から一定角度を成すシャント血管を模擬し,近赤外光の透視実験を行った.その結果,前腕長軸からのシャント血管角度が増加するに伴い,血管内径の計測誤差が増大することが明らかになった.ただし実用条件内では,誤差が0.4 mm以内の精度で血管内径の計測が可能であった.この結果により,提案手法の臨床応用における実用性の高さが示唆されたものと考える.

  • 芥川 正武, 寺井 優輝, 榎本 崇宏, 北岡 和義, 田中 弘之, 山田 博胤 , 鳥居 裕太, 木内 陽介
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 280
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    循環器系疾患の原因の1つにアテローム性動脈硬化がある.動脈硬化の検査法として血管内のプラークを評価できる頸動脈超音波検査が広く用いられているが,測定にはある程度の専門知識が必要であり,評価には医師の判断が重要となる.本研究グループでは,簡便な動脈硬化のスクリーニングデバイスとして血流速度測定装置(UDBV,Ultrasonic Doppler Blood Velocimeter)の応用可能性について検討しているが,動脈硬化と血流速度波形の関連性については十分に明らかになっていない.そこで本研究では動脈硬化症患者(N=83)を対象として,頸動脈血流速度波形の類型が動脈硬化の進行度に関連があるかについて調査した.動脈硬化指標には超音波画像診断装置を用いて求めた内膜中膜複合体厚IMT(Intima Media Thickness)とプラーク指数を用いた.また頸動脈血流速度波形の類型は収縮期最大血流速度などの測定値を主成分分析し,第4主成分までを用いてk平均法で2群にクラスタリングすることで求めた.その結果,各動脈硬化指標には血流速度の類型間で有意な差(p<0.05)がみられた.以上から動脈硬化進行度が血流速度波形の類型により評価できる可能性が示唆された.

  • 鍵谷 慧, 水戸部 一孝
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 281
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    ヒト血清は,主として5 種類のタンパク質で構成されている.一部の疾患では,これらの濃度バランスが崩れ,特有の濃度異常を引き起こすことがある.そのため,電気泳動法によって分画されたタンパク質の濃度比から特定の病態を推定することができる.タンパク質の分布を知るためにはタンパク質を染色する必要があるが,染色液は生体に対して有害であり,安全性に問題がある.そこで,本研究では,人体に無害でタンパク質に高い吸収性を有するテラヘルツ(THz)波による可視化手法を研究している.過去の研究において,セルロースアセテート膜電気泳動法でヒト血清を分画し,THz波によりタンパク質を可視化できることが報告されている.しかしながら,可視化された画像はコントラストが低く,タンパク質の位置が不明瞭であった.そこで本報告では,THz透過画像の取得に適した電気泳動用試料を作製するために必要な処理条件を検討した.さらに,電気泳動後のヒト血清のTHz透過画像におけるタンパク質の特徴抽出法について検討した.

  • 高橋 大志, 勅使河原 里奈, 床波 沙香, 高橋 真悟, 児玉 直樹, 松尾 仁司
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 282
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    本邦における入浴関連事故死者数は1年間で約1万9千人であり、この10年間で約1.7倍に増加したと報告されている。死亡原因としては、居住空間内での寒暖差による血圧の急変に起因する失神や脳出血等であると言われており、この様な症状を入浴時ヒートショック(HS)という。死亡者数の9割は血液循環機能等が低下した高齢者が占めるとする報告もある。現状のHS対策としては、寒暖差減少を目的とした脱衣所等へのヒータ設置や住居の断熱構造化等があるが、死亡者数が大幅に増加している現状から環境整備による既存対策のみではHSを完全に防止することはできないと考えられる。また、個人におけるHSの体質的な危険性を定量評価できる装置も開発されていないことから、他の予防法も検討できない状況にある。そこで、本研究ではHSの危険度判定システムの構築を目的に、ペルチェ素子を用いた冷温熱刺激装置と血圧変動に大きな影響を与える末梢血管の近赤外透過撮影装置を開発し、熱刺激に対する血管の収縮拡張機能を評価したため、その結果について報告する。

  • 高橋 大志, 古住 理沙
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 283
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    発汗は体温制御といった非常に重要な役割があるものの、日常生活に支障をきたす過度発汗が生じる疾患があり、特に手掌部で生じる場合には手掌多汗症という。本邦の国民の5.3%に多汗症は認められるという報告があり、多汗症患者は日常生活のみならず就労においても機器類への汗の付着や破損等に対して非常に大きな苦痛を感じており、勤労意欲の低下や職業不適応などの社会問題となっている。多汗症の治療としては薬剤投与や神経遮断術、精神療法などがあげられるが、副作用や侵襲性、代償性発汗、エビデンスレベルが低いといった問題がある。そこで、本研究では副作用がない精神療法に着目し、手掌からの発汗量をバイオフィードバック(BF)指標として自分自身で発汗を制御できる手掌多汗症用のBF治療器を開発することを最終的な目的として、本実験では湿度センサを手掌に固定し、相対湿度から発汗状態を評価できるかを検討した。さらに、精神負荷の有無による発汗の変動計測実験を行った結果、経時的な湿度の上昇が観察され、また精神負荷の有無によって発汗が変化することが観察された。

  • 桑波田 晃弘, 垂野 香苗, 栗田 智子, 蒔田 益次郎, 隣 真一, 斎藤 逸郎, 武井 寛幸, 中村 清吾, 日下部 守昭, 関野 正樹
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 284
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    乳がんにおいて,磁気ナノ粒子と磁気プローブを用いた磁気法によるセンチネルリンパ節(がんが最初に転移するリンパ節)の同定は,従来の放射線を用いた手法よりも低侵襲であり,近年注目されている.本研究は,がん転移の可能性が最も高いとされる,磁気ナノ粒子を最も多く含んだリンパ節を術中に高感度で検出するために,開発した磁気ナノ粒子検出装置の交流磁場の周波数を最適化した.また,臨床試験における磁気ナノ粒子の検出結果について報告する.直流磁場の存在のもと,交流磁場の第二高調波を検出することで,磁気ナノ粒子の非線形特性のみを高感度で検出可能である.周波数増加に伴うノイズ信号の増加ならびに磁気ナノ粒子のヒステリシス損失を考慮した結果,5 kHz以下の交流磁場を用いることで,磁気ナノ粒子を効率よく検出できることが明らかとなった.また,昭和大学,日本医科大学で実施された臨床試験(27名の乳がん患者)おいて,開発した機器を用いて手術中に磁気ナノ粒子を定量化することに成功し,乳がんセンチネルリンパ節に40 μg(鉄として)の磁気ナノ粒子が蓄積されていることを明らかとした.本成果は,今後のがん転移診断において,最適な磁気ナノ粒子の投与量を決定する重要な結果であり,がん患者の生活の質(Quality of life)を向上させることが可能となると考える.

  • 米山 美鈴, 和多田 雅哉, 森 晃
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 285
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    乳がんは病期1での5年生存率が90%を超える。その為、乳がんは早期発見が重要であり,そのためには、定期的な検診が有効である。しかし、超音波検診は検査精度が検査者の技量によって左右されやすく腫瘍の見逃しが起こる可能性がある。また、超音波画像が局部的で全体像が捉えがたいため、腫瘍の位置情報が不明確である。従って、本研究では乳がんの超音波診断の問題点の解決を目的として、乳房検診用の補助機器の開発を行う。本稿では、画像取得方法の検討を行った。補助機器を用いて乳房上で走査した際に、乳房に対してプローブを強く押し当てることで、乳房に変形が生じることが考えられる。そこで、新しい走査方法を提案した。新しい走査方法では乳房に塗布されたエコーゼリー上をプローブが走査することで、乳房の変形を防ぎ、かつ、超音波画像を取得することが可能である。この走査方法を用いて、再度乳房上で動作検証を行った。今回は、動作検証結果を示す。次に、作製した補助機器を用いて行った動作検証について示す。寒天を用いてφ100[mm]の半球型乳房ファントムを作成し、内部には、腫瘍を模擬した5[mm]のスチール球を埋め込んだ。乳がん検診のガイドライン上では、乳がん超音波検査において最小5[mm]の物体を検出する必要があるとされているため、本研究では補助機器を用いて取得した超音波画像上で、5[mm]の物体を検出することを目標とし、動作速度を決定した。

  • 緒方 元気, 齋木 琢郎, 澤村 晴志朗, ラズビナ オリガ, 渡邉 航太, 加藤 理都, 浅井 開, 花輪 藍, 松本 吉史, 西條 康夫 ...
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 286
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    経口分子標的薬の抗がん剤は、従来の殺細胞薬に比べ毒性が軽微とされる。それでもなお、患者は堪え難い有害事象に苦しむことが少なくない。原因として、開始用量が患者毎の体表面積に関わらず一定であるため、往々にして過量投与になることが考えられる。対処法として薬を減量すると、用量不足によって効果が減弱することが懸念される。一方、近年開発された分子標的薬のいくつかについては、有効濃度域が不明であり、有害事象の制御が難しい。以上より、投薬法の最適化には、患者一人ひとりに対し、それぞれの薬物の「血中」濃度を測定することが必要である。しかし、臨床の現場では、迅速かつ簡便な測定法が確立していない。そこで本研究では、この困難な課題の解決の基盤となる方法を、従来の素材より安定した反応を示すダイヤモンド電極センサを介した電気化学的アプローチにより創出した。標的薬物として、分子標的薬であるイマチニブ、レンバチニブやパゾパニブ を選択した。ここでは、採取したモルモット血漿に濃度の異なる分子標的薬を単独で添加し、測定法を検証した。その結果、それぞれの臨床濃度域に対応しうる範囲を計測することが可能であった。測定自体は約35秒の短時間で可能であり、サンプル処理を含めても10分以内で全工程が完了した。本計測法を応用すれば、分子標的薬によるテーラーメイド治療が可能になると期待される。

  • 藤田 直大, 多賀 愛, 凾城 浩佑, 木戸 倫子, 竹村 萌里, 長倉 俊明
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 287
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    静脈瘤の原因は静脈血栓や静脈弁の異常であり、肺塞栓症を引き起こす。また、日本人の約9%(約1000万人)が手術適応程度の下肢静脈瘤に罹患している。したがって、非侵襲的に超音波診断装置を用いて下肢静脈の特性を診断し、下肢静脈瘤のリスク因子との関係を検討することは、予防医学的にも有用と考えた。静脈は血流速が遅く無視できるとすると、ベルヌーイの定理により静脈圧と位置エネルギーは等価であり、下肢の静脈圧は高さによって変化する。この変化は静脈の拡張能と静脈弁の機能が関係していると考えた。そのことから、仰臥位から下腿のみを挙上し、超音波診断装置で大伏在静脈の経時的な断面積変化を挙上終了時から30秒間にわたって連続的に計測した。 撮影された超音波画像の大伏在静脈の血管壁の検出を行うためにフィルタを作成し、マスク処理を行った。これにより静脈断面積変化を半自動的に計測した。 下肢の挙上により、下肢静脈断面積は減少しその静脈断面積減少パターンには個人差があり、この静脈断面積減少パターンの特性を静脈の粘弾性に注目して解析した。 今後は、この静脈の特性を表す指標を作成し、下肢静脈瘤のリスク因子との関係性を検討する。

  • 小川 恵美悠, 相吉 英太郎, 荒井 恒憲, 熊谷 寛
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 288
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    我々は光線力学的治療におけるタラポルフィンナトリウム静注後の皮膚光線過敏症発症リスクを定量評価することを目指し、in silico薬物動態モデルおよび皮膚組織中薬剤蛍光計測装置の開発によりヒト皮膚組織中薬剤濃度変化の推定を行なった。光感受性薬剤として臨床応用されているタラポルフィンナトリウムは、2週間 500ルクス以下の室内で過ごす遮光が定められている。患者の負担および医療コストを削減するために、退院時期決定および在宅管理に関する科学的エビデンスの取得が必要である。我々は経皮的薬剤蛍光計測システムを用いて、上腕内側の皮膚組織中薬剤蛍光計測の臨床研究を実施した。タラポルフィンナトリウムのSoret帯吸収を青色LED (波長409±16 nm) で励起し、タラポルフィンナトリウム蛍光を計測することで皮膚組織中残留薬剤を評価した。本研究では皮膚組織中薬物動態のモデルを構築し連続的に皮膚組織中薬剤濃度を推定することで、皮膚光線過敏症発症リスクの高い時間帯を明らかにすることを目的とした。血漿-間質-細胞の3つのコンパートメントから成る薬物動態モデルを構築し、皮膚組織における各コンパートメントの体積寄与率を定義することで皮膚組織中薬剤濃度を算出した。算出した皮膚組織中薬剤濃度と臨床研究の蛍光計測データとの差が最小となるように、共役勾配法によりコンパートメント間の速度定数を最適化し、ヒト皮膚組織中薬剤濃度変化を推定した。

  • 渡邉 智哉, 上間 千秋, 井上 美香, 大狩 興司, 小泉 幸司, 上島 一夫, 黒田 知宏
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 289
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【目的】12誘導心電計測布テクノセンサーER(TSER, 帝人フロンティア)の胸部X線画像への影響を検証した.【方法】胸部ファントム(京都科学)にTSERを貼付した場合としない場合で各10回のX線撮影を行い,それぞれの加算平均画像を作成した.管電圧は80kVとし,散乱線除去グリッド3:1を使用した場合と,グリッドなしで散乱線補正処理を使用した場合で撮影した.撮影条件はExposure Indexが200に最も近い条件とした.加算平均画像を差分し,TSERのみが写った画像を作成した.差分画像上のTSER貼付場所である肺野,縦隔,心臓の平均画素値を測定した.また,TSERを貼付したファントム画像のTSERの視認性と診断への影響について5段階(1:診断に影響する,5:視認不可)で視覚的に医師12名で評価した.【結果】3:1グリッド使用時での平均画素値は肺野,縦隔,心臓で各々65.5,2.5,53.0であり,散乱線補正処理使用時では,68.2,25.2,71.5だった.差分前画像で肺野,心臓の平均画素値は2300, 2500程度であり,差分画像の電極部分の画素値は肺野,心臓と比較すると低値だった.視覚的評価の結果は,3:1グリッド使用時は肺野・縦隔および心臓で各々4.5±0.8, 5±0, また散乱線補正処理使用時では4.4±0.8, 5±0だった.肺野では陰影として一部認識できたが,縦隔や心臓では陰影として認識できず,診断に影響しなかった.【結語】TSERは患者に貼付けた状態で胸部X線撮影が可能であると考えられた.

  • 山本 朱音, 島田 尊正
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 290
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    頭部MRI検査では脳の中の構造を見ることができ、脳梗塞、くも膜下出血、認知症の原因と考えられる脳の萎縮など様々な脳の病気の診断に用いられている。専門医の負担軽減や診断精度の向上を目的としたコンピュータを用いた脳領域の正確な抽出手法が求められている。これまでの研究では、MR脳画像からsnakeを利用して頭皮を検出し頭皮と頭蓋骨を除去することで脳領域を自動的に抽出できる手法が提案されている。しかしsnakeを用いた従来手法による輪郭抽出法の多くは、画像毎に利用者が初期輪郭を配置していく必要がある。本研究ではsnakeの初期輪郭の自動配置手法を提案する。実験の方法として、はじめにMR脳画像を等分割し部分画像を得る。各部分画像は、ヒストグラムの平均と標準偏差を考慮することにより、物体の存在しないエリア、脳実質のあるエリア、および複合領域に分類できる。物体が存在しないエリアは全体的に黒いため、画素値の平均、標準偏差は共に低くなる。脳実質のエリアは全体的に灰色なため、平均は高く、標準偏差は低くなる。複合的なエリアは分散と平均が中間の値となる。平均と標準偏差を手がかりとすることで、snake の初期輪郭を物体の存在しないエリアに自動的に配置することが可能となる。今後の予定として提案手法を用いてSnakeの初期輪郭を配置し、さらに手動で初期輪郭を配置する場合との比較についても行いたい。

  • 吉田 直樹, 加藤 綾子, 大野 孝, 江頭 玲子, 矢口 俊之
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 291
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    間質性肺炎は肺に進行性線維化を来す非感染性炎症性疾患であり,肺癌合併頻度が高い.間質性肺炎に合併した肺癌は予後不良因子の一つであるが,間質性肺炎存在下での早期検出は困難である.一方,近年では人工知能分野の発達により多くの研究がなされており,その中でも深層学習は入出力関係を学習でき,与えられたデータから自ら学習に有効な特徴を抽出する能力にも長けている.そこで我々は深層学習を用いて間質性肺炎のCT画像から肺癌を合併しやすい画像的特徴を検出することを目指している。本研究ではそのための基礎的検討として,発癌肺の非癌部肺領域と非発癌肺の肺領域の間に人には判断不可能な差異が存在すると仮定し,両者を分類することにより肉眼的には見えない画像的特徴を抽出可能か検討することを目的とした. 肺癌患者のCT画像から発癌肺と非発癌肺のいずれかのラベルを持つ画像パッチを作製し,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて学習させCNNの作製と評価を行った. CNNにより得られた精度は57%であり,また訓練データに対する精度は80%程度と20%以上高い数値を示したことからCNNが過学習を発生させていると考えた。しかし,肺癌は両側に発症することも多いことから両肺が元々同じポテンシャルを持っているために異なる特徴が抽出できなかった可能性も否定できず,今後どのようなデータで誤答が多いのかを精査する必要があると考えた.

  • 林 拓世, 宮原 惇, 高良 樹生
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 292
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    本研究では,健常者の疲労状態の違いによる脳機能活動性を評価した.対象は健常成人15名を対象とし,気分プロフィール検査の平均得点より疲労群と健常群に分類した.被験者は脳機能活動性の評価として脳波を測定し,急性ストレス刺激としてスピーチ課題を実施した.実験は30秒間の安静閉眼から開始し,課題呈示とスピーチ内容を考える時間を120秒,呈示課題のスピーチを180秒間,その後に安静閉眼を180秒間とした.スピーチ課題は3種類用意し,課題呈示から安静閉眼までを3回実施した.脳波は離散フーリエ変換によりθ波,α波,β波帯域を算出した.解析結果は被験者内因子として4区間(課題後60,120,180秒目までの60秒間隔,及び課題前安静時)と3領域(前頭領域,中心領域,頭頂領域)で評価した.結果,θ波帯域の脳機能活動性において,疲労群は健常群と比較して有意に低値を示した.α波帯域の脳機能活動性では,課題前と180秒目の区間において,疲労群は健常群と比較して有意に低値を示した.これらの結果より,健常者においても,疲労状態は脳における継続的な情報処理機能に影響すると示唆された.

  • 島田 尊正
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 293
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    人にとってワーキングメモリとは生活していく上で、なくてはならない重要なはたらきである。過去の研究で音楽のトレーニングは様々な認識や言語のスキルの改善に関連することが示されており、音楽家と音楽家ではない人とでオドボール課題で実験を行った結果、音楽家は音響と視覚の両方でより速いワーキングメモリの更新を示し(P300の潜時が短い)、より多くの神経リソースを音響刺激に割り当てており(より高い振幅のP300)を示したと報告されている。従って、音楽的スキルを高めることでワーキングメモリのはたらきを向上できる可能性がある。しかしながら、これらの関連を取り持つあるいは基礎をなすメカニズムについてはほとんど明らかになっていない。本研究では具体的な音楽的スキルとワーキングメモリ能力との関連について検証した。音楽的スキルとして視唱、絶対音感、相対音感テストを用いて計測した。ワーキングメモリの能力は1-Back課題、2-Back課題、オドボール課題時のP300振幅と潜時を用いた。その結果、トータルの音楽経験月数および絶対音感和音と相対音感単音、視唱がワーキングメモリの能力との間に有意な正の相関があることが分かった。今後は、さらに被験者数を増やしてより正確な関連性を明らかにするとともに、相関の理由の検証を行うことを予定している。

  • 辛島 彰洋, 石塚 隆太, 伊藤 智, 関 直哉, 鈴木 幸也
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 294
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    これまで我々の研究グループでは、眠気が強い人(例えば車の運転者)に与える警告に適した音を特定するため、眠気の強さと音の聞こえ方との関係を調べてきた。本稿では、音の聞こえ方を変調周波数追随反(AMFR)と呼ばれる聴覚応答により客観的に定量化し、音の高さと眠気の強さとの関係を調べた結果を報告する。実験は、健常大学生24名を対象に実施された。AMFRを惹起するために、搬送周波数および変調周波数が異なる振幅変調音を複数同時に聞かせた。低周波~高周波までの反応を見るため、振幅変調音の搬送波の周波数を250, 500, 1000, 4000, 8000 Hzとした。眠気の変動を評価するため、被験者には反応課題を課した。反応の潜時により、眠気が弱い状態、眠気が強い状態、睡眠状態という3つの状態に分け、状態間でAMFRに差があるかどうかを調べた。眠気が強い状態や睡眠状態では眠気が弱い状態に比べて、1000Hz以上の高い周波数のAMFRは小さくなる傾向がみられた。一方、250 Hzや500HzのAMFRは、眠気が強い状態と眠気が弱い状態で差が見られなかった。以上の結果は、1000Hz以上の周波数の音は眠気が強くなると聞こえにくくなるが、250Hzや500Hzといった低周波の音は眠気が強い状態でも弱い時と同程度に聞こえることを示唆している。つまり、眠気が強い人に与える警告音には、低い周波数の音が適していると示唆される。

  • 佐藤 有理生, 中谷 慎太郎, 西田 信一朗
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 295
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    輝度が正弦波的に振動する視覚刺激を注視したとき、対光反射はその振動と同調することが近年明らかになった。また、左右一方の瞳にのみ光刺激が行われた場合,対光反射は同側だけでなく対側の瞳孔に対しても生じることが知られているが,左右の瞳に対して異なる光刺激が行われた場合の対光反射については議論の余地がある。この研究では、左右の目に異なる周波数の視覚刺激を入力したときの瞳孔の収縮の時間変化について示す。10名の実験参加者を対象に、左目に1.2Hz、右目に1.5Hzの視覚刺激を与えたときの応答を計測した。瞳孔径の時間変化について周波数解析を行った結果、視覚刺激と同じ2つの周波数帯にスペクトルのピークが検出され、瞳孔の時間的変化は2つの波形の重ね合わせとして観測されることが明らかになった。この結果は、瞳孔に生じる対光反射は左右の瞳への光刺激を等しく扱っている可能性を示唆している。この研究は、定常刺激型注視物体認識システムの研究だけでなく、医学やその他の分野への応用も期待できる。

  • 谷島 祐至, 吉田 久
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 296
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年、3DテレビやVRなどの視覚環境の多様化により「映像酔い」を引き起こす可能性が高まっている。映像酔いとは、映像鑑賞中に発生する乗り物酔いに似た症状を引き起こす現象である。映像酔いの原因には様々な説が提唱されているが、未だに原因究明には至っていない。映像酔いに関する先行研究はMV(Motion Vector)などを用いた「映像の要素」に注目した研究が多いが,一方で同一の映像を鑑賞していても、酔いやすい人と酔いにくい人が存在することから,映像酔いを引き起こす要因が視聴する映像要素のみに依存しているわけではないと考えられる。我々は映像酔いを引き起こす要因の一つとして,映像鑑賞中の視線特性に注目し、空間周波数の異なる映像を用いて映像鑑賞中の眼球運動を測定した。鑑賞する映像は,屋内映像と屋外映像が一方向(pan,tilt)に回転する映像の2種類を用意した。酔いの程度はSSQ(SimulatorSickness Questionnaire)を指標にした。眼球運動解析の結果,SSQが高値であった被験者は,特に室内映像の回転方向に視線移動が大きいという傾向が見られた。一方でSSQが低値の被験者では視線移動距離は大きくなかった。空間周波数が高いと思われる映像で上記の現象は顕著であった。今後,被験者を増やすとともに,空間周波数が異なるランダムドットの視聴実験などより精密な実験を実施する予定である。

  • 小菅 智裕, 川口 太優, 熊谷 寛
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 297
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    骨格筋情報の観察はサルコペニア等の診断やリハビリテーションやスポーツ科学における筋力評価にて利用される。骨格筋の筋収縮運動は運動神経と筋線維にて構成される運動単位(MU)の発火量、発火頻度、筋線維種類により調整される。MUの動員状態の観察の実現は筋組成推定や筋力トレーニング効果の評価のため重要である。これらを非侵襲測定により実現するため、多チャンネル表面筋電図計測にて多数観察できる波形伝播(伝播波)に着目した研究がされている。伝播波はMUの活動電位に由来する波形と考えられ、個々に伝播速度等が異なることからMUを構成する筋線維種類や活動量を推定するための新たな指標となりうる。先行研究にて多チャンネル表面筋電図から伝播波を自動取得する手法を開発した。上腕二頭筋の筋収縮運動について、運動状態によって伝播波の構成が変化することを確認した。本研究ではこの手法を用い、筋の状態や運動条件が異なる表面筋電図について取得伝播波との関係性を調べることで、伝播波を指標とした運動解析の実現可能性について検討した。条件によって主に取得伝播波の伝播速度と電位振幅に変化が現れたことから、これらの構成の変化から従来の表面筋電図では得られない詳細な骨格筋の活動情報の解析を行える可能性が示唆された。今後は取得伝播波の評価方法について検討することで将来的には筋線維種類ごとの活動割合の解明へ利用できると考える。

  • 野崎 寛一郎, 中林 実輝絵, 一之瀬 真志, 小野 弓絵
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 298
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    自転車エルゴメーターによる運動は運動生理学やリハビリテーションの分野において広く使用されているが、運動中の筋組織血流の計測を行ったものは少ない。本研究では生体深部の組織血流を計測可能な拡散相関分光法を用いて自転車運動中の外側広筋における血流速度の計測を試みた。被験者は40Wから160Wまで、2 分ごとに40Wずつ負荷が増加する自転車運動を行った(能動条件)。また、被験者が運動を行う代わりにペダルを他動的に回転させた状態でも同様の計測を行い、筋の動きによるノイズの影響を検証した(受動条件)。両実験ともペダルの回転数は60 rpmで一定とし、各負荷での運動の前に10 sのインターバルを挟み、運動中120 s・インターバル10 sの平均血流速度を比較した。受動条件、能動条件ともに運動中の血流速度は増加し、その値は能動条件の方が高い値を示した。一方インターバルでの血流速度は、受動条件では増加は見られなかったが、能動条件においては負荷の増大に伴い増加した。受動的なペダリングにおいても、筋の動きによるノイズの他に筋ポンプ作用により血流が増加したと考えられるが、運動中の血流速度がより高い値を示したことから、DCSにより自転車運動中の筋血流応答を計測できる可能性が示唆された。

  • 西川 真帆, 孫 光鎬, 榛葉 俊一, 松井 岳巳, 桐本 哲郎
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 299
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    CCDカメラを用いた非接触光電容積脈波計測法(imaging-photoplethysmography, iPPG)は,血管の容積変化に伴う皮膚の微小な色変化をカメラで捉え,脈波信号を計測する方法である.血液中のヘモグロビンが緑色光をよく吸収する性質から,従来はカメラのGチャンネルのみから脈波信号を取得していた.しかし,照明などの環境ノイズや体動に起因するアーティファクトの影響を受けやすい.本研究では,iPPGから正確な心拍間隔(R-R interval, RRI)を推定し,心拍変動指標(heart rate variability, HRV)を算出するため,ノイズ耐性の強い脈波信号の抽出を目的とする.カメラのRGBチャンネルにおける,生体への光の透過度の違いに着目し,各RGB信号を短い時間区間ごとに重み付けして加算する.さらに,心拍変動の生理的な特性を制約条件とし,最適な重み付け係数を決定し,脈波信号を再構成する.4名の健康な被験者を対象に,心電計をリファレンスとし,従来のGチャンネルのみによる脈波信号と,提案するRGBチャンネルから構成された脈波信号の,それぞれから算出されたHRVを比較評価した.その結果は,提案法が従来法よりもHRV計測に対してより効果的であることを示す.

  • 田中 義生, 柴田 仁太郎, 富井 直輝, 佐久間 一郎, 本荘 晴夫, 荒船 龍彦, 山崎 正俊
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 300
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    不整脈の発生機序の詳細な解明には興奮伝播を二次元で観察可能な光学計測が使用されている.本手法では活動電位信号導出のため,BDMやCyto-Dなどの筋収縮抑制剤を用いて心筋の動きを止めて計測する必要がある. しかし,基礎的検討において筋収縮抑制剤が活動電位持続時間の短縮や興奮伝播速度の遅延などの電気生理学的な影響を心筋細胞に及ぼすことが報告されている.より詳細かつ生体に近い状況での不整脈現象の解析には,心拍動を抑制せずに興奮伝播を解析するシステムが必要である.そこで本研究の目的は,摘出心臓標本を拍動させたまま光学計測を行い,計測後に画像処理技術を用いて拍動アーチファクトを除去して興奮波の計測を行うシステムを開発することである. ウサギ摘出心からランゲンドルフ灌流心標本を作製し,直径0.5mmの微小マーカを心表面に多数配置した.心内膜側より400ms間隔でペーシング刺激を加え,光学計測を行った.この際,BDMなしによる拍動状態と,その計測後に灌流液へBDMを添加した静止状態の二つの状態を計測した.計測後の画像から微小マーカを利用して非剛体レジストレーションとアフィン変換を用いた2つの手法でレジストレーションを行い,輝度値は維持したまま全画像を最初の心臓形状に変形させて興奮波を可視化した.静止状態で計測した興奮波を正解として妥当性確認を行ったので報告する.

  • 松本 大誠, 岡田 志麻, 塩澤 成弘, 牧川 方昭
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 301
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    睡眠深度の判定には,複数の生体信号を計測する必要があり,専門的な知識が必要となるため,その判定は容易ではない.そこで,簡易的に計測が可能な心電図を用いて睡眠深度を推定することを目的とした.本研究では,心電図のDFA解析が睡眠深度の推定のパラメータとしての有効か調査した.健常な男性3名の計4個の終夜のデータを解析に用いた.推定用のパラメータとして,30秒ごとのDFA解析の結果を用いた.DFA解析の結果に加え,ローパスフィルタをかけたもの,トレンドの向きの3種類と機械学習の分類器の一つである決定木を用いて睡眠深度の推定を行なった.ローパスフィルタとトレンドの向きはREMおよび深い睡眠の推定に有効であると考え,睡眠深度推定のためのパラメータとして使用した.結果として63.7%の精度を達成した.適合度は,覚醒状態では86.1%,REM睡眠は51.5%であった.今回はDFA解析が睡眠深度の推定に有効なパラメータであるか検証を行なうためにDFA解析の結果のみを用いて睡眠深度を推定したが,今後はさまざまなパラメータと組み合わせ,さらに精度を向上させることを目指す.

  • 上村 和紀, 西川 拓也, 川田 徹, 杉町 勝
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 302
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    脈波伝搬速度とともに大動脈反射・Augmentation index(AI)の決定要因である実効的大動脈反射距離(ERD)は有用な血行動態指標と考えられ、臨床研究で多個体間の変動に関する研究はされてきた。今回の研究ではERDに関し、個体内で多様な血行動態下でERDがどのように変化するか、AIとの相関に関し包括的な検討を行った。麻酔下成犬13頭において、徐脈薬・血管拡張薬/収縮薬・強心剤投与・輸液負荷により心拍数・血圧・心拍出量を大きく変化させ、ERDを異なる3種の方法(拡張ウィンドケッセルモデルERD;脈波分離法ERD;簡易血圧法ERD)に基づいて算出し、その変化を解析した。拡張ウィンドケッセルモデルERDは血管拡張薬・強心薬投与で有意に短縮し、AIと有意に逆相関していた。しかし脈波分離法および簡易血圧法ERDの薬剤に対する急性期の変化およびAIとの相関は、拡張ウィンドケッセルモデルERDに見られる変化と必ずしも一致していなかった。結論として、ERDは循環作動薬により容易に変化しうるため、大動脈反射・ERDの解析では降圧薬などの服用状況に注意を払うべきであり、脈波分離法および簡易血圧法ERDは、生理学的に最も妥当と考えられる拡張ウィンドケッセルモデルERDの代用指標にはなりえないと考えられた。

  • 木原 広夢, 出口 修平, 池尻 晃基, 石崎 昭太, 李 知炯
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 303
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    頭部誘導心電図は,計測電極の位置が心臓から遠いため,ノイズが混入しやすい微弱な信号である.一方,計測環境によって生じるノイズの特徴は異なるので,ノイズ除去方法として主に使われる周波数フィルタは限界がある.そこで本研究では,一拍ごとのノイズを学習する新たな適応フィルタを提案し,適用前後におけるRピークの検出精度について比較検討を行った.新たな適応フィルタは,頭部誘導心電図における筋の動きや計測環境から由来したノイズの特徴を一拍ずつ抽出し,毎拍ごと学習させてノイズの除去に用いる原理である.具体的に,安静時のRピーク間の心電図を基準としてノイズが含まれている心電図との差分をノイズと定義し,次の心電図にノイズを引いて一拍の心電図を抽出する.また,抽出した一拍の心電図と基準の差分を新たなノイズと定義し,従来のノイズを50%と新たなノイズを50%とした1:1の重みで合成させてノイズの特徴を学習させた上,次の心電図におけるRピークの検出にまた用いる.男性2名に対し自転車エルゴメータでの0,40,50 Wの課題を30秒間実施し,構築した適応フィルタを計測された頭部誘導心電図に適用した.その結果,Rピーク検出率が被験者1:95.1%,被験者2:80.9%となり,適用前(被験者1:88.3%,被験者2:78.7%)より向上された.よって,新たな適応フィルタは高精度Rピーク検出のための信号処理方法として有用であることが示唆された.

  • 吉野 公三, 川口 綾乃, 矢田 翔梧, 猪山 昭徳, 佐古田 三郎
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 304
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病では早期より交感神経の変性が見られる一方,睡眠時無呼吸障害では交感神経の亢進が見られる.本研究では,パーキンソン病のある睡眠時無呼吸障害患者(PD+SAS)とパーキンソン病のない睡眠時無呼吸障害患者(PD-SAS)の睡眠時無呼吸イベントに対する心拍応答を比較することにより,両患者群間の自律神経系応答性の違いを明らかにすることを目的とする.国立病院機構大阪刀根山医療センターで計測された両患者群の気流,心拍数,SpO2データを解析した.その結果,臨床睡眠検査技師が判定した睡眠時閉塞性無呼吸・低呼吸イベントに対する心拍数の上昇振幅は,PD+SAS群の方がPD-SAS群よりも統計的有意に低かった.また,心拍数の上昇潜時は,PD+SAS群の方がPD-SAS群よりも統計的有意に高かった(遅かった).心拍応答特徴量を説明変数としたロジスティック判別分析の結果,全データを用いた場合の判別的中率は78%となり,Leave-one-out交差検証の判別的中率は75%であった.以上の結果より,パーキンソン病患者は,交感神経の変性により,睡眠時無呼吸イベントに対する心拍応答の反応性が低下していることが示唆された.

  • 小林 茉以, 吉岡 枝里子, 山内 剛, 谷津 翔一朗, 葛西 隆敏
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 305
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    睡眠呼吸障害(Sleep Disordered Breathing :SDB)では,無呼吸/低呼吸と関連した心拍数の変動が見られることが知られており,この周期的な心拍数の変動をCVHR(Cyclic Variation of Heart Rate)と呼ぶ.我々は24時間ホルタ心電図データからCVHRを自動的に検出するアルゴリズムを開発してきた.しかし,従来のアルゴリズムでは心拍数の変動が小さい場合,ノイズなどとの識別が困難であるためCVHRとして検出できないことがある.本研究では,RRトレンドの基本周波数の振幅と,基本周波数よりも低い領域および高い領域の振幅比に着目し,ノイズと区別できるかどうか検討をおこなった.アルゴリズムの評価にはApnea-ECG Database(PhysioNet)の70件を使用した.評価の結果,(1)無呼吸/低呼吸イベントの出現頻度であるAHI(Apnea Hypopnea Index)と検出したCVHR出現頻度の間の相関係数は0.71から0.82へ向上した.(2)CVHRの検出感度は86%から91%,特異度は86%から93%,陽性的中率は90%から95%に向上した.提案したアルゴリズムはCVHRの検出精度の向上に有効であることを確認した.

feedback
Top