生体医工学
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Annual58 巻, Abstract 号
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  • 中村 英夫, 丸益 康介, 前田 康治
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 306
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    心拍数は自律神経系活動により制御されている.生体はストレスに対し視床下部が反応することでストレスに対抗する反射を機能させる.本研究では,暗算ストレスと音読ストレス,異なる2種類のストレス負荷を被験者に加え,心臓自律神経系活動がどのように反応するかを計測する.とりわけ,運動習慣がどの程度ストレス反応と関係するかについて調査し,運動習慣の有無により異なるストレス負荷でもそれらに対する反応性が変化するかについて検討することを目的とする.被験者は若年健常男子17名で,内7名が運動習慣あり,10名が運動習慣無であった.被験者は安静座位で.音読ストレスとして提示した文章を2分間続けて読んでもらい,暗算ストレスでは2桁の足し算を2分間実施し,その際の心拍数データを記録した.ストレス負荷の順序はランダムに実施した.心拍数データに対し,心拍数とともにトーン-エントロピー法によって心臓自律神経系活動を計測した.結果,心拍数はストレス負荷を与えることで運動習慣の有無にかかわらず有意に上昇した.また,運動習慣がある群では心拍数はない群と比較して有意に低下した.自律神経系活動についても運動習慣がある群の方が高いことが示された.また,音読ストレスより暗算ストレスの方がよりストレスが大きいことが定量的に示され,運動習慣とストレスとの関係の定量的検討が可能であることが結果により示唆された.

  • 熊谷 岬, 田中 明, 吉澤 誠
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 307
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,撮影した皮膚映像の色変化から脈波(映像脈波;VPG)を非接触で抽出し,心拍数などの生理指標を得る技術が注目されている.また,同時に計測された複数点の脈波間の伝播時間(PTT)の差と血圧との間に相関があることも報告されており,血圧推定への応用も期待されている.しかしながら,PTTは血圧だけでなく血管のコンプライアンスによっても変化するため,血圧推定のためにはキャリブレーションを定期的に行う必要があることが知られている.一方で,我々の研究グループでは周期成分分析(PiCA)を繰り返し行うことで従来法と比べより精度の良い脈波抽出法を提案し,VPGの脈波形状に対して指尖容積脈波と同様の解析が行える可能性を示した.そこで本研究では手腕部を対象とし,血圧および末梢血管のコンプライアンスの変化がPTTと脈波形状に与える影響について検討した.手の昇降や温熱刺激などによって末梢部位の血圧や血管抵抗を変化させた際の映像から提案手法を用いてVPGを抽出し,PTTや脈波形状の特徴量の変化について比較した.その結果,末梢の血行動態の変化に応じて,脈波伝播速度だけでなく,加速度脈波解析におけるパラメータなどの形状から得られる指標も特徴的な変化を示した.これらのことから,血圧の変化と血管コンプライアンスの変化によって脈波伝播特性がそれぞれ異なる変化をすることが明らかになった.

  • 内藤 勇成, 田中 明, 熊谷 岬, 吉澤 誠
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 308
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    顔などの皮膚映像を撮影し,皮膚の色変化を解析することにより脈波(以下,映像脈波)を非接触で抽出する技術が注目されている.原理的に肌の露出した箇所であれば,映像脈波が得られる可能性があるため,映像脈波が接触式センサから得られる容積脈波と同様の情報を含んでいるのであれば,多くの血行動態指標が様々な部位において容易に計測できる可能性がある.また,映像脈波は多点同時計測が可能であるため,脈波の伝播速度や,到達時間の差などを利用した解析も期待できる.しかし,特に顔以外の部位で外乱が大きく,ノイズフィルタによって多くの有用な情報が失われてしまうことが懸念される.そこで,本研究では,手掌部を対象として,映像脈波に対して,脈波伝播速度や加速度脈波解析などの容積脈波から得られる様々な血行動態指標が映像脈波からも得られるかを調査した.手の昇降によって血行動態を変化させた際の,指尖脈波と掌の映像脈波を計測し,それぞれから算出した様々な指標を比較した結果,加速度脈波の波高比や反射指数などのいくつかの指標においてPPGと映像脈波の間に正の相関が見られた.心電図のR波からの伝播時間についても,両者の間に強い相関が得られた.しかし,映像脈波から算出した瞬時心拍数はPPGのそれに比べ誤差が大きく,安定して瞬時心拍数を得るためにはさらなる改善が必要なことも明らかとなった.

  • 宮本 成生, 塩澤 成弘
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 309
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【目的】鍼治療で特異的に発生する強い深部感覚は「鍼感」と呼ばれ、臨床において重要視されてきたが、鍼感の機序や治療効果は不明確なことが多い。そこで、本研究は鍼感の有無が循環器系及び自律神経系に与える影響を調査した。【方法】被験者は健常成人男性8名(20-25歳)とし、測定項目は、心電図および心拍出量とした。鍼はステンレス鍼(長さ40mm,太さ0.20mm,セイリン社製)を用い、経穴は足三里(ST36)とした。鍼を一定速度で刺入し、被験者には鍼感時に申告してもらい、その深さで鍼を留めた。なお、鍼感の申告がない場合は刺入深度を3cmで留めた。仰臥位で20分間の安静後、無刺激で5分間計測を行った。その後に鍼を刺入し、申告確認後、再度5分間計測を行った。解析は鍼刺激前後の5分間とし、鍼感の有無によって群を分けて対応のあるt検定を行った。【結果】鍼感がある日では、心拍数及び心拍出量が有意に低下した(p<0.05)。しかし、鍼感がない日では心拍数は有意に低下したが(p<0.05)、心拍出量に有意な変化は見られなかった。また、両日において心拍変動解析を行った結果LF、LF/HFに有意な変化は見られなかった。鍼感があった際に心拍出量が有意に減少したのは心拍数減少と同時に血圧の低下が考えられ、自律神経系に関しては呼吸も併せて調査する必要がある。【結語】鍼感は単調な鍼刺激とは異なる生体反応を引き起こす。しかし、機序が不明確であり、今後とも調査していく。

  • 廣瀬 玖実, 若林 哲, 八名 和夫
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 310
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    本稿では,加速度脈波のパラメータを用いて脈波伝搬速度の推定する方法を提案する.WHOの調べによると世界で最も多い死因は心血管疾患であり,動脈硬化が原因で起こりうる疾患である.しかし自覚症状がないことに加え,測定する機会が少ないため,発見されたときには手遅れになってしまう事例が多い.したがって日常的に動脈硬化度(血管年齢)の計測を行えることが望ましい.動脈硬化度の指標に,加速度脈波による血管年齢推定法と脈波伝搬速度による推定方法が挙げられる.加速度脈波による推定方は,医療従事者でなくても簡易的に測定できるが,血管年齢と実年齢がどの程度の年齢差があった場合に動脈硬化が疑われるのかが曖昧である.その反面,脈波伝搬速度による推定方は動脈硬化と判断される閾値はあるが,医療現場向けの方法であるため日常的な測定が難しい.そこでそれぞれの利点を活かすべく,指尖脈波だけで脈波伝搬速度の推定を試みた.加速度脈波と脈波伝搬速度を同一被験者でほぼ同時刻に測定し,脈波伝搬速度を加速度脈波から血管年齢を推定する際に使用する加速度脈波の五つの極値,一番目と五番目の極値の発生時刻の時間差,被験者の実年齢で重回帰分析した結果,十分な相関が見られた.

  • 水野 貴斗, 氏原 嘉洋, 中村 匡徳, 杉田 修啓
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 311
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    毛細血管再充満時間(CRT)とは,トリアージで循環機能を簡易的に判定する指標で,爪を5秒間加圧した後に解除し,爪の赤みが回復するまでの時間である.CRTは,脱水症の判定など循環機能の判定以外への応用も検討された(McGee et al. 1999)が,水分とCRTの関連性が低く,実用には至っていない.また,CRTは体温に影響されることが知られている(Schriger et al. 1988).本研究では,指標に影響を与える要因を把握し,この要因による影響を補正して正確なCRTを計測できれば,水分量の判定も含む他の病状診断に応用できる可能性があると考えた.そこでまず,CRTを定量的に計測するために,一定の力を負荷できる加圧装置を作製し,加圧を解除した後の爪の色の変化を撮影した.このとき,爪の輝度値の時間変化を測定し,得られたデータに指数関数を回帰し,輝度値が一定値に漸近するまでのうち90%変化するまでの時間を本法でのCRTと定義した.また,信頼性の高いCRTの算出方法を決めるために,連続してCRTデータを得た後,画像処理方法を変えてCRTを算出し,各解析法での値のばらつきを評価した.輝度値をRGB色空間とHSV色空間に分解し,各チャンネルの輝度値の変化からCRTを算出したところ,Greenチャンネルで計測毎のばらつきが最小となった.これは,爪上から見られる白から赤への輝度値の変化が,Greenチャンネルで最大となり,ノイズの影響が最小になるためと考えられる.

  • 大和田 舜, 久保田 知恵, 上村 伸夫, 森本 幸香, 東山 さとり, 来栖 宏二, 川端 茂徳, 荒船 龍彦
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 312
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

     SIDS(乳幼児突然死症候群)は,わが国で年間100件ほど報告されている乳幼児の原因不明の突然死である.SIDSは,睡眠中の乳幼児の無呼吸状態からの覚醒反応の遅延によって引き起こされている可能性があり,SIDSを防止するために無呼吸検知からの迅速な蘇生処置が重要である.また,保育施設で発生した死亡事案によると,睡眠中の乳幼児の突然死は,死亡案件の8割以上を占める.以上より保育施設では,SIDS防止のため乳幼児の午睡中に呼吸の有無,睡眠体勢,全身状態を5~10分おきに確認し,チェックシートに記入することが自治体より定められている.しかしながら,午睡中に他の業務を行う保育士にとって,負担が大きい.このことから,自動で保育施設の乳幼児の呼吸を計測し,無呼吸を検知するシステムが必要となる. 我々は従来,3次元センサを用いて乳幼児の呼吸動態を複数人同時計測し,呼吸異常を検知するシステムを開発してきた.本研究では呼吸動態の検知精度をより向上させるため,計測信号にリアルタイムFFT処理を加え,さらに普段の呼吸との差異をより分かりやすく認識するインターフェイスの改良を行った. 開発したシステムを用いて保育施設の午睡中の乳幼児に対して計測を実施し,システム評価を行ったので報告する.

  • 高吉 聡司, 清野 健, 金子 美樹, 重松 大輝
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 313
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    深呼吸,ロングブレス,腹式呼吸など,呼吸を意図的に制御することで,リラックス効果や集中力を高める効果があるといわれている.そこで,本研究では,呼吸の様式の変化が自律神経機能に及ぼす効果を検討した.ここでは,健常男性4名(年齢22.5±0.6歳)に対して,吸気と呼気の時間の比を1:2に制御した呼吸,呼吸比を指定しない随意呼吸,不随意呼吸について,鼻口気流および心拍変動時系列を計測した.ここでは,代表的な心拍変動指標である高周波数(HF: 0.15~0.25Hz),および低周波数 (LF: 0.04~0.15Hz)領域のパワーに基づく指標に加え,Bauerらが提案した位相同期加算(PRSA)信号のパワースペクトルを推定し,そのピーク周波数およびパワーを推定した.さらに,呼吸周期と心拍変動の位相同期現象についても分析した.分析の結果,呼吸様式の違いとは無関係に,呼吸数と心拍変動のlnHF,ln LF,LF/HFの値に強い相関がみられた.不随意呼吸と随意呼吸間では,前述の心拍変動指標に有意差が見られたが,その違いは主に呼吸数の違いに起因するものと考えられた.一方,呼気時間を長くとった随意呼吸では,他の呼吸様式に比べ,LF/HFが小さくなる傾向が見られた.講演では,心拍変動のPRSA信号の特徴,および同期特性の変化についても議論する.

  • 塚原 彰彦, 安西 優貴, 田中 慶太, 内川 義則
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 315
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    ブレインマシンインターフェース(BMI)は,脳波や脳磁図等の脳の信号からヒトの状態や意思を読み取り,電子機械装置の操作を可能にする技術である.これにより,筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の手足の運動や言語機能に重篤な脳障害を持つ患者に対して,他者とリアルタイムな意思疎通を可能とする.BMI技術のさらなる発展には,脳波のパターン認識を高精度かつオンラインで実行する必要がある.脳波のパターン認識の手法の一つとして,機械学習や深層学習などが用いられる.しかしながら,これらの手法において,高い認識精度を求めると処理が複雑になり,計算量が膨大になるためオンラインでのリアルタイムな処理が困難となる.そこで我々は,リアルタイムに脳波のパターン認識を行うことを目的とした専用プロセッサの開発を行っている.1チップで実装できれば,高度なBMIデバイスの実現において有用であると考えられる.これまで,少ないパラメータで実装可能で脳波を対象とした深層学習として提案されているEEGNetに着目し,EEGNetに基づく推論処理専用プロセッサの設計および論理回路シミュレーションを行ってきた.本発表では,設計したプロセッサを再構成可能なLSIであるFPGA(Field-programmable gate array)に実装し,性能評価を行った結果として,1チップのFPGAに実装可能なプロセッサにおけるパターン認識の精度や実行時間などについて報告する.

  • 森 明子, 小野 弓絵, 伊藤 麻帆, 水口 茉理菜, 河野 正志, 富永 孝紀
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 316
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    本研究は脳卒中片麻痺患者の運動野の脳活動の半球間結合性の変化と機能回復との関連を検討することを目的とした。脳卒中片麻痺患者8名に対し、4週間のリハビリテーションの前後で掌握運動実行時の脳波を計測した。脳皮質部位間の機能的結合性を評価するためにPhase Locking Value(PLV)を算出し、機能回復の指標としてFugl-Meyer Assessment(FMA)の手指機能に関する評価項目を用いた。運動野における損傷側と非損傷側の結合性に着目し、掌握運動実行前3秒から2秒前の1秒間の平均PLVに対する運動実行時のPLVの増加割合の変化とFMA手指項目の変化量 との関連を検討したところ、β波帯域においてPLVの増加割合の減少とFMA変化量のとの間に負の相関が見られた。このことから、リハビリテーション後にFMAで回復がみられる患者では運動実行時の運動野におけるPLVの増加割合が減少する、つまり半球間結合性が小さくなることが示された。半球間結合性の減少は運動実行時における非損傷側の運動野の関与の減少を示唆しており、リハビリテーションにおいて損傷側に残存する機能を活用できた患者ほど、運動機能の回復がもたらされたと考えられる。

  • 中禮 周, 小野 弓絵
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 317
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    事象関連脱同期(event related desynchronization:ERD)とは、運動想起または実行に伴う一次運動野のμ波帯域パワー値の減衰である。ERD強度は脳卒中患者の運動機能回復との関連性が報告されているため、脳卒中患者に対するニューロリハビリテーションでは、患側運動野からのERD強度を増加させる訓練が行われる。しかしERD強度は運動想起・実行前の安静時のμ波パワー値に依存するため、ばらつきが大きいことが問題であった。よって我々は、ERD強度を安定して検出するため、安静時のμ波帯域パワー値が一定時間、閾値を満たした場合に運動想起・実行を行う方法を検討している。本研究では、最適な安静時閾値とその持続時間を検討した。健常成人6名(平均年齢23.5±2.0歳、男女各3名)が実験に参加した。利き手の運動野付近の電極から計測した安静状態の脳波のμ波帯域パワー値(6-12 Hz)の平均強度を求め、安静時閾値を安静時平均強度の70~100%、持続時間を1~3秒とし、2分間に3回以上条件を満たすことのできた閾値と持続時間を調べた。被験者6名中5名において、安静時平均強度の80 %以上を1秒間保持することが可能であった。今後は個人ごとに設定した閾値と持続時間を満たす条件で計測したERD強度と、安静時閾値を用いない場合のERD強度を比較し、提案手法の優位性について検討する予定である。

  • 小野木 真哉
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 318
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Position tracking is the key of surgical navigation systems to measure relative positions of a patient and surgical tools. As a tracking device, an optical or electro-magnetic position sensor is generally used in clinical application; however, measurement failure often occurs by line-of-sight occlusion or magnetic field disturbance. To address the issue, we propose that attitude compensation by integration of position sensor and gyroscope. Firstly, gyroscope provides 3-axis angular velocity and its integration gives attitude of sensor body. Secondly, position sensor provides absolute attitude. Then, attitude error and gyroscope bias noise are estimated from the attitude difference between the position sensor and gyroscope by using Kalman filter technique. Experiments are performed to validate the proposed methods. The results demonstrate a well compensation of attitude when measurement failure occurs in a position sensor.

  • 小南 日向, 古屋 秀隆, 井上 明男, 中江 悟司, 金子 美樹, 重松 大輝, 清野 健
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 319
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,ウェアラブル・ニアラブルセンサ,IoT技術の発展により,人や動物の活動状態の長期連続モニタリングが可能になっている.本研究では,そのような技術をペットや家畜の健康管理に役立てるため,マウスのような小動物の姿勢や活動情報を詳細に自動追跡する方法を検討した.ここでは,透明なアクリル製ケージ内での自由行動下マウスを対象とし,RGB-Dカメラ(Intel RealSense Depth Camera)を用いて撮影可能な,赤外画像および深度情報を用いた.撮影画像内のマウスの追跡には,深層学習に基づくマーカレスの姿勢推定ツールであるDeepLabCutを利用した.ここでは,自動追跡されたピクセル上の姿勢情報を深度情報と組みあわせ,透視投影変換を用いることで三次元情報を再構成した.これらのデータから,マウスの姿勢,軌道,移動速度,滞在時間などの情報を抽出した.我々のアプローチはマウス以外にも適用できるため,家庭内で飼われているペットなどの日常の活動を連続計測し,活動状態を評価することも可能である.講演では,長期連続計測データの分析法およびその応用についても紹介する.

  • 李 俐, 中村 亨
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 320
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    最近,我々は,約8万人の24時間体幹加速度データベースを用いて,日本人の加齢や性差,生気象学的影響に関する睡眠疫学的知見を報告した.本研究では,不眠症などの睡眠問題と関わる睡眠指標の異常値を有する人口割合,特にその加齢変化についての分析を行った.先行研究において,中高年(40-50代)における有意な平均総睡眠時間の低下を報告したが,さらに総睡眠時間分布の加齢変化を検討したところ,総睡眠時間が9時間以上である人口割合の有意な減少(40代:14.5%,50代:13.8%)と5~7時間睡眠の人口割合の有意な増加(40代:43.7%,50代:45.0%)が,総睡眠時間の減少に関与していることを確認した.一方,睡眠の質変化について,不眠症に関連する夜間の覚醒問題(中途覚醒時間>30分を基準とした)を有する人口の年代別割合を検討したところ,30歳未満では,基準を満たす割合が年代によらず約3割程度であるなか,40代以上では,約5%の割合で年代の上昇に伴い増加し,80代では,約半数(53.8%)に夜間覚醒問題が生じている可能性を示唆する知見を得た.さらに,入眠困難や睡眠効率の低下等の様々な不眠症状を考慮した場合,50代において全ての基準を満たす割合が最も多い(5.8%)ことを確認した.本研究で,睡眠問題の保有者数の年齢依存性に関する知見を得た.

  • 岡村 純也, 山本 悠介, Dai Lulin, 宇都 嘉浩, 山田 陽介, 王 鋼
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 321
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    物体の二次元像は観察角度に依って変化する.しかし,我々は観察角度に依らずに同じ物体と他の物体を弁別できる.サルを対象とした行動実験から,同じ観察角度で類似した物体の弁別を経験すると,観察角度間隔60°程度まで観察角度に依らずに弁別できるようになることが示された.ヒトを対象とした心理物理学的研究から,同じ観察角度での弁別経験により,弁別できる観察角度の幅が広がることが示された.電気生理学的実験から,同じ観察角度で弁別経験した物体に対し,サルの側頭連合野の神経細胞が60°程度の観察角度許容性を示すことが明らかになった.本研究では,観察角度に依らずに三次元物体が脳内で表現される神経機構を明らかにするため,側頭連合野の神経細胞集団活動を特徴ベクトルとして機械学習を行い,異なる観察角度の物体画像への弁別パフォーマンスを調べた.同じ観察角度で物体を弁別するよう識別子を機械学習によりトレーニングした後,異なる観察角度の物体画像への細胞集団活動を用いて識別子をテストした.同じ観察角度で弁別経験した物体に対する弁別精度は,弁別経験していない物体に対する弁別精度よりも高く,異なる観察角度像の連合学習を経験した物体に対する弁別精度と同程度であった.この結果は,同じ観察角度で弁別経験した三次元物体の脳内表現を,神経細胞集団の活動を用いたモデルにより表現できたことを示す.

  • Xin Zonghao, Yoshifumi Abe, Shuang Liu, Kenji F. Tanaka, Koichi Hosomi ...
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 322
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Central neuropathic pain is a complex and difficult chronic syndrome in modern medicine. Recently, Motor Cortex Stimulation (MCS) has emerged as an effective treatment for chronic neuropathic pain. However, the precise mechanisms underlying analgesia induced by MCS have not been completely understood. The purpose our study is to investigate the mapping of the brain during the MCS procedure. We inserted bi-polar electrode made of tungsten into primary motor cortex (M1) region of the intact adult male Wistar rats. Functional Magnetic Resonance Imaging (fMRI) scan was implemented simultaneously with the motor cortical stimulation. The blood oxygen-level dependent signals (BOLD) taken from fMRI were used as an index to reflect the response against MCS. The independent component analysis (ICA) result showed that contralateral Motor Cortex (M1), ipsilateral striatum (CPu), ipsilateral Somatosensory (S1) and ipsilateral thalamus were activated after the onset of the MCS.

  • 小池 智哉
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 323
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    EEGを用いたてんかん発作の自動検出は盛んに研究されている。機械学習分野における提案手法の評価は実際にシステムが使われる状況をできるだけ再現して行うことが望ましい。先行研究では評価方法が実際のシステムの使用状況を想定したものとなっておらず、過大評価されている可能性がある。本論文では、データを3分割し、それぞれを学習、学習ストップタイミングの決定、学習モデルの評価に使用することで、学習モデルの過大評価を防ぐことを提案する。このデータ分割方法にて先行研究における学習モデルの評価方法と今回の学習モデルの評価方法を比較した結果、3種類の学習モデルの平均で、適合率で36.6%、再現率で31.5%過大評価していることがわかった。

  • 常盤 達司, 竹内 章
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 324
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    我々の聴覚能力の上限は,およそ20kHzと考えられている.一方,非可聴領域の周波数を含む音(非可聴音)が生理活動に及ぼす影響が報告されていることから,ヒトは何かしらの方法で非可聴音を受容していると考えられる.2種類の異なる可聴域周波数を含む音を呈示した場合,ミスマッチ陰性電位(MMN)が観測される.MMNは,事象関連電位の一つであり,被検者の注意や意識に依存しない感覚情報自動処理関連電位と考えられている.ヒトは非可聴音を識別できないが,何かしらの方法で受容していることから,非可聴音に対する感覚情報自動処理関連電位が観測される可能性がある.そこで本研究では,非可聴音を用いたMMNの計測を試みた.被験者は,書面により同意が得られた健常人7名(男性5名,22.4±1.3歳)とした.被検者を安静に着座させ,音刺激に注意を向けないよう実験中に読書を指示した.拡張10-20法に従い,探査電極(Fz, Pz, Cz, C3, C4),参照電極A2,GND電極Fpzを配置した.標的刺激25 kHz,標的刺激30 kHzとし,呈示間隔500 ms,時間100 ms,頻度8:2,総刺激回数800回とした.音刺激は音圧80 dB SPLで被験者の右耳に呈示した.計測された脳波を刺激種類に分けて加算平均し,それらの差分波形を算出した.差分波形から,一般的に知られているMMN成分と同様の陰性ピーク及び電位分布が確認された.この結果は,脳が周波数の異なる非可聴音を区別している可能性を示唆している.

  • 片山 統裕, 吉田 侑冬, 中尾 光之
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 325
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【背景】ヒトの脳においてfMRIなどで観察される機能領域活動の同期性は安静時機能的結合(rsFC)と呼ばれ,高次脳機能疾患機能のバイオマーカとして期待が集まっている.マウスでは経頭蓋的に光学計測可能な皮質血液量変動(IOSI-CBV)とfMRIとの類似性が指摘されているがrsFC解析に用いる妥当性については明らかでない.本研究では,マウス大脳皮質活動を反映する皮質血液量(cerebral blood volume,CBV)の内因性光信号のrsFC解析への適用の妥当性について検討した.さらに,rsFC解析で用いられる単相関と偏相関の解析結果について検討した.【方法】無麻酔安静状態のマウスの大脳皮質に緑色光(523nm)を経頭蓋的に照射し散乱光をCCDカメラで撮影しIOSI-CBV信号を得た.心拍,呼吸,体動等を反映するglobal signal(GS)は観察領域全体の平均値で推定した.【結果と考察】GSを除去したCBVを対象に単相関解析でrsFCを推定した結果,従来の報告と良く一致した[1].GSを除去しないCBVを偏相関解析して推定した偏相関rsFCを単相関rsFCと比較したところ,正の相関の領域ではほぼ一致したが,単相関rsFC解析で負の相関が推定された結合は偏相関解析では無相関と推定された.これらの結果は,従来のrsFC解析法で推定された負の相関(結合)の解釈について再検討の必要があることを示唆する.【文献】[1] Yoshida, Y et al. (2018). Physiol Meas, 39(054003).

  • 神林 美帆, 遠間 隆広, 田中 元志, 室賀 翔, 齋藤 勝俊, 新山 喜嗣
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 326
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    快適な照明空間と脳波情報を用いたその評価方法の構築を目的に,有機ELを用いたカラー照明を試作し,色が異なる空間の居心地の良さについて主観評価と脳波測定から検討してきた。指標としてα波やβ波成分のパワーを求めたが,主観評価との対応が見られない場合があった。赤は興奮を促す,緑や黄茶は緊張を和らげる,などが知られている。本研究では,それらの色の空間で脳波測定を行い,主観評価との対応から検討を加える。実験室で,被験者の前方と両脇を高さ1.8 mの白板で囲い,正面の壁中央(距離約2.8 m)高さ1 mにカラー照明(有機ELパネル8×8枚)を配置した。照明の色を緑⇒赤⇒紫,黄茶色⇒水色⇒黄など(各90 s)と変えたときの脳波を標本化周波数1 kHzで取り込んだ。スペクトル解析を行い,色の切替え前後の各脳波成分(α波,β波,θ波など)のパワー比を求めた。探査電極をFz,Cz,Pz,Ozとした。被験者は健康な成人13名(21~23歳)であり,同意書を得て実験を行った。緑⇒赤のとき,fast α波成分が増加し,居心地の平均評価値(MOS)は低下,気分は向上していた。赤⇒紫のときはfast α波成分の減少に対して,居心地のMOSは増加,気分は低下し,対応が見られた(Cz)。色の変化によっては主観評価と対応が見られない場合があったが,脳波成分の変化が確認された。本結果から,快適性評価への脳波情報の利用の可能性が示唆される。

  • 野田 善尭, 吉田 久
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 327
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,脳機能活動の非侵襲計測手法としてfNIRSが用いられることが増加している.fNIRSはfMRIに比べ,拘束性が低いため,活動的,あるいは道具を用いた課題を比較的行いやすいといった特徴があるが,実際のfNIRS計測信号には体動や生理学的変動の血流量変化が容易にアーチファクトとして混入する.混合信号の分離手法としてはバンドパスフィルタを用いたフィルタ処理や独立成分分析を用いた方法,血流動態分離モデルを用いた山田らの方法などがある.血流動態分離法は機能性成分と全身性成分の血流動態の違いに着目し,2つの成分を分離する手法である.本研究では,この血流動態分離法におけるパラメータ特性を調査した.血流動態分離法は機能性成分における酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの比率を表す係数を固定するが,我々は計測部位や計測区間(課題と非課題区間)ごとに異なる傾向があるか否かを確認するために,相互情報量を評価関数として動的に決定した.その結果,課題に関連した変動が確認された部位や区間とその他の部位や区間では決定された係数に差が見られた.従前の固定された係数は全身性成分を除去する実験的配慮が行われた研究を元に経験的に決定されているが,全身性成分の混入が予想される計測信号の分離における係数は計測部位や課題によって変動する可能性が示唆された.

  • 越坂 ほのか, 佐藤 駿平, 福岡 豊
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 328
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    直立しているヒトの頸背部に振動刺激を与えた場合の身体動揺は、視線や聴覚刺激の方向に生じる。その身体傾斜方向は、被験者によって影響の程度が異なることが報告されている。しかし、その理由に不明確な点が多い。そこで我々のグループでは、視線による身体傾斜と聴覚刺激によって起きた身体傾斜が関連しているかを調べた。その結果、両者に有意な相関がみられた。これは、異種の感覚刺激による影響に共通な処理メカニズムが関与していることを示唆している。この共通なメカニズムは、2つの感覚情報が統合される部分より上位に存在する可能性が高いと考えられる。そこで本研究では、これには注意の向いている方向が関係していると考えた。注意については、錯視の実験を用いて解析されている。錯視を用いた注意の実験では、左右いずれかに現れた光点に続いて直線が一瞬で提示されたとき、光点の方向から直線が伸びるように錯覚する。これは、注意が光点に引き付けられたために、脳内の運動検出器が、直線の光点側をいち早く検出したためである。本研究では、左右の光点の代わりに音刺激の後、直線の見え方を確認した。その結果、音源方向から描画されると答える被験者が多かった。これらの結果から、注意は音源によっても引き寄せられ、視線や聴覚によって意識が向いている方向、つまり注意の向いている方向に身体傾斜が起きる可能性が示唆された。

  • 河野 周作, 大澤 恭子, 星野 真人, 松本 健志
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 329
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    高齢者人口の増加に伴い,筋骨格障害の一つである変形性関節症(OA)への対策が求められている. OAについては,関連する生活習慣やリスク因子の解明が進んでいるが,関節軟骨の力学的特性とOA発症との関連については明らかにされていない.OA発症は局所的な軟骨機能異常が起点となる可能性もあることから,OA発症メカニズムを力学的視点から理解するためには,軟骨内部の力学特性を評価する手法を確立する必要がある.そこで本研究では,コラーゲン線維の分布密度や配向構造を高感度に検出できるX線位相差ダイナミックCTを確立し,これを繰り返し変形を受ける関節軟骨組織の動的粘弾性試験に応用し,その有用性について検討した.X線光源にはSPring-8放射光を利用し,軟骨密度差に起因する位相差はTalbot干渉計を利用したモアレ法により検出した.ブタ後肢脛骨の近位荷重支持部の軟骨組織より採取した軟骨試料に対し,静的試験では無負荷時及び10%歪みを与えて平衡に達した後に,動的試験では,荷重負荷周波数0.4Hz,0.8Hz(最大歪み10%)を与えながらX線位相差CT撮像を行った (4.4μmボクセル).静的試験下においてはコラーゲン線維構造(密度,配向)を捉えることができたが,動的試験下においては解像が不十分であり,撮像アルゴリズムの改善を要すると考えられた.

  • 田中 優人, 川人 侑弥, 松本 健志
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 330
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    我々は運動療法の代替となり得る微振動刺激(WBV: Whole Body Vibration)とその断続性と不規則性による作用向上に着目し,断続的WBV(周波数45Hz,振幅0.3g,3秒×150回(刺激頻度20,250)/日,刺激間隔9±6秒,5日/週)が骨粗鬆症マウスの皮質骨において2週後に効果を及ぼすことを確認した.しかし,その効果は4週後には消失したため,本研究ではさらに不規則性を増したWBV(周波数45Hz,振幅0.3g,3±2秒間×150回(刺激頻度20,250)/日,刺激間隔9±6秒,5日/週)によるWBV作用の持続長期化を試みた.2週後には皮質骨にはその効果は認められなかったが,海綿骨体積分率,海綿骨平均ミネラル密度,海綿骨ミネラル密度ピーク値に骨粗鬆症抑制の効果が認められた.しかし4週後には,皮質骨,海綿骨ともにWBVの効果は確認できなかった.WBV効果の長期化を図るためには,刺激頻度や強度も考慮した負荷様式が必要であることが示唆された.

  • 山口 陽平, Masayoshi NISHIYAMA, Hiroaki KAI, Gentaro IRIBE, Keiji NARUSE, ...
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 331
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Cardiac muscles are subject to several types of mechanical stress. The mechanical stress affects the morphological and functional aspects of cardiomyocytes. However, the effect of high-pressure in cardiomyocytes has never been investigated due to the lack of a quantitative measurement system. In this study, we first successfully observed the alteration of the morphology and intracellular Ca2+ concentration ([Ca2+]i) in mouse cardiomyocytes under high-hydrostatic pressure. The high-pressures (5, 10, and 20 MPa) progressively shortened the sarcomere length as an index of morphological change with the high-hydrostatic pressure system. However, electron microscope indicated that the high pressure did not collapse the organisation of cardiomyocytes. In the high-pressure microscope, high-pressure did not change [Ca2+]i, though the cardiomyocyte contracted. Furthermore, 50 mM 2,3-Butanedione monoxime, a non-selective myosin ATPase inhibitor, interrupted the high-pressure-induced contraction in cardiomyocytes . These results suggest that high hydrostatic pressure directly regulates actomyosin interaction, leading to the cardiomyocyte contraction.

  • 貝原 恵子, Keiji Naruse, Gentaro Iribe
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 332
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Myocardial acute stretch increases NADPH oxidase (NOX) 2-derived ROS production to modulate Ca2+ handling in intact ventricular cardiomyocytes. However, their behaviors in failing heart are unclear. In this study, we investigate the stretch-induced change in ROS production in pressure overload-induced cardiac failure in mice. Heart failure was induced via chronic Transverse Aortic Constriction (TAC). The isolated cardiomyocytes loaded with 2`,7`-Dichlorodihydrofluorescein were exposed to 8% axial stretch using carbon fiber technique, to observe stretch-induced ROS production. Cellular contractility was estimated by slopes of end-systolic force-length relation (ESFLR) curves.Although the slope of ESFLR showed a significant decrease after TAC, neither base nor stretch-induced change in ROS production were significantly affected by TAC. Despite clinical significance of ROS in the progression of heart failure, the present results showed that response of NOX2 to stretch is not involved with underlying mechanisms of progression of TAC-induced myocardial dysfunction.

  • 宮本 忠吉, GO ITO, HIDEHIRO NAKAHARA
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 333
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Background: High intensity interval training (HIT) is more effective than continuous training in enhancing cardio-respiratory function and symptom severity in chronic heart failure (CHF). We examined how HIT affects ventilatory regulation. Methods: In 7 healthy subjects, at rest and during exercise at light and heavy intensities, we separately characterized respiratory controller and plant (subsystems) of chemoreflex by changing inspiratory CO2 fraction and by making subjects alter ventilation (VE), respectively. Results: HIT did not affect both subsystems at rest and during light intensity exercise. During heavy intensity exercise, rightward shift of central controller characteristics mainly attributed to lower VE (-9.4%, p<0.01) and higher end tidal PCO2 (+4.4%, p<0.05) after HIT. Conclusion: Weekly high intensity interval training attenuates the respiratory drive during heavy exercise through desensitization of the respiratory central controller. Such mechanism may contribute to favorable effects of HIT in CHF.

  • 伊藤 剛, HIDEHIRO NAKAHARA, TADAYOSHI MIYAMOTO
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 336
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    There is strong evidence that exercise intensity mediates central and peripheral cardiovascular and respiratory adaptations to exercise and improvements in maximum aerobic capacity (VO2max). However, the effects of different exercise intensity on once-a-week interval training are uncertain for dynamic cardio-respiratory responses to exercise. 16 male college student athletes divided into 2 groups of 95% or 80% intensity (TG95%, TG80%,), trained weekly for 8 weeks. The training consisted of three bouts of exercises to volitional fatigue at TG95% or TG80% maximum work rate.Regardless different of training intensity, increased VO2max and maximal exercise performance in both training groups were observed after training program (P <0.01). TG95% induced cardiac adaptation in enhancing heart rate during maximal exercise. The present results indicate that high intensity interval training markedly induces training intensity-dependent specific cardiorespiratory response at the onset of exercise through changes in autonomic neural regulation.

  • 宮野 貴士, 鈴木 敦詞, 坂元 尚哉
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 337
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    尿細管間質の線維化は慢性腎臓病 (CKD)における腎機能低下と相関することから、線維化の抑制CKDは対する有用なアプローチと考えられる。過去の研究により、流れによる壁せん断応力や浸透圧のようなメカニカルストレスが CKD の進行に寄与することが示されている。尿細管間質の線維化には尿細管上皮細胞の形質変化が関与していると考えられているが、メカニカルストレスの上皮細胞に及ぼす影響を調べた研究はほとんどない。本研究では、尿細管が恒常的にさらされており、CKD 進行への影響が示唆されている浸透圧に注目し、高浸透圧ストレスが尿細管上皮細胞に与える影響を調べた。ラット尿細管上皮細胞に対し、マンニトール添加による高浸透圧刺激を負荷したところ、筋線維芽細胞のマーカーであるα平滑筋アクチン (α-SMA) および線維化関連遺伝子の発現が増加した。高浸透圧刺激はアクチンフィラメントなどの細胞骨格構造に加え、細胞接着斑 (FAs) の時間依存的な消失や再形成も引き起こした。阻害剤により FAsの再形成を阻害することで α-SMA や線維化関連遺伝子発現の増加は抑制された。これらの結果から、尿細管間質の線維化進行に対し高浸透圧刺激による FAs を介した上皮細胞の機能変化が寄与することが示唆された。

  • 山下 知子, 山下 和彦, 原 晋介
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 338
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    [背景]高齢者の転倒リスクを高める外反母趾は35%以上に発生している.足部に課題を持つ足の特徴には踵が外側に曲がる踵骨外反や足首が内側に倒れる回内状態が挙げられる.これらは足部の解剖学的特徴に起因しているため,足部の解剖学的特徴を評価し将来のリスク推定が求められる.しかし足部の解剖学的特徴を定量的かつ安価に計測・評価するための計測器はない.[目的]そこで本研究では足部の解剖学的特徴を計測・評価するためのシステムを開発し,有用性と中高年者の足部の課題の調査を行った.開発したシステムは,スマートフォンを用いて対象者の足部周囲を360度撮影し,足部の3次元再構成を行い,特徴量を抽出することで評価を行う.[方法]対象は中高年者419名(63.8±12.0歳,40-89歳)であり,足部の解剖学的特徴の解析を行った.対象者は自然な立位を保持し,視点は1点を見つめ動かないよう指示した.撮影時間は約10秒である.[結果・考察]その結果,外反母趾のリスクを高める足部の扁平化,開帳足は加齢により進行していることがわかった.以上より,スマートフォンを用いることにより簡便な計測が行え,解剖学的観点からの評価が可能となり,足部変形リスク推定における評価に有用であることが示唆された.

  • Feng Zhonggang, Shunya Kuramochi, Tadashi Kosawada, Daisuke Sato, Taka ...
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 339
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Fibroblast-compacted collagen gels are extensively used as model tissues in regenerative medicine. In this study, compacted gels with different final collagen densities were achieved by suspending 0.1 million fibroblasts in collagen solutions with different initial concentrations and following a 5-days culture after the gelation. The Poisson's ratio of these gels was measured in uniaxial tensile tests. It showed that the apparent Poisson's ratio of the gels with high collagen density (45.5 and 32.3 mg/ml) was consistently smaller than 0.5 which means that the gel volume expanded during the stretch; whereas, the apparent Poisson's ratio of the gels with low collagen density (15.3 mg/ml) showed a biphasic feature and was eventually greater than 0.5 at large deformation resulting in volumic shrinkage at large deformation. A statistical structural model for the collagen fibrils in the gels was constituted to reproduce the experimental data with good agreement.

  • 長崎 あかり, 早見 武人, 神田 岳文, 蒋 飛, 陳 献
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 340
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    毛細血管は生体組織を構成するあらゆる細胞に酸素や栄養を供給し二酸化炭素や老廃物を回収する役割を担っている.毛細血管の機能低下は生体組織の正常な代謝を妨げ,様々な病気を誘発したり悪化させたりする原因になると考えられる.毛細血管の機能を維持する仕組みは非常に複雑であるため,その機能が低下する原因や過程を生体の観察のみから導き出すことは難しい.本研究では糖尿病を想定し,毛細血管の機能低下に伴う力学的側面について計算による検討を行った.糖尿病では血液中のグルコースが増加することが一般に知られているが,血漿の粘度も上昇することが報告されている.高粘度の血漿には,毛細血管を流れる血液を流れにくくしたり,血管壁にかかるせん断応力を高め血管壁を傷つきやすくする効果が想定される.今回は血漿が円筒状の毛細血管の内部に形成された血栓に及ぼす応力について,糖尿病患者と健常者の間で比較を行った. 計算の結果,血栓にかかるせん断応力は血漿粘度が高い場合や,血栓の形状が薄くかつ高く盛り上がっている場合に大きくなる傾向がみられた. 糖尿病による血漿粘度の上昇が毛細血管に及ぼす力学的影響を見積もることができた.

  • 高橋 賢, Mengxue Wang, Yun Liu, Yin Liang, Chen Wang, Keiji Naruse
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 341
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    There is a greater demand for experimental models of human organ in medical science. In preparation for the models, we seeded human umbilical vascular endothelial cells on a microfluidic chip made of silicone and perfused medium with peristaltic pump, to mimic microvasculature of an organ. We tested the feasibility of live cellular imaging with the chip. Alteration of intracellular calcium level in response to shear stress due to the flow of medium was successfully recorded under fluorescent microscope. After fixation of the cells with paraformaldehyde, dual staining of platelet endothelial cell adhesion molecule-1 (PECAM-1), a marker for endothelial cells, and 4',6-diamidino-2-phenylindole, a stain for nucleus, was performed. Immunofluorescence corresponds to PECAM-1 at the cell-cell junction was confirmed under confocal microscope. On the other hand, attachment of the cells can be improved by optimizing the coating procedure of extracellular matrix proteins. We will apply this system to develop a human heart-on-a-chip.

  • 稲村 駿季, 小泉 彩芽, 野村 征太郎, 伊藤 正道, 横田 祐子, 小室 一成, 池内 真志
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 342
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    心臓への血行力学的な負荷(メカニカルストレス) の増加は心肥大を引き起こし, 心不全へと発展していく. しかし, 心不全へと至るメカノバイオロジー機構にはいまだ不明な点が多い.これを解明する方法として, 正常iPS 心筋細胞とラミン変異iPS 心筋細胞のメカニカルストレス応答を比較することが考えられる. そして, ラミン変異を有する患者は激しい運動を契機として心不全を発症する場合があることから, メカニカルストレス応答が負荷の大きさによって異なることが想定される. さらに, メカニカルストレス応答を解析するにあたり, 細胞への負荷や形態の履歴をリアルタイムに記録し, その情報を伸展後の発現解析の情報などと紐づけて解析していくことは有用であるといえる. そこで, 本研究ではマルチ伸展パターンとリアルタイム観察を両立する細胞伸展システムの開発を行った. そして, ウェルの幅と伸展量の組み合わせによって4-12% の範囲の伸展率を同時に達成した. さらにウェルに滴下した蛍光マイクロビーズの観察によって倍率40x までリアルタイム観察が可能であることを実証した. そして,iPS 心筋細胞が伸展に対し接着を維持可能な最適条件を検証し, 播種後3 日目にフィブロネクチンコートでFBS を含まない培地を使用すると最も接着が維持される割合が高いことを確認した.

  • 大矢 貴史, 大友 春輝, 菊地 鉄太郎, 佐々木 大輔, 松浦 勝久, 清水 達也, 福田 憲二郎, 染谷 隆夫, 梅津 信二郎
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 343
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    日本において創薬コストの削減は大きな課題である。創薬コストの削減を達成するために近年注目されている手法は、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を利用した、前臨床試験である。現状の前臨床試験は、主に動物実験により行われているが、ヒトと動物では、種間特性・薬物動態が異なることから、必ずしもヒトと同じ薬効を示さないことがあった。この課題を解決するために、ヒトに近い反応を示すヒトiPS細胞由来心筋細胞により構築したin vitroの細胞組織を利用した薬効評価システム確立に関する研究が注目を集めている。本研究では、作製したヒトiPS細胞由来の細胞外電位などの情報を低侵襲なモニタリングが可能な、厚さ500 nmの超薄膜センサの開発を行った。開発したセンサは、生体適合性を有するパリレンフィルムをベースとしており、細胞外電位を計測するための厚さ100 nmの金電極がパターニングされている。非常に薄いため、測定対象物表面の複雑な形状に沿うように対しても密着し、動きに追従しながら細胞外電位のモニタリングが可能である。作製した超薄膜センサを利用し、ヒトiPS細胞由来心筋細胞の拍動に追従しながら、細胞外電位を多チャンネルで測定することに成功した。また、アドレナリン等の薬剤に応答する様子を細胞外電位波形から確認することに成功したため、作製したセンサはヒトiPS細胞由来心筋細胞の薬剤応答を評価するためのセンサとして、有効であると考えられる。

  • 山口 昌樹
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 344
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    微細な球状曲面が規則的に並んだリエントラント構造は,生物を規範とした理想的な撥水構造であり,固体表面の疎水性を著しく改善できる可能性がある。本研究では,リエントラント構造を試作し,計算値と測定値の比較からその撥水特性を議論した。リエントラント構造を有するサンプル17種類は,紫外線硬化樹脂と,直径2.3から1350ミクロンのポリテトラフルオロエチレン製マイクロビーズを,ガラス基板上にスピンコーティングすることで作成した。樹脂の厚さ,マイクロビーズの質量と直径,およびスピンコーターの回転速度を加工パラメーターとした。サンプルの側面観察から球形の曲率を有することが観察され,リエントラントテクスチャが実際に形成されたことを示した。マイクロビーズ直径の最適条件において,見かけの接触角は144.6度に達し,滑落角は5度まで低減できた。Cassie-Baxter モデルを基にした理論式でマイクロビーズ直径と見かけの接触角の関係を求めたところ,計算値と測定値はよく一致した。以上より,リエントラント構造は物理的な手法で超撥水表面を実現するのに有用な方法であることを示した。本技術は,医療分野においても,血液ハンドリングや生体材料の表面改質に有用であると考えられる。

  • 彭 祖癸, Shoichiro Kanno, Kenta Shimba, Yoshitaka Miyamoto, Tohru Yagi
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 346
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Giant liposomes are spherical vesicles consist of closed freestanding lipid bilayers with diameters ranging from 10 to 200 micrometre. Due to their large dimensions, giant liposomes can be easily observed by optical microscope. Thus, giant liposomes are not only useful tool for biophysical basic researches but also hopeful biotechnological applications such as biosensors. A variety of methods have been developed for preparing giant liposomes. However, there remains difficulties to control the size of giant liposomes. Here, we present a solution to this challenge by a novel hydrogel-coated microarray chip. The chip allows gel-assisted formation of liposomes in a restricted area so that the size of liposomes can be controlled with a narrow size distribution. Moreover, giant liposomes formed on the microarray chips can be assayed for membrane proteins incorporation. This makes it possible to utilize the giant liposomes as membrane protein-based biosensor.

  • 菅野 翔一朗, Zugui Peng, Kenta Shimba, Yoshitaka Miyamoto, Tohru Yagi
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 347
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Single-walled carbon nanotubes (CNTs) are hollow cylindrical carbon allotropes. Recently, it has been reported that CNTs transport ions and small molecules, which is similar to the function of natural transmembrane proteins. Moreover, compared with transmembrane proteins, they are more resistant to chemical degradation. Thus, CNTs are considered to be ideal materials for bio-interface applications based on substances transportation. We propose to insert CNTs into spherical artificial biomembranes (liposomes) and use them as a bio-interface device. By contacting the CNTs- liposomes with the cell body, the CNTs can bypass liposomes and the cell. It may be possible to use for drug delivery systems by encapsulating the drug inside the liposome. In this study, we confirm the ability of CNTs to transport calcium ions across two liposomes by calcium-sensitive fluorescent probes. Our results show that the CNTs-liposomes have great potential to be high-performance bio-interface device.

  • 青山 起基, 鶴岡 典子, 芳賀 洋一
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 348
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年、開腹手術に対して傷が小さく、術後の回復の早い内視鏡手術が広く行われるようになった。一方で、内視鏡手術において術野の確保が困難であり、挿入できる機器に制限がある。本研究では、体内の柔軟組織に適した把持、圧排を可能とするバルーン型空気圧駆動アクチュエータの作製を行った。アクチュエータは外径3.3mmのシリコーンゴムチューブに外径4.0mmのポリイミドチューブを被せる形で作製した。ポリイミドチューブは円筒レーザー貫通加工技術を用いて梁とリングが連なった形状に加工した。また、アクチュエータの先端部は3Dプリンタで作製したキャップで封止した。アクチュエータの内圧を上げることで、内側のバルーンが膨張すると同時に外側のフレキシブル素材であるポリイミドチューブがバルーンの運動を局所的に制限することでアクチュータの屈曲が可能となる。また、ポリイミドチューブの設計を変えることで、アクチュエータの屈曲範囲を制御することを目標とした。今回様々な設計条件のアクチュエータを作製し、インフレータと圧力センサを用いて内圧とバルーンアクチュエータの屈曲変化の関係を明らかにした。

  • 木村 雄亮, 池内 真志, 井上 佳則, 生田 幸士
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 349
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年アフリカなど発展途上国では、エボラ熱など劇症感染を簡単に検出する技術が求められている。LAMP法は、サンプルを一定温度で加熱するのみで、標的となるウィルスDNA、RNAの発現解析が可能な手法である。しかし従来装置は電気的制御が必須であるが、発展途上国には無電化地域が多く、使用が困難である。本発表では一切の電気的な加熱を用いない新たな核酸発現解析手法「Non-Electric Control LAMP (NEC-LAMP)」の開発を行った。物質が液体~固体間に相転移している間、その物質の温度は、融点で維持される。本性質を利用し、融点がLAMP法の反応温度付近の物質を潜熱材として用いる事で、電気的制御を一切用いず、LAMP法を実行する事に成功した。本デバイスは1度に16サンプルの同時発現解析を可能とする。サンプル量は200 nlで反応可能であり、これは従来装置に必要な量の約1/100である。さらに本デバイス操作は極めてシンプルであり、患者自らが検査操作可能である。本デバイスを用い、2時間以上、反応温度の維持に成功した。また実際に、デングウィルスRNAの検出実験を行ったところ、デングウィルスRNAを含むサンプルでのみ反応が生じ、反応特異性及び実用性を確認できた。以上より、無電化地域でも反応解析が可能な、新概念のデバイスシステムの開発に成功した。

  • 楠田 佳緒, 岡本 淳, 田村 学, 村垣 善浩, 正宗 賢
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 350
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    脳神経外科手術では,手術中に様々な意思決定が行われる.たとえば,脳機能部位(言語野や運動野など)が,術中迅速診断で再発の可能性が高いと判断された場合,術者の経験から摘出範囲を意思決定しなければならない.その判断の質を向上するため,医師は術中の患者状態や電子カルテの診療情報だけでなく,手術室内にある生体情報,診療情報,手術経過,病理結果などの様々な情報を収集し,最適な手術方針を決定している.本研究では,術中意思決定支援のため,これらの情報を蓄積・解析・フィードバック可能な臨床情報解析システム(Clinical Information Analyzer : C.I.A.)の構築を目的とした.方法として,臨床研究データベースの診療情報やスマート治療室SCOTから抽出される医療機器情報を解析し,患者の予後予測モデルを開発する.結果として,電子カルテから抽出されるSS-MIX2の情報,および標準脳等の外部入力データを取り込み可能なDWHを構築できた.さらに,本院にて脳腫瘍外科手術を受けた患者の診療情報(部位,年齢,病理結果,生存日数など)から,生存予後予測のプロトタイプモデルが開発できた.今後の展開として,リハビリ等の情報を取り込むことでデータセットの拡充を図り,モデル精度を向上させる.

  • 清水 太一, 山本 聡, 牧野 雄一, 小野木 真哉, 桝田 晃司
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 351
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    我々はヒトの姿勢や呼吸状態,体表面の形状を考慮した治療計画ソフトウェアを開発した.しかし開発した治療計画ソフトウェアは血管の変動を考慮していない問題があった.そこで血管の変動を考慮した治療計画を作成することを目的とする.まず超音波画像として取得された3次元血管網の構造解析より,微小物体を目標経路に誘導可能な超音波の照射範囲を算出する.次に,光学式位置計測センサで計測された体表面及び肋骨の位置を測定する.その後3次元ボリュームと連続して撮像した2次元画像を2D-3Dレジストレーションによって位置合わせを行い血管の変動を取得する.そして体表面及び肋骨の位置,血管の変動より体表面上の誘導可能な超音波照射範囲を導出する.本報告では治療計画ソフトウェアを用いて極細カテーテルを誘導する治療をシミュレートし治療計画を作成した.また人体肝臓の2次元画像と3次元ボリュームを対象に2D-3Dレジストレーションにより位置合わせを行った.その結果血管の変動を考慮した治療計画ソフトウェアの実現可能性を示唆した.

  • 芝田 和紀, 望月 悠佑, 志村 祐也, 杉山 洸平, 内田 全城, 本井 幸介, 山越 憲一
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 352
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,介護施設における業務の負担は大きくなるばかりであり,利用者への様々な介助はもちろんのこと,日々の体調管理に関するバイタルサインの確認や,これらも含めた介護・看護に関する記録・申し送り業務などにも多くの時間を割かなくてはいけない.そこで本研究では,体調変化の把握を全て自動的に行い,またこれら計測結果は介護施設における記録様式に自動で記入されるシステムの開発を目指している.今回は特に,排泄と血圧管理に焦点を当て,その計測方法について基礎的な検討を行った.本システムは,(1) 認知症者の突発的な起立を検知する椅子内蔵型システム,(2)トイレ内部に設置した超音波センサや荷重センサにより排便・排尿の有無を自動検知するシステム,(3)ポンプなどの加圧機構を必要としない浴槽やベッドサイドにおける簡易型血圧計測システムから成る.今回(1)~(3)の各システムを試作し,複数人の健常成人と認知症者を対象とした性能評価を行った.まずシステム(1)からは認知症者が起立しようとしていることが確認可能であった.また健常成人において,システム(2)により既設・ポータブルトイレにおける排泄状況や量・状態を,(3)については,浴槽内では心電図・脈波センサにより,ベッドサイドでは小型脈波・圧力センサのみを用いて簡便に血圧変動を検知できることが判り,看護・介護における体調管理への有効性が確認された.

  • 茅野 功, Tetsuya MOTOISHI, Kazuo NISHIE, Saki SATO, Yuuto TANIGUCHI, Daic ...
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 353
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Recently, electromagnetic interferences by telemeters between neighboring hospitals have often been reported. In this study, we measured the outdoor electromagnetic fields emitted from medical telemeters installed in a hospital. Transmitters(1mW) were installed in the 13th and 15th(roof) floors of Kawasaki Medical School General Medical Center (Okayama, Japan). Using a spectrum analyzer, we measured the strength of the electromagnetic fields leaked from the hospital up to 1300m in four directions at 22 locations. In the directions toward the suburbs, the average values were lower than the corresponding theoretical values by 19.2dB or 15.4dB independent of distance. In the direction toward the downtown, the average values were lower than the corresponding theoretical values by more than 30.0dB at some locations. This method can thus be a new index allowing us to estimate the level of the information leakage from medical telemeters installed in a hospital located both in downtown and suburb areas.

  • 森谷 文香, 榛葉 健太, 小谷 潔, 神保 泰彦
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 354
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    記憶や学習を担う海馬では、成体の脳内で神経幹細胞が神経細胞へと分化する現象である成体神経新生が起きている。認知機能の低下をもたらす加齢や糖尿病、アルツハイマー病等において異常な成体神経新生が確認されることから、海馬での成体神経新生と学習・記憶には関連があり、脳内に存在し続ける未熟神経細胞が学習・記憶に重要な役割を担うと考えられている。詳細なメカニズムの解明は、成体神経新生に起因する認知機能欠陥の改善につながるであろう。そこで本研究では脳機能を司る神経回路網レベルにおいて、情報処理を担う電気活動に対し未熟神経細胞が及ぼす変化を検証した。ラットの海馬細胞を単離して神経活動が安定するまで培養した成熟神経回路網に、神経幹細胞を追加播種し、未熟神経細胞に分化するまで培養した。微小電極アレイを用いた細胞外電位多点計測から、未熟神経細胞の存在の有無による、神経回路網の自発的電気活動の違いを解析した。その結果、未熟神経細胞の存在により、細胞集団から構成される回路網全体のバーストの持続時間と間隔が長くなり、スパイク間隔の分布にも変化が現れた。さらに、細胞集団同士のスパイクの同期性が低下したことから、各細胞集団が異なる活動を行うことが示唆された。本研究の結果は、海馬での成体神経新生における未熟神経細胞の存在が学習・記憶における役割解明に対し、神経回路網レベルからの知見を与える意義がある。

  • 榛葉 健太, 小谷 潔, 神保 泰彦
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 355
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    糖尿病などの疾患では,神経細胞の軸索を覆う構造であるミエリン鞘の変性(脱髄)により痛覚過敏が誘発される.脱髄の発生機序は明らかになっておらず,詳細な評価には培養細胞による疾患モデルが有効と考えられる.脱髄性疾患モデルの構築には,ミエリン鞘の形成,および形成過程の経時的評価が重要である.本研究では,脱髄性疾患モデルにおける脱髄過程の長期計測手法の開発を目指し,有髄軸索において起こる跳躍伝導の計測手法の開発を目的とする.ラット新生児より採取した後根神経節の神経細胞およびシュワン細胞を共培養したところ,ミエリン鞘に特異的に発現するmyelin basic proteinが発現し,ミエリン鞘の形成が示された.2万6千点の電極を集積化した計測デバイス上で同様に共培養を行い,4-aminopylidineおよびカプサイシンを用いて刺激したところ,活動が10 mm以上にわたって伝導する様子が計測された.伝導速度は1 m/s以下の部分が多く,無髄軸索上の伝導である可能性が高いものの,本デバイスが計測に十分な空間・時間分解能を有することが示唆された.今後は,ミエリン鞘を効率よく形成させるために培養条件を検討したうえで,跳躍伝導の検出を目指す.

  • 太田 貴之, 馬淵 将来, 須見 隆弘, 宮田 昌悟
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 356
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

     骨格筋組織の再生医療ではその他の生体組織と同様に三次元組織の構築手法として,細胞をハイドロゲルや多孔質体などの培養担体に包含して培養する手法,細胞シート,スフェロイドの形態で培養する手法が有効である.これら再生組織を移植する際には,移植先の組織への生着性を高める観点から微小な筋組織体が有利である.我々の研究グループではこれまでに筋芽細胞株を含む微少な細胞含有コラーゲンゲルビーズを用いた微小筋組織の再生に取り組んでいるが,静置培養系では筋組織が有する細胞・組織の配向や収縮特性において十分でないことが課題であった.そこで本研究では,球形の筋組織体に力学的刺激を付与可能な培養デバイスを構築して,筋芽細胞株を包含する微小コラーゲンゲルビーズを培養することで筋組織としての成熟化を促進することを目的とした.具体的には,骨格筋由来の筋芽細胞株(C2C12)を包埋したコラーゲンゲルビーズを構築し,ビーズよりも小さな孔を介して周期的に培地を流動させることによって力学的な刺激を印加しながら培養可能なデバイスを構築した.さらに,数値解析により吸引刺激によって生じるビーズ内部の培養液の流動やビーズの変形を分析することで細胞が曝されている力学的環境を明らかにした.力学的刺激を印加しながら培養した試料では,筋分化の指標である細胞の配向および細胞骨格が成熟しており,力学的刺激による筋分化の促進が認められた.

  • 矢野 瑞菜, 梅原 悠太, 佐藤 大介, 楠 正隆, 馮 忠剛
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 357
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    再生医療への応用が注目されている培養心筋組織の発生応力は、生体内のそれに比べて著しく低い。ラット培養心筋細胞の多価不飽和脂肪酸(PUFA)含有量が新生仔心筋組織に対して著しく低値であることから、これまでに我々は、培地にリノレン酸またはリノール酸を添加し、伸長反応による培養心筋細胞への各種PUFAの供給を期待したが、より長鎖のドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)及びアラキドン酸(AA)の含有量は新生仔心筋に対して依然低かったことを報告した。本研究では、1-10 μM DPA、10-40 μM DHAまたは20-60 μM AA(n=5-8)培地添加がラット胎児由来心筋細胞の脂肪酸含有量と拍動能に及ぼす影響を評価した。11日間の培養の結果、添加したPUFAの細胞内含有量は添加濃度依存的であり、1-3 μM DPA、10-20 μM DHAまたは30-50 μM AA添加時に、新生仔群(n=11)の値に最も近づいた。培養5日目の拍動収縮率をPUFA無添加群(n=11)と比較したところ、DPA添加群はPUFA無添加群に対して有意差はみられなかったが、10-30 μM DHAと20及び40-60 μM AA添加群はPUFA無添加群に対してそれぞれ有意に高値(P<0.05)となり、それぞれ20及び50 μM添加時に最大となった。拍動数では、30 μM DHA添加時にのみPUFA無添加群に対して有意に高値(P<0.05)であった。これらの結果は、少なくともDHA及びAAの添加が、培養心筋細胞の拍動能を向上させる可能性を示唆している。

  • 梅原 悠太, 矢野 瑞菜, 佐藤 大介, 楠 正隆, 馮 忠剛
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 358
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    再生医療分野で注目されている培養心筋組織の拍動収縮能は、in vivoでのそれと比較して著しく低いことが知られている。我々はこれまでに、ラット培養心筋細胞内の多価不飽和脂肪酸特にドコサヘキサエン酸(DHA)及びアラキドン酸(AA)含有量が新生仔心筋に対して低値であること、さらには、20 μM DHA及び50 μM AAをそれぞれ培地へ単独添加することで、これら脂肪酸の培養心筋細胞内含有量は新生仔心筋での含有量に近づき、かつその時の拍動収縮率も最大となることを報告した。その一方で、これらの濃度でのDHA及びAAの同時添加では、拍動収縮率が無添加細胞よりもむしろ低値となることも報告した。そこで本研究では、5-20 μM DHA及び5-50 μM AA同時添加(n=4-10)がラット培養心筋細胞の拍動収縮能に及ぼす影響について検討した。その結果、脂肪酸添加培地にて4日間培養した培養心筋細胞の拍動収縮率は10 μM DHA +10 μM AA添加時に脂肪酸無添加群と比較して有意に高値(P<0.05)となった一方で、拍動数には影響を与えなかった。また、これらのパラメータの積としての単位時間あたりの積算収縮率では、DHAの添加濃度によらず、40 μM AA添加群が脂肪酸無添加群に対して有意に低値(P<0.05)であった。これらの結果は、少なくとも10 μM DHA + 10 μM AAが培養心筋細胞の拍動収縮率を向上させる可能性を示唆している。

  • 坂元 尚哉, 大山 侑樹, 中村 匡徳, 木村 直行, 川人 宏次, 山崎 雅史, 藤江 裕道
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 359
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    大動脈弁狭窄症では上行大動脈壁に生理的状態に比べ非常に高い10Pa以上の壁せん断応力が作用することが報告されている.このような高い壁せん断応力環境と,大動脈弁狭窄症と併発する大動脈拡張や解離との関係が示唆されているもののその詳細は明らかになっていない.血管壁恒常性に重要な役割を担う血管内皮細胞と中膜に存在する平滑筋細胞の機能異常を高壁せん断応力刺激が引き起こし,動脈壁を脆弱化している可能性が考えられる.本研究では培養環境下で内皮細胞と平滑筋細胞の相互作用を再現した共培養モデルを用い,血管壁構成成分分解酵素であるMatrix Metalloproteinases(MMPs)産生に対する高壁せん断応力刺激の影響を調べた.ヒト大動脈由来平滑筋細胞を含むコラーゲンゲルを遠心分離により圧縮し,その上部に内皮細胞を播種し共培養モデルを構築した.共培養モデルに2Paもしくは20Paの壁せん断応力を負荷した後,内皮細胞および平滑筋細胞を分離し,それぞれの細胞内のMMP-2,-9の産生量をウェスタンブロッティング法により調べた.その結果,内皮細胞のMMP-2産生および平滑筋細胞のMMP-9産生において壁せん断応力の大きさに依存した増加傾向を示した.本研究の結果から大動脈拡大・解離病変において認められるMMP-2およびMMP-9産生増加に対して,高壁せん断応力環境の影響があることが示唆される.

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