日本小児放射線学会雑誌
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36 巻, 2 号
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特集 子ども虐待の画像検査
  • 大日方 薫
    原稿種別: 子ども虐待の画像検査
    2020 年36 巻2 号 p. 83
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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  • 仙田 昌義
    2020 年36 巻2 号 p. 84-90
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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    我が国の小児人口は減少しているが,児童虐待通告件数は年々増加している.医療機関では児童虐待を無視できない状況になっており,適切な対応が求められている.医療機関を訪れる多くの児童虐待ケースは外来にて「主訴」「問診」「診察」によって児童虐待を疑われて,更なる検索を行う.そのうちの一つに単純X線による全身骨撮影があげられる.主に2歳未満で虐待の可能性がある場合などは全身骨撮影が推奨され,更なる骨折等が発見される可能性がある.もし,新たな所見が追加されれば,その後の方針に大きく影響することになり,重要な検索の一つと言える.また,虐待による乳幼児頭部外傷(AHT)は見逃してはならない疾患のひとつであるが,軽症時の症状の一つである「嘔吐,不機嫌,哺乳不良」は非特異的な症状であり,他疾患との鑑別が難しい.よって,日常診療において,AHTをはじめとした児童虐待を見逃さないように常に鑑別に入れるべきである.

  • 宮坂 実木子
    2020 年36 巻2 号 p. 91-100
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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    Abusive head trauma in infants and young children(AHT)は,虐待による乳幼児頭部外傷を総称する身体的虐待のひとつである.暴力的な外力によって頭蓋内に硬膜下血腫,脳実質損傷,多層性多発性の網膜出血を高頻度に認めることを特徴としている.診断のきっかけとなる症状は,嘔吐,哺乳力低下,意識障害,痙攣など非特異的であり,外傷歴不明のことも多い.AHTの画像所見には,硬膜下出血のほか,外傷性くも膜下出血,硬膜外出血,頭蓋骨骨折などが挙げられる.AHTは,凝固異常や代謝疾患などの鑑別すべき疾患を除外しながら,臨床所見,病歴,家族背景などを考慮した総合的判断で行われるものである.頭部CTは,初回に行う検査であり,引き続き頸椎MRIを含めた頭部MRIを行うことが推奨されている.本稿では,AHTに対する画像所見,画像診断検査のプロトコルについて文献的考察も含め解説する.

  • 古川 理恵子
    2020 年36 巻2 号 p. 101-108
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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    身体的虐待では骨折の頻度が高い.しかし虐待を疑っていてもどのように骨折を評価したらよいのかわからないという話をしばしば耳にする.ここでは,骨折を評価するための全身骨の単純X線写真の方法の例を示し,虐待に特異的な骨折である骨幹端損傷や肋骨骨折を解説した.急性期の肋骨骨折の診断は単純X線写真だけでは難しいため,身体的虐待が疑われている状況では胸部CTも考慮し,確実に骨折を診断していくことが重要である.

    また,肋骨骨折に限らず乳児の急性期骨折の診断は難しい.そこで1歳未満の乳児では2週間程度の経過観察の後,全身骨撮影を再撮影することが推奨されている.この時期になると骨折の治癒過程である骨膜反応や仮骨形成が画像で顕在化するため,骨折の診断が確実なものとなる.軽微な骨折を見逃さないためにも適切な全身骨撮影ができる体制づくりが肝要である.

  • 田波 穣
    2020 年36 巻2 号 p. 109-114
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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    腹部外傷は,虐待による外傷の中では相対的に頻度は少ないが,腸穿孔や肝臓,膵臓などの重要臓器の損傷をともなう場合がある.潜在性の臓器損傷が否定できないような事例に対しては,まず超音波検査を行い,実質臓器損傷や腸管の壁内血腫が確認されることで,外傷の可能性に思い当たる場合もありうる.虐待による腹部外傷は5歳以下に多く,外傷による腹部外傷と比較すると若年である.十二指腸損傷は,4歳未満の誤って負傷した子供では報告されておらず,5歳未満の子供における交通事故以外の十二指腸外傷は,病因としての虐待を考慮する必要がある.全身骨撮影では虐待に特異的とされる所見もあり,画像所見の信頼性は高い.一方で腹部損傷の多くは,画像所見のみからその原因を特異的に推察することは困難である.あくまでも画像所見と臨床経過,血液検査所見などを総合的に判断することが重要と考えられる.

  • 溝口 史剛
    2020 年36 巻2 号 p. 115-122
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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    子ども虐待の医学診断は,特定の徴候の存在のみで単純に診断できるものではなく,親の供述をも客観的データと捉え,総合的な判断をする必要がある.このような診断プロセスにおいて,画像診断情報は極めて有力な情報源となる.

    初期段階での,「子どもの安全」を最優先とした医療/福祉対応と,終局段階で「個人の有責性」を問うための司法刑事対応は全く異なるものであるが,相互連関しうるものである.

    画像診断書は,診療録と同様の法的価値を持つ故,画像所見のみで断定したとの誤認をされないよう,「臨床経過との整合性をご検討ください」などと記述し,コメントしがたい場合に憶測的な記載をするのではなく「専門医の意見を確認されたい」などと記述する必要がある.院内虐待対応チームのメンバーに,放射線科医が正式に参画している病院はまだ少ないが,親との客観的な距離が保てる放射線科医は,極めて重要な職責を発揮する立場にあり,小児科医は大きく期待を寄せている.

原著
  • 藤原 進太郎, 荒木 徹, 山下 定儀, 北田 邦美, 藤原 倫昌, 岩瀬 瑞恵, 小寺 亜矢, 猪谷 元浩, 宮原 大輔
    原稿種別: 原著
    2020 年36 巻2 号 p. 123-130
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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    背景:血管輪とは,気管・食道を圧迫する先天性の血管異常である.近年,胎児エコーの発達に伴って診断数は増加している一方,血管輪を正確に診断することは容易ではない.今回,我々の経験した血管輪症例の画像診断,臨床転帰,血管輪の管理について検討した.

    方法:胎児エコーで血管輪と診断され,出生後造影CTを撮影した4名の患者について後方視的に検討した.

    結果:胎児エコー検査で,4例のうち1例は右大動脈弓・左上腕骨動脈・左動脈管,他の3例は右大動脈弓・左鎖骨下動脈異常・左動脈管による血管輪と診断された.新生児期には全例無症状であった.右大動脈弓・左上腕骨動脈・左動脈管による血管輪と診断された患者は生後1か月時に,右大動脈弓・左鎖骨下動脈異常・左動脈管による血管輪と診断された患者のうち1人は生後4か月にそれぞれウイルス感染に伴う喘鳴症状を認めた.造影CTの結果,胎児エコーで右大動脈弓・左上腕骨動脈・左動脈管による血管輪と診断された患者は重複大動脈弓であったことが確認され,右大動脈弓・左鎖骨下動脈異常・左動脈管による血管輪と診断されていたすべての患者にKommerell憩室が認められた.症状のあった2名は外科手術を受け,症状は改善した.

    結論:胎児エコー検査は血管輪のスクリーニングに有効な方法であるが,血管構造を正確に評価することが困難な症例もある.そのような場合,造影CTにより詳細な情報を得ることができる.特に,胎児エコー検査で重複大動脈弓の可能性が除外できない場合には,造影CTを撮影するべきである. 無症状の血管輪を胎児エコーで出生前診断することで,生後,症状が出たときに早期に治療を行うことができる.

症例報告
  • 森田 翼, 井上 建, 板橋 尚, 村上 信行, 小俣 卓, 森 貴幸, 野崎 美和子, 松原 知代
    原稿種別: 症例報告
    2020 年36 巻2 号 p. 131-136
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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    抗N-methyl-d-aspartate(NMDA)受容体脳炎は,発熱や頭痛などの非特異的な症状で始まり,その後に精神症状や不随意運動を呈する疾患である.約半数は頭部磁気共鳴画像検査(MRI)で異常を示さず,認める症例もその所見は軽微で可逆性であることが多い.症例は10歳女児,めまいと頭痛を主訴に近医を受診した.非特異的症状の60日後に精神症状と不随意運動,80日後に自律神経症状を認め,経過は緩除で非典型的であった.MRI FLAIR画像で右の海馬,島皮質,扁桃体と左視床下部に高信号を示し,髄液中抗NMDA受容体抗体が陽性で,抗NMDA受容体脳炎と診断した.抗NMDA受容体脳炎は臨床症状ならびに画像所見が多彩であり,診断が困難なことがある.側頭葉領域のMRI所見,疾患特有な精神症状や不随意運動に注目して,抗NMDA受容体抗体を検査することが重要である.

  • 鈴木 淳志, 桑島 成子, 松寺 翔太郎, 土岡 丘, 楫 靖
    原稿種別: 症例報告
    2020 年36 巻2 号 p. 137-141
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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    ハンドスピナーは主に学童を対象とした玩具で,2017年頃から世界的に普及している.普及に伴い部品の誤飲が報告され,問題になっている.今回2例を経験したので報告する.

    1例目は7歳女児,既往にTurner症候群をもつ.ハンドスピナー部品誤飲を母が目撃し来院.無症状かつ腹部単純X線写真で異物は胃内のため経過観察とした.しかし異物は1か月以上胃に停留したため,内視鏡的摘出施行となった.2例目は7歳男児,生来健康.ハンドスピナー部品のボタン電池のようなものを誤飲した後から腹痛を訴えたため来院.腹部単純X線写真で異物が小腸内であることを確認し,来院時症状軽快していたため経過観察した.

    小児の異物誤飲は低年齢が好発で,多くは経過観察で対処可能であるが,ハンドスピナー部品誤飲は好発年齢が高く,内視鏡的摘出を要する率が高いとされている.病歴聴取より診断は比較的容易だが,長期停滞やボタン電池が含まれるため注意を要する.

  • 中﨑 寿隆, 中野 さつき, 瀧澤 有珠, 水野 風音, 本田 美紗, 佐々木 悟郎, 小橋 優子, 福島 裕之
    原稿種別: 症例報告
    2020 年36 巻2 号 p. 142-146
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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    ステロイド薬を含む治療を行っていた川崎病患者が,ステロイド薬の中止直後に股関節と膝関節の痛みにより歩行できなくなった.MRIにより,両側股関節に炎症が存在することに加え,大腿骨頭壊死を認めないこと,化膿性股関節炎の可能性が低いことが明らかとなり,安全にステロイド薬を再開することができた.ステロイド薬の再開により関節症状は速やかに軽快した.ステロイド薬の中止後6か月で再検したMRIでは関節炎の改善が確認され,若年性特発性関節炎などの慢性炎症性疾患は否定的であり,本例の関節炎は川崎病の随伴症状であったと判断した.急性期と回復期のMRIは川崎病患者に生じた関節炎の原因診断と治療方針の決定に有用であると思われる.

  • 田山 貴広, 高橋 昭良, 渡辺 力, 赤川 洋子
    原稿種別: 症例報告
    2020 年36 巻2 号 p. 147-152
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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    2015年秋に本邦でエンテロウイルスD68の流行に関与した急性弛緩性脊髄炎が多発した.

    今回我々は,発熱と消化器症状の後に,右上肢優位の急性弛緩性麻痺を呈した4歳男児の症例を報告する.発症早期のMRI検査で頸髄腫脹,T2強調矢状断像で縦走する長大病変を認め,急性弛緩性脊髄炎を鑑別に挙げた.咽頭よりエンテロウイルスD68が検出され,臨床経過,検査所見よりエンテロウイルスD68による急性弛緩性脊髄炎と診断した.免疫グロブリン大量療法,ステロイドパルス療法を施行したが麻痺の改善は得られなかった.全脊髄造影MRIでは高信号病変の改善を認めたものの,臨床的には左上肢,両下肢,体幹部,横隔神経に麻痺の進行を認めた.リハビリにより歩行,左肩挙上可能な状態まで改善したが,右上肢麻痺の後遺症を残した.

    急性弛緩性麻痺を呈する鑑別疾患として急性弛緩性脊髄炎は重要であり,脳,全脊髄MRIで脊髄にT2強調画像高信号の長大病変を認めることが診断に有用である.

  • 野村 直宏, 野田 幸弘, 北尾 哲也, 木全 貴久, 辻 章志, 金子 一成
    原稿種別: 症例報告
    2020 年36 巻2 号 p. 153-158
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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    可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome; RCVS)は,雷鳴頭痛を特徴とし脳血管に可逆性の分節状攣縮を認める.予後は一般的に良好だが,脳実質障害を合併することもある.今回,筆者らはRCVSに脳梗塞を合併し神経学的後遺症が残存した小児例を経験したので報告する.

    患者は13歳男子で,雷鳴頭痛と嘔気,構音障害,左上下肢麻痺で発症した.頭部MRI検査で右淡蒼球から放線冠の一部にかけて急性期脳梗塞を認め,頭部MRA検査や脳血管造影検査で多発分節状の血管壁不整や狭窄を認めたため,脳梗塞を合併したRCVSと診断した.ベラパミルの内服により,頭痛と画像所見は改善したが,左手指の固縮,および感覚障害が残存した.脳梗塞を合併した小児RCVS既報例を検討した結果,男性に多く,多発脳梗塞をきたす傾向があった.

    以上から,小児においても雷鳴頭痛を主訴とする小児の鑑別疾患としてRCVSを考慮し,画像検査を繰り返し行うことが重要であると思われた.

  • 松原 菜穂子, 赤坂 好宣, 金柿 光憲, 清水 麻里奈, 加藤 竹雄, 小林 大輔, 木村 弘之
    原稿種別: 症例報告
    2020 年36 巻2 号 p. 159-163
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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    自然退縮を認めた骨軟骨腫の2例を報告する.症例1は12歳女児.左上腕近位の膨隆に気づかれ,当院整形外科を受診.単純X線写真,MRIにて骨軟骨腫と診断された.経過観察の方針となったが,8か月後の単純X線写真で病変はほぼ消失し,診察上も膨隆は消失していた.症例2は16歳男児.左大腿遠位に腫脹,圧痛を認めたため,当院整形外科を受診.単純X線写真,MRIにて周囲軟部組織に炎症性変化を伴う骨腫瘤が確認され,骨軟骨腫の診断となった.保存的治療で経過を見たところ,1年後の単純X線写真で腫瘤の縮小が見られた.

    骨軟骨腫は小児期5–15歳頃に発見されることが多い,最も頻度の高い良性骨腫瘍とされるが,症状がなく気づかれないことも多いため正確な頻度は不明で,その自然史も十分に理解されていない.多くは成長とともに発達し骨格の成熟を来すと増大も止まるとされる.骨軟骨腫の自然退縮はこれまでも症例報告が散見され,稀な現象と考えられていたが,骨の成長・変化の著しい成長板閉鎖前後の小児期~青年期に稀ならず認められる可能性があると考えられる.

  • 滝口 真未, 鈴木 恭子, 笠井 悠里葉, 原 太一, 庄野 哲夫, 織田 久之, 新妻 隆広, 大日方 薫, 清水 俊明
    原稿種別: 症例報告
    2020 年36 巻2 号 p. 164-169
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/26
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    好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)はANCA関連疾患の一つであり,15歳以下の小児では稀である.症例は13歳女子.1年前に気管支喘息を発症し,1週間続く発熱,喘鳴,両下肢痛を主訴に来院した.末梢血好酸球数の著増(14,692/μl),神経伝導速度検査では下肢末梢神経の軸索障害を認めた.胸部単純X線では両肺野に斑状のすりガラス状陰影・浸潤影が散在し,心拡大が認められた.EGPAとして,プレドニゾロン投与を開始した.治療開始後,解熱し,呼吸器症状も改善した.治療開始10日目には末梢血好酸球数は正常化した.また心臓超音波検査では心膜液貯留を認めたが,治療により改善した.本症例ではEGPAに典型的な移動性,非区域性の多発浸潤影,すりガラス陰影が認められた.今回の症例で認められた胸部X線・CT所見はEGPAに典型的だが特異的ではない.しかし,早期発見や治療効果の確認の点で画像検査は有用である.

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