福祉社会学研究
Online ISSN : 2186-6562
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10 巻
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特集 ポスト3.11における社会理論と実践
  • 天田 城介
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 10 巻 p. 7-21
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー
  • ボランティアが社会を変える
    村井 雅清
    原稿種別: 講演記事
    2013 年 10 巻 p. 22-38
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー
  • 新 雅史
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 10 巻 p. 39-55
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    阪神・淡路大震災以来, 「NPO法」という支援主体に関わる法整備や,

    ボランティアを組織化する「災害ボランティアセンター」など,ボランティ

    アの制度化が進んだ.東日本大震災は,ボランテイアの制度化の下での(支

    援)がなされた大規模な災害であったが,それゆえ制度化の当否をめぐる

    論議を引き起こした.そこでの論点はボランティアの制度化がその自発

    性を損ない,かつボランティア活動の自粛と不活発化を招いた, というも

    のだった.だが,批判の根拠であったボランティア数の少なさは,制度的

    ボランティアの数でしかなくボランティア活動の総体といえなかった.

    本稿の立場は,制度化の現実を踏まえた上で,ボランティア活動の多様性

    をいかに担保していくかというものである.そのためにも,ボランティア

    活動の総体を把握する重要性を主張する.また, (支援)に関与するアク

    ターが,中央政府/地方政府-NPO/NGO一企業体と多岐に渡ってい

    る現状を踏まえて,諸アクター間の協同がどうであったかを分析する.以

    上から,内閣官房内に設置された震災ボランティア連携室に着目し,いか

    なる〈支援)が実現できたかを記述した.また,NPO/NGOなどの(支援〉

    主体が,復興とは関係のない公的資金によって支えられている現状を指摘

    し,脆弱なガバナンスによって〈支援〉がなされている問題を指摘した.

  • 佐藤 恵
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 10 巻 p. 56-72
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー
    阪神大震災時,障害者には,震災以前からの生活上の困難が顕在化し, 被害が集中的に現れて「震災弱者」化が進行した.①安否確認からの漏 れ,情報へのアクセス遮断,②避難所・仮設住宅などの物的環境面のバリ ア,③介助の不足,④「震災弱者」への特別の配慮を行わない「一律『平等』 主義」と,独力での生活が困難な障害者に対する「施設・病院収容主義」, ⑤避難所等での排除的対応,⑥経済的な復興格差.これらの困難を抱えた 障害者を支援する「被災地障害者センター」(現:拓人こうべ)の活動では, 「顔の見える関係」を重視しつつ,障害者の自己決定を核とした自立を支 える中で,種々の支援技法が編み出されていった.以上の①~⑤について は「ゆめ風基金」からの開き取りにおいて,東日本大震災でも発生して いることが確認され,⑥の復興格差に関しても経済格差に加えて地域格 差も生じる蓋然性が高い.こうした阪神大震災の教訓が活きていない状 況で行われている,ゆめ風基金の被災障害者支援においては,第一に,個 人レベルの支援に重点が置かれ,第二に,自立生活を送る障害者が少ない 東北において,支援の担い手としての障害者を育てることが意識されてい る.震災の風化が進行しつつある現在,ヴァルネラブルな被災障害者に向 けた「支え合い」の実践は喫緊の課題であり,また,現場での実践に定位 した社会学的記録・分析の作業が必要である.
  • 不平等な被曝のもとで人権が放棄されていく社会
    矢部 史郎
    原稿種別: 講演記事
    2013 年 10 巻 p. 73-81
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー
  • 小泉 義之
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 10 巻 p. 82-94
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー
    社会(科)学の使命の一つは,システムや構造の分析であろう.システ ムや構造は,個人の意見や行動の集積以上のものである.そして,システ ムや構造は,各種の問題を作り出しては,個人の意見や行動を掻き立てる ものでもある. しかも,システムや構造は,個人の意見や行動を「民主主 義」によって掻き立て「熟議」を通して特定の解決へと縮減させるもの でもある. 本論考は, このようなシステムや構造に目を向けている三つの文献,す なわち,開沼博『フクシマの正義』,松本三和夫『知の失敗と社会』,宇野 重規・田村哲樹・山崎望『デモクラシーの擁護』を検討する. 本論考は,それら三つの文献が,再帰的近代化論とリスク社会論のフレー ムによって規定されることを示す.そして,そこにテクノクラシーとデモ クラシーの相補性があることを確認し,それは何らかの閉じた回路をなし ていることを示唆する. ただし,本論考はその閉じた回路を十分に記述してはいない.そもそ も,十分に記述することで閉じた回路を想像的に再現するべきか,それと も,その回路は実は閉じていないことを別の仕方で示すことに期待するべ きか,それがまさに開かれた問いとして残されるからである.
  • 三井 さよ
    原稿種別: その他
    2013 年 10 巻 p. 95-99
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー
自由論文
  • 寺田 貴美代
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 10 巻 p. 103-124
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    現実社会において社会福祉と呼ばれる社会的事象は極めて多様な様態を

    なしている.その成立には社会的承認を伴うことが指摘されているものの,

    前提となる価値判断自体が時代や社会の変遷に伴って変化を遂げる.そ

    こで,成立した結果としての社会的事象を整理や分析することによって社

    会福祉を捉えるのではなくそれが成立する過程に着目し,社会福祉の対

    象規定における利用一提供関係を把握する.そして,利用主体は単なるサー

    ビスの利用者や受益者としての受動的立場に留まらず,社会福祉の対象を

    規定する上で、能動的役割を担っていることを明示化する.これにより,利

    用一提供関係における主体間の対等性を観念的な理想としてではなく,実

    証的に考察することを可能にする.

    具体的には,利用一提供関係を理念的に類別して権力関係・交換関係・

    相互理解関係を導出し,これらが複合化して現れることを論証する.その

    上で,個々の価値観と社会的価値観が双方向的にかかわり,相互に規定し

    合うことによって,社会福祉として判断される範疇はその妥当性の確認や

    再規定が繰り返されることを明らかにする.さらに,この過程では主体性

    の発揮が困難な主体の権利擁護が不可欠であるため,社会福祉領域におけ

    る権利擁護が,権利侵害からの擁護という直接的意義を有すると同時に,

    対象規定においても社会福祉の範疇を再規定する契機としての重要な意義

    を有することを明示化する.

  • 吉田 耕平
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 10 巻 p. 125-147
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー
    本稿は,集団生活から逸脱する子どもへの向精神薬投与に着目し,児童 養護施設という場において施設職員が医療的ケアをどのように受け止め, 実践しているのかを明らかにした.研究方法としては,児童養護施設に入 り,施設職員の語りから得たフィールドノーツと参与観察をもとに分析し た.調査の結果,児童養護施設において集団生活から逸脱してしまう子ど もは医療機関を受診し,医師の判断のもと向精神薬投与に至っていた.施 設職員は子どもへの向精神薬投与について否定的であり,子どもへの向精 神薬投与に疑問を抱きながらも,施設の運営・管理のためには「仕方がな い」と納得させている様子がうかがえた.中には,体罰の禁止が制度化さ れたことで医療的ケアへと変化したと捉え,向精神薬の使用が子どもと大 人との関係をつなぐためのコミュニケーションツールであると認識するこ とで, 自らを納得させている職員もいた. 向精神薬に代わる方法として,職員は大人と子どもとの関係が密になれ る環境を整えることや,里親委託を含めた措置変更をあげていた.だが, 子どもが措置先でトラブルを起こすと再び他の施設へ措置するといった形 で措置が行われてしまう可能性もあることから,向精神薬投与は処遇しに くい子どもを落ち着かせ,次々と施設をたらい回しにされる措置変更を阻 止している点もあることを考察した.
  • 「今日一日」に焦点をおいて
    相良 翔
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 10 巻 p. 148-170
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,ダルク(DARC:Drug Addiction Rehabilitation Center) 在所者・スタッフによって語られる薬物依存からの回復について,ダルク のスローガンとなっている「今日一日」を焦点にして考察を試みることで ある. ここで使用されているデータはX/Yダルクにおいてのフィールドワー クによって得られたものである.Xダルクは大都市圏に位置し,比較的古 くに創設されたYダルクも大都市圏に位置し,近年に創設された筆者 は共同研究の一環として2011年4月からX/Yダルクにおいてフィー ルドワークを行っている. 分析の結果「今日一日」は薬物依存からの回復を語る上で重要な「時 間の感覚」 として存在していることがわかった.具体的に言えば, 1) 「今 日一日」 のもとで生活することにより「過去」や「未来」に対する不安 を軽減し,クスリを止めている「現在」に繋がったこと, 2) その「現在」 の積み重ねにより「過去」から「現在」,「現在」から「未来」という時間 の流れを取り戻したこと, 3) ダルクという空間外でも「今日一日」のも とで回復の語りを展開する可能性を持つこと,以上の3点を明らかにした.
  • 東日本大震災は親族里親制度に何をもたらしたのか
    和泉 広恵
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 10 巻 p. 171-192
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,親族里親制度の活用に関する課題を検討し,新たな制度 の活用の方向性を模索することにある.親族里親制度が創設されてから, 10年が経過した親族里親制度は,創設当初から存在していた民法の扶 養義務と子どもの福祉という理念の聞の溝を継承したまま,積極的に活用 されることなく,存続してきた.しかし, 2011年3月11日の東日本大震 災後に被災者支援」の目的で認定者が拡大され,制度自体も大きく改 変された.この改変は「親族」の範囲を再編成し,親族聞に新たな差異 を生じさせている.親族養育者は,被災児童の養育者である/なし,直系 血族・兄弟姉妹/それ以外の親族の2つの基準によって分断され,里親の 認定基準に関する区別と待遇の格差がもたらされた. 親族里親制度の改変は「親族の範囲」や「親族の扶養義務」 への解釈 が容易に変更されうるということを明白にした.これは,今日でも親族を 扶養すべきという意識が強く社会規範として保持されている一方で,その ことが必ずしも親族里親制度の積極的な活用を妨げるものではないことを 示唆している.今後,親族里親制度に求められるのは,子どもの福祉とい う観点から制度の意義を捉え直し,子どものニーズに応じる形で緩やかに 制度の活用を拡大していくことである.
  • サンフランシスコ・ベイエリアにおけるPACEプロパイダの事例分析
    宮垣 元
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 10 巻 p. 193-214
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー
    米国における高齢者地域包括ケアであるPACE(Program of All- Inclusive Care for the Elderly) の特徴は,多職種チームによる協働型に 統合されたケア体制やメディアケア・メディケイドからの人頭払いにより 在宅や予防ケアへのインセンティブを内包した財政モデルである..本稿で は, こうしたPACEの特性を踏まえ,それらを効果的に機能させる組織 運営レベルの要因を明らかにすることを目的に,サンフランシスコ・ベイ エリアで活動を行う2つのPACEプロバイダの事例分析を行った. 限られた財源の中で包括ケアを実施するためには,高コスト化につなが る重篤化を招かないよう予防,在宅ケアの比重を高めることだが,地域コ ミュニティ内で多様な利用者に対するあらゆるサービスを単独組織が行う ことは困難であることから,その多様性に対応するため地域資源との提携 や協力関係の構築が組織の運営上重要となる.したがって,このようなネッ トワーク構築は,規範的なものではなく,むしろ戦略的なものといえ,各 プロパイダともそのための人的ネットワークの構築に多くのコストをかけ ている.また,こうした人的ネットワークの構築が,結果として利用者獲 得につながる潜在的ニーズの発掘、組織間の架橋と協働促進という副次的 な効果を生んでいる.NPO発祥の高齢者の高い満足度と経済性を両立 するユニークなケアモデルはこうした地域コミュニティ内のネットワー クの存在を背景にはじめて効果的に機能するという実態が明らかとなっ た.
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