一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
62回大会(2010年)
選択された号の論文の297件中251~297を表示しています
  • 共食者の有無による違い
    定金 真喜子, 湯川 夏子
    セッションID: 3P-18
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    【目的】現代の食事の問題点として「孤食」の増加が挙げられる。しかし、「孤食」のもたらす問題について科学的に明らかにはなっていない。そこで本研究では、共食者の有無が喫食者にどのような影響を及ぼすのか、モデル実験により検証を試み、おいしさとの関連性を明らかにした。
    【方法】大学生1グループ3名を5組、合計15名を対象とし、共食者がいる食事環境と一人での食事環境において比較実験をおこなった。どちらの食事環境も同一の食事を提供し、食事前後において、ストレス測定(質問紙調査および唾液アミラーゼ活性の測定)を行った。また、料理のおいしさの評価と、食生活の実態に関して質問紙調査を行った。食事中の様子はビデオカメラで記録し、食事時間、笑顔の生起数、及び咀嚼回数を測定した。
    【結果・考察】共食者と食事を共にした方が、食事時間は有意に長くなっていた。咀嚼回数に関して有意差はみられなかった。共食者との食事は喫食者の笑顔の生起数を有意に増加させていた。また、料理のおいしさについても「おいしかった」と回答する率が高かった。質問紙によるストレス評価については、共食者と食事を共にした方が、ストレスが軽減されていた。一方、唾液アミラーゼ活性値は、一人での食事においてストレスが軽減されていた。しかしアミラーゼ活性の測定については不適切な点が多かった可能性が考えられた。以上のことにより、共食者の存在が、食事時間および笑顔の生起数の増加、食事のおいしさ、ストレスの軽減などの影響を喫食者へ与えていることが明らかになった。したがって食事をする際は、食事環境の設定も重要であるといえる。  
  • 吉田 知未, 岸田 邦博, 鈴木 明子, 松原 主典, 冨永 美穂子
    セッションID: 3P-19
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    目的:近年,新しい食事調査の方法としてデジタルカメラ,カメラ付き携帯電話を用いた写真分析法が報告されてきている.これまで食事内容と生活習慣等の関連が検討されているが,調査票による選択回答式の調査が多く,実際の食事内容と生活習慣,食生活との関連を検討したものはほとんど存在しない.そこで,若年世代における写真撮影された食事内容分析により求めた食物摂取状況と身体組成,食生活を含めた生活習慣との関連を分析することとした.
    方法:2008年10月~12月にかけて,調査内容に同意が得られた3大学及び1高等専門学校学生106名(男性;29名,女性;77名)に調査を実施した.日常生活に近い5日間,カロリーのある飲食物全ての写真撮影を依頼するとともに,身長,体重などの身体計測,睡眠時間などの生活習慣に関する項目,食事の摂取頻度などの食生活に関する項目について,質問紙票により回答を求めた.食事内容から栄養素等摂取量,食品群別摂取量などの食物摂取状況を把握するとともに,食物摂取状況と身体組成,生活習慣,食生活との相関係数を求めた.
    結果:身体組成は,同世代の国民健康・栄養調査結果と比較し,男女ともに同程度であった.食事内容から栄養素等摂取量を求め,食事摂取基準と比較した場合に,男女ともにエネルギー,炭水化物は基準値を満たしておらず,たんぱく質,食塩は摂取量が多い傾向にあった.食物摂取状況と複数の調査項目において有意な相関が認められ,身長,体重,BMI,骨密度,便通,朝食の摂取頻度,包丁や鍋の利用頻度と有意な正の相関を示す栄養素,食品群が多く,睡眠時間の長さと負の相関を示す栄養素,食品群が比較的多かった.
  • 駒田 亜衣, 谷口 水穂, 中井 晴美, 梅澤 眞樹子
    セッションID: 3P-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    【目的】三重県西部の伊賀地域で営まれている秋まつりの調査から、この地域の発酵の文化について特徴を明らかにすることを目的とした。

    【結果】伊賀地域には3つの街道が通っており、その街道沿いには現在、140を超える神社が登録されている。本研究で調査を行った中に、春日神社の「なすびまつり」、佐々神社の「このしろまつり」、菅原神社の「上野天神祭」、大村神社の「秋の例祭」などの特徴的なまつりが存在することが分かり、この中でも「このしろまつり」「上野天神祭」からこの地域の発酵の文化を見出すことができた。「このしろまつり」はこのしろ(コハダ)と飯を樽に漬けこんで発酵させてなれ寿司にし、神饌として供える文化がある。さらに、このしろと一緒に漬けこんだ飯も「アイサノメシ」という名称で神饌とする特徴があることが分かった。「上野天神祭」は別名「甘酒まつり」とも言われ、甘酒を見物客や招待客にふるまうほか、神饌としても供える特徴がある。甘酒は「だんご鉢」と呼ばれる底に擂鉢状の溝が施された陶器製の鉢を用いて作られ、まつりに招待する「呼び使い」のためには欠かせないものであり、以前は各家庭で作られていたことが調査で明らかになった。

    【考察】伊賀地域のまつりにおいて神饌として供える酒はすべて地酒であり、さらになれ寿司や甘酒といった米を発酵させてつくる神饌も加わり、これらはまつりに欠かせないものとして現在まで受け継がれていることが分かった。伊賀地域は古来より米どころとして知られており、良質な米が収穫されること、また紀伊山脈と伊賀盆地に位置することとで山麓からの清水が豊富であったこと、また奈良や京都と隣接していることから、こうした発酵の文化が発達したと考えられた。
  • 時友 裕紀子, 齊藤 春乃
    セッションID: 3P-21
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    目的】山梨県では2006年にやまなし食育推進計画が策定され,学校教育においては山梨県教育委員会により「学校における食育推進のための指導手引き」が作成,配布されている.従来,食生活に関する教育は家庭科学習の中でも行われてきているが,学校における指導計画に食育活動が導入されたことで,家庭科担当教諭の食育に対する活動や意識に変化が生じているか,調査することとした.合わせて,各学校の食育活動の内容や家庭科教諭と栄養教諭(学校栄養職員)との連携についても調査し,中学校における食育活動と家庭科の役割について考察した.
    方法】山梨県内の中学校91校の家庭科教諭に対し,2009年8月から9月に,郵送法による質問紙調査を行った.質問内容は,学校全体の食育への取組状況,家庭科の授業内容,学校の食育活動における家庭科教諭の役割,栄養教諭・学校栄養職員との連携,家庭科教諭の食育に対する考え,等である.
    結果】調査の回収数は45校であり,回収率47 %であった.学校における食育活動で重視している取組は「学校給食」が34校(80 %),次いで家庭科が27校(64 %)であった.中学校における食育は,おもに家庭科で教えるべきであるという回答が多く,家庭科の役割が大きいという考えをもっている家庭科教諭が多かった.家庭科における指導内容の充実を図ることが食育にとって重要と考えられる.栄養教諭(学校栄養職員)がいる場合,チームティーチングの経験がある家庭科教諭は半数以上おり,両者の連携によって,より充実した食育活動が期待できよう.
  • 岸田 恵津, 北本 裕子
    セッションID: 3P-22
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    目的 家庭における「食卓」は食の基盤であり,心身の成長期である中学生にとっても大切な場である。イメージは実体験から無意識に生まれてくるもので,人の価値体系や行動を支配すると考えられているが,食卓のイメージについては十分明らかになっていない。そこで本研究では,中学生が持つ「食卓イメージ」と食生活との関連を明らかにすることを目的とした。
    方法 2009年4月,兵庫県内の中学2年生256人(男子116人,女子140人)を対象に質問紙調査を実施した(有効回答率98%)。調査内容の項目は,食卓イメージ(あたたかい,くつろぐ,楽しい,にきやかだ,さびしい,うっとうしい)の他,食行動,食環境など7項目とした。食卓イメージを得点化(30点満点)し,各項目の回答ごとにイメージ得点の平均値を比較し,食生活との関連を考察した。
    結果 1.食卓イメージの平均得点は,男子22.6点,女子23.8点であり,また,「楽しい」「にぎやかだ」では女子の得点の方が高かった。 2.「食行動」「食環境」「食への興味・関心」の中の家族との関わりに関する内容(共食状況,家庭料理に対する関心など)において,良好または肯定的な回答をした群の方が,イメージ得点が有意に高く,食卓イメージとの関連が認められた。また,孤食や子どもだけで食事をする習慣と食卓イメージとの関連も示唆された。しかし,調理技能や食知識については食卓イメージとの関連はなかった。以上より,中学生における食卓イメージと家族との関わりに関する食生活の内容とは関連があることが示された。
  • 練りきり(和菓子)を用いた授業実践
    村上 陽子
    セッションID: 3P-23
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    目的 食における色の効果を大切にしてきた我が国には、和菓子という伝統的な菓子がある。和菓子は「五感の芸術」と称されるように、視覚、味覚、嗅覚、聴覚、触覚のすべてで楽しむことができる。特に、練りきりに代表される上生菓子の色の美しさと多様性は、他国の菓子には見られない特性である。本研究室では、和菓子の中でも、色の美しさが特徴であり、色・形の変化により季節感や造形美を表現できる練りきりに着目し、食育教材としての可能性について研究を進めている。これまで、幼稚園児を対象に、練りきりを用いた食育実践を試みている。本研究では、教材の対象者を小学生として授業実践を行ない、和菓子や食文化の理解を深め、食文化の継承において効果的な食育のあり方を検討することを目的としている。本報告では、小学生児童を対象として、練りきりを食育教材として用いた授業実践の試みについて報告する。
    方法 授業対象は静岡大学教育学部附属静岡小学校6年生(男子55名、女子52名)の計107名である。実施期間は2009年12月~2010年1月、教科は家庭科(2時間構成)とした。
    結果 授業では、練りきりを「食べる」「見る」「作る」「鑑賞する」という活動を設けた。練りきりという食育教材は、現在、低下傾向にある和菓子の食経験を増やすだけでなく、色そのものに対する興味、着色食材や食品全般に対する関心を高め、食文化というものを見直す一助になると思われる。さらに、自分で作ることで、五感を使って楽しむことができるため、日本の食文化理解と継承に繋がると考えられる。
  • -食育ファッションショーの試み-
    本田 クミ, 寺嶋 愛, 末弘 由佳理, 中尾 時枝
    セッションID: 3P-24
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    我が国では、2005年に「食育基本法」が制定され、「食育」という言葉は、既に定着した言語として受け入れられている感がある。
    「食育」とは、人間が健全な食生活の実現、食文化の継承、健康の確保が図れるよう、自らの「食」について考え、食を正しく選択する判断力を身につけるための学習のことである。近年では、様々な場面で、「食育」をテーマにした学習機会が増え、例えば、ファーストフードの分野においても、子ども向けの食育講座を実施している。
    本研究では、食の大切さを子どもたちに楽しく伝える方法として、衣服を用いることで、食の分野とは異なる角度から視覚的に訴えることを目指し、「食育ファッションショー」を試みた。
    テーマを陰陽五行説である「五味五色」とし、5つの味、5つの色をイメージした食材から衣服をデザインし、5つの色別、5つの味別、4つの栄養素別にシーンを変え、リズミカルに舞台に登場し、ファッションショー形式で、子どもに食の大切さを伝えるという形式である。衣装デザイン・制作・ショー企画・モデル・ショーナレーションに至るまで全て武庫川女子大学の学生が務めた。
    なお、このファッションショーは、2009年5月に開催された「’09食博覧会・大阪」で舞台発表したものである。
  • 中田 理恵子, 井上 裕康
    セッションID: 3P-25
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    【目的】食品中の葉酸の大部分は、複数のグルタミン酸が結合したポリγ‐グルタミン酸型として存在しているが、小腸にあるγ‐グルタミルヒドロラーゼ(EC 3.4.19.9)によって、モノグルタミン酸型に加水分解された後に、体内に吸収されると考えられている。γ‐グルタミルヒドロラーゼは、葉酸の消化吸収,細胞内への取り込みにおいて重要な働きをしているが、局在や作用機構について不明な点も多い。そこで、γ‐グルタミルヒドロラーゼの役割を明らかにするために、組換えγ‐グルタミルヒドロラーゼを得ることを目的として、大腸菌を宿主とした大量発現系の構築と精製を行った。さらに、精製した組換えタンパク質を用いて抗体の作製を行い、臓器における局在を検討した。
    【方法】ラットの腎臓よりγ‐グルタミルヒドロラーゼ(シグナルペプチドを除く)をクローニングした。この断片を発現ベクターpCold_II_に組み込み、大腸菌BL21star(DE3)に形質転換して、γ‐グルタミルヒドロラーゼを発現させた。菌体の可溶性画分を用いて、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーにより、組換えタンパク質を精製した。得られたタンパク質をウサギに免疫し、ポリクローナル抗体を作製して、ラットの臓器での局在を検討した。
    【結果】大腸菌を用いたγ‐グルタミルヒドロラーゼの発現系を構築した。N末端アミノ酸配列の解析から、精製したタンパク質が組換えγ‐グルタミルヒドロラーゼであることを確認した。さらに、精製組換えタンパク質を抗原にして作製した抗体を用いて、ウエスタンブロット解析を行ったところ、ラット腎臓、脾臓,小腸においてγ‐グルタミルヒドロラーゼの発現が確認された。さらに、小腸切片の免疫組織染色から、十二指腸と空腸の吸収上皮細胞での局在が明らかとなった。
  • 曽根 保子, 宮倉 玲子, 大塚 譲
    セッションID: 3P-26
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    【目的】  活性酸素種は、DNAなどの生体成分に傷害を与え、癌などの疾患を引き起こす一因となることが報告されている。これに対応するため、生体内では活性酸素種の消去能をもつ抗酸化酵素が存在し、生体内の酸化還元バランスを保っている。しかし、過酸化水素が負荷された場合における、抗酸化酵素の細胞増殖保護機構に関する報告については、未だ十分とは言い難い。そこで、本研究では、代表的な抗酸化遺伝子をノックダウンし、活性酸素の一種である過酸化水素に対する細胞増殖の影響を検討した。
    【方法】
       ヒト臍帯由来の繊維芽細胞であるHUC-F2に対し、siRNA濃度5 nM、トランスフェクション試薬濃度0.2 %の条件で、siRNAをトランスフェクションし、抗酸化酵素遺伝子(superoxide dismutase 1; SOD1, catalase; CAT, glutathione peroxidase 1; Gpx1, heme oxygenase; HO1)をノックダウンした。ノックダウン後の細胞増殖を測定し、細胞増殖への影響を検討した。また、活性酸素誘導剤として100μMの過酸化水素を培養液中に添加した場合の細胞増殖阻害についても検討した。
    【結果および考察】
     SOD1、CAT、Gpx1、HO1の遺伝子をノックダウンした後、過酸化水素と添加すると細胞増殖阻害が見られた。特に、SOD1ノックダウン細胞に増殖阻害が認められた。同様に、CAT、HO1ノックダウン細胞も増殖阻害が引き起こされる傾向があったことから、これらの抗酸化酵素には、活性酸素による細胞傷害を抑制し、細胞を保護するはたらきがある可能性が示唆された。今後、日常的にこれらの抗酸化遺伝子発現を上昇させる栄養素や機能性食品を摂取することによって、生体内における酸化ストレス上昇予防につながる可能性が考えられた。
  • 白井 睦子, 大下 市子, 亀井 文, 箱田 雅之
    セッションID: 3P-27
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    目的 近年,骨粗鬆症への対策として青年期に最大骨量(Peak Bone Mass, PBM)を増加させることが求められている。骨量増加の環境因子として食生活や運動などの生活習慣があげられる。そこで本研究では骨量がピークとされる20歳前の女性の骨量と食生活および生活習慣を調査し,骨量との関連について分析した。
    方法 調査時期は2004年~2006年,対象は18~20歳の女子大学生283名で,平均年齢は18.5±0.5歳である。骨量は超音波骨評価装置AOS-100NW(アロカ製)により,右踵骨部における音響的骨評価値(Osteo sono-assessment index ,OSI)を測定した。また,食生活や運動などの生活習慣に関するアンケートを実施した。食品および栄養素摂取量の推定は,エクセル栄養君食物摂取頻度調査FFQgVer.2.0を用いた。
    結果 対象者のOSIの平均は2.791±0.301で,BMIと OSIとの間に正の相関が認められた。食生活では現在の牛乳・乳製品摂取とOSIとの間に有意な相関は認められなかったが,過去の摂取とOSIとの間に有意な相関が認められた。過去に乳製品をよく摂取していた者のOSIは,あまり摂取していなかった者に比べ高いことがわかった。生活習慣では今までに運動習慣を有する者ほどOSIが高く,運動歴10年以上の者のOSIが最も高かった。以上のことから,青年期の骨量を増加させる要因として,今までの乳製品の摂取や運動習慣が影響することが示唆された。
  • 岡田 悦政, 岡田 瑞恵
    セッションID: 3P-28
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    【目的】糖尿病状態の酸化ストレスは、幾つかの要因により増大し、悪循環を引き起こす。例えばグルタチオンやビタミンEなど抗酸化物質防御の減少や、SOD, GSH-Pxなど抗酸化酵素活性の減少により酸化ストレスを増大し、グルコースの自動酸化、ポリオール経路の促進、終末糖化産物(AGE)の産生などを引き起こす。それ故、酸化ストレス防御促進、あるいは活性酸素消去能を持つ抗酸化物質は、糖尿病やその合併症リスクを減少させるという目的において有効である可能性が高い。本研究では、糖類のうちタンパク糖化促進効果が高いことが報告されているD-Ribose(D-R)を用い、2種のアルブミンの糖化に関して、抗酸化活性のある植物種子抽出成分による糖化抑制効果を検討した。
    【方法】1. 種子20種は、熱水抽出、ろ過後、滅菌し、サンプルとした。2. プレート上でサンプルを4ないし8μLを加え、ろ過滅菌したウシ血清アルブミン(BSA)+D-R、ラクトアルブミン(LAB)+D-Rをそれぞれ加え、7日間、37℃の条件下でインキュベートした。3.その後、蛍光マイクロプレートリーダーにより蛍光強度(λex360nm/λem465nm)を測定し、糖化度の比較検討を行った。
    【結果及び考察】BSA、LABの糖化は、コントロールを100%とした時、糖化抑制効果が有意に高かったのは、20種のうち BSA+D-R4μLは、16サンプル、8μLは10サンプル。LAB+D-Rは、それぞれ8、10サンプルであった。BSA、LAB両者の糖化抑制効果が見られたのは、キャベツ、グリーンウエーブ(リーフレタス)、ケール、シュンギク、チンゲンサイ、ニガウリ、ハツカダイコン、ハネギ、ホウレンソウ、ミツバ、シソであった。キョウナ、コマツナは、BSAの糖化のみ抑制していた。その機構は、ラジカル消去効果との関連性も考えられた。今後、糖化抑制以外のタンパク凝集効果やその有効成分についての検討、各サンプルについての至適濃度についても確認を行う予定である。
  • 岡田 瑞恵, 岡田 悦政
    セッションID: 3P-29
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    [目的]終末糖化産物(AGEs)は、タンパクの非酵素的糖化を導きアルツハイマー症(AD)、糖尿病性腎症、白内障等多くの疾患に関わることが近年報告されている。糖化によるタンパクのクロスリンクは、タンパク分解酵素に対する抵抗性において導かれた結果であることが示されており、特にADの一つの病因とされるアミロイドβの凝集及び蓄積に大きく関わっている。そこで、タンパクの糖化、凝集を抑制することを目的に食成分からの抑制を検討した。一方、食用植物のsproutsは様々な生物学的活性が報告されているが、sproutsによるタンパク糖化・凝集に関する報告はない。今回幾つかの食用植物sproutsについて知見を得たので報告する。
    [方法]5種のsprout samplesは水抽出(24h浸漬:WE)、湯抽出(100℃10分加熱後24h浸漬:HWE)、メタノール抽出(24h浸漬:ME)後濾過し、DMSO置換した。全て使用前にフィルターにて滅菌処理を行った。タンパク糖化の系は、Yan Wら(2009)による糖化モデルBSA×D-ribose系を一部変更し使用、また比較のためLactalbumin(LAB)×D-ribose系についても行った。37℃7日間incubationし蛍光測定を行った。さらに、タンパクの凝集を測定するため、Thioflavin Tによる蛍光測定も併せて行った。
    [結果]使用したBuckwheat sprout: BS, Redcabbage sprout: RS, Broccoli sprout: BrS, Brussels sprout: BruS, Japanese butterbur: JBBのうち、BSA×D-ribose系における糖化抑制は、ME, WE, HWE-JBBそしてME-BSの効果が高く、ME-JBBは、比較物質として用いた100µM EGCGに達しなかったものの、近い値を示した。LAB×D-ribose系においてもBSA×D-ribose系において抑制効果のあったsamplesと同様な傾向であった。また、糖化抑制を示したsamplesのタンパク凝集抑制は、7日目においてcontrolよりも低い値を示したものの、顕著な抑制効果を示さなかった。糖化抑制は、phenolic compoundsの関与が示唆された。
  • 新海 シズ, 竹山 恵美子, 福島 正子
    セッションID: 3P-30
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    〈B〉目的〈/B〉 市田柿の果実は,干し柿に加工され,長野県飯田・下伊那地方の特産品として各地方に出荷されている。一方,柿の木の中には立地条件や温暖化などの影響により果実が十分成熟できない木も散在している。これらは葉の利用なら可能である場合も多いが,現在はほとんど用いられていない。そこで,未利用資源としての‘市田柿’の葉の有効利用を目的として,葉に含まれる抗酸化成分を中心に検討した。〈BR〉 〈B〉方法〈/B〉 試料には,長野県飯田市内の市田柿の葉を5月から10月にかけて採取し,蒸留水で洗浄後,冷凍および凍結乾燥した。熱水抽出したものはろ過(ろ紙 _No._2)して用いた。〈BR〉  抗酸化力は,測定キットPAOを用いて測定した。カテキン類およびアスコルビン酸,フラボノールおよびその配糖体の定量は,HPLC法,総ポリフェノールの定量はFolin-Denis法で行った。〈BR〉  柿の葉茶の食後血糖値上昇抑制ヒト飲用試験は,「柿茶」を用いて20代から50代女性6名を対象として行った。〈BR〉 〈B〉結果および考察〈/B〉 採取月による‘市田柿’の葉の熱水浸出液の抗酸化力は5,6月で高く,緑茶とほぼ同等であった。この抗酸化を示す物質として,ポリフェノールおよびアスコルビン酸の定量を行った。ポリフェノールはカテキン,エピガロカテキン,エピカテキンが最も多く浸出し,アスコルビン酸量も多かった。また柿茶の飲用により,僅かではあるが食後の血糖値の最高値が低くなる傾向が認められた。〈BR〉  以上のことから,これまで天ぷらなどで食されてきた‘市田柿’の葉は,抗酸化力などの機能性を有する食品素材として有効利用できるものと考えられる。
  • 住田 慧麗奈, 大杉 忠則, 徳留 瞬, 須見 洋行
    セッションID: 3P-31
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    目的 大豆は世界中で広く栽培されており,特にアジアでは大豆加工食品が多く生産され,調味料にもなっている.その中から大豆と大豆発酵食品に着目し,納豆・醤油・味噌・テンペ及びナットウキナーゼ等を用いてラット下肢潅流を行い,これらの食品が持つ血管内皮細胞への影響について調べた.またラット動脈血管のリング標本より血管平滑筋の収縮・弛緩運動についても観察を行った.
    方法 納豆とテンペはイオン交換水で抽出後,加熱処理を行った.味噌も同様に溶解し,醤油は上記の処理を行わず,これらを遠心分離・濾過・透析等の処理を行い測定試料とした.下肢潅流実験はWistar系雄性ラットを用いて麻酔下で腹大動脈よりカニュレーションし,血管内を37℃・5%CO2を通気したタイロード液で洗浄した後,タイロード液→希釈した測定試料→タイロード液の順で流した.潅流液は後大静脈からフラクションコレクターで分画を採取し,これらを標準フィブリン平板法及びザイモグラフィー法にて血栓溶解能を測定した.リング標本は胸大動脈を摘出し,幅約3mm・直径約1~1.5mmの内皮細胞無傷標本を作製した.マグヌス管に標本を懸垂した後,1gの静止張力を負荷して等張性伸縮の変化を測定した.
    結果 下肢潅流では,フィブリン平板の溶解面積値を用いてタイロード液のみの平均値を基準とし,測定試料潅流後の最大溶解面積値を基準と比較したところ,1000倍希釈した納豆測定試料の血栓溶解活性は6.93±3.44倍に高まった.さらにザイモグラフィーより,今回の血栓溶解活性は血管内皮細胞の組織プラスミノーゲンアクチベータの放出を高めていると推測される.また納豆測定試料の血管平滑筋に対する影響は見られなかった.
  • 萱島 知子, 松原 主典
    セッションID: 3P-32
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    【目的】血管新生は,がんや糖尿病性網膜症,肥満,認知症をはじめとする様々な疾病と関連している。食品由来の血管新生抑制物質は,これらの疾病を予防する機能性成分としての可能性を有することから注目されている。ハーブの一種であるローズマリーに含まれるカルノソールとカルノシン酸は強力な抗酸化作用を示す主要成分として知られている。我々はカルノシン酸に強い血管新生抑制作用を見出したことから,カルノソールについても血管新生への影響を検討した。
    【方法】血管新生抑制作用については, ラット動脈片をコラーゲンゲル中で培養するex vivo血管新生モデルにて評価した。またヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)を用いたin vitro血管新生モデルにて,血管内皮細胞の遊走・増殖・血管様構造形成への影響を検討した。
    【結果】カルノソールはex vivo血管新生モデルにおいて,ラット動脈片からの微小血管形成を5 μM以上の濃度で有意に抑制し,100 μMでは完全に抑制した。カルノソールの作用についてin vitro血管新生モデルで検討したところ, HUVECの細胞増殖と血管様構造形成に対して抑制効果を示したが,細胞遊走への有意な効果は認められなかった。これらの結果は,カルノシン酸が細胞遊走・増殖・血管様構造形成に対して有意な抑制効果を示すこととは異なっていた。以上より,カルノソールもカルノシン酸と同様に血管新生抑制作用を有することが明らかになった。しかし,カルノソールはカルノシン酸とは異なる作用機構で血管新生抑制を示す可能性が示唆された。
  • 北川 奈穂, 中西 洋子
    セッションID: 3P-33
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    [目的] 鹿ケ谷かぼちゃは京都の伝統野菜の1つであり、7~8月には京都のブランド産品として店頭で売られている。その独特の風貌から食用ではなく、観賞用として利用されることも多い。しかしながら、肉質は緻密で煮炊きしても形が崩れないので、蒸し物や煮物にむくとされている。味は淡白であるため味付けには工夫を要する。一方、鹿ケ谷かぼちゃは皮が厚く、長期保存に適していて、8月に収穫したかぼちゃは、冬至まで保存可能であるといわれている。しかし、貯蔵を重ねるにつれて水臭くなり、おいしくなくなるともいわれている。本研究の目的は、鹿ケ谷かぼちゃの長期貯蔵中に生じる品質変化を、各種成分分析を行うことで科学的に明らかにすることである。
    [方法] 鹿ケ谷かぼちゃは8月上旬京都府内産のものを購入し、12月まで室温貯蔵した。測定(観察)項目は、重量、水分、糖度、ビタミンC、遊離アミノ酸、外観および断面である。測定および観察は1ケ月毎に実施した(5回測定)。
    [結果] 鹿ケ谷かぼちゃは、8月の購入直後は緑色であったが1ケ月以内に褐色に変化した。貯蔵4ケ月で水分含量に2%の上昇がみられた。また、重量は約18%減少した。水分上昇および重量減少は、かぼちゃ貯蔵中にも続いている呼吸作用の影響と考えられる。糖度は貯蔵2ケ月目にピークがみられ、その後減少した。ビタミンCは貯蔵1ケ月で約3分の1まで減少し、以後同レベルを保った。遊離アミノ酸は貯蔵中漸増し、4ケ月貯蔵で約2倍に増加した。4ケ月貯蔵の鹿ケ谷かぼちゃも皮の食感は硬いものの果実部分は十分食用に耐えうるものであった。
  • ―布の摩擦力測定―
    岩崎 紘子, 篠原 陽子
    セッションID: 3P-34
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    目的】被服の摩擦は,着衣の拘束性や着脱性,裏地の滑り,摩耗による毛羽,テカリ,ピリングの発生,皮膚刺激等様々な現象にかかわる.高等学校家庭基礎「衣生活の管理と健康」では,着用目的に応じた健康的で快適な着装ができることと学習目標が定められている.健康的で快適な着装とはどのようなものかを考え,着心地には被服の品質と着方がかかわることを,生徒に科学的に理解させるための授業開発を目的とし,被服材料の表面摩擦特性を,衣類の仕上げ剤の効果を含め調べた基礎実験の結果を報告する.
    方法】ポータブル摩擦計(HEIDONトライボギア ミューズ),傾斜法,水平板法(FTF-50)の3方法を用いて静止摩擦力を測定した.番手数(糸密度),織組織,糸の種類(紡績糸/フィラメント糸)の異なる試料布,洗濯のり(酢酸ビニール系,花王),柔軟剤A(P&G),柔軟剤B(LION)を使用量の目安ならびに2倍量程度を付与した試料布の摩擦係数(μ)を測定した.試料布は全て前処理を行った.
    結果】1)綿ブロードでは,100番手5.67<80番手8.14<60番手11.4となり,構成する糸が細いほど摩擦係数は小さくなった(傾斜法,水平法).2)綿朱子(朱子織)3.07<綿デニム(斜文織)8.14<綿ブロード60番(平織)11.4となり,織組織によって摩擦係数が異なった(傾斜法).3) PETタフタ0.26<モスリン2.90となり,フィラメント糸の方が滑りやすかった(傾斜法,水平法).布の表面摩擦特性は布の構造や構成糸の影響を受けることが分かった.4)柔軟剤,洗濯のりを付与した場合には,柔軟剤B(綿ブロード60番)標準2.14<2倍量2.35<未処理布11.4,洗濯のり(綿ブロード60番)7/2倍量2.24<標準2.90<未処理布11.4となり,いずれも未処理よりも摩擦係数が小さくなったが,使用濃度による差は見られなかった.
  • -布の吸水性試験-
    越宗 久美子, 篠原 陽子
    セッションID: 3P-35
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    目的】衣服の吸水性は人体の生理学的快適性と密接に関係し,衣服材料の種類や表面積,糸や布の構造が重要な要因となる.小学校家庭科「衣服の着用と手入れ」では,目的に応じた快適な着方を考え適切に着ることが学習目標とされている.そこで,布の吸水特性と快適性の関係から,なぜ快適な着方が必要か,適切に着るとはどういうことかを児童に科学的に理解させるための授業開発を目的として,布の吸水性に関する基礎実験を行った.汗や泥で汚れた衣服をなぜ洗濯する必要があるのか,なぜ洗剤を使って洗うのか等洗濯の学習とも連動した吸水試験を想定して,児童の発達に合った試験法を検討する.
    方法】吸水試験はバイレック法,沈降法,滴下法を用いた.試料布は前処理し,1)織編物(綿ブロード60番,綿デニム,綿朱子,両面タオル,メリヤス),2)糸密度(綿ブロード40,60,80,100番),3)糸の種類(綿ブロード60番,PETタフタ,混紡糸PET35/綿65),4)繊維の種類(綿,ナイロン6,他8種)を実験に供した.5)衣類の仕上げ剤として,市販洗濯のり(酢酸ビニール系,花王),柔軟仕上げ剤(P&G)を標準量と2倍量程度を綿ブロード60番に施し未処理のものと比較した.
    結果】1)ではタオル>メリヤス>織物の順となり,三原組織の間では差が見られなかった.いずれもタテ方向の吸水が高かった.2)では綿ブロード40番>100番>60番>80番の順となり,タテ方向の吸水が高かった.3)では混紡糸>紡績糸>フィラメント糸の順に吸水性が高かった.4)では植物性繊維>動物性繊維(絹)>化学繊維の順になった.毛は表面のはっ水性のためにほとんど吸水しなかった.5)では洗濯のり,柔軟剤の付与により吸水性が低下したが,使用濃度による差は見られなかった.
  • 小松 恵美子, 駒津 順子, 森田 みゆき
    セッションID: 3P-36
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    =目的=高等学校家庭科の「染色」教材の開発を目的として、「染色」教育の変遷調査、新しい「染色」教材開発の視点検討ならびに先行論文調査、フードデザインおよび家庭基礎での「染色」実習実践、質問紙調査と授業観察による「染色」教育の考察という流れで研究を進めてきた。本報では、多人数に対応した染色実習を検討するために、同一染色液で染色した初回染色布と2回目染色布を後媒染し、明度・色相および反射率について比較分析した。
    =方法=浴比1対50で白布と同重量の玉ねぎ外皮を20分間煮沸抽出して染色液を得た。染色液は濾過して室温まで放冷し、水を足して浴比調整した後、綿白布を入れ加熱し沸騰後30分間染色した。布を取り出し軽くすすぎ、媒染液(6%o.w.f、浴比1対50)に30分間浸漬した後、すすいで風乾したものを初回染色布とした。染色残浴を再度浴比調整して同条件で綿白布を染色・媒染し、2回目染色布とした。
    =結果=明度は、2回目染色布の方が上昇し、特に硫酸カリウムアルミニウム[Al]媒染布で顕著であった。色相については、2回目染色布のa*値は減少し、特にAlならびにリン酸水素二カリウム[KHP]媒染布で顕著であった。2回目染色布のb*値はAl媒染布が減少、KHP媒染布は微減、硫酸第一鉄アンモニウム[Fe]と硫酸鉄(III)アンモニウム[Fe(III)]ならびに塩化カリウム[KCL]媒染布では微増、未媒染布では変化が無かった。また、2回目染色布の反射率はAl媒染布が最も増加し、KHPおよびFe媒染布でもやや増加した。一方Fe(III)、KCl媒染布及び未媒染布ではほとんど変化が見られなかった。
  • 井上 美紀
    セッションID: 3P-37
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    目的 洗剤使用量の低減などを目的に様々な洗濯用補助具が市販されている。本研究ではこれまで、硬く球状でセラミックスや備長炭等が入っている洗濯ボールを取り上げ、その洗浄効果を比較した。本報告では、引き続き洗浄効果を検討するとともに、被洗物への影響について把握することを目的として実験を行った。
    方法 洗濯用補助具として硬い球状の洗濯ボールを2種(AまたはB)用いた。洗浄用汚染布として湿式人工汚染布(洗濯科学協会製)を用いた。洗浄条件は、洗濯ボールのみ、洗濯ボールと洗剤の併用(濃度は企業指定の標準使用濃度以下)、通常洗濯(ボール未使用、洗剤標準使用濃度)とし、家庭用攪拌式洗濯機での通常サイクルで繰り返し洗浄を行った。洗浄効率は洗浄前後の表面反射率から求めて比較検討した。さらに、被洗物への影響を把握するためにMA試験布を用いてMA値を測定するとともに、綿布(金巾)を用いて寸法変化等を比較した。
    結果 水のみで洗浄を行った場合と比較すると、洗濯ボールを入れて洗浄を行った場合の洗浄効率は水のみの場合と同程度で、繰り返し洗浄を行っても洗濯ボール使用の有無での違いは見られなかった。通常洗濯の場合の洗浄効率と比べると、洗剤と洗濯ボールを併用した場合は、併用時の洗剤量が標準使用濃度よりも少ない量でも、通常洗濯よりも高い洗浄効率を示した。また被洗物への影響では、綿布の寸法変化に洗濯ボール使用の有無での違いは見られなかった。しかしMA値の測定結果では、洗濯ボール使用時は未使用時に比べてMA値が高くなり、特に洗濯ボールAの場合は未使用時の1.5倍の値を示し、洗濯ボールによる被洗物損傷への影響が大きいことが分かった。
  • 森田 みゆき, 福永  夏奈美, 増子  富美, 美谷 千鶴, 森崎 真奈美
    セッションID: 3P-38
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    緒言 光触媒である酸化チタン(TiO2)を繊維に担持することによる劣化予防のため,繊維表面にTiO2含有樹脂をコーティングして担持する方法等が用いられている.筆者らは,繊維の性能を維持したままセルフクリーニング効果を得る目的で,バインダーを用いずにTiO2担持綿布を調製し性能を評価している.本研究では,3種のTiO2を用い微小重力下で担持処理を行い,大気雰囲気下の場合と担持量を比較した.
    方法  TiO2は,アナターゼ型,ルチル型,可視光応答型の3種を用いた.
    TiO2担持布の調製 :TiO225mg,水25mlに超音波を20分間照射した後,2.5×2.5cmの綿布を入れた.これを,大気圧下による撹拌,又は,3Dクリノスタッドによる微小重力下で30分間処理した.
    担持したTiO2の定量方法1TiO2担持布を灰化し,硫酸アンモニウム5g,硫酸10mlと2.5Nジアンチピリルメタン塩酸溶液,5%アスコルビン酸溶液を加え,390nmの吸光度を測定しTiO2量を求めた.方法2蛍光X線分析装置を用いTiO2担持布のチタンの計算強度を測定した.
    結果および考察 綿布へのTiO2の担持量を調べた.微小重力下では,各TiO2のタイプの担持量は,大気雰囲気下処理と比較して約10~20%となった.同一の担持方法の場合,TiO2のタイプによって担持量が大きく異なった.大気雰囲気下,微小重力下共に,担持量はアナターゼ型,ルチル型,可視光応答型の順に増大した.大気雰囲気下では,可視光応答型の担持量がアナターゼ型の約3倍となり,微小重力下では、約10倍となった.繊維への担持量が異なることは,TiO2の粒径や繊維と粒子のζ電位に起因すると推測される.
  • 金子 珠実, 前川 昌子
    セッションID: 3P-39
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    柿タンニンを主成分とする柿渋は、わが国で古くから用いられてきた。本研究では柿タンニンによる麻布の染色促進のために酢酸ナトリウムを用いて検討し、酢酸ナトリウムの添加が発色および柿タンニンの布への吸着量に及ぼす影響について検討した。その結果、酢酸ナトリウムの添加により染色布のK/Sスペクトルに変化が見られ、染色布が暗赤褐色化することが明らかとなった。
  • -なで肩と怒り肩の相違-
    猪又 美栄子, 中込 里奈, 石垣 理子
    セッションID: 3P-40
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 身体状況の低下した高齢者等では着用した衣服の重さによる負担を感じることがある。衣服重量は両肩にかかるが、肩部形状の違いにより衣服着用時の最大衣服圧を示す部位や負担の程度が異なる。そこで、肩傾斜角度の異なる若者を対象に着用実験を行い、肩部形状による衣服重量の負担の違いと、衿ぐりの位置の違いや肩パッドの使用による衣服圧の分散の効果について検討した。
    方法 (1) 着用者は、なで肩(肩傾斜角度28~30度)3名、普通肩4名、怒り肩(15~17度)3名の健康な女子学生である。実験用衣服は素材の質量が大きい(467.8g/cm2)ジャケットである。 (2) 着用実験の要因は、衿ぐりの位置(ジャケットA1:衿ぐりは頸椎点、頸側点を通る頸付け根囲、ジャケットA2:A1よりも1cm外側)、肩パッド(B1:無、B2:厚さ1cm、B3:厚さ2cm)である。 (3) エアパック式接触圧測定器を用いて、静止時の衣服圧を測定した。測定位置は、肩部の僧帽筋上部前縁に沿った頸側部と肩先部である。 (4) 肩パッド等の動作への影響を知るために、上肢5動作について右上腕三角筋の筋活動を測定した。動きやすさについての官能評価も5段階で行った。
    結果 (1) ジャケットA1を着用した場合は頸側部で最大衣服圧が示され、なで肩グループでは平均3.55kPa、普通肩では平均2.34 kPa、怒り肩では平均1.97 kPaであった。ジャケットA2では、なで肩グループでは頸側部で最大衣服圧が示されたものの、普通肩、怒り肩のグループ平均の衣服圧は肩先部の方が高かった。 (1) 1cmの厚さの肩パッドを装着することにより、全着用者の頸側部への負担が軽減された。
  • 永山 恵理, 井手 ちひろ, 甲斐 今日子
    セッションID: 3P-41
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     現代の若者は、身体の快適性や安全性よりファッション性を重視して被服を選択・着用する傾向にある。若年期からの生体への負担は、着用時だけでなく将来的な健康障害を引き起こす危険性があると示唆されているが、若者にとって、それが身近な問題としてとらえられていない。そこで、本研究では、ファッション性の高い被服による生体への負担の実態とその負担に対する若者の意識を明らかにすることを目的とした。
    【方法】
     長崎、佐賀、福岡に住む18歳~29歳の女子大学生、社会人女性を対象とし、「ファッション性の高い被服による負担経験」について自記式質問紙法でアンケート調査を実施した。調査実施期間は、2009年4月~6月である。
     調査内容は、ファッション性の高い被服による負担経験の有無、負担のある被服の着用についての意識及び被服選択など衣生活に関する項目とした。回収率は98.0%、有効回答は504である。集計及び統計的検定には統計解析ツールPASW Statistics17を用いた。
    【結果】
     ファッション性の高い被服による負担の経験があると回答した割合は94.0%であった。負担を感じる被服では、ヒールのある靴が着用率96.8%のうち負担経験率が93.2%と高い割合を占めていた。また、着方として寒い日の薄着による負担を感じる割合も着用率83.3%のうち負担経験率69.0%と高く、その内訳は98.6%が冷えを感じていた。更に、「身体への負担があってもその被服を再び着用する」と調査対象の72.6%が回答した。その理由は、おしゃれの関心度別で差異が認められた。
  • 嶋根 歌子, 加藤 はるか
    セッションID: 3P-42
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的低価格でかつ高品質な商品が消費者から望まれている現在、市場では、デザイン性が高く低価格な靴が、消費者の購買意欲を高めるためコーディネートされて、店頭に並び売り出されている。衣料品を扱う人は、靴の素材や機能性等の知識が必要になっている。同時に、消費者は気軽さゆえに安易に靴選びをし、履きづらい靴でトラブルを抱えていることが予測され、足に適合する履き心地の良い高品質な商品設計と、消費者の意識を足の健康に向けさせる必要がある。そこで、本研究では、ヒール高の違いにより歩行中の下肢の筋肉の使われ方や、疲労感に影響が表れるどうかを検討した。
    方法被験者は年齢21~22歳の健康な女子大生8名(うち、高いヒール靴の常用者5名)。温度25.0℃、湿度40%RHの人工気候室で、各ヒール10分間、トレッドミルによる歩行実験を行った。右側の大腿四頭筋、内・外側腓腹筋、前脛骨筋の4点における筋放電量をホルター筋電計により導出した波形から算出した。同時に歩行前後に唾液を採取し、アミラーゼ活性値を測定した。
    結果(1)1歩行時の筋放電量は、ヒール高0cmと4cmが低値であるのに対し、7cmでは、数値が大きく上昇し、筋肉の収縮が強く、個人間のバラつきも大であった。(2)ヒールを履きなれていない者では、大腿四頭筋や腓腹筋の収縮量にはヒール高の差異は認められず低値であったが、ヒール常用者では7cmになると筋収縮が上昇し、大腿部から大きく踏み出し、つま先で蹴る歩行が行われていることがわかった。(3)アミラーゼ活性値は、順序効果が大でヒール高の影響は認められなかった。
  • 永井 伸夫, 石黒 優, 佐古 公香, 瀬谷 共美, 田村 照子
    セッションID: 3P-43
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ヒトは日常生活の中で多くの不快臭に暴露されており,特に肌着やタオルは直接肌に触れるものであり,それらから発生する部屋干し臭がおよぼす不快感は大きいと考えられる。本研究では衣服等から発生する部屋干し臭の性質と成分の分析を行い,不快臭抑制の一助となることを目的とした。
    【方法】健康な女性3名(22歳)を対象とし,ジーンズ,綿タオル,綿Tシャツ等の試料片(5×10 cm)を市販の綿Tシャツに縫い付けたものを着用させ,3日間で計26時間着用後,洗濯後,手絞りの濡れた試料を密封し,40℃,90%RHの部屋干し臭が発生しやすい条件で乾燥させた。分析には,におい識別装置(FF-1,島津)を用い基準ガスとの類似性と,ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS,QP2010,島津)で部屋干し臭成分の同定を行った。官能評価では,12形容詞対について5段階SD法による評価を行った。
    【結果】におい識別装置では,部屋干しのTシャツ,タオル共に硫黄系,アルデヒド系,アミン系,有機酸系において高い臭気寄与が得られ,GC-MSによる分析結果と関連性がみられた。また官能評価における「生臭い」,「ほこりっぽい」などの評価と関連していた。また汗や汚れを吸収しやすいと思われる素材ほど部屋干し臭が発生しやすく,部屋干し時の温度は35℃で最も高い臭気指数を示し,においの発生と細菌増殖の関連性が推察された。洗浄処理,消臭剤処理後の試料をにおい識別装置にて分析したところ,酵素配合洗剤または漂白剤によりアルデヒド系,アミン系の臭気寄与の低下が認められ,部屋干し臭の抑制には,酵素配合洗剤や漂白剤などによる洗浄処理や,細菌増殖を防ぐことが有効であると思われた。
  • 大森 志保, 石原 世里奈, 芳住 邦雄
    セッションID: 3P-44
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>心拍の変動に着目してそのゆらぎより自律神経系の作動状況を把握することが可能とされている。従来の研究の多くは、健常でない人々に着目してその疾病状態を改善ないしは緩和することに力点がおかれている。換言すれば、健常状態での測定結果の公表値は必ずしも充分ではない。本研究では、女子学生を対象として日常のキャンパスライフにおける特性を明らかにすることを目的としている。
    <実験方法>拍動変動のパワースペクトル解析から被験者の交感神経、副交感神経を評価し、自律神経系の作動状況を定量化した。本研究では、Biocom Heart Rhythm Scannerを用いて「心拍変動のスペクトル解析」により実施した。測定期間は2009年7月~2010年2月であり、大学の研究室において延266回の測定を行った。
    <結果および考察> 拍動解析から得られた交感神経系の作動の被験者全体における頻度分布は、従来より多くの現象に見られる正規分布ではなかった。比較的低レベルにおいてピークが存在し、高レベルへ向けて緩やかに出現頻度が低減する特徴が認められた。対数正規分布と言いうる分布であった。また、副交感神経系に対する交感神経系の比率も同様に対数正規分布とみなせるものであった。その比率が1以下は、28.9%、1~2は45.9%、2以上は25.2%であった。つまり、副交感神経系が有意な状態の被験者は約3割しか存在しなかった。女子学生全体ではいわゆる緊張度が高い状態にあることがうかがわれた。
  • 深沢 太香子, 熊谷 伸子, 織本 知英子, 栃原 裕
    セッションID: 3P-45
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
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    目的 ケニアを中心とする東アフリカでは,民族服カンガが日常的に着用されている.本研究では,カンガの日常着としての受容について,その力学的・表面特性および環境適応域から検討する.
    方法 被服素材の基本特性を把握するために,風合い評価を行うこととした. そこで,KES F1 - F4を用いて,引張り,曲げ,せん断,圧縮変形に対する性質と表面特性および布構造を測定した.
     カンガは大判の薄布で,腰や全身に巻いて着用される.本研究では,伝統的な着装として,腰衣型 2 条件と,全身包被型内衣無し 1 条件と内衣有り 2 条件の,計 5 条件を選択した.各着装条件の熱抵抗と蒸発熱抵抗を得た後,MecheelとUmbachの提案する着衣の快適環境適応域の推定式を用いて,安静時と家事労働時における適応域を推定した.
    結果 基本風合いであるKOSHI,HARI,FUKURAMI,SHARIは高値を示し,準基本風合いであるSHINAYAKASAは低値を示した.これらより,カンガの感触は滑らかではない一方,弾力性が高いため,人体と衣服間の空隙を形成し,維持しやすい素材であることがわかった.
     腰衣型 2 着装条件の環境適応域は,約 20 °Cから28 °Cであった.全身包被型内衣有り 2 着装条件の適応域は約 10 °Cから24 °Cであるのに対して,内衣無しのそれは腰衣型とほぼ同じであった.腰衣型と全身包被型内衣無しは,海岸地域(モンバサ)における雨期(6-9月)と中央山岳地帯(ナイロビ)の日中の気候に適し,全身包被型内衣有りは,日格差の大きな中央山岳地帯と西部(ビクトリア湖周辺)の気候に適することがわかった.このように,カンガは様々な着装状態を容易に実現できるため,幅広い環境適応域を示す.その利便性が,現代においても日常服として用いられている理由であると考えられた.
  • ―パンタロネス,シャルワール,パー・チュンガベンに着目して―
    有泉  知英子, 佐藤  真理子, 並木  理可, 田村  照子
    セッションID: 3P-46
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】世界には様々な民族服があり,各々の生活様式や気候に適応するよう工夫が凝らされている.本研究では下衣の形態に着目し,民族服3種の運動機能性及び温熱的快適性について検討を行った.
    【方法】被験者は平均年齢22歳の若年女子4名.実験衣はパンタロネス(グアテマラ),シャルワール(インド他),パー・チュンガベン(タイ),現代服としてストレートパンツ,計4種をシーチングで製作した.測定は運動機能性評価として衣服圧及び官能評価を,温熱的快適性評価として衣服内温湿度を計測した.1)衣服圧…静立・屈曲・あぐら姿勢で,前面(WL・MHL・HL・大腿中央・膝蓋骨中点),側面(MHL・HL・大腿中央),後面(WL・MHL・HL・大腿中央・膝蓋骨中点)の計12点を測定した.2)官能評価…動きやすさについて5段階評価を行った.3)衣服内温湿度…実験衣を着用し,28℃・50%RH環境下で安静5分→足踏み3分における腹部前突点・大腿前面中央・殿部後突点の計3点を測定した.
    【結果】衣服圧では,現代服の前面(大腿・膝蓋骨),側面(MHL・HL・大腿),後面(HL)が高い値を示した.現代服は民族服より総じてゆとりが少ないと考えられる.シャルワールは,屈曲時の膝蓋骨中点とHLを除くほとんどの部位で低い値を示し,官能評価においても有意に高い評価を得た.衣服内温湿度測定の結果,温度変化量において現代服は安静時の上昇(A)大,動作時の下降(B)小であった.3種の民族服はA小,B大であり,ゆとりが多いため動作によるポンピング効果が生じたと考えられる.本研究により,民族服の機能性を定量的に評価できる可能性が示唆された.
  • 杉浦 愛子, 木本 晴夫, 森 俊夫, 日下部 信幸
    セッションID: 3P-47
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 衣服を手にする時,私たちは鏡の前に立ち,その衣服が自分に似合うかどうかを確認する.その際,自分の体型に合っているかということと同時に,顔を引き立てているか,少なくとも損なうことがないかを判断する.しかし,衣服デザインでは衣服そのものの美しさが中心であり,顔との関係を前提としたものではない.そのため,自分の顔をより良くみせる衣服を着用しようとする場合,個人の趣味や経験などに頼ることとなる.また,近年,平均寿命が延びたことは衣服と顔が関わる期間も延びたと考えることができ,特に,高齢期の顔とはこれまで以上に長期にわたって関わることになる.このため,衣服と高齢者の顔の関係を客観的に解明する必要があるのではないかと思われた.高齢者用衣服について,被服構成面で多くの研究が行われているが,表面意匠からの検討はあまりみられなかった.そこで,本研究では,高齢者用衣服のデザイン性向上を目的に,高齢者の顔がより良くみえるテキスタイルデザインを検討することとした.ここでは,高齢者女性の顔にテキスタイルの明るさが及ぼす影響について検討する.
    方法 試料は高齢者女性の顔画像とテキスタイル画像を組み合わせたものである.なお,テキスタイル画像は無彩色の無地テキスタイルと柄物テキスタイルとした.また,比較のため,20代女性の試料を用いた.これらから輝度平均および輝度ヒストグラムを求めた.
    結果 高齢者女性と20代女性では輝度平均に大きな違いはみられなかった.しかし,輝度分布は異なるものとなったことから,それぞれの印象に違いを及ぼすと考えられる.
  • 村上 かおり, 増田 智恵
    セッションID: 3P-48
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 インターネットでの衣服購入システムが定着するなか,消費者が希望する衣服を効率よく選択するためには,適切に情報を活用できる環境を整備する必要がある。現在のWebショッピングではアイテム別に商品を選択し,画像や文字情報から衣服を検索していくことが多い。しかし消費者は一般的に衣服のデザインイメージを想定し,そのイメージから衣服を絞り込むため,本当にイメージした衣服にたどりつくには時間を要する場合もある。そこで,消費者の衣服のイメージ用語に対する認識を把握するため,イメージ用語とそれに該当するデザイン服の2次元画像ならびに3次元着装イメージ画像を表示し,その衣服に対する衣服観についてアンケートを行い,衣生活選択支援情報について分析を行った。
    方法 アンケートはWebブラウザを用い,期間は2006年11月~2009年1月に行った。回答者は991人で男性4%,女性62%,未回答34%,年代は10代23%,20代38%,未回答38%であった。掲載したデザイン服は26種で,イメージ用語は10種とした。なおデザイン服の3次元着装画像は,ブラウザ上でモデルが回転し,全角度からの着装画像が見られるように工夫した。
    結果及び考察 最も容易にイメージする用語はカジュアル系であり,26種のデザイン服のうち20種がカジュアル系という評価をしていた。着装したい衣服には,ガーリッシュ系,シンプル系のデザイン服が最も多く選択され,またそれらの衣服には,体型をカバーする着用効果を期待していた。衣服購入時に要望する情報は,似合い度,サイズ適合,デザインイメージが多く,3次元着装シミュレーション画像の表示においてもこれらの情報確認を希望していた。さらに3次元着装シミュレーション画像では型紙の情報を確認したいという回答がみられた。
  • 平林  由果, 丸山 眞澄, 白坂  茜
    セッションID: 3P-49
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ストレス社会となった現代、多様なリラクゼーション手法が提案されている。ハンドマッサージは手のツボを刺激することで血行を促進する。また、クリームやオイルを使用するため、その成分を皮膚から吸収すると同時に、その香りを鼻からも吸収することがリラクゼーション効果をさらに高めると考えられている。そこで本研究では、ハンドマッサージによるリラクゼーション効果を検証するため、マッサージ前後の感情状態および唾液中のストレスホルモン分泌量の変化を比較した。 【方法】マッサージクリームとして、特徴的な香りをもつ10種類を用意した。女子大学生18名を被験者とし、マッサージ開始前に好みのクリームを選んでもらった。マッサージ前後に、多面的感情状態尺度を肯定的・否定的な35項目について尋ねた。同時に唾液を採取し、ストレスホルモンを分析し、マッサージ前後で比較した。実験終了後に、各自のパーソナルカラー診断を実施し、好みの香りとの関係についても検討した。 【結果】ハンドマッサージ後には、「快活・爽快」、「充実」、「優越」の肯定的感情状態が高まり、否定的感情が低下する傾向がみられた。また、18名中10名においてマッサージ後にコルチゾール分泌量が減少した。以上の結果は、ハンドマッサージをすることで気分がよくなり、ストレスが緩和される可能性を示唆している。選択したマッサージクリームとパーソナルカラーが一致していたのは13名で、そのうち9名においてコルチゾール量が減少した。一方、一致していない被験者では、5名中4名でわずかながら増加傾向にあった。マッサージクリームの香りがパーソナルカラーと一致している場合に、リラクゼーション効果が得られることがわかった。
  • 鈴木 佐代, 冨永 有華
    セッションID: 3P-50
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 高齢化が進む住宅地では、高齢居住者がそれまでの経験を生かして活躍できる場やまちづくりに参加できる仕組みが必要となっている。福岡県宗像市葉山地区は、1970年代に分譲され高齢化率が40%を超えた郊外戸建住宅地で、2005年に「葉山ヘルスケア省エネ共和国」を設立し、省エネ活動をまちの活性化に活かしている。本研究では、まちづくり活動として高齢者が主体となって行う省エネ活動の可能性について検討することを目的として、葉山地区の活動および葉山地区周辺の一般高齢者の地域活動や省エネ活動の実態について調査した結果を報告する。
    方法 葉山地区調査は、2009年6月に役員2名のヒアリング調査により実施した。葉山地区周辺の一般高齢者に対する調査は、同年12月にアンケート調査により実施し、回収数(率)は83票(83.0%)、有効回答数(率)は80票(96.4%)であった。
    結果 葉山地区の活動は、NPOや大学など専門家のサポートを受け、省エネと健康が2本柱となっている。エコ料理教室や独自に決めたノーマイカーデーなどが行われ、高齢者の関心が高い健康づくりと社会貢献が実感できる省エネ活動が結びついている。一方、一般高齢者が地域で行う活動は、自治会・老人クラブ、美化・清掃、スポーツ・健康維持、高齢者・障害者の援助等(参加率50%以上)であり、その主な参加理由は、地域の人とかかわりがもてる、楽しい、まちや社会に貢献したい、健康維持になる等である。一般高齢者が行う省エネや環境配慮のとりくみは、ごみ分別やリサイクルなど各家庭で行うものにとどまっているが、地域で省エネ活動を行うことに意欲的である。高齢者による省エネ活動をまちづくり活動に取り入れるためには、楽しさや健康づくりといった要素が必要と言える。
  • 藤村 昌平, 長谷川 貴通, 田中 孝祐
    セッションID: 3P-51
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、環境への配慮から家電や住宅設備の分野において、節水効果を訴求する製品が増えている。また、洗剤においても、泡切れ性能を向上させ少ない水ですすぐことのできる商品が登場し、生活者の関心が高まっている。家庭用水の使い方は、トイレ・浴室・炊事・洗濯と洗浄に関わる部分が大半を占める。今回は浴室の掃除に着目し、洗剤のすすぎ性に関する意識調査を実施することとした。
    【方法】浴室用洗剤に関し、全国の主婦を対象にインターネット調査を実施した。調査は2009年8月に行い、有効回答数は100であった。また、浴室の掃除実態に関してもインターネット調査を行った。首都圏に住む主婦を対象に、2008年6月に行い、有効回答数は899であった。
    【結果】浴槽掃除は平均4.5回/週と高頻度であり、主婦にとって負担になっていることが示唆された。浴槽掃除に関する意識としては、入浴のたびに掃除しなければならないので面倒、簡単に手早く終わらせたいと感じていることが明らかになった。また、洗剤のすすぎ性に関する実感としては、排水口の周りの泡が消えず不快に思ったことや、浴槽掃除の水はなるべく節約したいことが挙げられた。このことから、泡切れが早いことに対するニーズが高いことも明らかになった。さらに、すすぎ時の泡切れに関する因子について検討を行ったので、併せて報告する。
  • e-Learningコンテンツ提供のために
    佐藤 恵, 佐藤 了子
    セッションID: 3P-52
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 インテリアコーディネートの授業では、殆どの教材をe-Learningで提供している。そこで、作品がイメージ通り表現できているかを調査し、教育の効果を測定するとともに、今後どのような教材が必要かについても明らかにすることを目的とした。
    方法 「OLやマダムが集う、女性のための喫茶店」をテーマにインテリアコーディネートした作品と、自由記述法によるアンケート調査を比較した。調査対象者は女子短大生22名。調査内容は「OLやマダム」「喫茶店」をイメージする言葉と色及び自分の好きな色である。これらの結果と、作品で使用された色使いを中心に比較を行った。
    結果 「OLやマダム」のイメージは、落ち着き・大人、色では茶・白・ベージュをイメージしている。「喫茶店」では、落ち着き・木・コーヒー及び紅茶で、茶色をイメージしている。好きな色ではピンクや白を好み、可愛いさや明るさをイメージしている。作品を見ると、壁は黄色・白、床は明度の異なる茶色が多いが、赤・ピンク・オレンジの女性を意識した色使いも多く見られた。テーブルは床と同様、明度の異なる茶色かガラス素材を選択している。色の選択理由では壁や床は部屋全体の調和を計ることを、テーブルや椅子では自分のイメージする色を重視している。これらの結果から、色を選択する時には自分の好きな色を選ぶ傾向があった。具体的には、床では、赤・ピンク・オレンジの色使いを好んで使われていたことにその傾向が見られた。しかし、壁はサンプルで使用されていた黄色が目立った。このことから、イメージを具体的に表現するための教材として、多様なサンプルの提供が必要であると思われた。
  • 木下 みゆき, 福井 典代
    セッションID: 3P-53
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的近年和服の中でも浴衣の需要が高まっている.しかし,ファッション性を重視した洋服感覚の色・柄の浴衣が販売されたり,着付けが適切でないため,外出先で着くずれをおこす若者も見受けられ,和服の伝統意義や美的感覚が伝承されているとは言い難い.そこで本研究では,中学校の家庭科教育において和服教育を取り入れることを目的として和服の着装に着目し,教材の作成を行った.
    方法平成10年告示中学校学習指導要領(以下,現行学習指導要領)と平成20年告示中学校学習指導要領(以下,新学習指導要領)において和服に関する記述内容の比較を行い,和服の着装に関する教材を導入できる学習内容を検討した.さらに新学習指導要領に基づき和服の着装に着目した教材と,その教材を活用した学習指導案の作成を行った.
    結果現行学習指導要領では,和服に関する記載が選択履修項目であった.しかし,新学習指導要領では,必修履修項目で和服を取り扱うことが可能となった.その内容は,和服と洋服の構成や着方の違いに気付かせることで,和服に関心を持たせるような配慮が必要である.和服の着装に着目した中学校家庭科の教材として「和服HAND BOOK」を考案し,浴衣のミニチュアを製作した.これらの教材を活用して,和服の中でも生徒に身近な「浴衣」の着付け実習を体験的学習活動として取り入れ,和服に慣れ親しむことができるような学習指導案を作成した.また,浴衣のミニチュアを教材として活用することにより,着付けに必要な場所の確保や男女の別なく実習ができる.和服を教材として取り扱うことは,生活文化の伝承にもつながるため,有効である.今後は,授業時間と教材の有効性を検討して,指導案の改善を図る.
  • -教員養成大学での実践研究の課題を追求して-
    中屋 紀子, 柳 昌子
    セッションID: 3P-54
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 卒業研究のあり方と指導法の開発を目的とする。卒業研究にあたって学生を学校ボランティアに出し、現実の教育現場に触れさせることを通して大学における家庭科教育法の理論を実際の教育活動で検証させる。その過程で以下を追求する。1.現実の学校の実情から実践的な課題を見いだす。2.自ら見いだした課題は学生たちの卒業研究への持続的なエネルギーの源にする。3.研究の検討結果では何らかの実践的な提案ができるようにする。 方法 先行研究は「授業を成立させるための工夫-家庭科について-」(平成16年福岡教育大学の属千賀子の卒業論文))である。その成果はSCSを利用した家庭科教育担当者主催による3大学(宮城教育大学、福岡教育大学、高知大学)合同の卒論発表会で発表された。その後、この中で用いられた「教育現場への継続的関わりと観察」について、卒業研究の指導法の一つとして有効であるとの感触を得て、授業分析を中心に宮城教育大で検討を重ねた。 結果 以下その経過と結果である。1.ボランティア先の選定と依頼、2.ボランテイア前の指導、2・3年次 授業分析(見方)方法の訓練、3.ボランティア報告、ゼミでの発表と検討、4.そのなかから卒業研究テーマを決定、それは(1)授業における「立て直し」の指示-小学校家庭科の授業観察から- (2)家庭科の授業での効果的な説明-小学校家庭科の授業観察から- (3)小学校家庭科の授業における学習規律 (4)家庭科実習における児童の個別認識方法である。5.授業研究の方法として授業観察、記録(ストップモーション方式)、6.論文作成、理論と臨床によるデータ整理。授業分析結果から、一定の抽象化ができ、また実践的な提案ができた。
  • 武藤 祐子, 松井 利夫, 水野 千依
    セッションID: 3P-55
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的美容教育は、専門分野に特化した技術の習練が多く、デザインから制作までの一貫した教育がほとんど行われていない。また、美容の根底である相手を意識する機会が少ない。そのため、現場の美容室において、数ある技術から必要な技術を選定し、それらを順序立てて施術した上で、顧客を意識したヘアスタイルをつくることが難しい。美容師には衣服のオートクチュールのデザイナー同様、構想から完成に至る全工程を自分で組み立てる力を育成する教育が必要である。そこで本研究では、オートクチュール的方法論による美容教育プログラムを考案し、その教育的効果を短期大学の授業において検証した。
    方法全15回の授業中の10回で、美容におけるオートクチュール的手法に関する講義を行ない、その後、3人一組(モデル、ヘア技術者、メイクアップ技術者)で実践した。この実践の課程は、1.カウンセリングによるデザインの決定、2.構想(頭部デッサンと制作過程の検討)、3.予行演習による工程の確認、4.作品制作と撮影、5.作品紹介と総括の5回で行った。
    結果と考察総括において、部分的な技術の習練では得られなかった美容師という仕事(組み立て工程)を理解するなど、現場で役立つ実践的な教育効果があることが示された。また、モデルと技術者で視点に若干の違いがみられたが、共通点としては、学生に美容の根底である対人を意識することの重要性が確認できた。今後さらに、自らの工程表の見直しのプロセスを実践課程の後に加えることによって学習効果の向上が期待できると共に、ふたつの方法(専門に特化した部分的教育とトータルな教育)を組み合わせてより効果的なプログラムを考案していくことにより、より総合的な美容教育が行われるものと考えられる。
  • 志村 結美
    セッションID: 3P-56
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 現在、児童・生徒が「生きる力」を身に付け、主体的に自らの人生を切り拓き、様々な課題に柔軟にたくましく対応し、社会人、職業人として自立していくことを目指すキャリア教育が求められており、教科を含めた全学校教育で育むものとされている。キャリア発達を促すものとして、「人間関係形成能力、情報活用能力、将来設計能力、意思決定能力」の育成が欠かせないとされており、実践や体験を通して現在の自分自身や生活を見つめ直し、問題点を見つけ、具体的に問題解決をしていくことを主要目標とする家庭科教育の担う役割は大きい。そこで、本研究は、小・中・高等学校における家庭科におけるキャリア教育の現状や教員、児童・生徒の認識を明らかとし、その課題を浮き彫りにし、今後の家庭科教育におけるキャリア教育のあり方を探ることを目的とした。本報では、小学校家庭科におけるキャリア教育の取り組みの実態等を明らかとすることを目的としている。
    方法 山梨県と静岡県の計406校の小学校に在籍している家庭科主任、家庭科担当教員を対象にアンケートを郵送し、山梨県87人、静岡県59人、計146人の有効回答を得た(有効回収率36.0%)。調査期間は2009年8月~11月である。調査内容はキャリア教育の実施の有無、キャリア教育を行っている教科等、家庭科におけるキャリア教育の実践内容等である。
    結果 約6割の教員がキャリア教育に関する教育を行っており、「総合的な学習の時間」51.4%、「特別活動」「社会」28.1%、「道徳」24.7%、「家庭科」15.1%等と実践されていることが明らかとなった。家庭科においては、家族の一員として仕事を行うこと、また、衣食住に関する技能の習得等を通した実践等が認められた。
  • 平 桂子, 庄山 茂子
    セッションID: 3P-57
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的人々の暮らしは多様化している中、心身ともに快適に暮らせる空間作りがのぞまれている。色単体のイメージと、その色が適用された空間の評価は異なることや色の好みはパーソナリティが反映していることが明らかになっている。そこで、本研究では異なるインテリア空間の印象を明らかにし、インテリア空間の色の好みと自己概念との関連を明らかにすることを目的とした。
    方法(1)調査概要1)試料作成:リビングルームにモダン・カジュアル・ナチュラル・エレガント・ロマンチック・シック・クラシック・ダンディの8スタイルを特徴付ける配色を施した。2)調査時期:2008年11月~12月3)対象者:長崎県の男子学生 (平均年齢20.2歳、SD1.4歳)、女子学生(平均年齢19.0歳、SD1.0歳)4)調査方法:配票留置法による質問紙調査(2)調査内容:インテリアへの興味関心、家具を選ぶ際に最も重視する点、8スタイルの中で最も暮したい空間、SD法による8スタイルの印象評価と自己概念に関する評価(3)分析方法:単純集計、t検定、一元配置分散分析、因子分析
    結果インテリアへの興味関心は、女子学生の方が男子学生より高かった。家具を選択する際、両群において色は重要視されていた。最も暮らしたいインテリア空間については、女子学生では1位がナチュラル、2位がクラシック、男子学生では1位がシック、2位がナチュラルであった。両群においてナチュラル志向の傾向がみられた。8スタイルの印象については、男子学生より女子学生の方が空間そのものの印象を顕著に受ける傾向にあった。自己概念と暮らしたい空間については、わずかに関連がみられた。男子学生において自己概念とインテリアの興味関心とに相関がみられた。
  • 富田 寿代, 水谷 令子
    セッションID: 3P-58
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 本研究は、乾燥地域における水環境の現状を把握するとともに持続可能な水資源保護を検討することを目的とする。キルギス共和国は天山山脈の西側斜面に横たわる山国であり、国土の大半が高原や山地である。暖房や給油等のため冬期に集中する電力需要は水力発電に頼っているが、冬期発電放流による下流国での洪水発生と夏期の渇水発生などの被害が顕在化するようになっている。この国の生活用水について報告する。
    調査方法 キルギス共和国のオシュ(南部)からビシケク(北部)までの都市や集落の水道水および湧水を採取し、pH、電気伝導度(EC)等はイオン電極を用い、硬度等は上水道試験方法に従い比色定量により求めた。
    結果 山岳地帯では沢山の湧水があり、山間の集落における地下水の水量も豊富である。標高3000m以上の峠の湧水はEC、硬度ともに低く、比較的低地の井戸水はイオン含有量の多い硬水であった。一部の井戸水からはPO4-3やNH4+が検出されており、これは水の味を悪くするだけでなく、濃度が高くなると健康被害も懸念されるため、継続した調査が必要であろう。水道水については、ECは27.5~55.6ms/m、硬度は160~285mg/Lと低く、各イオンの含有も少ない。他の中央アジア諸国と同様に、キルギスの上下水道施設のほとんどは十分なメンテナンスがなされないまま老朽化が著しく、上水道の多くは水質基準を満たしていないことに加えて、配水パイプや蛇口からの漏水も目立つ。浄水施設の充実も急務であるが、配水設備の補修とともに住民の節水意識の向上を図る必要があるだろう。地域住民の公衆衛生の向上のためにも、下水処理施設の充実・改修や運営・管理などに早急な国際援助が望まれる。
  • 家庭用マスクの使用実態
    鍋山 友子, 武井 玲子, 平野 由香里
    セッションID: 3P-59
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】花粉症や新型インフルエンザの流行を契機にマスクを装着する人が増加し、店頭にはさまざまな形状や価格のマスクが市販され、厚生労働省や国民生活センターからは、マスクの効果とマスクの取扱に関して、マスクの過信は禁物であることや取扱方法が公表されている。そこで、マスク着用によるリスクマネジメント研究の一環として女子大生を対象としてマスク使用の意識と実態を把握する。
    【方法】本学学生154人を対象として、質問紙による留置き自記入調査を行った。調査は2008年12月に実施した。
    【結果】1年間のマスク使用経験者は98.7%であり、自宅に備蓄・所有している学生は97.4%であった。厚生労働省は流行時に備え20~25枚程度の備蓄を進めているが、所有枚数をみると1~10枚48.3%、11~20枚19.9%、21枚以上の所有者は約3割余であった。マスクの使用目的は、風邪77.3%、インフルエンザ68.2%と高く、花粉は27.3%であった。次にマスク着用時の行動実態についてみると、フィットするように調節する59.7%、鼻・口・顎を覆って隙間のないように気をつける44.2%に対して特に気にしていない割合は24.7%であった。マスクをはずす時の行動は、マスクに手を触れないようにする割合が44.8%であるのに対して、特に気をつけていない割合が53.2%と高い傾向であった。さらに着用後のマスクの廃棄行動についてみると、マスクに触れないように注意している21.4%に対して、特に気をつけていないは74.0%という高い結果であった。マスクの効果については、目的とする効果があると思うは25.3%、つけていないよりはつけている方が効果があると答えた割合が73.4%という結果であった。
     マスクの選択・購入から着用、廃棄の各段階において、効果的着用やリスク低減化に関する情報提供が不十分であり、リスクコミュニケーションが今後の課題であると考える。
  • 浅野 三奈, 延原 理恵
    セッションID: 3P-60
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 近年、地球温暖化やヒートアイランド現象に伴い、気温が上昇傾向にあるため、学校環境にエアコンが導入されるようになった。しかし、エアコンの使用のみに頼ることは、環境への悪影響が懸念されるため、環境に優しい暑さ対策として「緑のカーテン」が実施されている。緑のカーテンには暑さ対策だけでなく、さまざまな効果が期待される。そこで、緑のカーテンを実施することによって学校環境にどのような効果があったのかを明らかにすることを目的とした。
    方法 質問紙郵送法とし、京都市教育委員会事務局学校環境整備室の「緑のカーテン推進事業」に参加している、京都市立小・中学校、総合支援学校の187校にアンケートを配布した。回収数は100枚で、有効回収率は53.5%であった。アンケートの配布回収は2009年9月に行った。
    結果 緑のカーテンを始めた理由としては「学校環境の改善」を挙げた学校が多かった。設置場所や植物の種類、教材としての利用などにおいて、学校が工夫し意欲的に取り組んでいる様子をうかがうことができた。教育的効果、児童生徒の興味、コミュニケーション、室温改善、省エネ効果、景観改善、癒しの効果の7項目中、最も効果があったのは教育的効果で、次いで癒しの効果であった。その次は、児童生徒の興味、景観改善、コミュニケーション、室温改善、省エネ効果の順であった。これらの評価は緑のカーテンの満足度に比例しており、緑のカーテンにより緑が増えたことが関連していると考えられる。室温改善や省エネ効果が低い評価であった背景には、夏の暑さが厳しく、健康被害が出ていることや、児童生徒が冷房を求めるため、冷房を控えたいという気持ちがありながらも実行できていない現状にあることが分かった。
  • 千葉 貴子, 南 江美子
    セッションID: 3P-61
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>平成22年度は第三次国民健康づくり対策「健康日本21」の評価の始まる年である。中間報告書によれば、運動習慣における改善状況は思わしくない。この現状を踏まえて、メタボリックシンドロームの概念普及による運動習慣の定着や「エクササイズガイド2006」の普及啓発を図りながら運動指導の積極的な取組の必要性が中間報告書に示されている。本研究においては、二次予防における運動行動ステージが実行期にある中年期(45~64歳)者を対象に調査を行い、運動習慣を継続するために必要な要因を探ることを目的とした。<方法>対象者は運動指導が必要とされたフィットネスクラブに通う実行期にある中年期の男女のうち、研究の主旨に同意が得られた28名(男20名、女8名)を対象とした。調査項目は、社会関係、運動実施者関係、環境関係から31項目、属性、現在の運動状況等とし、留置法により実施した。データー処理は汎用統計解析ソフトSPSSを用いて因子分析を行った。<結果>調査対象者は中年期集団であり、45歳から64歳までの区間死亡確率(dx45-64)は男性が13.1%、女性が6.3%にのぼっている。この時期において運動習慣を維持し、疾病を改善することは 二次予防において非常に意味のあることであると考える。調査の結果、運動支援関連因子として三因子が得られた。第一因子は「運動効果」、第二因子は「施設」、第三因子は「社会環境」であった。運動行動ステージが実行期にある中年期の者の運動支援においては、健康不安をあおりながら運動による効果を理解させる必要もあるが、加えて、施設のプログラムやスタッフによる専門的指導そしてスタッフやクラブの仲間との交流が重要であることが判明した。
  • 南 江美子, 千葉 貴子
    セッションID: 3P-62
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>近年のダイエットやメタボリック症候群対策等の健康ブームの広がりによってフィットネスクラブの利用者数は拡大傾向にある。本研究では、もともと自分の健康に関心の高いと考えられるフィットネスクラブに通う中年期を対象に、食行動パターンを考慮した効果的な食事指導のあり方を検討することを目的とした。<方法>病院に併設されたフィットネスクラブに通う中高年者を対象に、改正「疫学の指針」に従い、研究の趣旨を書面および口頭にて説明した上で同意が得られ署名捺印した28名(男20名、女8名)を対象者とした。日本語版DEBQ質問紙を用いて食行動パターンおよび食に関する意識を調査した(留置法、調査時期平成21年7月)。また、食事調査は、半定量食物摂取調査法を用いて行った。3ヵ月後、食事調査で問題のあった食塩やエネルギー等について、6~7名グループで30分間の知識伝達中心の食事指導を行い、アンケート調査により効果があったかどうかを判定した。<結果>対象者は、食事パターン別に「A抑制的摂食群」、「B情動的摂食群」、「C外発的摂食群」に分けられた。食事改善に対する取り組み現状については76%が何らかの改善を試みていたが、食事調査により、全ての人でいくつかの改善したほうがよい点がみられた。食事改善が難しいかについは、A群ではどちらとも言えない・容易87%である一方、B群では難しい・まあまあ難しい100%、C群はまあまあ難しい・どちらとも言えない83.3%だった。従来の知識伝達型の食事指導はA群には効果的であると推察されるが、一方B群ではカウンセリングでの精神的サポートやC群では家族や友人との協力を得るような食事改善法の指導をすることで効果的な指導ができるだろう。
  • 加藤 佐千子, 佐伯 洋子, 中神 勝
    セッションID: 3P-63
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的  高齢者にとって社会貢献や社会活動は,寿命の延伸や生活の質の向上に好影響を及ぼす.わが国では,高齢者自身が様々な活動に参加し,社会貢献することやそれらの活動を継続していくことが課題である.ボランティア活動や運動・文化活動などを行う人も多く,その実施者数は増加傾向にある.しかし,他者へサポートを提供するためには,身体的自立のみならず,精神的自立が重要であるといえる.そこで,本研究は,身体的自立性の高い高齢者ボランティアにおける精神的自立性と関連する要因を明らかにし,活動動継続意欲を高める要因を探った.
    方法 協力者:ボランティア団体に所属する60歳以上の男女高齢者82人(男41人,女41人,69.9歳±4.7歳).調査時期:2008年10月~11月.方法:無記名自記式アンケート調査と体力測定.内容:精神的自立性(自己責任的自立性,目的志向的自立性),活動継続意欲,健康度自己評価,体力自己評価,ヘルスライフスタイル自己評価,高次の生活機能,実施活動数,食の多様性,暮らし向き,属性など.分析:精神的自立性を目的変数とする重回帰分析(ステップワイズ法)と,活動継続意欲を目的変数とするパス解析を行った.有意水準は5%.
    結果  自己責任的自立性には,ヘルスライフスタイル自己評価と健康度自己評価が影響を及ぼし,目的志向的自立性には,ヘルスライフスタイル自己評価と実施活動数が影響を及ぼしていた.性,年齢,同居人数,高次の生活機能,体力自己評価,食の多様性との関連はみられなかった.パス解析の結果,実施活動数,ヘルスライフスタイル自己評価,暮らし向きは,精神的自立性を介して活動継続意欲に影響を及ぼしていた.現在の暮らし向きの良さ,活動の多さ,健康的な生活をめざすことが精神的自立性を高めると考えられた.
  • 保育士養成課程の学生を中心に
    山岸 裕美子, 八幡 眞由美
    セッションID: 3P-64
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 「手が汚れるのが嫌なので巾が絞れない」「自分と直接関わりのある人以外には挨拶が出来ない」「嫌だと思ったらすぐに諦めてやめてしまう」など、保育実習において、このような実習生がいることを耳にする。これらは単に掃除をした経験が無いことに起因するのではなく、社会性の有無に関する重大な問題を含んでいるのでなかろうか。そこで、清掃活動を手段とした教育の方途を実施・検討し、保育士養成教育に資するものとしたいと考えた。
    方法 筆者らの勤務する大学においては、福祉の現場で働く者として環境への配慮を身につけさせるため、学生に清掃を行わせている。一定のシステムの下で実践させてはいるが、特に以下のシチュエーション及び観点からアプローチを行うとともに、実施したアンケートの結果と実際の活動状況をふまえ、取組の効果と問題点を抽出した。(1)グループで行う(2)継続して行う(3)話し合い・実行・確認の順で活動する(4)きれいにすることを第一の目的とはしない
    結果 学生のアンケートからは「実習時に役立った・ほめられた」等、概ね好結果が得られた。またそれらと実際の活動時の状況から併せ判断して、忍耐力・洞察力が身につき、コミュニケーション能力が向上するという好ましい結果が得られた。しかし一方、指導する側の問題点も浮かび上がり、学習効果の大小は教員の感性や実践力に大きく左右されることもわかった。    
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