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白石 勝範, 曽我 孝, 森山 翔太, 望月 由
2023 年 47 巻 2 号 p.
282-285
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
骨粗鬆症を有する上腕骨近位端骨折に対し観血的骨接合術(ORIF)を施行した11肩を対象とし,術後にテリパラチド(PTH)製剤を使用したT群7肩と,術後にPTH製剤を使用しなかったN群4肩の2群に分けた.T群は術中に人工骨を7肩,ヒト脱灰骨気質使用吸収性骨再生用材料を2肩,術後はPTH製剤を7肩,超音波骨折治療器を3肩に使用した.検討項目は,骨癒合期間,屈曲,外旋,内旋の自動肩関節可動域(aROM),外転,外旋,内旋の肩関節周囲筋最大等尺性収縮筋力(MCV),JOAスコア,また術直後と最終観察時のHumeral head height(HHH)とNeck shaft angle(NSA),術後合併症とした.全例で骨癒合を認めた.両群間の比較では,骨癒合期間がN群と比較しT群で有意に長かったが,その他の項目は有意差を認めなかった.骨粗鬆症を有する上腕骨近位端骨折術後に使用したPTH製剤は,術後成績を改善しなかった.
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中邑 祥博
2023 年 47 巻 2 号 p.
286-289
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
上腕骨近位端骨折において,ロッキングプレート固定後の合併症としてスクリューの骨頭穿破がある.上腕骨近位端骨折に対してロッキングプレート固定を行った88例88肩(平均年齢73.5歳,男性15肩,女性73肩)を対象として,術後の骨頭壊死,スクリュー骨頭穿破,矯正損失を調査した.術後骨頭壊死は4.5%で,術後スクリュー骨頭穿破は12.5%であった.多変量ロジスティック回帰分析において,術後のスクリュー骨頭穿破へ影響を与える因子として骨頭壊死が抽出され,年齢,性別,Neer分類,5°以上の術後内反転位は有意でなかった.術後のスクリュー骨頭穿破を認めた症例は矯正損失を伴うものは少なく,骨頭壊死症例を除けば突出は軽度であった.一方で,術後内反転位を認めた症例はスクリューが短く骨頭穿破は少なかった.術後矯正損失の予防の観点からするとロッキングスクリューが軟骨下骨に入る十分な長さであることが重要と考える.
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武内 優子, 小嶋 秀明, 濱田 恭, 酒井 忠博
2023 年 47 巻 2 号 p.
290-293
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
近年,リバース型人工肩関節全置換術(RTSA)の適応は拡大している.変性疾患に対する良好な術後成績は数多く報告されているが,上腕骨近位端骨折に対するRTSAの術後成績については一定の見解が得られていない.当院でRTSAを施行し,術後1年以上の経過観察が可能であった15例17肩を対象とした.術後経過中に手術側の頚椎ヘルニアを発症し,リハビリテーションが一時不可能となった広範囲腱板断裂1肩を除外した.術前診断を元に変性疾患群10肩(腱板断裂性関節症4肩,広範囲腱板断裂3肩,変形性肩関節症3肩),骨折群6肩(上腕骨近位端骨折6肩)に分類し,性別,手術時年齢,身長について調査した.臨床成績の評価項目は,手術時間,術後合併症,術後入院期間,術後1年時の自動可動域および日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOAスコア)とし,変性疾患群に対するRTSAを指標に骨折群に対するRTSAの術後成績について検討した.上腕骨近位端骨折に対するRTSAの術後成績は,変性疾患に対するRTSAの術後成績には劣るが,除痛やある程度の日常生活動作の改善には有用であるという結果を得た.
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志賀 研人, 西中 直也, 古屋 貫治, 磯崎 雄一, 田村 将希, 阿蘇 卓也, 井上 駿也, 稲垣 克記
2023 年 47 巻 2 号 p.
294-298
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
65歳以上の高齢者の上腕骨近位端骨折(proximal humeral fracture以下PHF)の治療は従来,骨折観血的整復内固定術または人工骨頭置換術,保存療法であった.リバース型人工肩関節置換術(reverse total shoulder arthroplasty以下RTSA)が使用されるようになり,治療の選択肢が増えた.本研究の目的はPHFに対してRTSAを施行した症例の臨床成績を検討することである.対象は,2014年4月~2021年12月までに施行したRTSA 132肩のなかでPHFに関連する7例7肩とした.4-partのPHFが2肩,脱臼骨折が3肩,脱臼骨折に関節窩骨折を伴うものが2肩だった.NRS,JOAスコア,Constantスコア,関節可動域,単純X線における大結節の治癒の有無,関節窩骨折の治癒について検討した.臨床成績は優れており,可動域は屈曲平均130° ,外転平均130° と良好であった.大結節の治癒は7肩中2肩に,関節窩骨折の治癒を2肩中2肩に認めた.本研究の結果,腱板機能不全例,関節窩骨折例について特に従来治療と比較しRTSAが有効であると考えられた.
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秋本 浩二, 服部 史弥, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 西須 孝
2023 年 47 巻 2 号 p.
299-303
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
上方プレート固定を施行され骨癒合後に抜釘を施行された鎖骨骨幹部骨折22例(男性17例,女性5例,平均受傷時年齢は39.3歳,平均経過観察期間は13.3か月)を対象に,抜釘後の再骨折の特徴とリスクについて検討した.抜釘後再骨折は4例(18.2%)に認めた.そのうち3例は抜釘から再骨折までの期間が2,30,65日と抜釘後早期に再骨折し,受傷機転はすべて日常生活の軽微な外力であった.早期再骨折例のうち2例はスクリューホールに骨折が生じプレートによる再固定が施行され,他の2例は初回と同部位に骨折が生じプレート固定と腸骨移植が施行された.再骨折群と非再骨折群の比較において,モノコーティカルスクリューホール(鎖骨短軸において骨辺縁で皮質骨のみを貫通したスクリューホール)の有無にのみ有意差を認め,モノコーティカルスクリューホールが抜釘後再骨折のリスクである可能性が示唆された(オッズ比: 36.0; 95%信頼区間: 1.6 - 836.1; p=0.04).
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石谷 栄一, 原田 伸哉
2023 年 47 巻 2 号 p.
304-307
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
我々は多血小板血漿(PRP)療法をMRIにて腱内部の信号変化をみとめる腱板腱障害 (tendinopathy) 症例に施行した.PRP療法を施行し,半年の検診が行えた9例(男性4例,女性5例,平均年齢62.1歳)を調査対象とした.対照群はtendinopathy症例で初回MRIから1年未満に2回目の検査を施行した13例(男性8例,女性5例,平均年齢65.1歳)とした.MRI T2脂肪抑制画像による腱内部信号強度(C)を三角筋の信号強度(D)で除したC/D平均値の経時的変化を調査した.MRI 1回目と2回目のC/D値の変化は,PRP群では1.51→1.29(p < 0.05)と有意に低下するのに対して,対照群では1.35→1.62(p < 0.05)と有意に増加した.対照群のC/Dが増加して腱状態が悪化していることが示唆されるのに対して,PRP群はC/Dが減少して腱状態の悪化が抑制されることが示唆された.腱板断裂の原因に加齢に伴う腱変性が考えられており,PRP療法は腱版断裂の予防効果が示唆された.
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栫 博則, 海江田 英泰, 上釜 浩平, 前迫 真吾, 海江田 光祥, 藤井 康成, 谷口 昇
2023 年 47 巻 2 号 p.
308-311
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
関節鏡下腱板修復術(以下ARCR)後再断裂例の臨床成績に影響を与える因子を検討した.大・広範囲腱板断裂に対しARCR施行後1年間以上経過観察可能であった108肩中,再断裂を認めた28肩を対象とした(再断裂率25.9%).28肩を再手術に至らなかった24肩(N群)と再手術に至った4肩(R群)の2群に分け比較した.検討項目は,手術時年齢,術前と最終観察時(R群は再手術直前)の自動屈曲角度,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOA スコア),断裂形態,また術前の肩峰骨頭間距離,腱板筋腹の脂肪浸潤とした.臨床所見ではJOAスコア,自動屈曲角度ともにN群がR群に比べ,最終観察時に有意に高値を示した.画像所見ではN群において断裂の前後径が術前よりも有意に縮小しており,またN群はR群に比べ断裂の前後径の縮小量が有意に大きかった.再断裂をきたしても前後径が拡大しない修復が重要である可能性が示唆された.
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早川 敬
2023 年 47 巻 2 号 p.
312-315
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
鏡視下腱板修復術(ARCR)で使用する骨置換性アンカーは約2年で骨置換されるとされるが,当院での術後2年時のMRIでは完全に骨置換されたものは皆無であった.そこで,骨置換性アンカーを用いてARCRを行ったアンカーの骨置換を術後5年時のMRIで評価した.骨置換性アンカーを使用し,術後2年と5年時にMRIが撮像できた21例におけるアンカー38個を対象とした.骨置換の程度はHaneveldらの分類を用いて評価した.検討項目は骨置換の程度,骨置換の進行度とした.骨置換の程度は2年時と比較し5年時で有意に進んでいたが,5年時で完全に骨に置換されたものは2.6%であった.骨置換の進行度は,有意に2~5年時で大きかった.骨置換性アンカーは2年ではほとんど置換は進まず,2年以降で進行していた.5年時には置換は大分進むが,ほとんどのアンカーが完全には置換されていなかった.骨置換は確実に進む一方で,5年以上の期間を要する場合が多いと認識すべきである.
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四本 忠彦, 神田 拓郎, 中村 英資, 大久保 敦, 中島 駿
2023 年 47 巻 2 号 p.
316-319
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
一次修復不能な広範囲腱板断裂に対して行った棘下筋回転移行術の有用性と問題点を報告する.棘下筋回転移行術を行い1年以上経過観察できた患者16名16肩(平均年齢74.4歳,平均経過観察期間38.5か月)を対象とした.術前GFDIは平均3.0であった.全例,合併症や再断裂を認めなかった.JOA スコア(術前)は86.7点(56.0点)に有意に改善した.ROM(術前)は前方挙上148.0°(108.7°),外旋30.7°(22.3°),内旋L1(L2)へ,MMT(術前)は前方挙上4(3),外旋3(3),内旋5(4)へ,外旋以外はそれぞれ有意に改善した.AHI,棘上筋断面積は術後有意に増大した.棘下筋回転移行術は,高度な脂肪浸潤を有する症例にも可能で,棘上筋延長再建の効果を有し,特に前方挙上の機能回復が期待できる.外旋機能の回復は期待できず,他の方法を考慮すべきである.
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夏 恒治, 原田 洋平, 井上 公博
2023 年 47 巻 2 号 p.
320-325
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
鏡視下腱板修復術クリニカルパス(以下CP)を導入したので,導入前後の在院日数と導入に伴う有害事象の発生について調査した.
鏡視下腱板修復術を行ない術後1年以上経過観察が可能であった75例を対象とした.CP導入前が55例(BCP群),導入後が20例(ACP群)であった.
年齢,性別,患側,断裂サイズ,使用アンカー数,修復方法,手術時間,在院日数,退院経路,術後1年でのMRIを調査し,CP導入前後での術後在院日数,退院経路,再断裂率,CP導入による有害事象の発生がないか評価した.
全ての調査項目において両群間で有意差はなかった.BCP群で在院日数は平均15.8日,最頻値16日であり,ACP群では平均17.0日,最頻値15日であったが,BCP群では在院日数が分散傾向にあった.
CP導入前後で平均在院日数,退院経路,再断裂,再手術などに関しても有意な差はなく,CP導入による有害事象はなかった.
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石垣 範雄, 畑 幸彦
2023 年 47 巻 2 号 p.
326-329
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
術後の腱板の状態と上腕骨骨密度の関係を調査し,断裂サイズや修復腱板の状態が上腕骨骨密度に及ぼす影響を検討した.片側の腱板断裂に手術を施行した575肩を対象とし,断裂サイズによって小・中断裂のS群431肩と大・広範囲断裂のL群144肩の2群に分け,さらにS群とL群をそれぞれ術後1年時MRIにて菅谷分類TypeI~IIIとTypeIV,Vに分けて,4群それぞれの臨床所見と上腕骨頭,大結節,上腕骨頚部の骨密度を術前と術後1年時の間で比較検討した.4群ともCuff integrityの良否に関わらず臨床所見は術後有意に改善していた.上腕骨骨密度は,S群ではCuff integrityの良否に関わらずすべての部位において術前後で有意な変化を認めず, L群の上腕骨頭はCuff integrityの良否に関わらず有意に低下していた.腱板大・広範囲断裂症例では,腱板修復後に上腕骨頭の骨密度に注意が必要であると思われた.
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山本 譲, 古賀 龍二, 船越 忠直, 草野 寛, 下河邊 久雄, 宮本 梓, 村山 俊樹
2023 年 47 巻 2 号 p.
330-335
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
第47,48回の本学会で報告した上腕二頭筋長頭腱(以下LHB)による鏡視下上方関節包再建術(以下ASCR,以下L群)と鏡視下腱板修復術(以下C群)の治療成績を比較した.症例は腱板大・広範囲腱板断裂に対して手術を行い術後2年以上経過観察可能であったL群23肩,C群34肩であった.L群の術式はLHBを引き出し大結節前内側部と後内側部に固定し,可能な限り腱板を修復した.JOAスコアはL群が術前平均71.4点から術後平均93.2点に,C群が術前平均69.6点から術後平均92.5点に有意に改善した.術後2年時MRIはL群が菅谷分類Type4とType5が1例ずつで,C群ではType4が3例,Type5が2例であった.Type4以上を再断裂とすると再断裂率はL群が8.7%,C群が14.7%であった.LHBが断裂した例は認めなかった.腱板大・広範囲断裂に対するLHBによるASCRの治療成績は良好であった.
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竹下 歩, 小西池 泰三
2023 年 47 巻 2 号 p.
336-338
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
一次修復困難な肩甲下筋腱断裂に対して可及的な肩甲下筋腱と前方関節包の修復に追加して小胸筋移行術を行った症例において,術後MRIで小胸筋の生着率と,小胸筋の最大前後径の術後変化を調査した.対象は17例(男性11例,女性6例),17肩であり,手術時年齢は平均68歳,経過観察期間は平均2.3年,Lafosse分類はType 3が12肩,Type 4が5肩であった.MRI評価は上腕骨内側の解剖頚レベルでのT2強調画像axial像で行った.全体では小胸筋生着率は88%であったが,Type 3では100%,type 4では60%であった.小胸筋が生着した15肩の筋の前後径は,術前は8.5 ± 1.7(SD)mm,術後3か月時では7.1 ± 2.3(SD)mm,最終調査時では6.1 ± 2.6(SD)mmと減少を認めた.小胸筋移行術の問題点として小胸筋の筋量が少ないことが挙げられ,小胸筋が特にtype 4におけるforce couplesを再獲得する力源として適切かどうか更なる検討が必要と考える.
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夏 恒治, 井上 公博
2023 年 47 巻 2 号 p.
339-342
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
高齢者肩関節脱臼の整復困難例4例を経験した.1例目は上腕二頭筋長頭腱の介在で切腱術を行なった.2例目は断裂した前方関節唇の介在が原因で鏡視下に関節唇修復とHill-Sachs Remplissageを行なった.3例目は関節唇が関節窩から広範囲に剥離して前下方に偏位していたために骨頭の整復位を保持できなかった症例で鏡視下に関節唇修復を行なった.4例目は陳旧性亜脱臼で関節窩前方の骨欠損がありリバース型人工肩関節置換術を行なった.2例目は骨頭軟骨も広範囲に損傷されており,術後に変形性関節症性変化が進行し成績不良だった.高齢者の場合は人工関節置換術も初回手術の選択肢として考えておく必要があった.
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杉森 一仁, 須澤 俊
2023 年 47 巻 2 号 p.
343-348
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
上腕二頭筋長頭腱病変が肩関節鏡視下腱板修復術の臨床成績に及ぼす影響について検討した.鏡視下腱板修復術を行った155肩(男性103肩,女性53肩)を対象とし,関節鏡視において長頭腱断裂の程度,長頭腱の肥大,hourglass bicepsについて調べた.これらの所見と術後のJOAスコア,再断裂の有無について検討した.長頭腱断裂がないのは79肩,50%未満の断裂を46肩,50%以上の断裂を12肩,完全断裂を18肩に認めた.長頭腱の肥大は57肩に,hourglass bicepsは8肩に認めた.長頭腱断裂例において腱板断裂サイズが大きい例を多く認めた.腱板大断裂群について,長頭腱の完全断裂群の術後12ケ月におけるJOAの機能スコアと可動域スコアが不全断裂群および断裂がない群のJOAの機能スコアと可動域スコアに比べ有意に不良であった.50%以上の長頭腱断裂例において有意に術後の腱板再断裂を多く認めた.
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大前 博路
2023 年 47 巻 2 号 p.
349-353
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
当科では腱板断裂に対してsingle-row法を主に行っており,価格が従来の糸と同等のテープ状の糸の付いたスーチャーアンカーを使用してきた.テープ2本付きスーチャーアンカー2本でsingle-row法を行った鏡視下腱板修復23肩の術後成績を調査した.臨床成績(術前/術後1年)は,肩自動可動域:屈曲(114 ± 37/142 ± 12度),外転(117 ± 44/151 ± 19度),外旋(56 ± 21/60 ± 20度),内旋(Constantらの方法により数値化:6.7 ± 1.6/7.1 ± 1.3)であり,患者立脚肩関節評価法Shoulder 36 V.1.3の各ドメインは疼痛(2.8 ± 0.8/3.8 ± 0.4),可動域(2.8 ± 0.8/3.8 ± 0.3),筋力(2.1 ± 1.0/3.6 ± 0.6),健康感(2.9 ± 0.7/3.8 ± 0.2),日常生活動作(2.7 ± 0.9/3.8 ± 0.3),スポーツ能力(1.6 ± 1.1/3.2 ± 0.8)であった.外旋と内旋以外は有意に改善していた.術後1年時のMRI T2強調像では3肩(13%)に再断裂を認め,15肩(65%)ではアンカー刺入部より外側にも腱板と連続する低信号領域を認めた.
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井浦 国生, 石原 康平, 矢野 良平
2023 年 47 巻 2 号 p.
354-356
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
一次修復困難な腱板断裂に対し棘下筋回転移行術(RIT)もしくはDebeyre-Patte 変法(DP)を行なった症例の術後成績について検討した.症例はRIT6例とDP4例で,大断裂に対してARCRを施行した18例を対象群とした.平均年齢が対照群が64 ± 8.2歳,RIT群が70.8 ± 1.2歳,DP群が61.5 ± 9.7歳であった.画像評価として,腱板断裂のサイズ,断端の厚み,術前のGFDI,術後のMRIで再断裂率(Sugaya TypeIV, V)率,また術前後の可動域とJOAスコアを検討した.腱板の断裂幅,断端の厚み,術前後の可動域,JOAスコアに差を3群間で差を認めなかった.GFDIはRIT群とDP群でで対照群に比べ有意に萎縮が高度であった.再断裂率はRIT群で16%,DP群25%,対照群で27.7%であった.
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幸田 仁志, 甲斐 義浩, 来田 宣幸, 三浦 雄一郎, 福島 秀晃, 近藤 寛美, 竹島 稔, 森原 徹
2023 年 47 巻 2 号 p.
357-359
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
本研究では,地域在住高齢者における腱板断裂の発生が健康関連QOLに及ぼす影響を縦断的に調査した.対象者は,地域の体力測定会に継続して参加した高齢者のうち,初年度に腱板断裂が認められなかった91名とした.1年後の測定会において,断裂が認められた群と認められなかった群に対象者を分類した.腱板断裂の診断には,超音波画像診断装置を用いた.健康関連QOLの評価にはSF-8を使用し,健康の8領域,および身体的サマリースコアと精神的サマリースコアを解析に用いた.統計解析には,腱板断裂の発生の有無と評価年度の2要因による反復測定分散分析を用いた.1年後に腱板断裂を生じた者は,91名中24名(26.4%)であり,うち動作時痛を有する者は3名であった.統計解析の結果,健康の8領域,身体的サマリースコア,精神的サマリースコアのいずれの項目にも有意な交互作用は認められなかった.これらの知見より,腱板断裂を生じても,自覚症状がなければ健康関連QOLは維持される可能性が示された.
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岩下 哲, 橋口 宏, 大久保 敦, 若宮 みあり
2023 年 47 巻 2 号 p.
360-363
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
鏡視下腱板修復術例のうち術後再断裂を認めない症例の成績不良因子を検討した.対象は術後再断裂を認めなかった674肩とした.術後JOAscoreが80点未満を不良群,80点以上を良好群に分け,術後成績を低下させるリスク因子に関して多重ロジスティック解析を用いて検討した.検討因子として,年齢,性別,罹病期間,外傷歴,糖尿病,断裂サイズ,肩甲下筋腱断裂の有無,棘下筋腱断裂の有無,拘縮,delamination,上腕二頭筋腱損傷を検討した.多変量解析にて非外傷例,男性,肩甲下筋腱断裂あるいは棘下筋腱断裂,上腕二頭筋腱損傷を認める症例で有意に成績の低下を認めた.術後再断裂非合併例において非外傷例,男性,肩甲下筋腱断裂あるいは棘下筋腱断裂を含む断裂,上腕二頭筋腱損傷が術後成績に影響することがわかった.
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廣瀨 聰明, 芝山 雄二, 杉 憲, 水島 衣美, 冨居 りら, 渡部 裕人, 伊藤 恭子, 山川 花菜子, 岡村 健司
2023 年 47 巻 2 号 p.
364-367
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
拘縮を有する腱板断裂患者に対して手術時に麻酔下徒手関節授動術(MUA)を行った後,関節鏡視で関節内所見を評価して,拘縮の方向とMUAの際に轢音を聴取した肢位,損傷した関節内組織の関連を評価した.対象は腱板断裂に対して鏡視下腱板修復術を施行した患者で,手術時麻酔下の徒手検査で拘縮を認めてMUAを行い,少なくとも一つの肢位で轢音を聴取して可動域の改善を認めた24例24肩である.全例が屈曲拘縮を含む3方向以上の拘縮を有する症例で,MUAにより外転拘縮を認めなかった1肩を除いて全例でAIGHL損傷が起こっていた.しかし,下垂位外旋拘縮を有する症例にMUAを行って可動域が改善されても関節包やSGHL,MGHLといった前上方の関節内組織に損傷が起こっていない症例も認められた.これは屈曲拘縮と外転拘縮を有している症例ではAIGHLが大きな影響を与えていること,また下垂位外旋拘縮が改善する際には必ずしも前上方の関節内組織の損傷が起こるわけではなく,前上方の関節内組織が引き延ばされた可能性や,前上方の関節内組織以外に起こった損傷により下垂位外旋可動域が改善した可能性が考えられた.
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芝山 雄二, 廣瀬 聰明, 杉 憲, 水島 衣美, 渡部 裕人, 冨居 りら
2023 年 47 巻 2 号 p.
368-371
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
我々は放射状MRIから算出した術前の断裂面積6.3cm
2以上が再断裂の危険因子と報告し,その場合は棘下筋回転移行術を追加することとした.本研究では断裂面積6.3cm
2以上の症例に対する棘下筋回転移行術の短期成績を報告する.対象は1年以上経過観察可能であった10例.男8例,女2例,平均年齢64.6歳,平均観察期間は18.0ヶ月であった.最終観察時の菅谷分類はTypeIが5例,TypeIIIが3例,TypeVが2例であり再断裂率は20%であった.JOA scoreは術前55.5 ± 11.7(SD)点から術後91.2 ± 3.5(SD)点,ASES scoreは術前35.6 ± 13.3(SD)点から術後88.5 ± 6.6(SD)点へ有意に改善した.平均ROMは挙上が術前91 ± 44(SD)度から術後156 ± 15(SD)度,外旋が術前41 ± 14(SD)度から術後51 ± 10(SD)度に改善した.棘下筋回転移行術は有用な術式と考えられた.
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喜友名 翼, 高橋 憲正, 松木 圭介, 佐々木 裕, 森岡 健, 上田 祐輔, 星加 昭太, 濱田 博成, 松葉 友幸, 菅谷 啓之
2023 年 47 巻 2 号 p.
372-376
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
一次修復不能な広範囲断裂例のうち,高齢で可動域が保たれた症例に棘下筋回転移行術を施行した.1年以上経過観察できた患者10例(平均年齢72歳,術後経過観察期間は平均28.9か月)の短期成績を報告する.
術前MRIでは後上方腱板の大~広範囲断裂を認め,Goutallier分類では棘上筋stage3-4,棘下筋stage2-4であり,肩甲下筋断裂を7例に認めた.平均のASESスコア(術前)は術後65点(41点)へ,Constantスコアは術後62点(50点)へ有意に改善した.術後可動域(術前)は屈曲が152°(139° ),内旋はTh12(L1)と術前後で有意差は認めず,下垂位外旋は27°(38° )と有意な低下を認めた.術後の再断裂率は30.0%であった.棘下筋回転移行術は,高齢で偽性麻痺のない一次修復不能な腱板断裂症例に有用と考えられた.
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野口 裕介, 三幡 輝久, 長谷川 彰彦, 内田 明宏, 竹田 敦
2023 年 47 巻 2 号 p.
377-380
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
肩腱板断裂において肩甲下筋腱断裂を伴う症例は多いが,肩甲下筋腱単独断裂は稀である.近年,肩甲下筋腱単独断裂に対する鏡視下手術の治療成績の報告は散見されるが,術前後に肩甲下筋の筋力が改善するか否かは明らかでない.今回我々は肩甲下筋腱単独断裂に対して鏡視下腱板修復術を行い,術前後の筋力を定量評価したので報告する.当院で肩甲下筋腱単独断裂に対して鏡視下腱板修復術を施行した4例5肩(男性4肩,女性1肩,手術時平均年齢67.8歳,術後経過観察期間平均14.6か月)を対象とした.手術前後の臨床成績,術後1年のMRIでの腱板修復状態に加えて,Lift off test肢位での肩内旋筋力を調査した.JOAスコア,ASESスコアは術後有意に改善し,再断裂は認めなかった.また内旋筋力は統計学的有意に増加した.肩甲下筋腱断裂が良好に修復されることにより,肩内旋筋力は有意に増加することが示された.
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竹原 元司, 馬谷 直樹
2023 年 47 巻 2 号 p.
381-384
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
上腕二頭筋長頭腱(LHBT)損傷への腱固定術や切離術は,手術時LHBT所見で判断されるが,その適応は術者や施設によって異なっている.LHBT損傷は,肩峰下インピンジメントやLHBT不安定性,骨頭求心性低下で生じるため,LHBT周囲組織の随伴病変が腱処置決定の判断の一助になる可能性があり,調査した.LHBT部分断裂を認めた15肩を対象に,LHBTは発赤,肥厚や扁平化,不安定性(ramp test),LHBT周囲組織はSGHL/SSc舌部複合体(anterior pulley)損傷,棘上筋前方線維(posterior pulley)損傷,SLAP損傷,LHBT直下の関節軟骨損傷を評価した.その結果,LHBTの発赤10肩,肥厚や扁平化15肩,不安定性11肩を認め,anterior pulley損傷15肩,posterior pulley損傷11肩,SLAP損傷15肩,LHBT直下の関節軟骨損傷13肩を認めた.LHBT周囲組織の随伴病変は,LHBT部分断裂が軽度より中等度や重度の方が多く認めた.腱処置決定の判断は,LHBT自身とともにその周囲組織への評価が有効である可能性がある.
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吉岡 千佳, 末永 直樹, 大泉 尚美, 山根 慎太郎, 松橋 智弥, 久田 幸由, 朴木 啓悟, 川真田 純
2023 年 47 巻 2 号 p.
399-403
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
当院における人工肩関節置換術後の再手術の原因,再手術方法,術後成績を調査した.2007年~2022年2月にインプラントの処置を伴う再手術を行った32肩を対象とした.人工骨頭置換術(HHR)13肩の再手術はHHR 2肩,解剖学的人工肩関節置換術(TSA)7肩,反転型人工肩関節置換術(RSA)4肩で,原因はグレノイドウェアが77%だった.TSA 15肩の再手術はHHR 7肩,TSA 7肩,RSA1肩で,原因はステム,グレノイドコンポーネントのルースニングが80%だった.RSA 4肩の再手術はベースプレートのルースニング2肩にHHRとRSAが各1肩,脱臼2肩に対しトレイ,ライナー交換を行った.全例疼痛は改善し,HHR後再手術はRSAでTSAより屈曲が有意に改善していた.TSA後再手術は,HHRは外旋以外はTSAと同様に改善していたが,今後グレノイドの状態について注意深い経過観察を要する.
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佐藤 英樹
2023 年 47 巻 2 号 p.
404-406
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
リバース型人工肩関節置換術術後の活動性再獲得についての報告は本邦では少ない.本研究の目的は術後に農作業への復帰を希望した患者に対するリバース型人工肩関節置換術の臨床成績と復帰状況を調査することである.対象は5例5肩で,原疾患は全例自働挙上が90° 以下の偽性麻痺を呈する腱板広範囲断裂であった.術前と術後2年の比較では,自動屈曲が中央値50.0° から135.0° ,自動外旋が20.0° から45.0° ,自動内旋がTh12のまま不変で,JOAスコアが45.0点から92.5点で,屈曲可動域とJOAスコアで有意な改善を認めた.農作業には全例が復帰し,復帰時期は平均4.0カ月(3カ月~9カ月)であった.術後2年では脊椎圧迫骨折で一時的に中断していた1例を除き農作業への従事は可能であった.本研究の結果からリバース型人工肩関節置換術は農作業への復帰を希望する腱板広範囲断裂患者に対して治療選択肢としてなり得る.
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神田 拓郎, 木田 圭重, 祐成 毅, 森原 徹, 古川 龍平, 高辻 謙太, 高橋 謙治
2023 年 47 巻 2 号 p.
407-411
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
当院におけるリバース型人工肩関節全置換術(RSA)の短期成績を報告する.対象はRSA施行後1年以上経過観察可能であった21例21肩で,平均年齢は74.2(65-86)歳,平均術後経過観察期間は51.8(17-92)か月であった.検討項目は術前後の肩関節自動可動域,外転筋力,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOA score),Constant score,術中および術後の合併症とした.可動域は屈曲,外転,外旋が有意に改善した.外転筋力,JOA score,Constant scoreも有意に改善した.術中合併症はなく,術後は一過性の腕神経叢麻痺を1肩,グレノスフィアのゆるみを2肩で認め,合併症率は14%であった.短期成績は比較的良好であり,今後も長期的な経過観察を要すると考える.
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日山 鐘浩, 望月 智之
2023 年 47 巻 2 号 p.
412-416
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
当院にて腱板広範囲断裂,上腕骨近位部骨折に対してRSAを施行された21例22肩を対象として術後臨床成績を比較した.上腕骨近位部骨折例が13肩, 腱板広範囲断裂例が9肩で,最終経過観察時の臨床成績は二群間で有意差を認めなかった.上腕骨近位部骨折群をさらに結節部の骨癒合群と非癒合群に分類しその臨床成績を比較したところ,屈曲,外転可動域は骨癒合群で大きい傾向であった.
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山田 有徳, 高橋 憲正, 松木 圭介, 佐々木 裕, 上田 祐輔, 星加 昭太, 濱田 博成, 松葉 友幸, 上條 秀樹, 玉置 大恵, ...
2023 年 47 巻 2 号 p.
417-421
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
鏡視下腱板修復に併用した上腕二頭筋長頭腱固定の手技による違いは明らかでない.鏡視下腱板修復術に併せてスーチャーアンカーまたはインターフェアレンススクリューを用いて上腕二頭筋長頭腱固定を実施した症例をアンカー群とスクリュー群に分類し,臨床所見を術前と術後1年時に調査比較した.対象は77例77肩で,アンカー群35肩,スクリュー群42肩であった.疼痛 ,臨床スコア(Constant score, UCLA score)は両群とも術前後で有意に改善し,2群間で有意差はなかった.肘屈曲筋力の患健比は,両群とも術前後で有意に改善し,2群間で有意差はなかった.Popeye signはアンカー群にのみ1例認めた.肩関節機能,Popeye signに固定法による差はなく,どちらの手技も術後成績は良好であった.
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岡田 浩希, 古屋 貫治, 磯崎 雄一, 堀家 陽一, 月橋 一創, 田村 将希, 尾﨑 尚代, 筒井 廣明, 西中 直也
2023 年 47 巻 2 号 p.
434-437
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
73歳女性,ADLは車椅子.外傷なく右肩痛が出現し,巨大関節窩骨欠損を伴う変形性肩関節症を認めた.除痛と可動域改善を目的に手術を行い,移植骨でベースプレートの固定性を高めるBony increased off-set(BIO)リバース型人工肩関節置換術を行った.右肩の術後経過中に転倒し左肩痛が出現,右肩以上の骨欠損症例であったが同様の手術を行い,両肩共に術後経過良好である.BIO手技は関節窩骨欠損が大きい症例に対して有効であると考える.
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向井 章悟, 中川 泰彰
2023 年 47 巻 2 号 p.
438-441
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
症例は65歳男性 レントゲン,MRIにて上腕骨頭特発性骨壊死Cruess Type 2と診断し手術を行った.病巣部は軟骨欠損を認めたので,腱板切開し直視下に自家骨軟骨移植を行った.術後3年時,痛みはほぼ消失しており機能的には問題なく,レントゲンでも関節症変化の進行も軽度である.本疾患においては機能障害よりも骨髄浮腫,軟骨損傷による痛みが主訴となっており,関節軟骨面の再建も同時に可能とする自家骨軟骨移植が治療に有効であった.
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藤木 貴顕, 中根 康博, 井口 智揮, 三宅 稜
2023 年 47 巻 2 号 p.
442-447
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
今回我々は肩甲骨関節窩骨折(Ideberg type II 2例,V 1例)の3例の手術を経験した.Brodsky approachで三角筋後部線維を温存し腱板の損傷を防ぎ,さらに関節鏡を併用することで,より正確に関節面の整復が可能であった.3例とも術後翌日から自動,他動運動による可動域訓練を開始し,可及的早期に機能改善を図った.1年後のJOAscoreは94点,85点,100点と概ね良好であった.Brodsky approachと関節鏡を併用することで,低侵襲で正確な手術が可能であり有用な方法であると考える.
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安井 一貴, 加藤 久佳, 前原 孝
2023 年 47 巻 2 号 p.
448-452
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
iMAP(intra-medullary antibiotics perfusion)は骨髄針を用いて骨髄内に高濃度抗菌薬を持続注入することにより骨軟部組織へ高濃度の抗菌薬を持続的に投与する治療方法である.化膿性肩関節炎に対してiMAPによる治療を行い,感染が再燃することなく経過した3症例を経験した.1症例はiMAPにアンカーを用いた腱板修復術を併用したが,感染が再燃することはなかった.本法は化膿性肩関節炎に対する有用な治療法の一つと考える.
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森 詩乃, 松浦 恒明, 進 訓央, 江藤 聡一, 釘本 裕三
2023 年 47 巻 2 号 p.
453-456
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
症例は39歳男性.水平内転,下垂位内旋時に肩前方に痛みを訴えた.明らかな解剖学的異常はなくリハビリをおこなったが改善が得られなかった.烏口下滑液包への局所麻酔投与により一時的にではあるが症状が消失した.烏口下インピンジメント症候群と診断し鏡視下烏口形成術を施行したところ症状が改善した.局所麻酔薬を用いた注射テストは診断の一助として有用であり,烏口突起形成術は治療法の選択肢であると考えられた.
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中根 康博, 井口 智揮, 藤木 貴顕, 三宅 稜
2023 年 47 巻 2 号 p.
457-462
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/13
ジャーナル
認証あり
56歳,男性.左肩の疼痛と轢音を主訴に来院,画像検査で左肩関節に膨大な数の遊離体を認めた.滑膜性骨軟骨腫症(以下本症)を疑い鏡視下手術を施行した.大小様々な遊離体を842個摘出し,病理組織検査で本症の診断を得た.術後早期に症状改善を認め,経過観察期間21カ月でJOA scoreは93点(術前56点),再発は認めない.今回,我々は効率的な遊離体摘出のために簡易的な吸引器具を作成し,実際の手術では非常に有効であった.
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