肩関節
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47 巻, 2 号
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原著・総説
その他
  • 船越 忠直, 古島 弘三, 高橋 啓, 宮本 梓, 吉野 広一郎, 菅原 誠
    2023 年 47 巻 2 号 p. 255-259
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
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     投球に関する肩関節障害の主な病態として肩関節前方不安定性を伴うインターナルインピンジメントがあるが適切な外科的治療に関しては未だ不明な点が多い.我々は最大外転外旋位での肩甲上腕関節安定性と弛緩性の均衡を取ることを目的として自家膝屈筋腱を用いた前方関節包靭帯再建術(AGCR)を開発した.本研究の目的は肩関節前方不安定性を伴うインターナルインピンジメントの野球選手に対して施行されたAGCRの短期治療成績について検討することである.AGCRを受けた野球選手12名12肩(全例男,投手7,野手5,平均年齢20.5歳,平均観察期間25.3ヶ月)を対象とし術前後可動域,臨床スコア,競技復帰率を評価した.外転外旋可動域は術前113度から術後104度と低下したが,臨床スコアは改善した.術前と同様レベルへの競技復帰率は83.3%であった.本術式は前方不安定性を伴うインターナルインピンジメントの野球選手に対する外科的治療法の一つとなりうることが示された.
学術集会発表論文
検査
  • 甲斐 義浩, 幸田 仁志, 来田 宣幸, 三浦 雄一郎, 福島 秀晃, 松井 知之, 山田 悠司, 近藤 寛美, 竹島 稔, 森原 徹
    2023 年 47 巻 2 号 p. 260-263
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     本研究では,超音波画像診断装置を用いて,地域在住高齢者における棘上筋と三角筋の筋厚および筋輝度を測定し,腱板断裂肩と非腱板断裂肩との間で比較検討した.地域在住高齢者103名を対象とした.参加者は,超音波診断によって,腱板断裂群28名と非腱板断裂群75名に分類した.筋厚と筋輝度の測定には,棘上筋および三角筋の超音波Bモード画像を用いた.筋厚は,各筋の筋腹中央部の厚さを計測した.筋輝度は,8-bit gray-scaleで数値化し,関心領域の平均値を求めた.分析の結果,棘上筋の筋厚は,両群間に有意差は認められなかったが,筋輝度は非腱板断裂群(78.1 ± 12.6)と比べて腱板断裂群(87.0 ± 14.0)で有意に高値を示した(p < 0.01).一方,三角筋の筋厚および筋輝度は,両群間で有意差は認められなかった.これらの結果より,超音波画像による筋輝度は,棘上筋の筋質低下を反映している可能性が示された.
  • 繁田 明義, 内山 善康, 新福 栄治, 渡辺 雅彦
    2023 年 47 巻 2 号 p. 264-268
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     今回我々はDeltoid tuberosity index(DTI)法による上腕骨近位皮質骨幅の経年変化を評価した.1年以上の間隔で2回肩関節単純 X線前後像を撮影し上腕骨近位端骨折,骨粗鬆症薬治療例を除く84例を対象とした.撮影間隔は平均2.4年.女性55例(平均78.0歳),男性29例(平均74.0歳).画像編集ソフトで輪郭を揃えた後,計測高位を一致させ,撮影間隔を考慮しないDTI値の変化量と年単位に換算した年変化量を算出した.DTI値減少は75例(89%)で,男女ともに変化量,年変化量は年齢と正の相関(r=0.356,r=0.418,r=0.474,r=0.508)を示した.DTI法による上腕骨近位皮質骨幅は上腕骨近位の経年変化を評価できる可能性がある.
病態
  • 中井 大輔
    2023 年 47 巻 2 号 p. 269-272
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     新型コロナウイルスワクチンの大学職域接種後(3回目)の肩痛の直接検診による調査を実施した.年齢は29.4 ± 14.7歳,男性3名,女性16名であった.肩痛の発症は接種後12時間以内に17名(89.4%)に認められた.疼痛ピークは接種後24時間以内に17名(89.4%)に認められた.アセトアミノフェン内服群,非ステロイド系消炎鎮痛薬内服群,内服なしの3群で比較すると,内服なし群は他の2群と比べて疼痛ピーク時の疼痛VASが有意に低かったが,接種後2日目の検診時には有意差を認めなかった.接種後2日目のUCLAスコアは30点満点で26.1 ± 2.9(21-30)点であった.肩外転筋力と皮膚-上腕骨間の厚みは,注射側と反対側で有意差を認めなかった.新型コロナウイルスワクチン接種後の肩痛は24時間以内にピークに達し,鎮痛薬により自己管理が可能であった.
脱臼
  • 松村 脩平, 大前 博路
    2023 年 47 巻 2 号 p. 273-276
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     Latarjet法は30代以上の患者での施行は比較的少なく,若年者と成績を比較した報告は少ない.本研究の目的は年齢別での術後成績の違いを比較することである.対象は当院で直視下Latarjet法を鏡視下Bankart法と併用で施行し,術後1年以上の経過観察が可能であった30人31肩を30歳未満の青年期患者群(A群: 17人18肩)と30歳以上の壮年・中年期患者群(M群:13人13肩)に分類し,再脱臼の有無,移植骨片の骨癒合,術前後のXpの変化,可動域変化(屈曲・外旋・内旋),術後JOA scoreについて評価した.術後から最終観察時点で再脱臼は全例生じず,移植骨片は全例癒合した.術前後のXpで関節症変化はほとんどなく,術前後屈曲・外旋の可動域変化,術後JOA scoreは両群間で有意差はなかったが,内旋可動域はM群での有意な低下を認めた.当術式は再脱臼の可能性も低く,両群ともに良好な成績を示し,30代以上の患者に対しては術後の内旋制限に注意する必要があると考えられる.
  • 須川 敬, 松浦 健司, 中井 秀和
    2023 年 47 巻 2 号 p. 277-281
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     Bankart修復(ABR)後の関節窩表面積(表面積)の経時的変化を3DCTで評価し,関節窩面上アンカー設置との関連について調査した.肩関節前方不安定症に対してABRを行い,術翌日,術後6か月,最終診察時(術後平均26.2ヶ月)に表面積を計測できた50肩を対象とした.術翌日3DCTでアンカー孔を結ぶ線と関節窩前縁で囲まれた面積が関節窩表面積に占める割合をO値とした.O値は平均11.0%であった.術翌日に対する術後6ヶ月時の表面積減少率は平均8.8%,O値との相関係数は0.44であり,術後6ヶ月時表面積減少は関節窩面上にアンカーを設置することと相関を認めた.最終診察時までに23肩(46%)で表面積5%以上の回復を認め,術翌日に対する最終診察時の表面積減少率は平均2.5%,O値との相関係数は0.16であった.この表面積の減少は術後6ヶ月までに生じ,時間経過とともに回復する可能性が示唆された.
骨折
  • 白石 勝範, 曽我 孝, 森山 翔太, 望月 由
    2023 年 47 巻 2 号 p. 282-285
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     骨粗鬆症を有する上腕骨近位端骨折に対し観血的骨接合術(ORIF)を施行した11肩を対象とし,術後にテリパラチド(PTH)製剤を使用したT群7肩と,術後にPTH製剤を使用しなかったN群4肩の2群に分けた.T群は術中に人工骨を7肩,ヒト脱灰骨気質使用吸収性骨再生用材料を2肩,術後はPTH製剤を7肩,超音波骨折治療器を3肩に使用した.検討項目は,骨癒合期間,屈曲,外旋,内旋の自動肩関節可動域(aROM),外転,外旋,内旋の肩関節周囲筋最大等尺性収縮筋力(MCV),JOAスコア,また術直後と最終観察時のHumeral head height(HHH)とNeck shaft angle(NSA),術後合併症とした.全例で骨癒合を認めた.両群間の比較では,骨癒合期間がN群と比較しT群で有意に長かったが,その他の項目は有意差を認めなかった.骨粗鬆症を有する上腕骨近位端骨折術後に使用したPTH製剤は,術後成績を改善しなかった.
  • 中邑 祥博
    2023 年 47 巻 2 号 p. 286-289
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨近位端骨折において,ロッキングプレート固定後の合併症としてスクリューの骨頭穿破がある.上腕骨近位端骨折に対してロッキングプレート固定を行った88例88肩(平均年齢73.5歳,男性15肩,女性73肩)を対象として,術後の骨頭壊死,スクリュー骨頭穿破,矯正損失を調査した.術後骨頭壊死は4.5%で,術後スクリュー骨頭穿破は12.5%であった.多変量ロジスティック回帰分析において,術後のスクリュー骨頭穿破へ影響を与える因子として骨頭壊死が抽出され,年齢,性別,Neer分類,5°以上の術後内反転位は有意でなかった.術後のスクリュー骨頭穿破を認めた症例は矯正損失を伴うものは少なく,骨頭壊死症例を除けば突出は軽度であった.一方で,術後内反転位を認めた症例はスクリューが短く骨頭穿破は少なかった.術後矯正損失の予防の観点からするとロッキングスクリューが軟骨下骨に入る十分な長さであることが重要と考える.
  • 武内 優子, 小嶋 秀明, 濱田 恭, 酒井 忠博
    2023 年 47 巻 2 号 p. 290-293
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     近年,リバース型人工肩関節全置換術(RTSA)の適応は拡大している.変性疾患に対する良好な術後成績は数多く報告されているが,上腕骨近位端骨折に対するRTSAの術後成績については一定の見解が得られていない.当院でRTSAを施行し,術後1年以上の経過観察が可能であった15例17肩を対象とした.術後経過中に手術側の頚椎ヘルニアを発症し,リハビリテーションが一時不可能となった広範囲腱板断裂1肩を除外した.術前診断を元に変性疾患群10肩(腱板断裂性関節症4肩,広範囲腱板断裂3肩,変形性肩関節症3肩),骨折群6肩(上腕骨近位端骨折6肩)に分類し,性別,手術時年齢,身長について調査した.臨床成績の評価項目は,手術時間,術後合併症,術後入院期間,術後1年時の自動可動域および日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOAスコア)とし,変性疾患群に対するRTSAを指標に骨折群に対するRTSAの術後成績について検討した.上腕骨近位端骨折に対するRTSAの術後成績は,変性疾患に対するRTSAの術後成績には劣るが,除痛やある程度の日常生活動作の改善には有用であるという結果を得た.
  • 志賀 研人, 西中 直也, 古屋 貫治, 磯崎 雄一, 田村 将希, 阿蘇 卓也, 井上 駿也, 稲垣 克記
    2023 年 47 巻 2 号 p. 294-298
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     65歳以上の高齢者の上腕骨近位端骨折(proximal humeral fracture以下PHF)の治療は従来,骨折観血的整復内固定術または人工骨頭置換術,保存療法であった.リバース型人工肩関節置換術(reverse total shoulder arthroplasty以下RTSA)が使用されるようになり,治療の選択肢が増えた.本研究の目的はPHFに対してRTSAを施行した症例の臨床成績を検討することである.対象は,2014年4月~2021年12月までに施行したRTSA 132肩のなかでPHFに関連する7例7肩とした.4-partのPHFが2肩,脱臼骨折が3肩,脱臼骨折に関節窩骨折を伴うものが2肩だった.NRS,JOAスコア,Constantスコア,関節可動域,単純X線における大結節の治癒の有無,関節窩骨折の治癒について検討した.臨床成績は優れており,可動域は屈曲平均130° ,外転平均130° と良好であった.大結節の治癒は7肩中2肩に,関節窩骨折の治癒を2肩中2肩に認めた.本研究の結果,腱板機能不全例,関節窩骨折例について特に従来治療と比較しRTSAが有効であると考えられた.
  • 秋本 浩二, 服部 史弥, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 西須 孝
    2023 年 47 巻 2 号 p. 299-303
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     上方プレート固定を施行され骨癒合後に抜釘を施行された鎖骨骨幹部骨折22例(男性17例,女性5例,平均受傷時年齢は39.3歳,平均経過観察期間は13.3か月)を対象に,抜釘後の再骨折の特徴とリスクについて検討した.抜釘後再骨折は4例(18.2%)に認めた.そのうち3例は抜釘から再骨折までの期間が2,30,65日と抜釘後早期に再骨折し,受傷機転はすべて日常生活の軽微な外力であった.早期再骨折例のうち2例はスクリューホールに骨折が生じプレートによる再固定が施行され,他の2例は初回と同部位に骨折が生じプレート固定と腸骨移植が施行された.再骨折群と非再骨折群の比較において,モノコーティカルスクリューホール(鎖骨短軸において骨辺縁で皮質骨のみを貫通したスクリューホール)の有無にのみ有意差を認め,モノコーティカルスクリューホールが抜釘後再骨折のリスクである可能性が示唆された(オッズ比: 36.0; 95%信頼区間: 1.6 - 836.1; p=0.04).
筋腱疾患
  • 石谷 栄一, 原田 伸哉
    2023 年 47 巻 2 号 p. 304-307
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     我々は多血小板血漿(PRP)療法をMRIにて腱内部の信号変化をみとめる腱板腱障害 (tendinopathy) 症例に施行した.PRP療法を施行し,半年の検診が行えた9例(男性4例,女性5例,平均年齢62.1歳)を調査対象とした.対照群はtendinopathy症例で初回MRIから1年未満に2回目の検査を施行した13例(男性8例,女性5例,平均年齢65.1歳)とした.MRI T2脂肪抑制画像による腱内部信号強度(C)を三角筋の信号強度(D)で除したC/D平均値の経時的変化を調査した.MRI 1回目と2回目のC/D値の変化は,PRP群では1.51→1.29(p < 0.05)と有意に低下するのに対して,対照群では1.35→1.62(p < 0.05)と有意に増加した.対照群のC/Dが増加して腱状態が悪化していることが示唆されるのに対して,PRP群はC/Dが減少して腱状態の悪化が抑制されることが示唆された.腱板断裂の原因に加齢に伴う腱変性が考えられており,PRP療法は腱版断裂の予防効果が示唆された.
  • 栫 博則, 海江田 英泰, 上釜 浩平, 前迫 真吾, 海江田 光祥, 藤井 康成, 谷口 昇
    2023 年 47 巻 2 号 p. 308-311
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     関節鏡下腱板修復術(以下ARCR)後再断裂例の臨床成績に影響を与える因子を検討した.大・広範囲腱板断裂に対しARCR施行後1年間以上経過観察可能であった108肩中,再断裂を認めた28肩を対象とした(再断裂率25.9%).28肩を再手術に至らなかった24肩(N群)と再手術に至った4肩(R群)の2群に分け比較した.検討項目は,手術時年齢,術前と最終観察時(R群は再手術直前)の自動屈曲角度,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOA スコア),断裂形態,また術前の肩峰骨頭間距離,腱板筋腹の脂肪浸潤とした.臨床所見ではJOAスコア,自動屈曲角度ともにN群がR群に比べ,最終観察時に有意に高値を示した.画像所見ではN群において断裂の前後径が術前よりも有意に縮小しており,またN群はR群に比べ断裂の前後径の縮小量が有意に大きかった.再断裂をきたしても前後径が拡大しない修復が重要である可能性が示唆された.
  • 早川 敬
    2023 年 47 巻 2 号 p. 312-315
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術(ARCR)で使用する骨置換性アンカーは約2年で骨置換されるとされるが,当院での術後2年時のMRIでは完全に骨置換されたものは皆無であった.そこで,骨置換性アンカーを用いてARCRを行ったアンカーの骨置換を術後5年時のMRIで評価した.骨置換性アンカーを使用し,術後2年と5年時にMRIが撮像できた21例におけるアンカー38個を対象とした.骨置換の程度はHaneveldらの分類を用いて評価した.検討項目は骨置換の程度,骨置換の進行度とした.骨置換の程度は2年時と比較し5年時で有意に進んでいたが,5年時で完全に骨に置換されたものは2.6%であった.骨置換の進行度は,有意に2~5年時で大きかった.骨置換性アンカーは2年ではほとんど置換は進まず,2年以降で進行していた.5年時には置換は大分進むが,ほとんどのアンカーが完全には置換されていなかった.骨置換は確実に進む一方で,5年以上の期間を要する場合が多いと認識すべきである.
  • 四本 忠彦, 神田 拓郎, 中村 英資, 大久保 敦, 中島 駿
    2023 年 47 巻 2 号 p. 316-319
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     一次修復不能な広範囲腱板断裂に対して行った棘下筋回転移行術の有用性と問題点を報告する.棘下筋回転移行術を行い1年以上経過観察できた患者16名16肩(平均年齢74.4歳,平均経過観察期間38.5か月)を対象とした.術前GFDIは平均3.0であった.全例,合併症や再断裂を認めなかった.JOA スコア(術前)は86.7点(56.0点)に有意に改善した.ROM(術前)は前方挙上148.0°(108.7°),外旋30.7°(22.3°),内旋L1(L2)へ,MMT(術前)は前方挙上4(3),外旋3(3),内旋5(4)へ,外旋以外はそれぞれ有意に改善した.AHI,棘上筋断面積は術後有意に増大した.棘下筋回転移行術は,高度な脂肪浸潤を有する症例にも可能で,棘上筋延長再建の効果を有し,特に前方挙上の機能回復が期待できる.外旋機能の回復は期待できず,他の方法を考慮すべきである.
  • 夏 恒治, 原田 洋平, 井上 公博
    2023 年 47 巻 2 号 p. 320-325
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術クリニカルパス(以下CP)を導入したので,導入前後の在院日数と導入に伴う有害事象の発生について調査した.
     鏡視下腱板修復術を行ない術後1年以上経過観察が可能であった75例を対象とした.CP導入前が55例(BCP群),導入後が20例(ACP群)であった.
     年齢,性別,患側,断裂サイズ,使用アンカー数,修復方法,手術時間,在院日数,退院経路,術後1年でのMRIを調査し,CP導入前後での術後在院日数,退院経路,再断裂率,CP導入による有害事象の発生がないか評価した.
     全ての調査項目において両群間で有意差はなかった.BCP群で在院日数は平均15.8日,最頻値16日であり,ACP群では平均17.0日,最頻値15日であったが,BCP群では在院日数が分散傾向にあった.
     CP導入前後で平均在院日数,退院経路,再断裂,再手術などに関しても有意な差はなく,CP導入による有害事象はなかった.
  • 石垣 範雄, 畑 幸彦
    2023 年 47 巻 2 号 p. 326-329
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     術後の腱板の状態と上腕骨骨密度の関係を調査し,断裂サイズや修復腱板の状態が上腕骨骨密度に及ぼす影響を検討した.片側の腱板断裂に手術を施行した575肩を対象とし,断裂サイズによって小・中断裂のS群431肩と大・広範囲断裂のL群144肩の2群に分け,さらにS群とL群をそれぞれ術後1年時MRIにて菅谷分類TypeI~IIIとTypeIV,Vに分けて,4群それぞれの臨床所見と上腕骨頭,大結節,上腕骨頚部の骨密度を術前と術後1年時の間で比較検討した.4群ともCuff integrityの良否に関わらず臨床所見は術後有意に改善していた.上腕骨骨密度は,S群ではCuff integrityの良否に関わらずすべての部位において術前後で有意な変化を認めず, L群の上腕骨頭はCuff integrityの良否に関わらず有意に低下していた.腱板大・広範囲断裂症例では,腱板修復後に上腕骨頭の骨密度に注意が必要であると思われた.
  • 山本 譲, 古賀 龍二, 船越 忠直, 草野 寛, 下河邊 久雄, 宮本 梓, 村山 俊樹
    2023 年 47 巻 2 号 p. 330-335
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     第47,48回の本学会で報告した上腕二頭筋長頭腱(以下LHB)による鏡視下上方関節包再建術(以下ASCR,以下L群)と鏡視下腱板修復術(以下C群)の治療成績を比較した.症例は腱板大・広範囲腱板断裂に対して手術を行い術後2年以上経過観察可能であったL群23肩,C群34肩であった.L群の術式はLHBを引き出し大結節前内側部と後内側部に固定し,可能な限り腱板を修復した.JOAスコアはL群が術前平均71.4点から術後平均93.2点に,C群が術前平均69.6点から術後平均92.5点に有意に改善した.術後2年時MRIはL群が菅谷分類Type4とType5が1例ずつで,C群ではType4が3例,Type5が2例であった.Type4以上を再断裂とすると再断裂率はL群が8.7%,C群が14.7%であった.LHBが断裂した例は認めなかった.腱板大・広範囲断裂に対するLHBによるASCRの治療成績は良好であった.
  • 竹下 歩, 小西池 泰三
    2023 年 47 巻 2 号 p. 336-338
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     一次修復困難な肩甲下筋腱断裂に対して可及的な肩甲下筋腱と前方関節包の修復に追加して小胸筋移行術を行った症例において,術後MRIで小胸筋の生着率と,小胸筋の最大前後径の術後変化を調査した.対象は17例(男性11例,女性6例),17肩であり,手術時年齢は平均68歳,経過観察期間は平均2.3年,Lafosse分類はType 3が12肩,Type 4が5肩であった.MRI評価は上腕骨内側の解剖頚レベルでのT2強調画像axial像で行った.全体では小胸筋生着率は88%であったが,Type 3では100%,type 4では60%であった.小胸筋が生着した15肩の筋の前後径は,術前は8.5 ± 1.7(SD)mm,術後3か月時では7.1 ± 2.3(SD)mm,最終調査時では6.1 ± 2.6(SD)mmと減少を認めた.小胸筋移行術の問題点として小胸筋の筋量が少ないことが挙げられ,小胸筋が特にtype 4におけるforce couplesを再獲得する力源として適切かどうか更なる検討が必要と考える.
  • 夏 恒治, 井上 公博
    2023 年 47 巻 2 号 p. 339-342
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     高齢者肩関節脱臼の整復困難例4例を経験した.1例目は上腕二頭筋長頭腱の介在で切腱術を行なった.2例目は断裂した前方関節唇の介在が原因で鏡視下に関節唇修復とHill-Sachs Remplissageを行なった.3例目は関節唇が関節窩から広範囲に剥離して前下方に偏位していたために骨頭の整復位を保持できなかった症例で鏡視下に関節唇修復を行なった.4例目は陳旧性亜脱臼で関節窩前方の骨欠損がありリバース型人工肩関節置換術を行なった.2例目は骨頭軟骨も広範囲に損傷されており,術後に変形性関節症性変化が進行し成績不良だった.高齢者の場合は人工関節置換術も初回手術の選択肢として考えておく必要があった.
  • 杉森 一仁, 須澤 俊
    2023 年 47 巻 2 号 p. 343-348
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     上腕二頭筋長頭腱病変が肩関節鏡視下腱板修復術の臨床成績に及ぼす影響について検討した.鏡視下腱板修復術を行った155肩(男性103肩,女性53肩)を対象とし,関節鏡視において長頭腱断裂の程度,長頭腱の肥大,hourglass bicepsについて調べた.これらの所見と術後のJOAスコア,再断裂の有無について検討した.長頭腱断裂がないのは79肩,50%未満の断裂を46肩,50%以上の断裂を12肩,完全断裂を18肩に認めた.長頭腱の肥大は57肩に,hourglass bicepsは8肩に認めた.長頭腱断裂例において腱板断裂サイズが大きい例を多く認めた.腱板大断裂群について,長頭腱の完全断裂群の術後12ケ月におけるJOAの機能スコアと可動域スコアが不全断裂群および断裂がない群のJOAの機能スコアと可動域スコアに比べ有意に不良であった.50%以上の長頭腱断裂例において有意に術後の腱板再断裂を多く認めた.
  • 大前 博路
    2023 年 47 巻 2 号 p. 349-353
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     当科では腱板断裂に対してsingle-row法を主に行っており,価格が従来の糸と同等のテープ状の糸の付いたスーチャーアンカーを使用してきた.テープ2本付きスーチャーアンカー2本でsingle-row法を行った鏡視下腱板修復23肩の術後成績を調査した.臨床成績(術前/術後1年)は,肩自動可動域:屈曲(114 ± 37/142 ± 12度),外転(117 ± 44/151 ± 19度),外旋(56 ± 21/60 ± 20度),内旋(Constantらの方法により数値化:6.7 ± 1.6/7.1 ± 1.3)であり,患者立脚肩関節評価法Shoulder 36 V.1.3の各ドメインは疼痛(2.8 ± 0.8/3.8 ± 0.4),可動域(2.8 ± 0.8/3.8 ± 0.3),筋力(2.1 ± 1.0/3.6 ± 0.6),健康感(2.9 ± 0.7/3.8 ± 0.2),日常生活動作(2.7 ± 0.9/3.8 ± 0.3),スポーツ能力(1.6 ± 1.1/3.2 ± 0.8)であった.外旋と内旋以外は有意に改善していた.術後1年時のMRI T2強調像では3肩(13%)に再断裂を認め,15肩(65%)ではアンカー刺入部より外側にも腱板と連続する低信号領域を認めた.
  • 井浦 国生, 石原 康平, 矢野 良平
    2023 年 47 巻 2 号 p. 354-356
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     一次修復困難な腱板断裂に対し棘下筋回転移行術(RIT)もしくはDebeyre-Patte 変法(DP)を行なった症例の術後成績について検討した.症例はRIT6例とDP4例で,大断裂に対してARCRを施行した18例を対象群とした.平均年齢が対照群が64 ± 8.2歳,RIT群が70.8 ± 1.2歳,DP群が61.5 ± 9.7歳であった.画像評価として,腱板断裂のサイズ,断端の厚み,術前のGFDI,術後のMRIで再断裂率(Sugaya TypeIV, V)率,また術前後の可動域とJOAスコアを検討した.腱板の断裂幅,断端の厚み,術前後の可動域,JOAスコアに差を3群間で差を認めなかった.GFDIはRIT群とDP群でで対照群に比べ有意に萎縮が高度であった.再断裂率はRIT群で16%,DP群25%,対照群で27.7%であった.
  • 幸田 仁志, 甲斐 義浩, 来田 宣幸, 三浦 雄一郎, 福島 秀晃, 近藤 寛美, 竹島 稔, 森原 徹
    2023 年 47 巻 2 号 p. 357-359
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     本研究では,地域在住高齢者における腱板断裂の発生が健康関連QOLに及ぼす影響を縦断的に調査した.対象者は,地域の体力測定会に継続して参加した高齢者のうち,初年度に腱板断裂が認められなかった91名とした.1年後の測定会において,断裂が認められた群と認められなかった群に対象者を分類した.腱板断裂の診断には,超音波画像診断装置を用いた.健康関連QOLの評価にはSF-8を使用し,健康の8領域,および身体的サマリースコアと精神的サマリースコアを解析に用いた.統計解析には,腱板断裂の発生の有無と評価年度の2要因による反復測定分散分析を用いた.1年後に腱板断裂を生じた者は,91名中24名(26.4%)であり,うち動作時痛を有する者は3名であった.統計解析の結果,健康の8領域,身体的サマリースコア,精神的サマリースコアのいずれの項目にも有意な交互作用は認められなかった.これらの知見より,腱板断裂を生じても,自覚症状がなければ健康関連QOLは維持される可能性が示された.
  • 岩下 哲, 橋口 宏, 大久保 敦, 若宮 みあり
    2023 年 47 巻 2 号 p. 360-363
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術例のうち術後再断裂を認めない症例の成績不良因子を検討した.対象は術後再断裂を認めなかった674肩とした.術後JOAscoreが80点未満を不良群,80点以上を良好群に分け,術後成績を低下させるリスク因子に関して多重ロジスティック解析を用いて検討した.検討因子として,年齢,性別,罹病期間,外傷歴,糖尿病,断裂サイズ,肩甲下筋腱断裂の有無,棘下筋腱断裂の有無,拘縮,delamination,上腕二頭筋腱損傷を検討した.多変量解析にて非外傷例,男性,肩甲下筋腱断裂あるいは棘下筋腱断裂,上腕二頭筋腱損傷を認める症例で有意に成績の低下を認めた.術後再断裂非合併例において非外傷例,男性,肩甲下筋腱断裂あるいは棘下筋腱断裂を含む断裂,上腕二頭筋腱損傷が術後成績に影響することがわかった.
  • 廣瀨 聰明, 芝山 雄二, 杉 憲, 水島 衣美, 冨居 りら, 渡部 裕人, 伊藤 恭子, 山川 花菜子, 岡村 健司
    2023 年 47 巻 2 号 p. 364-367
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     拘縮を有する腱板断裂患者に対して手術時に麻酔下徒手関節授動術(MUA)を行った後,関節鏡視で関節内所見を評価して,拘縮の方向とMUAの際に轢音を聴取した肢位,損傷した関節内組織の関連を評価した.対象は腱板断裂に対して鏡視下腱板修復術を施行した患者で,手術時麻酔下の徒手検査で拘縮を認めてMUAを行い,少なくとも一つの肢位で轢音を聴取して可動域の改善を認めた24例24肩である.全例が屈曲拘縮を含む3方向以上の拘縮を有する症例で,MUAにより外転拘縮を認めなかった1肩を除いて全例でAIGHL損傷が起こっていた.しかし,下垂位外旋拘縮を有する症例にMUAを行って可動域が改善されても関節包やSGHL,MGHLといった前上方の関節内組織に損傷が起こっていない症例も認められた.これは屈曲拘縮と外転拘縮を有している症例ではAIGHLが大きな影響を与えていること,また下垂位外旋拘縮が改善する際には必ずしも前上方の関節内組織の損傷が起こるわけではなく,前上方の関節内組織が引き延ばされた可能性や,前上方の関節内組織以外に起こった損傷により下垂位外旋可動域が改善した可能性が考えられた.
  • 芝山 雄二, 廣瀬 聰明, 杉 憲, 水島 衣美, 渡部 裕人, 冨居 りら
    2023 年 47 巻 2 号 p. 368-371
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     我々は放射状MRIから算出した術前の断裂面積6.3cm2以上が再断裂の危険因子と報告し,その場合は棘下筋回転移行術を追加することとした.本研究では断裂面積6.3cm2以上の症例に対する棘下筋回転移行術の短期成績を報告する.対象は1年以上経過観察可能であった10例.男8例,女2例,平均年齢64.6歳,平均観察期間は18.0ヶ月であった.最終観察時の菅谷分類はTypeIが5例,TypeIIIが3例,TypeVが2例であり再断裂率は20%であった.JOA scoreは術前55.5 ± 11.7(SD)点から術後91.2 ± 3.5(SD)点,ASES scoreは術前35.6 ± 13.3(SD)点から術後88.5 ± 6.6(SD)点へ有意に改善した.平均ROMは挙上が術前91 ± 44(SD)度から術後156 ± 15(SD)度,外旋が術前41 ± 14(SD)度から術後51 ± 10(SD)度に改善した.棘下筋回転移行術は有用な術式と考えられた.
  • 喜友名 翼, 高橋 憲正, 松木 圭介, 佐々木 裕, 森岡 健, 上田 祐輔, 星加 昭太, 濱田 博成, 松葉 友幸, 菅谷 啓之
    2023 年 47 巻 2 号 p. 372-376
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     一次修復不能な広範囲断裂例のうち,高齢で可動域が保たれた症例に棘下筋回転移行術を施行した.1年以上経過観察できた患者10例(平均年齢72歳,術後経過観察期間は平均28.9か月)の短期成績を報告する.
     術前MRIでは後上方腱板の大~広範囲断裂を認め,Goutallier分類では棘上筋stage3-4,棘下筋stage2-4であり,肩甲下筋断裂を7例に認めた.平均のASESスコア(術前)は術後65点(41点)へ,Constantスコアは術後62点(50点)へ有意に改善した.術後可動域(術前)は屈曲が152°(139° ),内旋はTh12(L1)と術前後で有意差は認めず,下垂位外旋は27°(38° )と有意な低下を認めた.術後の再断裂率は30.0%であった.棘下筋回転移行術は,高齢で偽性麻痺のない一次修復不能な腱板断裂症例に有用と考えられた.
  • 野口 裕介, 三幡 輝久, 長谷川 彰彦, 内田 明宏, 竹田 敦
    2023 年 47 巻 2 号 p. 377-380
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     肩腱板断裂において肩甲下筋腱断裂を伴う症例は多いが,肩甲下筋腱単独断裂は稀である.近年,肩甲下筋腱単独断裂に対する鏡視下手術の治療成績の報告は散見されるが,術前後に肩甲下筋の筋力が改善するか否かは明らかでない.今回我々は肩甲下筋腱単独断裂に対して鏡視下腱板修復術を行い,術前後の筋力を定量評価したので報告する.当院で肩甲下筋腱単独断裂に対して鏡視下腱板修復術を施行した4例5肩(男性4肩,女性1肩,手術時平均年齢67.8歳,術後経過観察期間平均14.6か月)を対象とした.手術前後の臨床成績,術後1年のMRIでの腱板修復状態に加えて,Lift off test肢位での肩内旋筋力を調査した.JOAスコア,ASESスコアは術後有意に改善し,再断裂は認めなかった.また内旋筋力は統計学的有意に増加した.肩甲下筋腱断裂が良好に修復されることにより,肩内旋筋力は有意に増加することが示された.
  • 竹原 元司, 馬谷 直樹
    2023 年 47 巻 2 号 p. 381-384
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     上腕二頭筋長頭腱(LHBT)損傷への腱固定術や切離術は,手術時LHBT所見で判断されるが,その適応は術者や施設によって異なっている.LHBT損傷は,肩峰下インピンジメントやLHBT不安定性,骨頭求心性低下で生じるため,LHBT周囲組織の随伴病変が腱処置決定の判断の一助になる可能性があり,調査した.LHBT部分断裂を認めた15肩を対象に,LHBTは発赤,肥厚や扁平化,不安定性(ramp test),LHBT周囲組織はSGHL/SSc舌部複合体(anterior pulley)損傷,棘上筋前方線維(posterior pulley)損傷,SLAP損傷,LHBT直下の関節軟骨損傷を評価した.その結果,LHBTの発赤10肩,肥厚や扁平化15肩,不安定性11肩を認め,anterior pulley損傷15肩,posterior pulley損傷11肩,SLAP損傷15肩,LHBT直下の関節軟骨損傷13肩を認めた.LHBT周囲組織の随伴病変は,LHBT部分断裂が軽度より中等度や重度の方が多く認めた.腱処置決定の判断は,LHBT自身とともにその周囲組織への評価が有効である可能性がある.
変性疾患
  • 寺谷 威
    2023 年 47 巻 2 号 p. 385-389
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     当院にてリバース型人工肩関節置換術(RSA)を施行し,術後1年以上経過観察可能であった33肩を対象とし,術後短期成績と術後合併症について調査した.JOAスコアは術前平均30.5点が,最終経過観察時で平均85.0点と有意に改善した.自動前方挙上および外転可動域は術前平均58.1度,52.2度が最終経過観察時平均133.8度,121.8度と有意に改善した.自動下垂位外旋および結帯内旋可動域は術後有意な改善はみられなかった.術後合併症は上腕骨近位端骨折と肩峰疲労骨折をそれぞれ1肩,scapula notchを3肩に認めたが,いずれも臨床的には問題なかった.また神経障害として尺骨神経領域のしびれを1肩に認めた.当院におけるRSAの術後短期成績は合併症を認めたものの,JOAスコア,自動前方挙上および外転可動域は術後有意に改善を認め概ね良好であった.しかしながら回旋可動域の有意な改善は得られなかったことから,今後回旋機能改善のための追加処置や工夫が必要と思われた.
その他
  • 新宮 恵, 村 成幸, 大石 隆太, 永井 惇, 櫻田 香
    2023 年 47 巻 2 号 p. 390-394
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,術前の経口飲水量と体組成成分がビーチチェア位前後の血圧変動に影響を与えるかどうかを明らかにすることである.
     2021年1~12月に全身麻酔下,ビーチチェア位で鏡視下腱板修復術を受けた平均年齢65.7(36~89)歳の100例を対象とした.飲水内容は自己記入式調査とし,入院時と手術室入室時に生体電気インピーダンス法により,体水分量,体水分率,筋肉量,脂肪量,体脂肪率を計測した.血圧は動脈ラインを挿入し動脈圧を測定し,平均動脈圧(MAP)を求めた.手術当日の飲水量500mLを基準に2群に分け,体組成成分との関係について統計学的に解析した.
     飲水量500mL以上群、500mL未満群ともに,ビーチチェア位直後にMAPは有意に低下した.ビーチチェア位直後のMAPは,500mL以上群64.9(SD15.0)mmHgに比べ500mL未満群58.2(SD13.2)mmHgで,500mL未満群で有意に低値であった.手術室入室時の体水分量および体水分率に有意差は認めなかった.飲水量500mL以上群では500mL未満群に比べ,ビーチチェア位直後のMAPの低下が起こりにくく,術前の飲水量の重要性が示唆された.
  • 黒瀬 健太, 間中 智哉, 清水 勇人
    2023 年 47 巻 2 号 p. 395-398
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     凍結肩に対して,保存療法は良好な成績と報告がある.一方で,保存療法を3-6か月行っても抵抗する場合もあるが,理学療法開始前の時点で保存療法に抵抗性があるか判断基準に一定の見解は得られていない.そこで今回,凍結肩に対して,保存療法を行い改善した24例24肩(以下,改善群)と保存療法を行ったが抵抗性があった24例24肩(以下,抵抗群)を対象として,理学療法開始前の初期自動可動域について調査した.自動可動域は,屈曲・外転・水平内転・下垂位外旋・内旋を測定した.改善群と抵抗群で初期自動可動域を比較すると,改善群では,97.9 ± 7.5,82.5 ± 10.7,106 ± 11.0,16 ± 9.5,殿部であった.抵抗群では,93.8 ± 8.2,79.0 ± 7.8,91.0 ± 5.2,8.1 ± 5.6,殿部であった.水平内転,下垂位外旋は,抵抗群で有意に低下していた.凍結肩において,初期自動可動域で水平内転,下垂位外旋が重度に制限されている場合は,保存療法に抵抗する可能性が示唆された.
治療法
  • 吉岡 千佳, 末永 直樹, 大泉 尚美, 山根 慎太郎, 松橋 智弥, 久田 幸由, 朴木 啓悟, 川真田 純
    2023 年 47 巻 2 号 p. 399-403
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     当院における人工肩関節置換術後の再手術の原因,再手術方法,術後成績を調査した.2007年~2022年2月にインプラントの処置を伴う再手術を行った32肩を対象とした.人工骨頭置換術(HHR)13肩の再手術はHHR 2肩,解剖学的人工肩関節置換術(TSA)7肩,反転型人工肩関節置換術(RSA)4肩で,原因はグレノイドウェアが77%だった.TSA 15肩の再手術はHHR 7肩,TSA 7肩,RSA1肩で,原因はステム,グレノイドコンポーネントのルースニングが80%だった.RSA 4肩の再手術はベースプレートのルースニング2肩にHHRとRSAが各1肩,脱臼2肩に対しトレイ,ライナー交換を行った.全例疼痛は改善し,HHR後再手術はRSAでTSAより屈曲が有意に改善していた.TSA後再手術は,HHRは外旋以外はTSAと同様に改善していたが,今後グレノイドの状態について注意深い経過観察を要する.
  • 佐藤 英樹
    2023 年 47 巻 2 号 p. 404-406
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     リバース型人工肩関節置換術術後の活動性再獲得についての報告は本邦では少ない.本研究の目的は術後に農作業への復帰を希望した患者に対するリバース型人工肩関節置換術の臨床成績と復帰状況を調査することである.対象は5例5肩で,原疾患は全例自働挙上が90° 以下の偽性麻痺を呈する腱板広範囲断裂であった.術前と術後2年の比較では,自動屈曲が中央値50.0° から135.0° ,自動外旋が20.0° から45.0° ,自動内旋がTh12のまま不変で,JOAスコアが45.0点から92.5点で,屈曲可動域とJOAスコアで有意な改善を認めた.農作業には全例が復帰し,復帰時期は平均4.0カ月(3カ月~9カ月)であった.術後2年では脊椎圧迫骨折で一時的に中断していた1例を除き農作業への従事は可能であった.本研究の結果からリバース型人工肩関節置換術は農作業への復帰を希望する腱板広範囲断裂患者に対して治療選択肢としてなり得る.
  • 神田 拓郎, 木田 圭重, 祐成 毅, 森原 徹, 古川 龍平, 高辻 謙太, 高橋 謙治
    2023 年 47 巻 2 号 p. 407-411
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     当院におけるリバース型人工肩関節全置換術(RSA)の短期成績を報告する.対象はRSA施行後1年以上経過観察可能であった21例21肩で,平均年齢は74.2(65-86)歳,平均術後経過観察期間は51.8(17-92)か月であった.検討項目は術前後の肩関節自動可動域,外転筋力,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOA score),Constant score,術中および術後の合併症とした.可動域は屈曲,外転,外旋が有意に改善した.外転筋力,JOA score,Constant scoreも有意に改善した.術中合併症はなく,術後は一過性の腕神経叢麻痺を1肩,グレノスフィアのゆるみを2肩で認め,合併症率は14%であった.短期成績は比較的良好であり,今後も長期的な経過観察を要すると考える.
  • 日山 鐘浩, 望月 智之
    2023 年 47 巻 2 号 p. 412-416
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     当院にて腱板広範囲断裂,上腕骨近位部骨折に対してRSAを施行された21例22肩を対象として術後臨床成績を比較した.上腕骨近位部骨折例が13肩, 腱板広範囲断裂例が9肩で,最終経過観察時の臨床成績は二群間で有意差を認めなかった.上腕骨近位部骨折群をさらに結節部の骨癒合群と非癒合群に分類しその臨床成績を比較したところ,屈曲,外転可動域は骨癒合群で大きい傾向であった.
  • 山田 有徳, 高橋 憲正, 松木 圭介, 佐々木 裕, 上田 祐輔, 星加 昭太, 濱田 博成, 松葉 友幸, 上條 秀樹, 玉置 大恵, ...
    2023 年 47 巻 2 号 p. 417-421
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
    鏡視下腱板修復に併用した上腕二頭筋長頭腱固定の手技による違いは明らかでない.鏡視下腱板修復術に併せてスーチャーアンカーまたはインターフェアレンススクリューを用いて上腕二頭筋長頭腱固定を実施した症例をアンカー群とスクリュー群に分類し,臨床所見を術前と術後1年時に調査比較した.対象は77例77肩で,アンカー群35肩,スクリュー群42肩であった.疼痛 ,臨床スコア(Constant score, UCLA score)は両群とも術前後で有意に改善し,2群間で有意差はなかった.肘屈曲筋力の患健比は,両群とも術前後で有意に改善し,2群間で有意差はなかった.Popeye signはアンカー群にのみ1例認めた.肩関節機能,Popeye signに固定法による差はなく,どちらの手技も術後成績は良好であった.
症例報告
  • 武井 良太, 島田 憲明, 井上 純一, 税田 和夫
    2023 年 47 巻 2 号 p. 422-425
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     高齢者の肩関節脱臼骨折に上腕人工骨頭置換術(以下HA)を行ったが,術後脱臼を生じた症例に対し,リバース型人工肩関節置換術(以下RSA)を行ったので報告する.
     84歳,女性.転倒し受傷.前医で上腕骨近位端4part脱臼骨折の診断で,HAが行われたが,術後に脱臼を生じた.当院へ紹介となり,RSAを行った.術中結節骨片は修復困難なため除去した.術後1年で再脱臼なく,自動屈曲95° ,下垂位外旋15° を獲得し,確実な除痛が得られた.HA後脱臼例のsalvage手術としてRSAは有効な手段であると思われた.
  • 渡邊 能, 菊川 和彦, 出家 正佳
    2023 年 47 巻 2 号 p. 426-429
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル 認証あり
     パーキンソン病(PD)は運動障害を呈する進行性の神経変性疾患で,手術成績の不良因子とされるが,PD患者に対するリバース型人工肩関節置換術(RTSA)の治療成績の報告は少ない.今回,PD患者に対するRTSAの治療成績を検討した.対象は術後2年以上経過観察できた4肩(男1肩,女3肩)で,手術時平均年齢は78.5歳,術後平均経過期間は49.0か月であった.平均可動域は屈曲,外転,外旋,内旋それぞれ術前33.8° ,47.5° ,11.3° ,L4以上が3例・L4未満が1例,が術後97.5° ,97.5° ,0° ,L4以上が2例・L4未満が2例となった.JOAスコアは術前平均46.3点が術後74.8点に改善した.疼痛は術前平均13.8点が術後25.0点となり,全例改善した.術後経過中に2肩で転倒時にインプラント末端で骨折を生じ,再手術(骨接合術)を行った.PD患者に対するRTSAは除痛には効果があったが,機能的な改善は十分でなかった.また,合併症として転倒による骨折があり,転倒予防にも介入する必要があると思われた.
症例報告
治療法
症例報告
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