肩関節
Online ISSN : 1881-6363
Print ISSN : 0910-4461
ISSN-L : 0910-4461
47 巻, 1 号
選択された号の論文の55件中1~50を表示しています
その他
  • 望月 智之, 菊川 憲志, 黒川 大介, 杉本 勝正, 高橋 憲正, 田中 誠人, 名越 充, 橋口 宏, 廣瀬 聰明
    2023 年 47 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     本アンケート調査は①適切な保険診療報酬の要求,②学術的なプロジェクト計画の資料作成,③肩関節手術の実態把握の目的にて行われた.2021年1月から12月の1年間に実施された肩関節手術を対象とし,日本肩関節学会員1631名に対してwebを用いてアンケート調査を行った.回答は1施設につき1部とした.1032施設に送付し194施設から回答があり,回収率は 18.8 %であった.総計24347件の手術のうち鏡視下手術が13387(55.0%)を占めた.リバース型人工肩関節置換術は1920件(7.9%)施行された.合併症発生率では外傷に対するリバース型人工関節置換術で9.6%と最も多く発生しており,血栓塞栓症(1.6%),上腕骨骨折(1.3%),肩峰・肩甲棘骨折(1.3%),インプラントの脱転(1.3%)の発生率が高い傾向であった.上記目的に加えて,本調査で得られた合併症発生率はインフォームドコンセント等に有用なデータとなると考えられた.今後アンケート回収率および正確性を向上させる対策が必要であると考えた.
基礎研究
  • 三浦 雄一郎, 福島 秀晃, 甲斐 義浩, 幸田 仁志, 木田 圭重, 森原 徹
    2023 年 47 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     我々は先行研究で側方リーチ時にScapulohumeral angle(SHA)と肩甲骨下方回旋の増加を明らかにした.今回,側方リーチ時の肩甲帯周囲筋の筋活動について検討した.健常9名9肩を対象とした.座位で肩外転90°位を基本肢位とし,10cm,20cm,30cmと側方リーチさせた.測定筋は僧帽筋上部,中部,下部,前鋸筋,三角筋中部,肩内転筋群とした.基本肢位での筋積分値で正規化した.分散分析後に多重比較検定を用い,危険率は5%未満とした.僧帽筋上部と中部は30cmが10cmと比較し有意に増加した(僧帽筋上部:p < 0.01,僧帽筋中部:p < 0.05).僧帽筋下部は有意差を認めなかった.前鋸筋と肩内転筋群は30cmが10cmと20cm,20cmが10cmと比較し有意に増加した(p < 0.01).三角筋中部は30cmが他より有意に増加した(p < 0.01).三角筋中部は先行研究で示されたSHAの増加に関与した可能性がある.前鋸筋はリーチ距離の増加に伴い筋活動が増加した.前鋸筋の作用は肩甲骨動態に一致しないことが示された.
  • 和田 満成, 松本 正知
    2023 年 47 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     肩関節運動で求心位が保たれることは重要で,我々は上腕骨頭が関節窩の中心点(GC)で接している状態をその一つと考えている.触診でGCを推測できれば運動療法で有用な情報となる.そこで,肩峰の前縁外側(ALA)と下角を結ぶ線(A-I line)がGC付近を通る.そして,ALAとGC,ALAと肩峰角の距離が近似するという仮説を立て検証した.対象は3DCT像で異常のない肩甲骨60肩とした.関節窩の正面像と側面像,ALAと肩峰角の距離が最長の像(肩峰像)を作成し,画像上で検者2名がALA,下角,肩峰角を示した.別の検者が正面像と側面像でGCを定め,A-I lineとGCの最短距離を計り1横指長と比較した.更に側面像でALAとGC,肩峰像で ALAと肩峰角の距離を計りこれらの差と1横指長を比較した.A-I lineとGCの距離は正面像で1.8 ± 2mm,側面像で0.7 ± 1.9mm,ALAとGCの距離とALAと肩峰角の距離の差は0.5 ± 2.4mmで,これらは1/2横指長を下回った.画像上は骨指標よりGCを推測できる可能性が示された.
  • 鈴木 加奈子, 上條 史子, 山口 光國, 西中 直也
    2023 年 47 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,結帯動作時の指椎間距離(母指先端と第7頚椎棘突起間の距離)に影響を及ぼす上肢,体幹の動きについて左右別に明らかにすることである.健常男性20名を対象に,端座位における左右での結帯動作を三次元動作解析装置で計測した.肩関節,肩甲骨,上部体幹角度,胸骨上端前方変位量を算出し,指椎間距離との相関を左右別に検討した.右結帯動作時の指椎間距離は胸骨上端前方変位量と(r=-0.55, p=0.012),左結帯動作時の指椎間距離は肩関節内旋角度と相関があり(r=-0.47, p=0.037),指椎間距離に影響を及ぼす因子は左右で相違があることが明らかになった.右結帯動作時の指椎間距離を評価する際には,胸骨上端前方変位にも着目することが有用になると考えられた.
診察・診断法
  • 月橋 一創, 古屋 貫治, 磯崎 雄一, 堀家 陽一, 岡田 浩希, 阿蘇 卓也, 髙橋 知之, 田村 将希, 尾﨑 尚代, 筒井 廣明, ...
    2023 年 47 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
    【はじめに】
     投球肩肘障害の手術方針を決める明確な手段は確立されていない.われわれはZero外旋テスト,Zeroリリーステストを用いたZero機能評価をもとに治療方針を決定した症例の手術施行の有無について報告する.
    【対象と方法】
     肩肘痛で受診し,Zero機能評価を行った37例を対象とした.平均年齢は17.1±5.4(SD)歳.当院での治療方針に沿って,手術群と保存加療群について代償運動の有無で2群間の検討を行った.
    【結果】
     初診時から33例にZero機能評価時に代償動作を認め,機能訓練で25例のZero機能が改善し,14例は投球復帰した. 復帰できず,画像評価で組織損傷を認めた9例が手術を要した.初診時からZero機能評価時に代償運動の無い4例は機能訓練で変化なく,全例で手術を要した.2群間では手術群で有意に代償動作なしが多かった(p=0.004).
    【結語】
     Zero機能評価で代償動作を認める症例は, 保存加療が有用であり.Zero機能不全がなく画像所見に異常があった症例は高率で手術となる.
検査
  • 髙橋 知之, 田村 将希, 野口 悠, 前田 卓哉, 阿蘇 卓也, 井上 駿也, 古山 駿平, 尾﨑 尚代, 磯﨑 雄一, 古屋 貫治, 西 ...
    2023 年 47 巻 1 号 p. 32-35
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     目的はリバース型人工肩関節全置換術(RTSA)後患者の肩甲上腕関節(GH)角を検討することである.術後2年経過時の最大挙上位の単純X線正面像から最大外転角を計測し,最大外転角が120° 以下を不良群,120° より大きいものを良好群とした.術後2年経過時のScapula-45撮影法による単純X線画像を用いてGH角を計測した.肩甲骨面上45° 外転位像と下垂位像でのGH角の差をGH変化量とした. 2群間で基本情報およびGH角,GH変化量の中央値の差の検定を行った.また,不良群,良好群それぞれで最大外転角とGH変化量の相関関係を検討した.有意水準はすべて5%とした.2群比較ではすべての検討項目に有意差はなかった.不良群では最大外転角とGH変化量に有意な正の相関関係を認めた.運動療法においてGH変化量を大きくすることができれば,不良群の患者の最大外転角が改善する可能性がある.
  • 平岡 祐, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 伊勢 昇平, 稲垣 健太, 服部 史弥
    2023 年 47 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     適切な上腕骨のdistalization・lateralizationはリバース型人工肩関節全置換術の良好な術後成績につながる.過去の報告では単純X線で距離や角度を計測しているが,臨床上撮影方向や肢位のばらつきが多い.本研究の目的は単純X線の撮影方向と肢位によるdistalization・lateralizationの計測値の変化を比較検討することである.肩に手術歴のない成人18人36肩を対象とし,撮影方向は単純X線AP像とtrue AP像,肢位は外転0,30,45° と変更した.distalizationは肩峰大結節距離とdistalization shoulder angle (DSA),lateralizationは関節窩大結節距離とlateralization shoulder angle (LSA)を計測した.AP像とtrue AP像のいずれも外転によりAGTD,GGTDは有意に短く,DSA,LSAは有意に小さくなった.AP像とtrue AP像の比較ではAGTD,GGTDは全ての肢位で有意差はなかったが,DSA,LSAは外転30,45° においてtrue AP像で有意に大きかった.distalization・lateralization全ての指標で外転肢位による測定誤差が大きく,単純X線での正確な評価のためには統一した撮影方向・肢位が重要であると考えられた.
  • 山下 大輔, 大石 隆幸, 目黒 智子, 野崎 太希, 田崎 篤
    2023 年 47 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,MRIを用いてLHB水腫の定量的計測結果から病的な水腫量を定義し,病的LHB水腫と肩関節疾患との関連を明らかにすることである.2019年7月から2020年12月の期間に肩痛の精査のために同一条件下で肩関節MRIを撮影した261肩(男性137肩,女性124肩,撮影時平均年齢59.4歳)を対象とした.MRIを用いて定量的にLHB水腫面積を評価することに加えて,肩関節の各種病態を評価した.また,肩関節外科医1名と筋骨格系領域を専門とする放射線科医1名で水腫量が生理的か病的であるかを直感的に判定した.その判定結果と水腫面積計測結果から病的水腫の面積閾値を算出し,水腫面積19mm2以上をLHB水腫ありと定義した.この定義にもとづきLHB水腫の有無で対象を2群に分け,多変量解析した結果,LHB水腫はLHB病変(OR: 3.50, p=0.003)と高齢(OR: 1.03, p=0.01)に有意な関連を認めた.MRI画像を用いた定量的評価の結果,LHB水腫はLHB病変および高齢と関連しており,LHB病変の診断の一助となる可能性が示唆された.
脱臼
  • 永井 宏和, 中島 亮, 松村 健一, 米田 真悟, 城内 泰造, 藤原 圭, 今井 晋二
    2023 年 47 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     新鮮肩鎖関節脱臼Rockwood type Vに対し烏口鎖骨靭帯(以下CCL)1重束再建+Neviaser変法(S群)およびCCL2重束+Neviaser変法(D群)を行った.報告の目的は両群間の手術成績を比較検討することである.対象は術後1年以上経過観察を行えた16例(男性14例,女性2例)で,平均手術時年齢は52歳であった.検討項目は術後臨床成績および画像評価とした.両群とも術後可動域,臨床成績は良好で,鳥口鎖骨間距離(以下CCD)は術後有意に改善した.最終経過観察時の可動域,JSS-ACJスコアは両群間で有意差を認めなかった.整復位は同等で,CCD,ΔhACD(鎖骨の後方偏位)は両群間に有意差を認めなかったが,矯正損失はD群が有意に低かった(S群:5.3mm,D群:1.6mm,p=0.0076).CCL再建を2重束にすることで安定性が増す可能性が考えられた.
  • 山内 翔, 武長 徹也, 土屋 篤志, 竹内 聡志, 井上 淳平, 大久保 徳雄, 植田 晋太郎, 大野 智也, 村上 英樹, 吉田 雅人
    2023 年 47 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下Bankart-Bristow変法における大胸筋ポータル(PMP)の有用性を検討した.Thiel法で固定された5体8肩に対し鏡視下Bankart-Bristow変法を施行した.烏口突起骨切り後PMP及び前下方ポータル(AIP)を作成し,肩甲骨関節窩の右肩時計表記4時かつ内側5mmに烏口突起骨片固定を想定したガイドピンを刺入した.X線透視装置にて肩甲上腕関節の正面像,軸位像を撮影し,肩甲骨関節窩面に対するガイドピン刺入角度(冠状面,水平面)をImageJを用いて計測した.冠状面刺入角度はPMP群19.5±14.9°,AIP群50.3±8.7°.水平面刺入角度はPMP群16.2±14.3°,AIP群39.5±4.9°といずれもPMP群で有意に低値であった(P<0.05).烏口突起骨片固定の際にPMPを用いることでAIPよりも関節窩面に対し平行に近い角度でスクリュー挿入が可能である.
  • 桐村 憲吾, 畑 佳秀
    2023 年 47 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     烏口突起移行術における正確な烏口突起設置は難しい.今回2018年4月~2022年1月までに術中C-アーム透視装置補助下での直視下Bristow変法に鏡視下バンカート修復術を施行した24肩で烏口突起位置を評価した.C-arm透視装置を術者の対側から挿入し,正面像と上下像にて関節窩を描出した状態でガイドワイヤー,スクリューを挿入した.術後CTで骨癒合,スクリュー挿入位置,関節窩に対するスクリュー角度(α角)を評価した.烏口突起は全例骨癒合し,水平断では烏口突起設置位置は内側設置が4肩(1.5mm:1肩,2mm:3肩),flush設置が20肩でα角は13.5±4.7°であった.矢状断では時計表記とし3:30が9肩,4:00が15肩でありS角は+0.6±5.3°であった.C-arm透視装置を併用した直視下Bristow変法においては烏口突起を適した位置に設置することが可能であった.
  • 田中 誠人, 廣瀨 毅人, 中井 秀和, 武 靖浩, 花井 洋人, 小谷 悠貴, 林田 賢治
    2023 年 47 巻 1 号 p. 62-64
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     高校生以下に対して烏口突起移行術を施行した症例の術後成績および競技の継続についての調査報告は少ない.中学か高校在学中に肩前方不安定症に対し烏口突起移行術を施行し,術後2年以上経過観察可能であったラグビー選手73例79肩(男性71例77肩,女性2例2肩,手術時平均年齢16.0歳(13-18歳))について調査した.臨床成績はJSS-SISとRoweスコア,満足度を調査し,競技復帰,競技継続および再発について検討した.術後平均観察期間は52.8ヶ月(24-100ヶ月)で,JSS-SISとRoweスコアは術前後でそれぞれ51.1→95.9,34.3→90.3と改善し,満足度は96.2%(79-100)であった.術後烏口突起骨折を生じた1肩が再亜脱臼のため再手術を行った.大学まで競技を継続していた選手が61肩(77.2%)であった.烏口突起移行術は中・高校生ラグビー選手においても高い競技復帰率および競技継続率が示され,満足度の高い手術方法であった.
  • 塩崎 浩之, 早川 敬, 北原 洋, 竹内 峻, 富山 泰行
    2023 年 47 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     比較的まれな外傷性初回肩関節後方脱臼の治療経験から手術適応を検討した.対象は13例で受傷時平均年齢52.3歳,受傷原因は転倒・転落8例,無理な水平内転動作で3例,その他2例であった.受傷当日に徒手整復を受けた11例中,1例は整復後も容易に再脱臼するため,もう1例は外固定中に再脱臼したため手術を要した.診断が遅れた2例は受傷後10日および6週で徒手整復に成功したが容易に再脱臼するため手術を要した.受傷後の経過観察期間は平均42か月であり,全例で再脱臼は認めなかった.画像上,手術を必要とした4例中3例はreverse Hill-Sachs lesion(rHSL)が骨頭関節面の25%以上と大きく,もう1例はrHSLは小さいが腱板広範囲断裂のために不安定性が強かった.保存治療9例中1例でrHSL25%以上の症例があったが再脱臼せずに良好な経過であった.手術適応は,画像所見よりも脱臼整復後の不安定性の程度により決定するのが望ましいと考えられた.
  • 水野 直子
    2023 年 47 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下Bankart修復術後の関節窩横径減少に対する報告が近年散見される.本研究では,DAFF法による鏡視下 Bankart修復術前後の関節窩横径を評価し,術後横径減少が生じるか否かを検討した.対象はDAFF法による鏡視下 Bankart修復術を施行した33肩(男性21肩,女性12肩),平均年齢22歳,術後平均経過観察期間は30か月であった.術式はTAFF法23肩,Knotless DAFF法10肩であった.関節窩横径の評価には,単純X線45度craniocaudal viewを用い,関節窩最大横径と鎖骨最狭部の前後径を計測し,前者を後者で除した数値を算出し,術前後で比較した.関節窩横径変化率の平均は-2.1%で,術前後で有意差を認めなかった.3%以上の横径減少を19肩(59.3%)に認めた.横径減少に関連する因子は明らかにならなかったが,骨性Bankart病変を有する症例では横径が増加し,関節窩骨欠損を有する症例,Knotless DAFF法を行った症例は横径減少を認めなかった.Knotless DAFF法では,関節窩の病態に関わらず,強固な固定が維持できる可能性が示唆された.
骨折
  • 池田 和大, 大西 信三, 渡部 大介, 照屋 翔太郎, 山崎 正志
    2023 年 47 巻 1 号 p. 74-78
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     高齢者における3 part,4 partの上腕骨近位端骨折に対する人工骨頭挿入術(HSA群: 12例)とリバース型人工肩関節全置換術(RSA群: 10例)の術後成績を比較した.年齢・性別・骨折型・術後平均観察期間は両群間に差を認めなかった.術後平均値(±SD)について,前方挙上可動域はHSA群: 78.3±25.5°,RSA群: 146.5±28.5°でRSA群がHSA群より有意に大きかった.外旋可動域はHSA群: 23.3±19.2°,RSA群: 22.5±19.3°で両群に有意差はなかった.結帯高位はHSA群: L3(L5-L3),RSA群: L5(L5-L2)で両群に有意差はなかった.結節の癒合率はHSA群: 66.7%(8/12例),RSA群: 90%(9/10例)で両群に差はなかった.術後JOA scoreはHSA群: 74.9±5.5点,RSA群: 91.2±5.6点でRSA群が有意に優れていた.上腕骨近位端骨折に対するRSAは良好かつ安定した可動域により術後成績がHSAよりも優れており,予備能の少ない高齢者においては初回から積極的に考慮してもよいと考える.
  • 島田 憲明, 井上 純一, 武井 良太, 税田 和夫
    2023 年 47 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     高齢者の上腕骨近位端3, 4パート骨折への上腕人工骨頭置換術とリバース人工肩関節置換術の治療成績を比較検討した.
     対象は上腕人工骨頭置換術17例(HA群)とリバース人工肩関節置換術(RSA群)12例である.両群を術後1年での疼痛スケール,JOAスコア,可動域,結節癒合率で比較した.結果はRSA群がJOAスコア,挙上可動域で優れていた.また結節癒合の有無で比較すると,HA群は非癒合群の成績が劣るが,RSA群では癒合の有無で成績の差はみられなかった.高齢者の同骨折の治療は,結節癒合や腱板機能の回復が困難である症例が多いと考えられ,上腕人工骨頭置換術よりリバース人工肩関節置換術が安定した成績が期待できると推測された.
  • 内山 善康, 今井 洸, 新福 栄治, 繁田 明義, 鷹取 直希, 和才 志帆, 渡辺 雅彦
    2023 年 47 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     骨脆弱性を有する 70 歳以上女性における上腕骨近位端骨折(Neer 3 part 又は 4 part 骨折)の人工骨頭(HA)とリバース型人工肩関節(RSA)の手術成績を後ろ向きに比較した.1年以上経過観察可能であった 40 例 40 肩を対象とした.HA/RSA 群は 32/8 例,手術時平均年齢は 77.2±4.8/79.9±4.6 歳(p=0.18),術後平均 34±13/25±9.6 ヵ月(p=0.09)での評価を行った.術後合併症は 11 例 34%/4 例 50%と両群同等であった.術後可動域は挙上(99 度±23/118 度±24),外旋,内旋のうち,挙上のみで RSA 群が高かった(p=0.048).また両群の JOA score(68 点±9/77 点±12)と Constant score(58 点±9/68 点±12)は HA 群に比べ RSA 群で高かった(p=0.043, 0.018).短期成績ではあるが結節癒合が得られなくても挙上可動域が得られるRSA は HA に比べ 70 歳以上高齢女性患者に有用なインプラントとなる可能性が示唆された.症例が少ないため更なるエビデンスの蓄積と長期成績の検討が必要である.
  • 山田 光子
    2023 年 47 巻 1 号 p. 88-92
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     高齢者上腕骨近位端骨折の治療としてリバース型人工肩関節置換術(以下RSA)が選択肢の1つとなる.我々は術後1年以上経過観察が可能であった症例の成績からRSAの有用性について検討した.
     対象は10例,男性1例,女性9例,平均年齢81歳,平均経過観察期間32ヶ月であった.骨折型はNeer分類の3パート6例,3パート脱臼3例,4パート1例であった.評価項目は術後3ヶ月毎の肩関節可動域(ROM),結節癒合の良否で最終受診時のROMと日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOAスコア)を比較した.
     術後3ヶ月,6ヶ月と最終受診時のROMの比較では屈曲は6ヶ月および最終受診時に,外転は最終受診時に有意な改善を認めた(p < 0.05).結節癒合群は4例,非癒合群は6例で,2群間のROM とJOA スコアに有意差を認めなかった.
     高齢者上腕骨近位端骨折に対するRSAは結節の癒合にかかわらず術後1年以後も良好な機能が維持できていた.
  • 呉屋 五十八, 山口 浩, 当真 孝, 金城 英樹, 津覇 雄一, 赤嶺 尚里, 森山 朝裕, 西田 康太郎
    2023 年 47 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     我々は仮骨形成確認後に肩関節可動域訓練を開始するリハビリテーションを行っている.今回,65歳以上の上腕骨近位部骨折に対して保存療法を行い,1年以上経過観察可能だった症例の調査結果を報告する.対象は,2012年12月から2021年11月に保存療法を行った28肩(男性1肩,女性27肩).受傷時年齢は平均77.6±6.4歳(65-90歳),経過観察期間は12ヵ月から106ヵ月(平均36.8±26.5ヵ月).受傷後約4~8週間固定し,単純X線像で仮骨形成確認後の3~5週より肩関節可動域訓練を開始した.自動肩関節可動域は受傷後3ヵ月,受傷後6ヵ月,受傷後12ヵ月と徐々に改善傾向認め,最終経過観察時の平均可動域は,屈曲128°,外旋50°,内旋L1椎体,JOAスコアは82点であった.合併症は11肩(39%)に認め,偽関節の1肩で予後不良だが,それ以外は重大な機能障害は残さなかった.高齢者の上腕骨近位部骨折に対する待機的運動療法は,日常生活レベルまでは改善し,保存療法の選択肢の一つと考えられた.
  • 富山 泰行, 塩崎 浩之, 北原 洋, 高木 祥有
    2023 年 47 巻 1 号 p. 98-103
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     肩峰・肩甲棘骨折単独または肩甲帯部重複損傷を合併し,手術療法を行った症例の治療成績を報告する.対象は2013年9月から2020年9月までに手術を行った9例,男性7例,女性2例,手術時平均年齢62歳(32-78歳)であった.Levy分類で,Type Iが4例,Type IIが2例,Type IIIが3例であった.評価項目は骨癒合の有無,最終診察時の関節可動域,JOAスコアを評価した.Type IIで精神疾患合併の陳旧例を除き全例骨癒合が得られた.関節可動域は屈曲136.6±36.7°,外転135±44.3°,外旋47.5±11.3°で,JOAスコアは86.9±11.4点であった.肩峰・肩甲棘骨折は骨折面が小さく,偽関節となる可能性もあり,強固な固定を行う必要がある.我々は各症例の骨折型,年齢,活動性に応じてインプラントを選択し良好な成績を得ることができた.しかし,陳旧例では偽関節となった症例もあり,インプラントや後療法の検討が必要である.
筋腱疾患
  • 大石 隆幸, 田崎 篤, 山下 大輔, 目黒 智子
    2023 年 47 巻 1 号 p. 104-107
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,大きなCritical shoulder angleの治療のために新規に開発した鏡視下肩峰外側切除に用いる手術器械による骨切除の正確性を骨模型を用いて検証することである.新規器械は先端が90°湾曲したピックであり,1mmずつ設定値を調節可能なストッパーが付いている.ヒト肩甲骨模型を使用し,新規器械を用いて骨孔を作成し,それを指標にアブレーダーバーを用いて骨切除を施行した.骨切除前と後の骨長の差を骨切除量として算出した.また,骨切除量とストッパー設定値の絶対誤差を算出した.ストッパー設定値が4,7,10mmの場合を検証した.設定値4mmの場合の骨切除量は中央値4.3mm(3.4mm - 5.0mm),絶対誤差は中央値0.5mm(0.3mm - 1.0mm),設定値7mmの場合の骨切除量は7.0mm(6.0mm - 8.2mm),絶対誤差は0.7mm(0mm - 1.2mm),設定値10mmの場合の骨切除量は9.8mm(8.8mm - 10.9mm),絶対誤差は0.7mm(0.2mm - 1.2mm)であった.骨模型を用いた新規器械による骨切除の正確性は,誤差がほぼ1mm以内であった.
  • 石垣 範雄, 畑 幸彦
    2023 年 47 巻 1 号 p. 108-111
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     一次修復不能な腱板断裂に対するPartial repair法の適応と限界を明らかにする目的で,術後成績に影響する術前因子について検討した.Partial repair法による修復術後2年以上の経過観察が可能であった腱板断裂126肩を対象とし,術後2年時UCLA scoreの良好群(34~35points)56肩と不良群(34点未満)70肩の2群に分類した.年齢,性別,術前と術後2年時の臨床所見(肩関節自動可動域,徒手筋力,UCLA score)と上腕骨骨密度,術中所見での縫着部内方化距離について2群間で比較検討した.年齢,性別,術前UCLA scoreおよび縫着部内方化距離は2群間に有意差を認めず,不良群の術前関節可動域は屈曲,外転およびC7 thumb distanceが有意に制限されており,徒手筋力も屈曲と外旋の筋力が有意に低下していた.不良群の上腕骨骨密度の患健比は上腕骨頭でのみ有意に低下していた.
  • 福島 秀晃, 三浦 雄一郎, 甲斐 義浩, 幸田 仁志, 竹島 稔, 古川 龍平, 祐成 毅, 木田 圭重, 森原 徹
    2023 年 47 巻 1 号 p. 112-117
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     腱板広範囲断裂(Massive Rotator Cuff Tears: MRCT)患者の上肢挙上方向と三角筋・肩甲骨周囲筋の筋活動との関連を明らかにするため,屈曲,外転の可能なMRCT患者の三角筋各線維・僧帽筋各線維,前鋸筋の筋活動を健常者と比較した.
     対象は肩関節自動屈曲と外転が90°以上可能なMRCT患者15名17肩(MRCT群: 年齢74.1±7.7歳),および腱板損傷の無い高齢男性21名21肩(健常群: 年齢78.0±4.7歳)とした.測定は肩関節屈曲・外転位において0°,90°を各5秒間保持とし,得られた筋電図データから0°-90°間のR-muscle値を算出した.
     MRCT群のR-muscle値は三角筋中部・後部線維と前鋸筋に群間と屈曲・外転間の交互作用に有意差を認めた.MRCT患者の屈曲・外転間の挙上方向は,前鋸筋の筋活動量の変化と関連している可能性がある.
  • 松葉 友幸, 高橋 憲正, 松木 圭介, 佐々木 裕, 森岡 健, 上田 祐輔, 星加 昭太, 濱田 博成, 上條 秀樹, 菅谷 啓之
    2023 年 47 巻 1 号 p. 118-121
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,鏡視下腱板修復術後再断裂症例のうち術後成績良好例と不良例とを比較することである.一次修復可能であった症例のうち再断裂を生じた症例を抽出し,術後UCLAスコア27点以上を良好群,27点未満を不良群とした.2群間で患者背景,臨床所見,MRI所見を比較した.対象は96肩,平均年齢66歳,術後観察期間は平均31.1カ月,良好群64肩,不良群32肩であった.自動可動域は不良群で良好群より有意に屈曲,結帯が劣っていた.術前の肩甲下筋腱断裂サイズは有意に不良群で大きく,術前後とも肩甲下筋の脂肪浸潤は不良群で良好群より有意に高度だった.斜位冠状断での再断裂サイズは2群間で有意差がなかったが,斜位矢状断では不良群(26.7±17.4mm)で良好群(19.2±13.9mm)より有意に大きかった.再断裂を生じても前後幅が狭く肩甲下筋の状態が良好ならば肩機能が保たれる可能性があると考えられた.
  • 植村 剛, 福田 亜紀, 森田 哲正
    2023 年 47 巻 1 号 p. 122-124
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂に対してSutureTape2本付きアンカーを用いた鏡視下腱板修復術(ARCR)の治療成績を報告する.Suture bridge法でARCRを施行し,術後1年以上経過観察が可能であった34肩(男性26例,女性8例,平均年齢59.6歳)を対象とした.術前断裂サイズで2群(不全・小・中断裂;PSM群;15肩,大・広範囲断裂;LM群;19肩)に分けて術前後の可動域(屈曲,外旋),JOAスコア,再断裂率をそれぞれ検討した.屈曲は両群とも有意に改善,外旋は両群ともに改善したがLM群のみ有意に改善した.JOAスコアは両群とも有意に改善した.再断裂率はPSM群で1肩(6.7%),LM群で2肩(10.5%)であった.テープ型縫合糸は2号高強度糸と比較しバイオメカニクス的研究で優位性が示されている.腱板の引き込みが大きく修復部に大きな負荷がかかる腱板大・広範囲断裂においてテープ型縫合糸は腱板修復に有利に働く可能性があり,使用を検討してもよいと思われた.
  • 若宮 みあり, 岩下 哲, 大久保 敦, 眞島 任史, 橋口 宏
    2023 年 47 巻 1 号 p. 125-128
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     腱板大断裂・広範囲断裂に対する鏡視下腱板修復術(ARCR)の治療成績を検討した.対象は2014年から2020年までに,腱板大断裂・広範囲断裂に対してARCRを施行した59例である.評価項目は,術前と術後1年時の自動可動域及び日整会肩関節疾患治療成績判定基準(JOAscore)とした.また,年齢(70歳以上と未満),外傷例,肩甲下筋腱(SSC)断裂例,delaminationを有する症例,上腕二頭筋長頭腱(LHB)に病変を認める症例に関して,各項目の術前と術後1年の可動域とJOAscoreを比較した.術前と比較して術後1年では外転,前方挙上,内旋,JOAscoreで有意に改善を認めた.各項目の比較において,70歳未満で有意に術後外旋が大きく,delamination合併例において有意に術後JOAscoreが低かった.SSC断裂やLHB病変を有する症例では適切な処置を追加することで,術後成績に影響を及ぼさない可能性があると考えられた.腱板大断裂・広範囲断裂に対してARCRを施行する際は,70歳以上やdelaminationを有する症例で術後成績不良となる可能性があるため注意を要する.
  • 大前 博路
    2023 年 47 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     On-lay型リバース型人工肩関節全置換術(RSA)28肩の術後3 年間における臨床成績の経時的変化を調査した.ジンマー・バイオメット社のRSA (Comprehensive® microstemとTrabecular MetalTM glenoidの組み合わせ)を用いた.臨床成績(術前/術後1年/術後3年)は,屈曲可動域:67±27°/116±21°/122±18°,外転:62±24°/112± 26°/122± 27°,外旋:17±27°/29±21°/31±23°,内旋:4.8±1.9/4.4±1.0/4.4±1.5(内旋はConstantらの方法を用いて数値化した),Shoulder 36 V.1.3の各ドメインは疼痛:1.7±1.1/2.8±1.0/3.2±0.8,可動域:1.7±1.0/3.0±0.9/3.1±0.8,筋力:0.8±0.8/2.3±1.2/2.8±0.9,健康感:2.3±0.8/3.0±0.9/3.2±0.7,日常生活機能:1.7±1.0/3.0±0.9/3.2±0.8,スポーツ能力:0.4±0.8/1.4±1.2/2.4±1.3であった.術前と術後1年の比較では内旋可動域以外の全項目において術後1年で有意に改善していた.術後1年と術後3年の比較では,Shoulder 36のスポーツ能力のドメインのみ有意に改善していた.On-lay型RSAでは残存腱板の筋長が回復し,術後の内外旋の可動域がGrammont型より改善する可能性があるとされている.本研究では外旋可動域は有意に改善していたが,内旋可動域の改善は認めなかった.適切な外方化,下方化の程度を検討する必要があると考えられた.
  • 鈴木 一秀, 木村 亮介, 永井 英, 上原 大志
    2023 年 47 巻 1 号 p. 133-137
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     一次修復不能な腱板断裂に対する棘下筋回転移行術の治療成績と限界を検討する事を目的とした.後上方腱板断裂例16例(男性9例,女性7例),平均年齢64.9才を対象とした.16例中初回手術例(P群)10例,ARCR後の再断裂例(RT群)は6例であった.術後経過観察期間は平均19.3ヵ月であった.検討項目は術前後でのROMおよび外旋筋力,術後MRIでの菅谷分類,JOA scoreとUCLA scoreを術前後で比較検討した.また,再断裂率およびJOA scoreとUCLA scoreに関してはP群とRT群の2群間で比較検討した.ROMは屈曲が術前平均93°から術後150°へ,外旋は術前30°から術後37°へ,外旋筋力は術前2.9から3.3へそれぞれ有意に改善を認めた.JOA scoreは術前平均59.1から術後83.2点へ,UCLA scoreは14.3から28.6へそれぞれ有意に改善した.術後MRIはType I 8例, II 2例, III1例,Ⅳ Ⅴ 5例であり再断裂率は31.3%であった.再断裂はP群(1/10例:10%),RT群(4/6例:66.7%)であり,RT群の再断裂率が有意に高かった(P=0.035)がJOA scoreとUCLA scoreに関しては2群間で有意差は無かった.棘下筋回転移行術は一次修復不能な腱板断裂症例に対する初回手術法として有用であるが,ARCR後の再断裂例に関しては再々断裂率が高く注意を要する.
  • 原田 伸哉, 石谷 栄一
    2023 年 47 巻 1 号 p. 138-142
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     Critical Shoulder Angle(CSA)の違いが三角筋,腱板筋活動に与える影響を検討した.健常成人21肩(平均年齢29歳)を対象に単純AP像を撮影し,信頼性を確認した後CSAを計測した.棘下筋(ISP),三角筋中部線維(Del-M)は表面筋電図,棘上筋(SSP)は針筋電図にて記録した.針筋電図は侵襲を伴うため,先行研究を参考にCSA 28° とCSA 38° に近似した被験筋6肩に施行した.課題動作は外転40° ,90° 位での上肢保持を行い筋活動量を算出した.正常CSA33° を基準に,large-CSA > 33° 群とsmall-CSA≦33° 群に分けて2群間で比較した.CSAが大きい場合,SSP,ISPの筋活動量が低く,Del-Mは高くなる特徴があり,CSAが小さい場合その反対となることが明らかとなった.CSAの違いは筋活動に影響を与えていた.
  • 森原 徹, 古川 龍平, 木田 圭重, 高橋 謙治
    2023 年 47 巻 1 号 p. 143-145
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     2019年以降,腱板大・広範囲断裂症例に対して菱形筋・腱板筋連結をすべて鏡視下に行なった腱板筋前進古川法の短期治療成績を報告する.
    【対象と方法】腱板大・広範囲断裂24例 24肩を対象とした.検討項目は,術前の腱板断端部位,断裂腱板の脂肪浸潤と術後腱板断端修復状態をMR画像から評価し,臨床成績はJOAスコアで検討した.
    【結果】術前の腱板断端部位は棘上・棘下筋stage I: 0/4肩, II: 0/6肩, III-1: 12/10肩, III-2: 12/4肩であった.術後では菅谷分類type I は21例,type IIは1例でtype III は1例,type IV は1例であった.JOAスコアは術前平均54点から術後1年では92点に改善した.
    【考察】これまでわれわれは,観血的なDebeyre-Patte変法から,2007年にはより低侵襲な関節鏡視下支援へ,2012年には腱板筋を肩甲骨から剥離できる内視鏡支援下に進化させてきた.今回術中の鏡視下に正確に腱板筋前進術が可能となり筋内腱を大結節付着部に縫合したことで,術後の再断裂率が5%以下となったと考えた.完全鏡視下に正確に腱板筋を剥離前進できる本法は腱板大・広範囲断裂に対する有用な一次修復術のひとつである.
  • 永井 惇, 村 成幸, 宇野 智洋, 大石 隆太, 結城 一声, 高木 理彰
    2023 年 47 巻 1 号 p. 146-150
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     肩腱板断裂には,無症候性が15-39%存在する.本研究の目的は鏡視下腱板修復術(ARCR)術前に,反対側の無症候性腱板断裂を認めた患者の両肩の身体所見を比較することである.対象は2012年から2017年にARCRを行った248例のうち,反対側に超音波画像検査で無症候性腱板断裂を認めた88 例である.自動可動域は屈曲,伸展,外転,外旋,内旋のすべてで両群に有意差を認めた.麻酔下徒手検査では屈曲,外旋,内旋で有意差を認めた.MMTやhandheld dynamometerを用いた等尺性筋力では外転,外旋,内旋すべてで有意差を認めた.測定時の疼痛陽性率は屈曲,外転の可動域測定時,外転位でのMMT測定時で有意な差を認めた.多変量解析では,90°外転位の外転筋力,とMMT測定時の疼痛陽性率,自動外転可動域測定時の疼痛陽性率, 外旋筋力,自動内旋可動域で有意な差を認めた.MMT測定時に疼痛がなく,筋力が保たれていると無症候性を保てる可能性と.保存療法で可動域の改善を目指すことで無症候性に転換する可能性が示唆された.
  • 大久保 敦, 四本 忠彦, 中島 駿, 若宮 みあり, 中村 英資, 岩下 哲, 飯澤 典茂, 眞島 任史
    2023 年 47 巻 1 号 p. 151-154
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     70歳以上の腱板大・広範囲断裂における筋前進術(MA)を併用した鏡視下腱板修復術(ARCR)の治療成績に関して70歳未満の症例と比較検討を行ったので報告する.
     対象は腱板大・広範囲断裂に対してMAを併用したARCRを行った30例31肩である.70歳以上の17例17肩を高齢者群(平均年齢76.5歳),70歳未満の13例14肩を対照群(平均年齢61.3歳)として,両群間の術後臨床成績とcuff integrityの比較検討を行った. JOA スコアとConstant スコアは,各群ともに術後有意に改善し,両群間で有意差を認めなかった.再断裂は高齢者群3例(17.6%),対照群1例(7.1%)で両群間に有意差を認めなかった.高齢者の腱板大・広範囲断裂の症例に対して,MAを併用したARCRは良好な治療成績が得られた.本術式は,高齢者においても有用な治療法であると考える.
変性疾患
  • 新福 栄治, 内山 善康, 繁田 明義, 橋本 紘行, 今井 洸, 鷹取 直希, 和才 志帆, 渡辺 雅彦
    2023 年 47 巻 1 号 p. 155-158
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     近年,凍結肩に中枢性感作(以下CS)の関与が報告され,診断ツールとしてCentral Sensitization Inventory(以下CSI)が用いられている.今回我々は初診時CSIが拘縮肩の治療経過に及ぼす影響をJOA scoreを用いて経時的に調査したので報告する.対象は当院で初診時に凍結肩と診断し,保存的加療した93例である.保存的治療は全例に初診時からリハビリテーションと内服治療を開始し症状に応じて関節注射を施行した.初診時CSIが40点以上をCS+群(16例, 平均年齢58.1 ± 11歳),39点以下をCS-群(77例, 平均年齢58.7 ± 9.8歳)とした.評価は初診時と治療開始3か月後,最終経過観察時(平均6 ± 0.3(SD)か月)にJOA scoreを計測した.統計学的検討ではChi-square test, Mann-Whitney U testを使用し,p < 0.05を有意差ありとした.服薬内容,注射回数では両群間に差はみられなかった.初診時JOA scoreはCS-群とCS+群の間では差はみられなかった(52.7 ± 9.5(SD)vs 51.8 ± 13.5(SD), p=0.53).治療開始3か月のJOA scoreはCS-群に比べCS+群で低値であった(75.4 ± 5.4(SD)vs 68.6 ± 7.7(SD), p=0.007).最終経過観察時でのJOA scoreはCS-群に比べCS+群で低値であった(81.5 ± 4.6(SD)vs 75.1 ± 2.9(SD), p=0.001).今回の結果から,初診時CSI高値の症例は治療開始3か月後,6ヶ月後のJOA scoreの改善が乏しく,CSが予後不良因子となる可能性が示唆された.
炎症疾患
  • 名越 充, 加藤 久佳, 迫間 巧将
    2023 年 47 巻 1 号 p. 159-162
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     新型コロナワクチン接種によるSIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration),神経障害など肩関節障害の理学所見,治療結果について調査した.対象は46例(男17例,女29例,平均51.6歳)例であり,SIRVA44例,腋窩神経,橈骨神経障害が各1例あった.治療法は内服薬+理学療法32例,内服薬+理学療法+ステロイド関節内注射12例,手術治療2例であった.平均観察期間は7.8か月であった.最終観察時の痛み(VAS),可動域,JOAスコアは初診時より有意に改善した.罹病期間と初診時JOAスコアに弱い正の相関を認めた.ステロイド追加群の最終観察時JOAスコアは可動域,非追加群よりも優位に高かった.SIRVAは接種後早期に関節拘縮に至り観察時も疼痛が残っている症例が多い.肩筋内にワクチン接種する場合は肩関節障害について注意,対策が必要である.
治療法
  • 稲垣 健太, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 伊勢 昇平, 平岡 祐, 服部 史弥
    2023 年 47 巻 1 号 p. 163-168
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,RSA術後の肩峰骨折の発生部位による臨床成績を比較し,骨折部位に影響を与える因子を調査することである.RSA術後肩峰骨折を生じた20肩(平均年齢77.8 ± 6.6歳,平均経過観察期間29.3 ± 17.2カ月,男性5肩/女性15肩)を対象とした.診断は単純X線またはCTを用い,Levy分類を用いて骨折部位を分類した.臨床成績として最終経過観察時の可動域,JOA,UCLA,Constantスコアを比較し,骨折部位に影響する因子として患者背景(年齢,性別,原疾患)と使用インプラント(In-lay/ On-lay)を比較した(有意水準5%).Levy分類はType1:7肩,Type2:13肩,Type3:0肩で,下垂位外旋可動域とすべての臨床スコアでType1がType2より有意に優れていた.患者背景に有意差はなく,Type1でIn-layタイプが,Type2でOn-layタイプの使用が有意に多かった.RSA術後肩峰骨折において,Levy分類Type2はType1より臨床成績が悪く,使用するインプラントによって骨折部位が異なる可能性が示唆された.
  • 森安 理紗, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 嶋田 洋平, 伊勢 昇平, 稲垣 健太, 平岡 祐, 服部 史弥
    2023 年 47 巻 1 号 p. 169-173
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
    パーキンソン病患者に対する反転型人工肩関節全置換術(RSA)の報告は少なく,その臨床成績と合併症を検討した.対象は6例7肩,全例女性,平均年齢76.7歳,平均経過観察期間23.7ヶ月,原疾患は上腕骨近位部骨折3肩,広範囲腱板断裂2肩,骨折続発症2肩だった.検討項目は可動域,臨床スコア,疼痛,合併症,画像所見とした.可動域・臨床スコア・疼痛は有意に改善した.合併症は転倒によるステム周囲骨折を1肩に認め,骨接合術を要した.脱臼や感染,再置換術は認めなかった.画像所見でscapular notchingを1肩に認めたが,人工関節の緩みは認めなかった.パーキンソン病患者に対するRSAは, 可動域,臨床スコア,疼痛において術前後で改善が得られたが,術後転倒による骨折・再手術を1肩に認め骨折・再手術後の上肢機能の改善は不良であった.歩行の補助やパーキンソン病の良好なコントロールの維持により,転倒を予防することで,良好な術後成績が期待できると考えられた.
  • 品川 清嗣, 八田 卓久, 井樋 栄二
    2023 年 47 巻 1 号 p. 174-177
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,本邦における一次性変形性肩関節症(一次性OA)に対するステムレス人工肩関節全置換術(TSA)の術後短期成績を評価することである.対象は,2019年1月から2021年12月までに一次性OAに対しステムレスTSAを行った7名7肩(平均年齢61.0 ± 7.5歳)であり,平均経過観察期間は24.9 ± 10.6ヵ月であった.臨床評価として術前および最終診察時の疼痛,肩関節自動可動域,ASES score,Constant scoreを比較し合併症の有無を評価した.放射線学的評価として単純X線を用いて骨透亮部を定量評価した.術後,疼痛,可動域,ASES score,Constant scoreは大きく改善した.骨透亮像は内側でより深かったが軽度であった.術前に予定した全例で使用可能であり合併症はなかった.今後,ステム型インプラントを使用したTSAとの比較を含め,より長期的な評価が必要と思われる.
  • 原口 亮, 高橋 憲正, 松木 圭介, 佐々木 裕, 上田 祐輔, 星加 昭太, 濱田 博成, 松葉 友幸, 上條 秀樹, 玉置 大恵, 出 ...
    2023 年 47 巻 1 号 p. 178-180
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,MEDACTA SHOULDER SYSTEM(以下,MSS)を用いたリバース型人工肩関節置換術(RSA)の術後短期成績を調査することである.2019年9月~2021年8月に当院で一次修復不能な腱板広範囲断裂,腱板断裂性関節症または変形性肩関節症の診断でMSSを用いたsemi-inlay型RSAを施行し,1年以上経過観察可能であった症例を対象とした.術前および術後1年の自動肩関節可動域(屈曲,外旋,結帯),臨床スコア(JOA score,ASES score),scapular notchingおよび術後合併症について検討した.対象は15例15肩で,屈曲と外旋,臨床スコアは術後有意な改善を認めたが(それぞれp < 0.001),結帯には有意な改善を認めなかった.Scapular notchingを3肩(20%)に認めた.Semi-inlay型RSAの術後短期成績は良好であった.
  • 井上 駿也, 髙橋 裕司, 前田 卓哉, 田村 将希, 阿蘇 卓也, 野口 悠, 高橋 知之, 古山 駿平, 尾﨑 尚代, 古屋 貫治, 西 ...
    2023 年 47 巻 1 号 p. 181-186
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     リバース型人工肩関節全置換術(RTSA)後の自動屈曲可動域,臨床スコアに対して術前三角筋体積が関係するかを検討した.術後2年以上経過観察可能であったRTSA患者23名を包含した.画像解析ソフト上で三角筋を前部(AD),中部(MD),後部(PD)に区分けし,各部位の指数を得た.術後自動屈曲可動域(6カ月,1年,1.5年,2年)とJOAスコア(2年)との相関の有無を,Spearmanの相関係数を用い検討した.術前AD体積指数と術後各時期での自動屈曲可動域との相関係数は,0.57(p < 0.01),0.73(p < 0.001),0.72(p < 0.001),0.70(p < 0,001)と全ての時期で有意な正の相関を認めた.術前PD体積指数と術後各時期での自動屈曲可動域との相関係数は,-0.34(p=0.11),-0.49(p < 0.05),-0.56(p < 0.01),-0.63(p < 0.01)と術後6カ月以外の時期で有意な負の相関を認めた.JOAスコアとの相関は術前AD体積指数のみ0.50(p < 0.05)と有意な正の相関を認めた.術前AD体積指数が高い症例ほど術後自動屈曲可動域およびJOAスコアは高くなる傾向にあり,術前PD体積指数が高い症例ほど術後自動屈曲可動域獲得に難渋する可能性が示唆された.
  • 服部 史弥, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 伊勢 昇平, 稲垣 健太, 平岡 祐
    2023 年 47 巻 1 号 p. 187-190
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂症性肩関節症(CTA)に対するリバース型人工肩関節置換術 (RSA)では,三角筋が術後機能において重要となるが,RSAの術前後における三角筋体積 (DMV)の変化や,臨床成績との関連は報告されていない.本研究の目的は,RSAの術前後におけるDMVの変化を調査し,臨床成績との関連を評価することである.対象は2019年1月から2021年8月までに当院でCTAに対しRSAを施行した20肩とした.臨床成績は術前,術後1年で評価し,画像評価はDMVを術前および術後1週,1年でのCTで計測した.術前と1年時の変化量(ΔDMV)を計算し,臨床成績(前方挙上可動域,臨床スコア)の変化量(Δ臨床成績)との関連について統計学的検討を行った.DMVは術前に比べ1週と1年は有意に増加した.臨床成績は術後有意に改善したが,ΔDMVとΔ臨床成績との間に相関関係はなかった.RSA術後においてDMVの増加が認められた.
  • 田島 貴文, 辻村 良賢, 鈴木 仁士, 加藤 久佳
    2023 年 47 巻 1 号 p. 191-195
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
    高度関節窩骨欠損を伴った症例に対して,patient-matched baseplateであるVRS(vault reconstruction system)を用いたRSA(reverse shoulder arthroplasty)6肩の治療成績を調査した.対象は,高度関節窩骨欠損を伴ったprimary GHOA(glenohumeral osteoarthritis)4肩とCTA(cuff tear arthropathy)2肩である.評価項目は,術前後CT像におけるglenoid versionとglenoid inclination,術前,最終経過観察時の自動関節可動域,JOA score,Constant score,Shoulder 36である.Glenoid versionは術前-13.7 ± 7.3° から術後2.4 ± 3.3° ,glenoid inclinationは術前8.7 ± 7.3° から術後-2.2 ± 2.3° となり,正確な設置位置が得られた.自動可動域は,屈曲,外転,外旋角度ともいずれも有意に改善し,臨床スコアのすべてにおいて最終経過観察時に有意に改善した.VRSを用いたRSAは,良好な設置位置と良好な成績が得られる新しい手術方法である.
  • 磯崎 雄一, 古屋 貫治, 志賀 研人, 月橋 一創, 岡田 浩希, 田村 将希, 尾崎 尚代, 松久 孝行, 筒井 廣明, 西中 直也
    2023 年 47 巻 1 号 p. 196-199
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
    【はじめに】
     リバース型人工肩関節置換術(RTSA)でインプラントの固定性は重要である.関節窩の菲薄化や大きな骨欠損は手術に難渋する.今回Bony increased offset reverse shoulder arthroplasty(BIO-RTSA)を施行し,2年以上経過を追えた症例で良好な成績を得たので報告する.
    【対象と方法】
     対象はBIO-RTSA症例8例9肩である.男性1例,女性7例,手術時平均年齢75. 0歳,術後平均観察期間は52. 4カ月であった.検討項目は術前,術後1年,術後2年,最終観察時の可動域,JOAスコア,移植骨の癒合とした.
    【結果】
     術前と術後1年を比較すると,屈曲,外転,JOAスコアは有意に改善した.術前と術後2年の比較では屈曲,外転,外旋,JOAスコアは有意に改善した.術前と最終観察時では屈曲,外転,JOAスコアは有意に改善したが,内旋と外旋は有意な改善を示さなかった.移植骨は全例で癒合した.
    【結語】
     BIO-RTSAは関節窩の菲薄化や骨欠損が著明でも対応可能な術式である.術後成績も良好であった.
  • 泉 政寛, 池邉 智史, 古畑 友基, 伊藤 恵里子, 秋山 隆行, 馬渡 正明
    2023 年 47 巻 1 号 p. 200-203
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     関節鏡視下腱板修復術後鎮痛に単回斜角筋間ブロックは有用であるが,ブロック後12時間程度しか効果が持続しないことよりリバウンドペインの出現が危惧される.今回,単回斜角筋間ブロックに関節周囲カクテル注射を併用することで術後鎮痛にどのような効果があるか検討した.単回斜角筋間ブロック群(41肩),単回斜角筋間ブロックに加えて関節周囲カクテル注射をおこなったカクテル併用群(46肩)の2群間で術前後NRS,術後レスキュー薬の使用頻度,術後感染,再断裂を比較した.NRSは術後12時間以降で有意にカクテル併用群が低値であった.術後レスキュー使用薬は,有意にカクテル併用群で少なかった.感染症例,再断裂率は両群間で有意差は認めなかった.今回,単回斜角筋間ブロックに関節周囲カクテル注射を加えたことで,リバウンドペインを防ぐことだけでなく,術後早期の十分な除痛効果を得ることができていた.
  • 水野 直子
    2023 年 47 巻 1 号 p. 204-207
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     RSAのscapular impingementの防止対策として,インプラントの外方化がある.本研究ではRSAの外方化の様式による外転・内転角度への影響を検討した.対象は骨欠損のないOAまたはCTA30肩で,三次元術前計画ソフトを用いてRSAのインプラントを仮想設置した.外方化の様式として,外方化なし(N群):inlay型上腕骨インプラント(以下inlay型),関節窩の外方化(G群):BIO-RSA+inlay型,上腕骨の外方化(H群):onlay型,関節窩と上腕骨の外方化(G+H群):BIO-RSA+onlay型の4群に分類した.各群のimpingement-free ROMを外転,内転でシミュレーションし,各群間で比較検討した.その結果,内転はG+H群,G群,H群,N群の順に大きかった.外転はG群,N 群,G+H群,H群の順に大きかった.外方化が大きくなるほど内転は大きくなった.外方化が大きくなるほど外転は小さくなると仮定したが,H群より外方化が大きいG+H群の方が大きかった.この結果は,外方化の様式選択の参考になると考える.
  • 梶原 大輔, 落合 信靖, 橋本 瑛子
    2023 年 47 巻 1 号 p. 208-212
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術において,術中出血は視野の妨げとなり手術操作に影響する. 出血対策として低血圧麻酔やポンプシステムによる灌流圧調整の他に,エピネフリン(Epinephrine: 以下EPI)やトラネキサム酸(Tranexamic acid: 以下TXA)の使用が報告されている.本研究の目的は鏡視下腱板修復術に対するEPIおよびTXAの周術期の有効性を検討することである.鏡視下腱板修復術を受けた27例27肩(EPI群14肩,TXA群13肩,平均年齢63.1歳,男性13例,女性14例)を対象とした.EPI群は灌流液1袋3LにEPIを1mg混注し,TXA群は執刀10分前にTXA1gを静注した.検討項目は術野の明瞭度(15分ごとgrade 1: 不良からgrade 3: 明瞭),手術時間,術前後のヘモグロビンの変化量(以下ΔHb),有害事象を群間で比較した.両群の患者背景(男女比,年齢,患側,BMI,断裂サイズ)に有意差は認めなかった.EPI群の術野の明瞭度はTXA群に比べ有意に良好であり,grade 3の割合が有意に高かった(EPI群: 81.6%,TXA群72.5%).手術時間およびΔHbは有意差を認めなかった(EPI群: 151.1分,0.9 g/dL,TXA群: 151.5分,0.8 g/dL).有害事象は共に認められなかった.鏡視下腱板修復術においてEPIを灌流液に混注する方法は,手術時間とΔHb,有害事象に有意差は認めないものの,TXAを術前に静脈注射する方法と比べ,術野が有意に明瞭であった.
  • 藤澤 基之, 原 正文
    2023 年 47 巻 1 号 p. 213-217
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     肩鎖関節脱臼に対する手術は,鏡視下での手術が増加している.専用の人工靭帯などを用いて烏口鎖骨靭帯を再建するのが一般的であるが,水平方向の安定性が課題とされる.その対策として,肩鎖靭帯の縫合や再建を併用する報告が散見されるが,直視下で行われる事が多い.当院では,烏口鎖骨靭帯再建に加え,肩鎖靭帯再建も鏡視下に行っており,今回その結果を調査した.調査対象は,肩鎖関節脱臼に対して上記の手術を行い,1年以上追跡可能であった10例 (平均年齢 36.8歳,女性 4例,男性 6例)で,Rockwood分類type IIIが3例,type Vが7例であった.JSS肩鎖関節スコアは,術前27点から術後98点に改善した.X線評価では,永井分類で,excellent : 4例,good : 5例,fair : 1 例であった.烏口突起鎖骨間距離の健側比は,術前199.3%,術後1年で109.7%であった.術後に多少の矯正損失があるが,最大約2cm程度の皮切で行う本術式は,小侵襲で臨床成績は良好であった.
  • 夏 恒治, 井上 公博
    2023 年 47 巻 1 号 p. 218-221
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     肩鎖関節周囲損傷に対して烏口鎖骨靭帯再建術を行ない術後12か月以上経過観察が可能だった10例を対象に術後筋力回復について調査した.平均年齢54.0歳で全例男性,右3肩,左7肩,鎖骨遠位端骨折4肩,肩鎖関節脱臼6肩だった.手術はDog Boneボタン(Arthrex)を用いて烏口鎖骨靱帯再建を行ない,鎖骨遠位端骨折にはプレート固定を追加した.術後3,6,9,12か月で握力と肩筋力の測定(下垂位外転,90° 外転位外転,下垂位外旋,下垂位内旋)を行ない患健側比の経時的変化を調査した.
     患健側比で握力,下垂位外旋筋力,下垂位内旋筋力には著しい変化はなかったが,下垂位外転筋力は術後3,6,9,12か月でそれぞれ0.72,0.88,0.99,0.89,90° 外転位外転筋力はそれぞれ0.67,0.81,0.89,1.06と,術後一時的に低下し,健側比約80%以上に回復するのに約6-9か月を要した.
その他
  • 畑 佳秀, 桐村 憲吾
    2023 年 47 巻 1 号 p. 222-225
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     2018年8月から2021年12月までに鎖骨遠位端骨融解症と診断した男性4例4肩(平均年齢:37.3才)に対し関節鏡下鎖骨遠位端切除術を行った.平均観察期間は5.5カ月.疼痛自覚から手術までの平均期間は6.3カ月(4~9ヵ月).3例は保存療法無効例,1例は早期手術加療を希望し手術となった.手術はビーチポジション位で肩峰下腔鏡視下で後外側ポータル,Neviaserポータル,前方ポータルから鏡視,肩鎖関節上方関節包と上肩鎖靭帯を温存し鎖骨遠位端を5mm以上切除した.平均鎖骨切除量は9.2mm(7-14mm) ,平均運動時VASは術前6.5から術後2.0,平均JOA Scoreは術前79.3から術後96.3と有意に改善した(p < 0.05).全例術後3カ月で復職・スポーツ復帰が可能であった.鏡視下手術により肩鎖関節周囲の軟部組織の温存,過剰な骨切除を回避する事で術後早期回復ができたと考えられる.
症例報告
  • 渡邊 能, 菊川 和彦, 出家 正佳
    2023 年 47 巻 1 号 p. 226-229
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル 認証あり
     結核感染により破壊された肩関節に対し人工肩関節置換術を行い,良好な成績を得た1例を経験したので報告する.症例は72歳女性,3年前から右肩痛を自覚,疼痛・可動域制限が徐々に増悪し受診された.右肩可動域は屈曲60° ,外転40° ,外旋10° ,内旋大転子部に制限され,JOAスコアは29点であった.単純X線・CT検査で上腕骨頭の破壊像を,MRI検査で骨頭内に複数の嚢腫様病変を認めた.血液学的検査は概ね正常であった.関節鏡検査を施行,摘出した滑膜病変が,塗抹・培養検査で結核菌陽性となり,病理検査では多巣性に肉芽腫の形成を認め,結核性肩関節炎と診断した.多剤併用療法を行い,再燃なく経過したが,徐々に肩甲上腕関節の関節症性変化が進行したため,人工肩関節置換術(aTSA)を施行した.術後12か月の時点で右肩痛はなく,右肩可動域は屈曲100° ,外転80° ,外旋30° ,内旋L3,JOAスコア79点に改善した.
     結核性肩関節炎に対する人工肩関節置換術は有用な治療法と考える.
筋腱疾患
feedback
Top