肩関節
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46 巻, 2 号
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学術集会発表論文
基礎研究
  • 鷹取 直希, 内山 善康, 今井 洸, 和才 志帆, 新福 栄治, 繁田 明義, 渡辺 雅彦
    2022 年 46 巻 2 号 p. 262-266
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     今回,腱板断裂の術前患者に対して生体電気インピーダンス分析法を用いた体組成測定を行い,健患側と罹患期間に着目して調査を行ったので報告する.対象は,腱板断裂患者の内,術前に体組成測定が可能であった44名44肩とした.上肢患側平均除脂肪軟部組織骨格筋指数(Appendicular Skeletal Muscle Mass Index;以下ASMI)は健側と比較して有意に低値であった.また罹患期間が短い群は長い群と比較して,全身および上肢患側ASMI,Phase angle(以下PhA)が高値であった.これまで,腱板断裂の発症要因には様々な報告があるが,体組成について報告はない.腱板断裂患者では,術前骨格筋量は患側で有意に減少していた.また,栄養状態やサルコペニア,フレイルなどの全身状態と相関するといわれているPhAは,罹患期間が長い場合で有意に低値であった.今回の結果より,腱板断裂は全身疾患として捉えることができ,中でも体組成測定は新たな術前情報が得られる可能性が示唆された.
  • 鈴木 加奈子, 尾崎 尚代, 西中 直也
    2022 年 46 巻 2 号 p. 267-270
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,結帯動作時の肩甲骨の動きが指椎間距離に及ぼす影響を左右別に明らかにすることである.健常成人13名を対象に,左右での上肢下垂位と最大結帯位における前額面での肩甲骨回旋角度(肩甲骨下方回旋角度),矢状面での肩甲骨傾斜角度(肩甲骨前傾角度),指椎間距離を計測した.肩甲骨下方回旋・前傾角度,指椎間距離を左右で比較し,肩甲骨下方回旋・前傾角度と指椎間距離の相関を左右別に検討した.その結果,左側と比較し右側での肩甲骨下方回旋は少なく,右側での指椎間距離は長く,左右で相違があることが明らかになった.左右ともに肩甲骨下方回旋と指椎間距離に相関はなく,指椎間距離の左右での相違には肩甲骨下方回旋以外の動きが影響を及ぼすと考えられた.右側での肩甲骨前傾と指椎間距離に相関はなかったが,左側では肩甲骨前傾が大きいほど指椎間距離は長く,左側での肩甲骨前傾は指椎間距離に影響を及ぼすことが明らかになった.
  • 福島 秀晃, 三浦 雄一郎, 甲斐 義浩, 幸田 仁志, 竹島 稔, 古川 龍平, 祐成 毅, 木田 圭重, 森原 徹
    2022 年 46 巻 2 号 p. 271-276
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     健常高齢者の三角筋・肩甲骨周囲筋の筋活動を明らかにするために筋電図で若年者と比較した.対象は高齢男性21名21肩(年齢78.0 ± 4.7歳:高齢者群)と若年男性9名9肩(年齢32.2 ± 8.5歳:若年者群)とした.測定筋は三角筋前部・中部・後部線維,僧帽筋上部・中部・下部線維,前鋸筋とした.測定は肩関節屈曲0°,30°,60°,90° の5秒間保持とし,筋電図データから0° -30°,30° -60°,60° -90°間のR-muscle値を算出した.R-muscleとは,角度の変化に対する筋活動の変化率を示す.全ての測定筋で高齢者群と若年者群間で筋活動パターンに相違を認めなかったが,三角筋各線維に群間での筋活動量に有意な主効果を認めた.本研究より,高齢者の三角筋・肩甲骨周囲筋の筋活動は,若年者と比べ屈曲角度の変化への対応に相違を認めなかったが,三角筋の筋活動量について低値であることが明らかになった.
検査
  • 関 展寿, 木戸 忠人, 齊藤 英知, 島田 洋一
    2022 年 46 巻 2 号 p. 277-280
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     肩関節造影MRI(MRA)にはガドリニウム(Gd)造影剤が希釈されて用いられる.2014年頃から線状型Gd造影剤の脳内貯留や腎性全身性線維症の危険性が報告され構造が安定している環状型製剤の使用が推奨されている.今回環状型であるガドブトロール(GBCA)の希釈率を変えてMRAでの至適希釈率を調べたので報告する.まず模型で希釈率を14倍から2000倍まで変えて投与し,結果を踏まえ被験者に75倍から300倍で投与した.その上で画像のコントラストノイズ比(CNR)を計測した.被験者は75倍が1名(27歳男性),150倍が4名(17-78歳男性),300倍が2名(17歳女性と67歳男性)だった.模型での画像ではCNRが希釈率14倍では4.8から200倍で599.4と希釈率を高めると向上した.その後400倍から1000倍までは592.8から600.2とプラトーに達し2000倍にすると387.8と低下した.被験者の画像では希釈率75倍でCNRが86.7と低かったが150倍で平均152.1,300倍では平均157.2と安定していた.MRAではGBCAを150-300倍に希釈するのが望ましい.
脱臼
  • 堀江 亮佑, 中溝 寛之, 東田 将幸
    2022 年 46 巻 2 号 p. 281-283
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     本研究では40歳以上の反復性肩関節脱臼(反復脱)の特徴と治療成績について検討した.鏡視下Bankart修復術を施行し術後1年以上観察できた27例27肩,平均年齢56.3歳を対象とした.合併損傷としては腱板断裂を11例に認め全例修復を行い,オフトラックの症例にはHill-Sachs remplissageも追加した.骨形態は正常4肩,骨片型10肩,摩耗型9肩でJSS-SISは術前40.5点から術後91.4点と有意に改善した.腱板断裂を認めた11例の術前JSS-SISは腱板断裂を伴わない症例の平均値より有意に低かったものの術後は同等まで回復した.40歳以上の中高齢者における鏡視下Bankart修復術は合併損傷も修復することで若年者に対する成績と遜色なく有効な治療法と考えられた.ただ術後に関節症性変化が進行する危険性を指摘する報告もあり,慎重に経過観察していく必要があると考えられた.
  • 木村 亮介, 鈴木 一秀, 永井 英
    2022 年 46 巻 2 号 p. 284-289
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下Bankart & Bristow変法(以下ASBB法)術後には関節窩に骨形成(リモデリング)が生じる.術前の関節窩骨形態がリモデリングに影響を及ぼすかを検討した.ASBB法術後3カ月と1年でCT撮影し,術後3カ月時点で骨癒合を認めた111肩を対象とし,術前3DCTの関節窩骨形態によりNormal群,Erosion群,Bony Bankart群の3群に分類した.3DCTで関節窩近似円を定め,術後3カ月と1年の円内骨欠損部面積(DA)を計算した.同一群内の比較で3群とも術後3カ月から1年でDAは有意に減少し(p < 0.01),3群間の比較で術後3カ月と1年のDA差に有意差はなく(P=0.106),Erosion群の術前骨欠損率とDA差の間に相関関係はなかった(P=0.841).つまり術後1年までに骨形成が生じ,3群間で骨形成に有意差を認めず,術前骨欠損率と骨形成に相関関係を認めなかった.今回の結果よりASBB法で至適位置に烏口突起を設置できれば,術前の関節窩骨形態に関わらず良好なリモデリングが得られると考えられた.
  • 高木 祥有, 塩崎 浩之, 北原 洋
    2022 年 46 巻 2 号 p. 290-294
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     2013年から2019年までの7年間に手術した外傷性肩関節前方不定症のうち,HAGL損傷を有していた16例16肩(手術時平均年齢35歳)の術後中期の成績を報告する.電話調査による術後経過観察期間は平均75か月であった(1年以上の直接診察が可能であったのは14例).全16例の手術術式を調べ,治療成績は①脱臼再発の有無,②下垂位および外転位での外旋可動域の患健差,③スポーツ復帰で評価した.HAGL損傷に対する修復法は,鏡視下法14例,直視下法2例であった.脱臼の再発は鏡視下法の1例で,術後6年時にスポーツ中の転倒により生じた.外旋可動域の患健差は下垂位で13度,外転位で12度であった.術前にスポーツをしていた13例では,10例が完全復帰,3例が不完全復帰であった.HAGL損傷を有する外傷性肩関節前方不安定症に対しては,鏡視下または直視下法で修復を行い,合併損傷に対しても同時に治療することで,良好な成績が得られると考える.
  • 田中 誠人, 中井 秀和, 小谷 悠貴, 木下 周真, 林田 賢治
    2022 年 46 巻 2 号 p. 295-299
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     ラグビー選手の肩関節外傷では原因がわからずに長引く疼痛を訴える場合があり,その中で前上方の関節唇損傷(asUPS)のみ認めることも多い.今回,その診断および治療成績を検討した.
     右肩痛を主訴に当院を受診し,関節造影MRI(MRA)にて前上方の関節唇損傷を有しasUPSと診断したラグビー選手41肩を対象とした.全例男性で初診時平均年齢は20.0歳(15-31歳),平均観察期間は20.2か月(12-41か月)であった.初診時にステロイドと局麻剤を関節内注射後リハビリ施行し,症状改善とともに競技復帰を許可した.
     受傷から初診まで平均11.9週(1-116週)で,注射平均回数は2.1回(1-7回),競技復帰は平均4.0週(1-12週)であった.32肩は再発なく競技継続可能で,再発した9肩のうち5肩は1回のみの再発で競技継続中である.4肩(9.8%)が再発のため手術加療となった.
     MRAはラグビー選手の関節内病変を同定するのに有用であり,前上方の関節唇損傷のみの場合は保存療法で改善する可能性が高く,初診時の正確な診断が重要と考えられる.
  • 小谷 悠貴, 田中 誠人, 木下 周真, 廣瀬 毅人, 中井 秀和, 林田 賢治
    2022 年 46 巻 2 号 p. 300-304
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     比較的大きなHill-Sachs病変を有する肩関節前方不安定症に対する補強手術としてRemplissage法が有用とされる.本研究では比較的大きなHill-Sachs病変を対象として,鏡視下Bankart修復術(ABR)単独と比較したRemplissage法(R法)の術後成績を報告する.幅15mm以上か深さ5mm以上のHill-Sachs病変に対しABRにR法を併用した32例32肩(ABR+R群)と,R法導入前に同程度のHill-Sachs病変を有しABRのみ行った39例39肩(ABR群)を比較検討した.術後関節可動域,臨床スコア,再発の有無およびリスク因子を評価した.術後可動域は両群とも健側と比較し有意に制限を認めた.臨床スコアはいずれも両群とも術後有意に改善した.再発はABR+R群1肩,ABR群6肩に認め, Remplissage法は再発率を低下させる有用な術式と考えられた.またHill-Sachs病変の大きさに関わらず13.5%以上の関節窩骨欠損率やOn-Track病変を有する競技者が術後再発のリスクと考えられた.
  • 石毛 徳之, 荻野 修平, 石井 壮郎, 黒田 重史
    2022 年 46 巻 2 号 p. 305-308
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     非外傷性肩関節不安定症に対して二方向臼蓋形成術を施行した12例13肩について報告する.症例は,習慣性脱臼(HD)9肩,随意性脱臼(VD)1肩,HDとVDの合併が1肩,持続性亜脱臼(SS)が2肩であった.手術時平均年齢18.4歳,男性6肩女性7肩,右7肩左6肩,平均経過観察期間39カ月であった.HD9肩中1肩は術後HDが再発し,1肩は術後VDに移行した.SS2肩では,1肩は術後VDへ移行し,1肩は術後SSが再発したが共に大胸筋移行術を施行し肩関節脱臼は制御された.VD及びVDとHDの合併症例では術後再脱臼は認められなかった.二方向臼蓋形成術では臼蓋傾斜角を補正し,肩甲骨頚部と臼蓋の延長が行われるが軟部組織の弛緩性や肩甲骨機能への直接操作はない.手術後も理学療法は重要であり,またVDを起こさせないための多方面にわたる管理も必要である.
骨折
  • 飯尾 亮介, 間中 智哉, 伊藤 陽一, 市川 耕一, 平川 義弘, 松田 淑伸, 中澤 克優, 山下 竜一, 岡田 彩夏, 中村 博亮
    2022 年 46 巻 2 号 p. 309-312
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨近位端骨折続発症に対するリバース型人工肩関節置換術(以下RSA)の短期成績について検討したので報告する.対象は上腕骨近位端骨折続発症に対して,RSAを施行し術後1年以上経過観察可能であった17肩である.評価項目は術後1年時の自動可動域(屈曲,外転,外旋,結帯動作),疼痛,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下JOAスコア)とし,既往手術・RSA術後の大結節の異常の有無と術後成績との関連についても検討した.術後屈曲,外転,JOAスコアは術前後で有意な改善を認めた.また,既往手術なし群はあり群と比較して術後外転可動域が有意に高い値であったが,大結節の異常の有無で術後臨床成績に有意差はなかった.上腕骨近位端骨折続発症に対するRSAは術後成績の改善を認めたが,手術の既往,大結節の治癒が術後成績に影響する可能性があり,初回の治療選択の見極めが重要であり,手術手技の工夫も要すると考えられた.
  • 植田 晋太郎, 武長 徹也, 土屋 篤志, 後藤 英之, 杉本 勝正, 村上 英樹, 吉田 雅人
    2022 年 46 巻 2 号 p. 313-316
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨近位端骨折術後の骨頭壊死予測に関して,medial calcarの計測値が重要となってくる.今回,これらを計測するにあたり,medial calcarの前方か後方かで計測値や分類にどれだけの相違が生じるか,単純X線像,CTを用いて検討した.骨接合術を施行した上腕骨近位端骨折患者に対して,これらの計測を行い,新北大分類を用いて分類をした.単純X線像を用いた場合とCTを用いた場合とで,分類する際にどれだけの相違が生じているのかを調査した.2014年から2020年に,上腕骨近位端骨折に対して,骨接合術を施行した44例44肩を対象とした.単純X線像を用いた場合,medial calcar length 6.01 ± 4.2mm,medial hinge disruption 11.72 ± 5.7mm,新北大分類は,type1Aが18例,type1Bが22例,type2が2例,type3が2例,CTを用いた場合,medial calcar length 5.42 ± 3.7mm,medial hinge disruption 11.40 ± 4.6mm,新北大分類は,type1Aが24例,type1Bが16例,type2が1例,type3が3例であった.単純X線像単独での計測では,posteromedial calcarではなく,anteromedial calcarを計測していることが多いことがわかった.そして,このことが分類の相違の原因の1つとして考えられた.
  • 岩瀬 賢哉, 上見 亮太, 小嶋 秀明, 濱田 恭, 酒井 忠博
    2022 年 46 巻 2 号 p. 317-321
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     当院にて上腕骨近位端骨折に対し骨接合術,HHR,RSAを施行した症例の術後成績を調査検討した.対象は上腕骨近位端骨折に手術を施行し12カ月以上経過観察可能であった25例25肩(男性3肩,女性22肩).年齢の平均値は71.3歳,骨折型(Neer分類)は3part 16肩,4partは9肩であった.骨接合群は11肩,HHR群12肩,RSA群2肩だった.肩関節可動域,JOAスコア,X線画像所見,術後合併症を評価した.術後12ヶ月時点の肩関節可動域の中央値(屈曲/外転/外旋/内旋JOAスコア)は,骨接合群(120°/90°/40°/6点),HHR群(80°/87°/25°/4点),RSA群(110°/95°/30°/3点),JOAスコアの中央値は骨接合群83点,HHR群76点,RSA群72.5点であった.骨頭壊死1例,ステムの挿入不良1例,大結節癒合不全4例,著明な拘縮3例が見られた.骨頭壊死のリスクが低い症例は骨接合術を第一選択とすることで良好な肩関節可動域,機能スコアが期待できる.骨頭壊死のリスクが高い3part(fracture-dislocation),4part(fracture-dislocation)はHHRもしくはRSAの適応を考慮するが,HHRに関しては大結節の癒合が術後の肩関節の機能再建に重要である.今後本邦でも上腕骨近位部骨折に対するprimary RSAが増加することが予想され,上腕骨近位端骨折に対する各手術法の更なるデータの蓄積が望まれる.
  • 橋本 ちひろ, 黒川 大介, 野口 京子
    2022 年 46 巻 2 号 p. 322-325
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     血液透析患者の上腕骨近位端骨折の保存療法では,シャント肢では安静が保てないことや,非シャント肢では両上肢とも使えないことなどが透析中の問題となり,積極的な手術療法選択が必要となる.当院における血液透析患者の上腕骨近位端骨折手術症例を,非透析患者症例と比較検討したので報告する.
     対象は2011-18年に手術を行った上腕骨近位端骨折56 肩(平均72歳,男17 肩,女39 肩)で,透析患者は21 肩(男6 肩,女15 肩)であった.透析,非透析患者の骨折型(Neer分類),手術方法,骨癒合,合併症についてretrospectiveに検討した.
     手術は髄内釘,プレート固定,人工骨頭置換を行った.髄内釘固定の骨癒合率は透析患者が90%,非透析患者が85%に対して,プレート固定では透析患者が33%,非透析患者が100%であった.
     透析患者の上腕骨近位端骨折では髄内釘固定の骨癒合率が良好であり,治療の第一選択になりうると考えた.
筋腱疾患
  • 栫 博則, 海江田 英泰, 前迫 真吾, 海江田 光祥, 藤井 康成, 谷口 昇
    2022 年 46 巻 2 号 p. 326-329
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     関節鏡下腱板修復術後10年以上経過し,直接検診可能であった23肩を対象とした.MRI斜位矢状断像のY viewの位置での棘上筋,棘下筋,肩甲下筋の脂肪浸潤の程度,筋断面積を評価した.症例全体の脂肪浸潤は術後1年時に比し最終観察時に有意に悪化していた.再断裂の有無で2群に分け評価すると,再断裂を認めなかった群では有意な変化を認めなかったが,再断裂群では術後1年時に比し最終観察時に有意に悪化していた.最終観察時の2群間比較では,再断裂群の脂肪浸潤が有意に進行していた.症例全体の筋断面積は術後1年時に比し最終観察時有意な変化を認めなかった.再断裂を認めなかった群では有意な変化を認めなかったが,再断裂群では有意に減少した.最終観察時の2群間比較では,再断裂群の筋断面積が小さい傾向にあったが,有意差を認めなかった.臨床成績と脂肪浸潤および筋萎縮の間に有意な相関を認めなかった.
  • 甲斐 義浩, 森原 徹, 竹島 稔, 近藤 寛美, 幸田 仁志, 三浦 雄一郎, 福島 秀晃, 松井 知之, 来田 宣幸, 木田 圭重
    2022 年 46 巻 2 号 p. 330-333
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     本研究では,地域在住高齢者を対象に,上腕二頭筋長頭腱(LHB)病変を含む腱板断裂肩の疫学調査を行うとともに,理学所見や身体機能との関連性について検討した.対象は,60歳代から80歳代までの地域在住高齢者334名668肩とし,超音波診断装置を用いて腱板断裂およびLHB病変の有無を調査した.超音波所見によってLHB病変を含む腱板断裂肩と非断裂肩の2群に分類し,背景因子,理学所見,身体機能評価を比較した.分析の結果,LHB病変を含む腱板断裂肩の有病率は8.2%であった.年代別の割合は,60歳代2.7%,70歳代7.0%,80歳代14.9%であり,有痛率は45.5%であった.多変量解析の結果,高年齢,現在の肩痛,Speed's test陽性,外転可動域の低下が説明変数として抽出された(p < 0.05).これらの知見より,年齢,肩痛,Speed's test陽性,および外転可動域の制限は,LHB病変を含む腱板断裂肩の特徴である可能性が示された.
  • 柴山 一洋
    2022 年 46 巻 2 号 p. 334-337
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂術後は再断裂を防止する目的で外転装具固定を行うのが一般的である.本研究の目的は他動運動の開始時期により再断裂率,臨床成績に差があるかどうかを調査することである.
     2017.4月から2020.4月までに行った腱板大広範囲断裂55例55肩のうち,除外基準を除いた24肩である.術後から他動運動を開始し術後3週で装具オフとした群をearly群(e群),術後3週間は患部外リハビリとし3週から他動運動を開始した群をdelayed群(d群)とした.評価項目は術後1年でのSugaya分類を用いたMRIでの再断裂率,ASES,UCLA scoreとした.e群は8肩で平均年齢64(47-70)歳で男性6肩,女性2肩であった.d群は16肩で平均年齢67(59-76)歳で男性11肩,女性5肩であった.再断裂はe群で4肩(50%),d群で2肩(12%)で再断裂率はe群d群併せて21%であった.臨床成績は全例術前より改善したが再断裂群は治癒群より有意に臨床スコアは低かった.
     腱板大広範囲断裂では術後3週後に肩の他動運動を開始した方が再断裂が低くなる可能性がある.
  • 原田 幹生, 村 成幸, 高原 政利, 結城 一声, 鶴田 大作, 高木 理彰
    2022 年 46 巻 2 号 p. 338-342
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
    【目的】部位を特定しない上肢の主観的評価としてHand 20がある.本研究の目的は,肩腱板断裂患者のHand 20 とShoulder 36(Sh36)との関係を調べ,Hand 20の有用性を検討することである.
    【方法】鏡視下肩腱板修復術を行った50名(平均63歳)を対象として,術前にHand 20,Sh36,およびJOAスコアを調査し,それらの関係を検討した.Spearman順位相関で係数を算出し,相関係数|r|> 0.4かつp値 < 0.05の場合を相関ありとした.
    【結果】Hand 20の総合点(問題なし0点-不可200点)は56点(2-150)であった.Sh36は,平均で,疼痛2.8 点,可動域2.7点,筋力2.3点,健康感3.1点,ADL2.8 点,およびスポーツ1.4 点であった.JOAスコアは平均64点(35-81)であった.Hand 20は,Sh36の6つの領域やJOAスコアと有意な関連を認めた.
    【考察】本研究の結果から,Hand 20が肩腱板断裂患者の主観的評価として有用である可能性が示唆された.
  • 桐村 憲吾
    2022 年 46 巻 2 号 p. 343-346
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     delaminationと腱板断裂前後長(AP長)が術後腱板再断裂に影響を与えるかを調査した.中断裂以上の腱板完全断裂に対しsuture-bridging techniqueで修復した72肩を対象とし,delaminationなし群(D-群)24肩,delaminationあり群(D+群)48肩の2群に分類した.術前腱板引き込み程度とdelaminationの有無は術後再断裂には影響を与えなかった.また術前MRI矢状断で計測した上腕骨大結節最外側部のAP長と腱板再断裂の関係は,ROC解析により,D-群のAP長33mm以上をカットオフ値とした場合では,腱板再断裂の感度80%,特異度90%で,D+群では34mm以上をカットオフ値とした場合では,感度57%,特異度81%であった.delaminationは腱板再断裂に影響を与えず,術前AP長が術後腱板再断裂と関連する可能性が示唆された.
  • 太田 悟, 駒井 理
    2022 年 46 巻 2 号 p. 347-351
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     我々は一次修復困難な腱板断裂に対し,大腿筋膜を用いた鏡視下上方関節包再建術(以下ASCR)を行っている.今回術後2年以上経過観察可能であった49症例の臨床成績について検討した.検討項目として術前後のJOAスコア,UCLAスコア,自動挙上角度,下垂外旋内旋角度,筋力(MMT),AHD(肩峰骨頭間距離),術後のgraft integrityは,長谷川らの分類による5段階評価を行った.偽性麻痺肩の有無による群間比較も行なった.また術前の仕事復帰までの期間を調べた.JOAスコア,UCLAスコア,関節可動域,筋力,AHDすべて改善がみられた.MRI上術後2年でのグラフト断裂は49例中5例10%に見られた.偽性麻痺肩の有無による臨床成績に差はなかった.術前の仕事復帰率は93%であった.術後2年のASCRの臨床成績は良好であり,一次修復不能な腱板断裂に有効な術式であると思われた.
  • 原田 伸哉, 石谷 栄一
    2022 年 46 巻 2 号 p. 352-355
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     棘下筋回転移行術後修復例におけるSugaya分類と術前肩外旋筋断面積の関連性を調査した.術後2年のMRIにて修復を確認できた18例を対象とし,Type1-2群12例とType3群6例の2群に分けた.術前MRI斜位矢状断像を使用し,棘下窩の解剖学的推定面積(ER)に対する棘下筋(ISP),小円筋(TM)の筋断面積ISP/ER,TM/ERを肩外旋筋断面積比として算出した.脂肪浸潤はGoutalleir分類で評価し,ISP,TMの信号強度を参考値として算出した.筋力は術前と術後2年の肩外転筋力と下垂外旋筋力を測定した.Type1-2群の術前ISP/ERは有意に高く,TM/ERは有意に低かった.術後2年の下垂位外旋筋力と90° 外転筋力はType1-2群が有意に高値であった.術後2年でType3になる症例は,すでにISP機能不全の代償性変化として小円筋肥大が生じていた可能性が示唆された.
  • 稲垣 健太, 落合 信靖, 平岡 祐, 伊勢 昇平, 嶋田 洋平, 広沢 直也, 橋本 瑛子
    2022 年 46 巻 2 号 p. 356-360
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     小・中腱板断裂に対する関節鏡下腱板修復術(ARCR)の短期臨床成績を関節鏡下肩峰下除圧術(ASD)併用の有無で比較した.ARCRを施行し1年以上経過観察可能であった小・中腱板断裂335肩を対象とした.ASD併用群(A群)が191肩,ASD非併用群(N群)が144肩で,平均年齢(A群/N群)は64.5 ± 9.6/63.7 ± 10.6歳(p=0.412),平均経過観察期間は24.8 ± 13.4/22.8 ± 13.3カ月(p=0.102)であった.両群間で術前後JOAスコア,UCLAスコア,Constantスコア,再断裂の有無を比較した.術前臨床スコアに有意差はなく,術後臨床スコアは,JOAスコア(A群/N群, 点):97.1/97.2(p=0.817),UCLAスコア(点):34.2/34.1(p=0.762),Constantスコア(点):96.8/96.3(p=0.369)といずれも両群間で有意差はなかった.再断裂率は,A群:7/191肩(3.7%),N群:9/144肩(6.3%) (p=0.221)と両群間で有意差はなかった.小・中断裂に対するARCRにおいて,ASDの有無で術後臨床成績,再断裂率に有意差はなく,ARCRの短期臨床成績に対するASDの効果は乏しいと考えられた.
  • 永井 宏和, 中島 亮, 松村 健一, 米田 真悟, 城内 泰造, 今井 晋二
    2022 年 46 巻 2 号 p. 361-366
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     我々は過度の緊張なく腱板断裂を修復するためDebeyre-Patte(DP)変法および棘下筋回転移行術(RIT)を導入し,通常のARCRを含めそれらの術後成績を検討した.対象は術後1年以上経過観察できた71肩とした.小断裂は9肩,中断裂は27肩,大・広範囲断裂は35肩であった.手術は全例suture bridge法で行い,層間剥離を認めた症例はdouble layer suture bridge変法で修復した.1次修復困難症例に対し,腱板断端が骨頭頂部を超えればDP変法を,超えなければなければRITを選択した.臨床評価は自動可動域,JOAスコア,画像評価はMRIを用いて術前はBoileau分類,Goutallier分類,術後は再断裂をSugaya分類で評価した.一次修復は56肩,DP変法は10肩,RITは5肩に施行した.JOAスコアは術前73.7 ± 12.5点から術後93.7 ± 8.1点に改善した.再断裂は小断裂が0肩,中断裂が2肩(7.4%),一次修復を行った大・広範囲断裂が2肩(10%),DP変法が2肩(20%),RITが2肩(40%)であった.ARCR,DP変法は術後良好な成績が得られ,特に大・広範囲断裂の再断裂率が低く抑えられた.しかしRITの再断裂率は高く,今後検討が必要であると考えた.
  • 佐田 潔, 梶山 史郎, 青木 龍克, 尾﨑 誠
    2022 年 46 巻 2 号 p. 367-370
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     当科での腱板断裂に対する関節温存手術の方法に関して決定木分析を行った.術前MRIから棘上筋と棘下筋のGoutallier分類(G分類)および棘上筋の筋萎縮を評価した.術前CTで肩峰骨頭間距離を計測し,術中所見から断裂サイズを部分・小・中・大・広範囲断裂に分類した.それらと患者の性別を加えた6項目を説明変数とした.suture bridgeのみで修復した症例を SB群, suture bridge以外の修復を行った症例をnSB群,筋膜移植や筋腱移行を行った症例をTra群とし,実施した治療法を目的変数とした.断裂サイズと棘上筋のG分類により5つにグループ化され,中断裂以下ではSB群が,広範囲断裂ではTra群が多くを占めた.大断裂は棘上筋のG分類で3つにグループ化され,G分類0・1ではSB群が最も多く,G分類4ではすべてTra群だった.大断裂では棘上筋のG分類で治療法が異なる可能性が示唆された.
  • 松本 美幸, 中根 康博
    2022 年 46 巻 2 号 p. 371-375
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は術前の肩関節拘縮が鏡視下腱板修復術(ARCR)の術後成績に及ぼす影響を調査し,後療法を検討することである.対象はARCRを施行し12ヶ月以上経過観察可能であった66例67肩である.拘縮判定基準は全身麻酔下で屈曲130度未満,外旋30度未満,健側より30度以上可動域制限を認めるもののうち,1つ以上を満たせば拘縮群(C群:17肩),基準を満たさない群を非拘縮群(N群:50肩)とした.C群にはARCRに先立ち授動術を行い,後療法は両群同様に行った.今回の調査項目は術後3,6,9,12ヶ月の自動屈曲,下垂位外旋,結帯の可動域推移と,術前・術後12ヶ月のJOAスコアとした.術後可動域は2群とも有意に増加し,2群間の可動域変化に有意差は認めなかった.JOAスコアは両群共に有意に改善し,術前の2群間の有意差は術後12ヶ月では認めなかった.以上より術前拘縮を伴っていても適切な授動術が行われていれば後療法に大きな影響はなく最終成績も同等であると考える.
  • 中村 香織, 吉村 英哉, 近藤 伸平
    2022 年 46 巻 2 号 p. 376-379
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     腱板損傷に対する鏡視下腱板縫合術の際,層間剥離(delamination)があることは成績不良因子の一つと考えられていたが,一方で強度の強い深層を正しい位置に強固に縫着することで浅層への過度な張力を軽減することが期待される.本研究は深層縫合することで浅層への張力が減少することを定量的に示すことを目的に,腱板断裂に対する関節鏡視下腱板修復術を施行した症例に対し,delaminationがあることを確認の上,深層のみ,浅層のみ,全層にかかる張力を測定,深層のみを上腕骨軟骨縁へ縫着したあと浅層のみと全層にかかる張力を測定し,さらに深層と浅層の全層に通した糸でSuture Bridge法で上腕骨大結節へ縫着した.結果,深層縫合後では浅層にかかる張力が有意に減少していた.今回,深層を解剖学的位置に固定することで有意に浅層にかかる張力が減少していたことを定量評価することができた.これにより,術後の再断裂を防げることが期待できる.
  • 加藤 久佳, 名越 充, 岩崎 祐一, 安井 一貴, 田島 貴文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 380-384
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     一次修復不能腱板断裂(後上方腱板断裂)に肩甲下筋部分移行術(Cofield変法)を行い,術後成績を検討した.対象は術後1年以上経過観察した54肩.修復方法は,①Suture Bridge単独群(SB法)と,②棘上筋腱をSurface-holding法で修復し,肩甲下筋腱と棘下筋腱をSuture Bridge法で修復した群(reduction & holding SB technique法:RH法). JOA score, Constant scoreは両群とも術後有意に改善した.術後1年の再断裂は全体で6肩(11.1%)(SB群4肩(16.7%),RH群2肩(6.7%))であった.Cofield変法は,肩甲下筋腱上部を後方に移行することで肩甲下筋腱と連続性のある棘上筋腱を無理なく整復することが可能な腱移行術である.その治療成績は,SB法・RH法いずれの修復法でも概ね良好であった.
  • 今井 洸, 内山 善康, 新福 栄治, 鷹取 直希, 和才 志帆, 渡辺 雅彦
    2022 年 46 巻 2 号 p. 385-389
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     今回我々が行った,一次修復不能な後上方腱板広範囲断裂に対する広背筋移行術(以下,LDT)術後成績について検討した.2年以上経過観察可能であった10例10肩(男性7肩,女性3肩)を対象とした.手術時平均年齢65.1歳,平均経過観察期間は31.8カ月であった.広背筋腱は大円筋腱を付着させずに採取し,三重折に形成し大結節外側に縫着した.LDTにより外旋可動域,筋力(患健側比)が有意に改善し,JOAスコア,Constantスコアは術前後で有意に改善した.外旋機能低下を伴う腱板断裂に対して有効な治療法である.しかし,筋力は健側比で50%程度までの改善であり,患者背景を考慮した術式選択が重要である.また術前に小円筋脂肪変性,肩甲下筋腱機能不全,腱板再断裂に対する再手術,大きなCritical shoulder angleを認める場合は術後成績不良となる可能性がある.
  • 植村 剛, 福田 亜紀, 森田 哲正
    2022 年 46 巻 2 号 p. 390-393
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術において内側列縫合を行ったsuture bridge法は縫合部での再断裂の原因となるが,初期固定力を得るため当院では内側列縫合を併用しており,その治療成績を検討した.術後1年以上経過観察が可能であった112肩(男性80肩,女性32肩,手術時平均年齢61.4歳)を対象とした.JOAスコアは術前59.0点から術後87.5点へ有意に改善した.再断裂率は全体で16.1%,術前断裂サイズ別では不全/小/中断裂8.9%,大/広範囲断裂23.2%であった.再断裂形態について,フットプリントに腱板が残存しない断裂(Type 1)が55.6%,内側列縫合部での断裂(Type 2)が44.4%であった.術前断裂サイズ別では,不全/小中断裂でType 1が20%,Type 2が80%,大広範囲断裂でType 1が69.2%,Type 2が30.8%であった.内側列縫合を併用しても良好な結果が期待できるが,不全/小中断裂においてType 2の割合が高く,術前断裂サイズによって修復方法を検討する必要があると考えられた.
  • 小嶋 秀明, 濱田 恭, 上見 亮太, 岩瀬 賢哉, 酒井 忠博
    2022 年 46 巻 2 号 p. 394-396
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     65歳以上の肩腱板断裂に対する鏡視下腱板修復術(ARCR)の術後短期成績について検討した.対象は2018年1月から2020年11月までにARCRを行った38例,評価項目は断裂サイズ,術前および術後1年での肩関節可動域とJOA スコア,再断裂率とした.また再断裂群と非再断裂群で比較検討した.肩関節可動域,平均JOA スコアはともに術前後で有意に改善した.再断裂率は13.2%であり,広範囲断裂の症例で有意に再断裂が多かった.2群間比較では,術前のJOAに有意差はなかったが,外旋可動域で有意差を認めた.再断裂に対する術前外旋可動域についてROC曲線を作成したところ,カットオフ値は30度,感度80.0%,特異度78.8%,AUCは0.803であった.65歳以上の高齢者におけるARCRにより良好な短期成績を認めた.断裂サイズが大きく,術前可動域が小さい症例で術後再断裂のリスクが高いことが示唆された.
  • 田鹿 佑太朗, 磯崎 雄一, 古屋 貫治, 月橋 一創, 田村 将希, 阿蘇 卓也, 髙橋 知之, 鈴木 昌, 松久 孝行, 筒井 廣明, ...
    2022 年 46 巻 2 号 p. 397-400
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
    【はじめに】Pulley 損傷による関節内前上方でのanterosuperior impingement(ASI)は疼痛が強く,保存療法が奏功しないにも関わらず,診断が困難である.今回,鏡視下手術を施行した症例の臨床所見,関節鏡所見,臨床成績につき検討したので報告する.
    【対象と方法】対象はASIと診断し鏡視下手術を施行した7例7肩(手術時平均年齢33.9 ± 14.4(SD) 歳,経過観察期間15カ月から24カ月(平均19カ月))を対象とした.
    【結果】全てに屈曲内旋位での著明な肩前方部痛を呈していた.術中動態鏡視においては全例で,屈曲内旋位でのpulley損傷部と前上方関節窩の衝突現象を認めた.吸収性アンカーを用いたpulley修復を主に施行した.術後はJOA score,ASES scoreともに有意に改善し経過良好である.
    【考察】外傷性ASIが疑われた場合は,保存療法に抵抗性であり,診断を慎重に行い,手術が考慮されるべきである.
神経疾患
  • 住元 康彦, 菊川 和彦, 渡邊 能
    2022 年 46 巻 2 号 p. 401-404
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     ガングリオンなどの占拠性病変を伴わない肩甲上切痕部での絞扼による肩甲上神経(SSN)単独麻痺の臨床的特徴と鏡視下SSN剥離術の治療成績を検討した.対象は男性5例,女性1例,年齢は21~59歳(平均34.2歳),術後経過観察期間は1~4.3年(平均2.1年)であった.6例中,4例が仕事やスポーツで肩を挙上した状態での繰り返し動作を日常的に行っていた.身体所見上,棘上筋,棘下筋の筋萎縮,SSN領域の知覚低下,肩関節外旋の自動可動域と筋力低下を認めた.MRIでガングリオンなどの占拠性病変を認めず,筋電図で棘上筋,棘下筋の神経原性変化を認めたものを,肩甲上切痕でのSSNの絞扼が原因であると診断した.鏡視下に上肩甲横靭帯を切離してSSNの絞扼を解除した.全例,筋力,筋萎縮ともに改善した.鏡視下手術は低侵襲で,早期よりリハビリが可能であり,疼痛の改善や筋力の回復,肩関節機能の獲得についてより優れた手術法であると考える.
変性疾患
  • 新福 栄治, 内山 善康, 繁田 明義, 橋本 紘行, 今井 洸, 鷹取 直希, 和才 志帆, 渡辺 雅彦
    2022 年 46 巻 2 号 p. 405-408
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     凍結肩患者における罹病期間と破局的思考が中枢性感作(Central Sensitization, 以下CS)に及ぼす影響について調査した.2019年11月から2021年4月まで,当院で身体所見と画像所見から凍結肩と診断した53例(男性20例,女性33例:平均年齢59.8 ± 11.9歳(SD)を対象とした.評価は初診時に中枢性感作の診断ツールであるCentral Sensitization Inventory日本語版(以下CSI)にてカットオフ値40点以上をCS +群,40点未満をCS-群とした.破局的思考はPain catastrophizing scale日本語版(以下PCS)を用い30点以上を陽性(PCS+)とした.また罹病期間(日)を両群間で比較検討した.統計学的検討はChi-square test, Mann-Whitney U testを使用し,p < 0.05を有意差ありとした.CS +群は凍結肩の15%(8/53例)にみられた.PCS陽性者はCS +群で88%(7/8例),CS-群で4.4%(2/45例)であり,CS +群で破局的思考の傾向が強かった(p < 0.01).罹病期間はCS +群で168.8 ± 64日(SD),CS-群で108.6 ± 91.3日(SD)であり,CS +群で長期であった(p < 0.05).
  • 坂井 周一郎, 光井 康博, 宮本 梓, 中村 秀裕, 後藤 昌史
    2022 年 46 巻 2 号 p. 409-412
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     肩石灰性腱炎に対する集束型体外衝撃波治療(FSW)における石灰消失関連因子を検討した.FSWを行なった97例99肩を対象とした.FSWは圧痛点と超音波画像診断装置(US)で石灰および石灰内へ向かう血流を確認したのちに,2週おきに計9回照射した.9回終了時点で石灰消失(CR)群と石灰残存(ICR)群の2群に分けた.検討項目は年齢,罹病期間、Gartner分類,FSW開始前の石灰の横径と縦径,USを用いた血流の有無,JOA score,圧痛,リハビリテーションの有無とした.結果,石灰消失を73肩に認めた.有意差を認めた項目(CR群/ICR群)は,罹病期間(9ヶ月/ 15.5ヶ月),圧痛(41mm/ 21mm),血流の有無(84.0%/41.7%),Gartner分類type1(37.0%/73.1%)であった.多重ロジスティック回帰分析(Odds ratio)によって血流の有無(4.46)とGartner分類(2.63),罹病期間(1.03)が抽出された.Gartner分類と罹病期間に加え,血流の有無が石灰の消失に影響を与える因子であった.
  • 寺谷 威
    2022 年 46 巻 2 号 p. 413-417
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     肩石灰性腱炎の診断を受けた217肩のうち,6カ月以上の保存療法に抵抗性であった症例に対し鏡視下手術を施行した症例で,術後6カ月以上経過観察が可能であった10肩(4.6%),手術時平均年齢60.9歳を対象とし,画像所見および臨床成績について調査した.JOAスコアは術前69.3点が術後6カ月では97.2点と有意に改善した.肩関節他動可動域は前方挙上,下垂位外旋,90度外転位外旋,90度外転位内旋,結帯すべての可動域において術後6カ月にて有意に改善していた.術前の石灰部位はLateral & Middle領域が4肩(40%),Lateral Center & Middle領域が2肩(20%),Center & Middle領域が2肩(20%)でありMiddle領域8肩(80%)が多かった.石灰サイズは平均で内外側長が15.6mm,前後長が14.3mmであった.保存療法抵抗性の肩石灰性腱炎に対する鏡視下手術の臨床成績は良好であった.保存療法経過中に石灰のサイズダウンを認めたものの手術に至った症例もあり,石灰サイズが小さくてもMiddle領域に石灰が残存する症例は症状が遷延しやすい傾向にあった.
  • 馬谷 直樹, 竹原 元司
    2022 年 46 巻 2 号 p. 418-422
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     SLAP損傷や上腕二頭筋長頭腱(LHBT)炎・損傷に対してLHBT固定術が行われている.近年,LHBT固定術において上腕骨髄腔径(骨孔の深さ)の不足による固定材料の前方突出や対側皮質骨の破綻などの解剖学的な制限が欧米から報告されている.しかし欧米人より比較的小さい日本人で骨孔の深さの不足がどの程度生じるかは未だ十分分かっていない.本研究は,日本人を対象にCT検査で骨孔の深さを計測し調査した.骨孔の深さは,suprapectoral tenodesisでは平均22.6 ± 4.2 mm,subpectoral tenodesisでは平均16.5 ± 2.2 mmで,両者とも身長と相関関係を認めた.一般的にLHBT固定術で使用されるinterference screwのscrew長は12 mm以上でありLHBTの腱厚を考慮すると骨孔の深さは15 mm以上必要だが,骨孔の深さが15mm未満の症例は,suprapectoral tenodesisでは2肩(3.7%)に,subpectoral tenodesisでは16肩(29.6%)に存在していた.日本人へのLHBT固定術は,骨孔の深さの不足による術中,術後合併症を避けるため,固定部位や固定材料の選択に注意を払う必要がある.
  • 中溝 寛之, 堀江 亮祐
    2022 年 46 巻 2 号 p. 423-426
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     全人工肩関節置換術(以下TSA)後の腱板の状態を超音波検査により評価し,術後成績との関連性について検討を行った.対象は変形性肩関節症または上腕骨頭壊死に対してTSAを施行した17例21肩(男2肩,女19肩)である.平均年齢は73(53-84)歳,平均観察期間は47(24-74)ヵ月であった.検討項目は臨床スコア,肩関節自動可動域および超音波検査における腱板断裂の有無,単純X線像での評価などである.JOAスコアは術前52 ± 7.0点から術後87 ± 5.6点に改善した.肩関節自動可動域(平均)は屈曲術前94度から術後141度へ,外転76度から130度へ,下垂位外旋22度から44度へ,下垂位内旋L4からL1へと改善した.超音波検査では肩甲下筋腱断裂を4肩(19%)に,棘上筋腱断裂を3肩(14%)に認めた.腱板断裂の有無にかかわらず臨床成績には有意差を認めなかった.超音波検査はTSA後の腱板の状態を観察するのに有用であると考えられた.
  • 田島 貴文, 辻村 良賢, 鈴木 仁士, 加藤 久佳
    2022 年 46 巻 2 号 p. 427-431
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     onlay型RSAにおいて上腕骨lateralizationおよびdistalizationと臨床成績を男女で比較した.対象は男性が15肩,女性が18肩であった.単純X線を用いて,LSA(lateralization shoulder angle)とDSA(distalization shoulder angle)を計測した.評価項目は,術前および最終観察時の自動可動域,JOA score,Constant Score,Sh36とした.LSAは有意に女性が大きく,DSAは男女差はみられなかった.最終観察時の自動屈曲角度は男女差はない一方で,自動外転角度は女性が有意に小さかった.Constant Score,Sh36は術後有意に男性が高値であった.onlay型RSAにおいて体格の小さな女性では外転角度が低下しないために,過度な上腕骨外側化に注意を払うべきである.
  • 森 達哉, 見明 豪
    2022 年 46 巻 2 号 p. 432-435
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     非外傷性上腕骨頭壊死に対する手術治療は病期に応じて,治療選択が行われる.今回,若年者非外傷性上腕骨頭壊死に対して自家骨軟骨柱移植術を行うことで,良好な成績を得ることができたので報告する.症例は2例3肩である.それぞれ24歳,30歳の若年女性で,全肩Cruess分類stage3であった.術前JOAスコアは平均62.3点であった.若年であることから,関節温存を目的として直視下で自家骨軟骨柱を移植した.術後は可動域改善も認め,JOAスコアは平均94.0点と改善を認めた.骨軟骨柱移植部の軽度段差は認めるも,関節症変化は認めていない.非外傷性上腕骨頭壊死において,骨頭圧潰を認めるstage3以降では人工物置換が選択される事が多いが,ゆるみや摩耗などによる再手術が懸念される.若年者においては,関節温存ができ,比較的侵襲が少ない手術として自家軟骨柱移植術は有用であると思われた.しかし今後も長期の経過観察が必要と考える.
炎症疾患
  • 上見 亮太, 濱田 恭, 小嶋 秀明, 岩瀬 賢哉, 酒井 忠博
    2022 年 46 巻 2 号 p. 436-439
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     化膿性肩関節炎に対して関節鏡視下デブリドマンを実施した7症例を経験したので報告する.対象は当院で2017年4月から2020年12月までの間に化膿性肩関節炎に対して関節鏡視下デブリドマンを実施した7例7肩である.12か月以上経過観察し得た男性5例,女性2例を対象とした.平均年齢は58.3 ± 19.5(SD)歳であった.感染経路として術後感染が1例,感染性心内膜炎や化膿性脊椎炎による血行感染が3例,不明が3例であった.デブリドマンを2回必要とした症例が1例あった.術後からCRP陰性化に要した日数は平均53.3 ± 34.5(SD)日であった.最終観察時のJOAスコアの平均は74.9 ± 16.0(SD)点であった.起炎菌はMSSA3例,B群連鎖球菌2例,G群連鎖球菌1例,不明1例であった.
     関節鏡視下デブリドマンにてすべての症例で感染の鎮静化を得ることができたが,治療が遅くなると,肩の機能障害が残りやすい傾向にあった.
その他
  • 新宮 恵, 村 成幸, 大石 隆太, 櫻田 香
    2022 年 46 巻 2 号 p. 440-445
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     ビーチチェア位時は一過性に血圧が低下し,脳虚血に陥る危険性がある.今回,術前経口飲水量がARCR中の循環動態に及ぼす影響について前向きに検討した.平均年齢63.7歳(43∼81歳)の91例を対象に,自己記入式調査で飲水量を調査し,術中は観血的動脈圧にて血圧を測定した.術当日の飲水量500mlを基準として比較すると,飲水量の違いにより術中血圧の変化に有意差がみられた(反復測定分散分析p = .0420).また,ビーチチェア位前後の血圧の変化について,禁飲水時間を絶飲2時間群と2時間以上の絶飲2時間超群に分け比較したところ,絶飲2時間超群に20mmHg以上の血圧低下割合が有意に多く(p = .0199),術前絶飲時間は,血圧低下群と血圧維持群の2群に差がみられた(p = .0005).以上の結果より,ARCR術中の循環動態の安定のために手術当日の目標経口飲水量として500mlの摂取を促すことが有用であり,禁飲水時間が2時間を超える症例では体位変換による血圧低下が生じやすく注意が必要であると考えられた.
  • 山本 隆一郎, 岩堀 裕介, 伊藤 岳史, 花村 浩克, 梶田 幸宏
    2022 年 46 巻 2 号 p. 446-449
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
    【目的】比較的稀な若年運動選手に生じた肩甲骨関節窩骨軟骨障害の6例を経験したことから報告する.
    【症例】当院及び関連施設で治療を行った6例6肩(男性5例,女性1例).平均年齢17.8歳(15~20歳)であった.投球障害の発生部位は5例が後方,器械体操の1例が上方であった.保存療法を2例に,4例に手術治療を行った.合併損傷として関節唇損傷を全例に認めた.術式の内訳は鏡視下ドリリング及び関節唇修復3例,骨軟骨柱移植術1例であった.平均6.4か月でスポーツ復帰したが3例が完全復帰・1例が不完全復帰で,最終経過観察時の日本肩関節学会スポーツスコアは平均83.8点であった.保存療法の1例は完全復帰・1例は不完全復帰であった.
    【考察】投球障害の5肩では肩甲骨骨軟骨障害部位が共通しており,投球動作時に肩甲骨関節窩軟骨に懸る剪断力や,関節唇損傷による不安定性が要因と思われた.器械体操の1肩は種目毎に荷重・軸圧・牽引などの複合因子の関与が考えられた.
  • 磯崎 雄一, 古屋 貫治, 田鹿 佑太朗, 木村 亮介, 月橋 一創, 岡田 浩希, 尾崎 尚代, 松久 孝行, 筒井 廣明, 西中 直也
    2022 年 46 巻 2 号 p. 450-453
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     保存加療が無効な難治性の肩関節拘縮では徒手授動術や鏡視下授動術などが行われる.術後成績は概ね良好である一方,再拘縮を時に経験する.今回,鏡視下授動術後に改善せず,再度鏡視下授動術(以下,再授動術)を施行した症例につき検討した.対象は当院で施行された肩関節鏡視下授動術92肩のうち,再授動術を要した5例5肩とした.男性3肩,女性2肩,初回鏡視下授動術時の平均年齢は53.4歳,初回授動術後からの平均観察期間は42.0カ月であった.検討項目は術前,術後4週,術後1年,最終観察時の屈曲・外転・外旋可動域,JOAスコアとした.初回術前と最終観察時の比較で屈曲と外転は有意に改善した.外旋も改善したが有意ではなかった.JOAスコアは有意に改善した.先行研究同様,本研究でも再手術症例は術後4週の外旋が不良で,早期の外旋可動域獲得が重要である.5肩全てが外傷後あるいは腱板断裂後であり,再拘縮のリスクと考える.術後再拘縮に対し再授動術は積極的に検討すべき治療法である.
  • 原田 拓也, 守重 昌彦, 綿貫 翔太
    2022 年 46 巻 2 号 p. 454-457
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     神経根ブロック下肩関節授動術(Manipulation Under cervical nerve root Block; MUB)後の麻酔下での肩関節可動域(Range of motion; ROM)を,肩甲上腕関節(Glenohumeral joint; GH)のROM評価方法として用いられる肩甲骨固定(F法)と,肩関節複合体(Shoulder complex; SC)のROMを反映する肩甲骨非固定(NF法)で測定し,MUB後の可動域改善効果がどのように生じているのかを検討することを目的とした. MUBを施行した凍結肩患者22症例を対象とし,MUB後20分間のアイシングを行った後,肩関節屈曲,外転,30° 屈曲位内旋,30° 屈曲位外旋,90° 屈曲位内旋(3rd内旋),90° 屈曲位外旋(3rd外旋),水平内転のROMを両測定法で測定した.ROM毎に両測定法の相関関係をSpearmanの順位相関係数にて算出した(p < 0.05).30° 屈曲位外旋と3rd内旋,3rd外旋,水平内転のみ正の相関を認めた.MUBを行った場合,両測定法でROM測定を行うことで,運動方向によって関節包の破断が完全でない可能性があることや,可動域改善効果に限界がある可能性があることが示唆された.
治療法
  • 加納 将嗣, 福田 昇司, 西良 浩一
    2022 年 46 巻 2 号 p. 458-462
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     リバース型人工肩関節置換術(RSA)の合併症の一つにscapular notchがある.scapular notchは通常単純X線によって評価されるが,その精度は明らかでない.本研究の目的はscapular notchの検出精度について単純X線とCTを比較検討することである.未固定遺体11体から肩甲骨を剖出し肩甲骨コンポーネントを設置した.一側の肩甲骨には頸部中央に,反対側の肩甲骨には頸部後方1/2にnotchを作成した.深さ4,8,12mmの3段階のnotchを順次作成し各段階での単純X線正面像とCTを撮影した.各画像でのnotchの有無を評価し,単純X線,CTにおけるnotchの検出率を検討した.単純X線での中央部のnotchの検出率は4mmで72.7%,8mmで90.9%,12mmで100%であり,後方のnotchでは9.1%,27.3%,63.6%であった.後方のnotchの方が検出率は低かった.CTでの検出率は中央部のnotchはすべて100%で,後方のnotchは81.8%,100%,100%であり,CTの方が検出率は高かった.notchが小さい場合には単純X線では評価が困難であり見逃されることが多く,notchの正確な評価にはCTが有用である.
  • 日山 鐘浩, 望月 智之
    2022 年 46 巻 2 号 p. 463-467
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     高齢者の外傷性前方脱臼による重度関節窩骨欠損症例に対するaugmented baseplateを用いたリバース型人工関節置換術(RSA)の3例の成績を報告する.対象は平均年齢79歳,男性2例,女性1例で全例とも外傷により肩甲骨関節窩前方~前下方の欠損が見られた.使用インプラントはいずれの症例もComprehensive Reverse shoulder system Augmented Baseplate(Zimmer Biomet 社,東京都港区)を用いた.いずれもDeltopectoral approachで手術は施行された.最終経過観察時における自動屈曲は平均125度,自動外転は125度,下垂位自動外旋は30度,ASESスコアは平均78点,JOAスコアは70点であった.関節窩に重度骨欠損を認める高齢者の肩関節脱臼例にaugmented base plateを用いたRSAは治療の選択肢となりえる.
  • 須澤 俊, 杉森 一仁
    2022 年 46 巻 2 号 p. 468-471
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     当院で行った関節リウマチ(RA)に対する解剖学的人工肩関節全置換術(TSA),リバース型人工肩関節全置換術(RSA)の術後成績を検討した.肩関節RAに対し人工肩関節全置換術を施行した4例5肩(TSA2例3肩,RSA2例2肩)を対象とし,評価項目は術前後のJOAスコア,術後可動域とした.対象の手術時平均年齢は69.8歳,術後経過観察期間は平均21.6か月であった.術前MRIではTSAの全例で腱板損傷は認めず、RSAの全例で広範囲腱板断裂を認めた.術前後のJOAスコアでは全例で疼痛スコアの改善を認めた.自動屈曲・外転可動域はTSAの2肩では術前後で変化なく,1肩で悪化していたのに対し,RSAでは2肩とも術後改善を認め,最終経過観察時には120°と良好な成績となった.RAに対する人工肩関節全置換術は疼痛の改善に有効であり,特にRSAは広範囲腱板断裂を伴う症例に対しても疼痛だけでなく可動域の改善も期待できる可能性があると考えられた.
  • 植木 博子, 吉村 英哉, 近藤 伸平, 岩渕 龍彦
    2022 年 46 巻 2 号 p. 472-476
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的はinlay typeとonlay typeのRSAの術後1年経過時での臨床成績(JOA score, Constant score),可動域(屈曲,外転,外旋,内旋),レントゲン評価や術後合併症を比較検討することである.術後経過観察1年以上可能であったinlay type(I群)16肩,onlay type(O群)57肩を対象とした.結果は,inlay type及びonlay typeともに臨床成績,術後の屈曲可動域,外転可動域は有意に改善した.RSA術後の外旋可動域はonlay typeでは改善するとの報告は多いが,内旋・外旋可動域は本研究では両群間に有意差を認めなかった.レントゲンでのlateralizationはonlay typeで有意に大きかった.術後合併症ではscapular notchingの発症率はonlay typeで有意に低く,その他の合併症に関しては両群間で有意差を認めなかった.
  • 大泉 尚美, 末永 直樹, 吉岡 千佳, 山根 慎太郎, 川真田 純
    2022 年 46 巻 2 号 p. 477-482
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル 認証あり
     本研究では,ショートステムを用いた人工肩関節置換術後の骨吸収を調査し,骨吸収に関連する因子を検討した.2016.11.~2019.5.にショートステム(Ascend Flex® 17肩,Comprehensive® 21肩)を用いてリバース型人工肩関節置換術(RSA)あるいは人工骨頭置換術(HHR)を施行し,術後2年以上経過したRSA群18肩(男4女14,81.4歳)とHHR群20肩(男8女12,69.3歳)を対象とした.Inoue分類Grade 4(骨皮質の消失)の骨吸収出現率は37%であり,Ascend Flex® のRSAが他群に比べ有意に高かった.Spot weldsはComprehensive®でAscend Flex® に比べて有意に高率に出現していた.骨幹端と骨幹部におけるステムの髄腔内占拠率(FR met,FR dia)(骨吸収ありvs なし)はFR met; 0.76 vs 0.61,FR dia; 0.67 vs 0.67であり,骨吸収あり群でFR metが有意に高い値であった.Cortical contactの有無と骨吸収には有意な相関を認めた.骨吸収に関与する因子の多変量解析では高いFR metが有意な相関を認めた.Cortical contactを避けて髄腔占拠率を最小限とすることで,著明な骨吸収を防止できる可能性があると考えられた.
  • 泉 政寛, 玉井 幹人, 伊藤 恵里子, 古畑 友基, 秋山 隆行, 池邉 智史, 馬渡 正明
    2022 年 46 巻 2 号 p. 483-486
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/28
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     当院では鏡視下腱板修復術(以下ARCR)後,外転装具による固定を行っている.小・中断裂に対しては固定期間を4週間としていたが,小・中断裂に対しては術後早期の自動運動開始による良好な成績が報告されており,2018年7月以降は固定期間を術後3週に短縮させている.今回,固定期間の違いによる術後成績への影響を検討した.
     固定期間3週と4週の2群に分け,三角筋量および腱板筋量の断面積変化率,術前後可動域,JOA score,再断裂率を比較した.三角筋の変化量率は4週固定群で大きく減少し,術後早期の肩関節自動屈曲は悪い結果であった.JOA scoreや再断裂率は両群間で差はなかった.腱板小・中断裂の術後装具固定期間は3週間の方が推奨されると考えられた.
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