肩関節
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45 巻, 2 号
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基礎研究
  • 嶋田 洋平, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 広沢 直也, 梶原 大輔, 伊勢 昇平
    2021 年 45 巻 2 号 p. 218-222
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
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     リバース型人工肩関節置換術(以下,RSA)のステムの頚体角度(Neck-shaft angle;以下,NSA)と関節安定性の関係は不明である.今回,肩関節構成筋を温存した新鮮凍結屍体を用いてRSAのOn-lay typeにおけるNSAと関節安定性の関係を検討した.
     新鮮凍結屍体7体を対象とし,On-lay type のRSAインプラント(Ascend flex®, Wright medical)を設置し,135° ,145° ,155° とステムのNSAを変更し,牽引試験を行った.肩関節外転,回旋角度,および肩甲下筋修復の有無による関節安定性が最も得られる条件を,前方脱臼に要する牽引力(Dislocation Force;以下,DF)で評価した.外転30° では,回旋角度によらずDFはNSA 155° で有意に高値であり(p<.05),外転60° では差はなかった.NSAによらず,外転60° の方が外転30° よりもDFが有意に高値であった(p<.05).さらに肩甲下筋の修復により,DFは有意に高値になった(p<.01).本研究の結果より,外転60° が30° に比べ安定性が高く,さらにNSA 155° を選択し肩甲下筋の修復を行うことが,関節安定性の点で有利であると考えられた.
診察・診断法
  • 藤井 康成
    2021 年 45 巻 2 号 p. 223-225
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     肩関節に不安定性を有する症例は,不安定性を軽減させるための防御反応として,肩関節周囲筋の緊張を高めることで,不安定性により生じる痛みや脱臼不安感を回避している.この筋緊張の程度を評価する方法としてSwingテストを考案した.
     対象は反復性前方不安定症例10例,10肩で,男性8例,女性2例,平均年齢21.4歳(16-40歳)であった.
     Swingテストは,anterior apprehensionテスト時に下垂位から最大外転位まで15-20度毎に他動で外転させ,同時に他動にて肩を前後に揺すり,肩の前後への振れの程度を評価した.不安定性に対する防御反応として生じる肩周囲筋の筋緊張の亢進による振れの低下を健側と比較検討した.
     10肩すべてがSwingテスト陽性を示した.特に外転80-100度付近では,体幹の肩周囲筋が過緊張し,振れをほぼ認めなかった.
検査
  • 森原 徹, 木田 圭重, 古川 龍平, 小椋 明子, 本多 宏明, 佐々木 健太朗, 竹島 稔
    2021 年 45 巻 2 号 p. 226-231
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     肩腱板は,解剖学的に上腕骨頭を包み込むように上腕骨頭の小結節および大結節に,肩関節唇も同様に関節窩縁に全周性に付着している.腱板・関節唇損傷の評価としてMRIは有用であるが,従来の斜位冠状断面像や横断面像ではpartial volume effectによって評価できない部位が存在する.腱板評価に対する放射状MRIの撮像方法として,肩甲骨関節窩に平行な矢状断面を位置決めのレファレンス画像として用い,関節窩中央と上腕骨頭中心を結ぶ線を回転軸として,全周性に7.5度間隔で24枚の撮像を行った.関節唇評価に対する放射状MRIの撮像方法として,関節窩の上下および前後の傾きを補正して関節窩縁全周を含むスカウトビューを撮像し,関節窩中央を中心に7.5° ごとに設定した.放射状MRIでは腱板付着部すべてを正確に描出することができ,臨床的に重要な前・後上方の腱板断裂部の描出に優れ,断裂形態の描出も可能となり,術前評価に有用であった.関節唇評価については,関節唇付着部である前下方,後上方の損傷部位を正確に描出することができ,放射状MRIは術前評価に有用であった.
脱臼
  • 永井 宏和, 中島 亮, 松村 健一, 米田 真悟, 城内 泰造, 今井 晋二
    2021 年 45 巻 2 号 p. 232-236
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     我々はRockwood type Vの新鮮肩鎖関節脱臼に対し関節鏡視下烏口鎖骨靭帯再建術に加え,関節鏡視下Neviaser変法を行った.今回症例を追加し治療成績を報告した.対象は2016年6月以降に手術を施行し,術後1年以上経過観察を行った8例で,手術は関節鏡視下にDog Bone Buttonを用いて1重束で烏口鎖骨靭帯の再建を行い,鎖骨遠位端を切除後,烏口肩峰靭帯を骨片付きで烏口突起側より切離し,鎖骨遠位端にアンカーを用いて固定した.術後JSS-ACJスコアは93.3点で可動域は屈曲167° ,外旋61° ,指椎間距離T9であった.整復位はexcellent&goodが6例で,fairが2例であった.ΔCCDは5mm未満が5例,ΔhACDは5mm未満が7例で,矯正損失は5.3mmであった.本術式にて良好な臨床成績が得られ,移行したCALは前後方向の安定性の改善が期待できる.
  • 山田 均志, 永井 英, 鈴木 一秀
    2021 年 45 巻 2 号 p. 237-240
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下Bankart&Bristow変法(以下ASBB法)の術後筋力を経時的に測定し,術側が利き手か非利き手で術後の筋力に影響が生じるか調査することを目的とした.対象は術前とASBB法術後3-5ヵ月まで経時的に肩関節周囲筋力と肘関節屈曲筋力を計測できた男性ラグビー選手33例である.徒手筋力計にて等尺性筋力を計測し,術側が利き手と非利き手の2群に分けそれぞれの健患比を算出し比較検討を行った.肩関節周囲筋力は利き手と非利き手の2群間で有意差を認めなかったが,肘関節屈曲筋力は術後3-5ヵ月の期間において非利き手は利き手と比較し有意に低かった.肩関節周囲の筋力訓練は術後1週から開始となるが,肘関節屈曲筋力訓練は移行した烏口突起の脱転・骨癒合不全を回避するために術後8週以降となり,術後8週未満は肘関節屈曲筋力訓練が行えずADL上のみの使用となることから,利き手・非利き手間の使用頻度の差が術後肘関節屈曲筋力に影響を与えたと考えられた.
  • 須川 敬, 松浦 健司, 中井 秀和
    2021 年 45 巻 2 号 p. 241-245
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     我々はBankart修復(ABR)後,約44%で運動再開までに関節窩横径が5%以上減少したと報告した.それまで関節窩縁軟骨を高周波電気蒸散機器(RF)で除去していたが,RF使用を控え,術後関節窩骨形態への影響を調査した.また年齢,スポーツ活動の影響を調査した.ABR後39肩の3DCTで関節窩表面積を計測し,術翌日に対し運動再開時(平均5.4ヵ月)に5%以上減少したものを骨減少と定義した.
     RF使用14肩(56.0%),非RF使用9肩(64.3%)で骨減少を認め,減少率は7.8%,7.3%で有意差を認めなかった.競技者14肩(82.4%),非競技者9肩(40.9%)で骨減少を認め,減少率は10.6%,5.3%,前者で有意に減少率が大きかった.年齢と骨減少率は相関係数-0.46で,若年で骨減少例が多かった.関節窩縁RF使用の術後関節窩形態への影響はなく,若年,スポーツ競技者で表面積が減少した.
  • 廣瀨 毅人, 中川 滋人, 内田 良平, 前 達雄
    2021 年 45 巻 2 号 p. 246-251
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     アンカー挿入位置の違いが鏡視下Bankart修復術(ABR)後の関節窩横径変化へ与える影響を調査した.外傷性肩前方不安定症に対しABRを単独で施行した200例211肩を対象とした.このうち,on the face anchoring(F群)143例151肩,on the edge anchoring(E群)57例60肩について,両群間で術前関節窩骨形態(normal, erosion, bony Bankart)別の関節窩横径減少率,及び術後1年再発率を比較検討した.術後初回CT(6ヶ月未満)の横径減少率(F群vs E群)はnormal type(10.1% vs 8.9%,p=0.92)に対し,erosion type(6.6% vs 2.1%,p=0.02)とbony Bankart type(6.6% vs -2.7%,p < .0001)で,有意にE群の減少率が小さかった.術後2回目CT(術後6ヶ月以降1年未満)を施行し得た92肩(F群64肩,E群28肩)では,normal type(6.5% vs 8.7%,p=0.48),erosion type(3.4% vs 1.6%,p=0.31),bony Bankart type(2.9% vs -1.9%,p=0.20)といずれも両群間に有意差は認めなかった.術後再発率はF群11.9%,E群10.0%であった.on the edge anchoring法は術前関節窩骨欠損を有する症例において術後早期の関節窩前縁骨吸収を軽減し,かつ術後再発に影響を与えなかった.
  • 田中 誠人, 小谷 悠貴, 花井 洋人, 林田 賢治
    2021 年 45 巻 2 号 p. 252-255
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     烏口突起の接触および固定性を関節鏡視にて確認することで術後早期の骨癒合率が改善すると仮定し,鏡視補助下にBristow法を行い,その骨癒合率について検討した.
     肩関節前方不安定症に対して,鏡視補助下Bristow法を行い,術後1年以上経過観察可能であった80例85肩を対象とした.烏口突起設置時に関節鏡で関節窩との接触と固定性を確認した.術後の骨癒合はCTで評価し分類した.術後3カ月で骨癒合82.4%,癒合不全9.4%,骨折3.5%,転位3.5%,術後6カ月でそれぞれ91.8%,1.2%,3.5%,3.5%となり,術後1年で変化はなかった.
     過去に直視下Bristow法術後の烏口突起骨癒合率は術後3カ月で56.6%,術後1年で86.8%と報告した.鏡視補助下Bristow法では,骨癒合率が術後3カ月で82.4%,術後1年で91.8%と術後早期での骨癒合率が改善した.転位を来した3肩はスクリュー長が短いことに起因し,スクリュー長の選択は改善するべき問題と考えられた.
  • 岩堀 裕介, 花村 浩克, 梶田 幸宏, 伊藤 岳史, 山本 隆一郎, 伊藤 隆安, 原田 洋平
    2021 年 45 巻 2 号 p. 256-261
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     烏口突起の採取は直視下で行い,その他の手技を主に鏡視下に行う鏡視下Bankart法・直視下Bristow変法の複合法を,肩関節外傷性前方不安定症の15例16肩に実施し,その2年以上の短期成績と烏口突起骨片の設置位置とスクリューの刺入方向を調査した.合併症は一過性の筋皮神経麻痺が1例,術後2ヶ月での転倒による骨片の脱転が1例あった.術後脱臼再発はなく,外旋制限は下垂位で平均9.4,90度外転位で平均10.2度,JSS-SISは術前50.4 ± 8.7から術後94.8 ± 3.4に有意に改善した.スポーツ選手は14例全例が競技復帰でき競技復帰時期は平均5.7ヶ月,完全復帰率は85.7%であった.烏口突起骨片固定位置は,関節窩面から内側平均0.9mm,全例が右肩で3時~4時30分の範囲で,スクリュー挿入角度は内側方向に平均17.1度,下方に平均15.4度 であった.本法は直視下と鏡視下の両方のメリットを取り入れた有用な方法であり,本法による烏口突起骨片の設置位置とスクリューの刺入方向はほぼ適切であった.
骨折
  • 畠山 雄二
    2021 年 45 巻 2 号 p. 262-265
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     対象は2008年9月から2019年2月までに上腕骨近位端骨折に対し人工骨頭置換術を施行し術後評価可能であった男3例,女11例の計14例である.受傷時年齢は平均74歳,術後観察期間は平均42か月である.骨折型は2-part: 1例,3-part: 8例,4-part: 5例である.術後平均自動可動域は屈曲88.5 度,外旋34.6 度,内旋L1,JOA scoreは平均80.4点であった.術直後の単純X線評価で,大結節の位置が骨頭下10mm以内が8例,10mm以上低位が6例であった.最終評価時に大結節は7例は解剖学的位置で骨癒合,3例が低位で変形治癒,4例は骨吸収されていた.7例で骨頭が上方化していた.大結節の骨癒合が得られたA群:7例と変形治癒または骨吸収のB群:7例に分けるとJOA scoreはそれぞれ91.8点と68.2点であった(p < 0.01).
  • 石井 大輔, 見目 智紀, 宮島 玄陽, 名倉 直重, 中脇 充章, 田澤 諒, 宗重 響子, 松本 光圭, 井上 宏介, 髙相 晶士
    2021 年 45 巻 2 号 p. 266-269
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨外科頚骨折後は偽関節となりやすく,要因は不明な点が多い.今回,当院で治療した上腕骨外科頚骨折後偽関節8例を対象に,上腕骨外科頚骨折後偽関節の要因について検討した.糖尿病やステロイドの内服など偽関節に影響する内的因子を有する症例は8例中3例であった.全症例においてMRI,術中所見において腱板完全断裂を認めなかった.本邦では腱板断裂の罹患率は60代で15~26%,70代で27~46%,80代で37~50%との報告もあり,自験例では60代が3人,70代が3人,80代が2人の為,腱板断裂が認められない確率は低い.一般に上腕骨外科頚骨折の保存加療の固定方法では三角巾および体幹固定を行なうが,姿勢の変化に伴い肩甲上腕関節の適合性を合わせる腱板筋の活動は抑制しにくい.そのため,固定期間中の腱板筋の活動は,上腕骨外科頚骨折に対する保存加療後偽関節となる要因の一つと考えられた.
  • 矢野 良平, 井浦 国生, 石原 康平
    2021 年 45 巻 2 号 p. 270-274
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     鎖骨遠位端骨折に対する治療成績と術後肩鎖関節亜脱臼について調査した.上記骨折に対し手術を行った59例を対象とし,固定法はtension band wiring(TBW)35例(T群),locking plate 21例(P群),その他3例であった.遠位骨片径,骨癒合時期,Shoulder36(Sh36),合併症, 肩鎖関節亜脱臼の有無と脱臼率を検討した.最終的に全例骨癒合が得られ,両群で遠位骨片径,骨癒合時期,Sh36に有意差は認めなかった.T群で4例(11%),P群で5例(24%)に亜脱臼を認め,亜脱臼率は64.8%と79.2%であり亜脱臼例の割合と亜脱臼率に有意差を認めなかった.合併症はT群で13例(37%)にK-wireのback outを認め,3例で早期再手術が行われ,P群で肩鎖関節完全脱臼を1例に認め,T群で有意に多かった.術後亜脱臼防止のため,烏口鎖骨靱帯の損傷に注意し必要に応じてsuture button等での追加固定を行う必要があると思われる.
筋腱疾患
  • 木村 岳弘
    2021 年 45 巻 2 号 p. 275-278
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     肩甲下筋腱断裂と後上方腱板断裂及び修復術後との関連について調査した.肩甲下筋腱断裂をLafosse分類で分け,type1の32肩(S群),type2の21肩(M群),type3,4(L群)の33肩に肩甲下筋腱断裂を認めなかった46肩(C群)を加えた4群間を比較した.年齢(C群-L群),後上方腱板断裂サイズ(C群-S群,L群-C,S,M群),脂肪浸潤(C群 -L群),棘上筋の筋萎縮(L群-C,S,M群)に有意差を認めた.後上方腱板の再断裂は,C群よりL群が有意に多く,C群とS,M群間に有意差は認めなかった.Lafosse分類type1,2の肩甲下筋腱断裂の合併では,後上方腱板断裂の重症度との関連は少なく,再断裂リスクは増加しないと考えられた.Lafosse分類type3,4の肩甲下筋腱断裂の合併では,後上方腱板断裂の重症度が進行しており,高い再断裂率に影響した可能性がある.
  • 藤澤 基之, 工藤 憂, 吉田 優作, 原 正文
    2021 年 45 巻 2 号 p. 279-282
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     肩甲下筋腱断裂に対する修復は,suture bridge法が他の方法より有利であるとされる.今回,肩甲下筋腱をsuture bridge法で修復した症例における手術前後の臨床成績と術後1年の腱板の修復状態を評価した.対象は,2013年4月以後,肩甲下筋腱の完全断裂に対して鏡視下にsuture bridge法で修復した症例で,1年以上経過観察が可能であった105肩とした.年齢は64.9 ± 7.1歳.肩甲下筋腱の単独断裂が4肩,上方断裂を合併した前上方断裂が101肩.肩甲下筋腱の断裂形態はLafosse分類でtype 2: 45例,type 3: 40例,type 4: 17例,type 5: 3例であった.これらの症例における臨床成績をJOA,UCLA scoreで評価した.術後1年の腱板修復状態をMRIで評価し,Sugaya分類のtype 4,5を再断裂とした.術後の臨床成績は,JOA scoreで94.2点に,UCLA scoreで33.3点に有意に改善した.術後の再断裂は,肩甲下筋腱に関しては3例(2.9%)であった.肩甲下筋腱修復に関して,多くの症例に対して調査した報告は少ない.今回の結果は再断裂率が低く,suture bridge法での修復が有効であった.
  • 結城 一声, 村 成幸, 宇野 智洋, 大石 隆太, 鈴木 朱美, 高木 理彰
    2021 年 45 巻 2 号 p. 283-285
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,鏡視下腱板修復術の際に肩甲下筋腱頭側部修復を追加した症例の,その修復状態を評価することである.2018年1月より2019年3月までに,鏡視下腱板修復術の術中に肩甲下筋腱頭側部断裂を認め単層法で修復を追加し,術後1年以上経過観察可能であった38例を対象とした.術前後のMRIにてMRI scoreで修復状態を評価し,Gap signとの関連を検討した.また,術前後の自動肩関節可動域,等尺性筋力を計測し,術後MRI scoreとの相関を検討した.平均MRI scoreは術前4.0から術後1.8へと有意に改善し,術後Gap signとの関連を認めた.可動域は,屈曲および内旋は有意に改善したが,外旋は有意な改善は認めなかった.筋力は,90° 外転位外転,下垂位外旋,下垂位内旋とも改善を認めたが,術後MRI scoreは,いずれの術後可動域,筋力改善率とも相関は認めなかった.MRI scoreは術後修復状態の評価に有用な可能性があるが,その状態により臨床成績に違いは認めなかった.
  • 安里 英樹
    2021 年 45 巻 2 号 p. 286-290
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     棘下筋回転移行術を一次修復不可能な腱板広範囲断裂に施行し,良好な長期成績が得られたので報告する.棘下筋回転移行術を施行した9例,男6例,女3例,手術時平均年齢71歳(66~78歳)で,全例安静時および動作時疼痛があった.4例は偽性麻痺で,術後経過期間は,平均11年5ヵ月であった.
     術後,疼痛は8例で消失,1例で軽快した.平均可動域(自動屈曲/外転/外旋)は,術前88°/90°/32°が術後2年159°/169°/31°,術後10年以上で160°/159°/13°,術前の偽性麻痺の症例は全例改善した.術前/術後2年/術後10年以上で,徒手筋力の棘上筋力(MMT)は,1.8 / 4.2/ 3.7と改善した.JOA score(点)は47.8/ 90.4/ 84.9,UCLAスコア(Points)は7.2/ 33.7/ 32.8と術後有意に改善した.AHIは術前/術後1年/術後2年/術後10年以上で,3.6mm /6.2mm /4.8mm/5.2mmと術後1年で有意に改善した.術後MRIで棘下筋腱の縫着部再断裂を認めなかった.
     棘下筋回転移行術は,一次修復不可能な腱板広範囲断裂に対し10年以上再断裂を認めず肩関節の機能が保持されていた.
  • 寺谷 威
    2021 年 45 巻 2 号 p. 291-295
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     断裂腱板が大きく内側に引き込まれた症例に対し,骨頭軟骨を新鮮化し腱付着部の内側化(Medialization)を行う事で腱板修復術を行った症例(Medialization群)とMedializationを行ってもフットプリントを覆う事が出来なかった症例で腱板部分修復術を行った症例(Partial群)の臨床成績を比較検討した.JOAスコアは術前と術後6か月においてPartial群で有意に低かったが,術後1年では2群間において有意差を認めなかった.自動肩関節可動域は術前の前方挙上がPartial群で有意に小さかったが,術後は2群間において有意差を認めなかった.術前のGoutallier分類Grade3, 4の割合は2群間において有意差を認めなかった.また再断裂率は2群間において有意差なく両群とも短期的には臨床成績は良好であった.腱板部分修復術に比べ,Medializationを行いフットプリントを覆う事のメリットは短期的には明らかではなかったが,長期的な経過観察が必要と思われた.
  • 杉森 一仁
    2021 年 45 巻 2 号 p. 296-301
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     大腿筋膜パッチ法を行った症例の臨床成績を検討し,成績不良群についてその特徴,問題点を検討した.対象は男性30肩,女性9肩の計39肩であり,平均年齢64.8歳であった. JOAスコアにおいて,Imaiらが報告した総計83点のカットオフ値未満を不良群とし,それ以上を良好群として比較した.JOAスコアの総計は術前平均65.1点から術後6ヶ月77.1点,12ケ月84.1点といずれも有意に改善した.不良群は12ケ月の時点では11肩に認め,術後6ヶ月におけるJOAスコアの機能,可動域の項目が良好群に比べ有意に低値であった.また同様に術後2‐12ヶ月における挙上可動域も良好群に比べ有意に低値であった.MRIでの再断裂率はJOAスコアの良好群,不良群それぞれ2肩ずつであった.大腿筋膜パッチ法は術後の機能改善が得られる手術法であり,良好群は術後早期から挙上可動域が良好に改善することが予想される結果であった.
  • 古屋 貫治, 松久 孝行, 鈴木 昌, 磯崎 雄一, 大澤 一誉, 田鹿 佑太朗, 田村 将希, 尾﨑 尚代, 筒井 廣明, 西中 直也
    2021 年 45 巻 2 号 p. 302-306
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     一次修復不能な広範囲腱板断裂に対する治療には難渋する.鏡視下上方関節包再建術(ASCR)は良好な報告がされているが,術後グラフト断裂の危険性を術前に予見できれば,より効果的な治療計画が立てられる.今回,ASCR術後のグラフト断裂因子について検討した.当院で一次修復不能な広範囲腱板断裂に対してASCRを施行し,1年以上経過観察をし得た20例を対象とした.修復群9例,断裂群11例で,グラフト断裂は55%に認めた.両群間における患者背景,術前可動域,筋力,JOAスコア,ASESスコア,濱田分類,肩峰骨頭間距離(AHI)を比較検討した.断裂群は濱田分類が進んだ症例が有意に多く,AHIも小さかった.その他の患者背景に差はなかった.ASCR術後グラフト断裂は治療成績が不良となるため避けるべきである.術前に関節症性変化が進んでいる症例はグラフト断裂の危険性が高まる可能性があり,適応は慎重に検討すべきである.
  • 平田 正純, 四本 忠彦, 立原 久義, 森 大祐, 永井 宏和, 中根 康博
    2021 年 45 巻 2 号 p. 307-310
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     一次修復不能な広範囲腱板断裂に対する術式の選択と術後成績を多施設間で調査,比較検討した.術後1年以上経過観察可能であった156名156肩(男性100名,女性56名,平均年齢67.1歳,平均経過観察期間24.4か月)を対象とした.部分修復術(PR)75例,筋前進術(DP)45例,上方関節包形成術(SCR)24例,棘下筋回転筋移行術(RIT)10例,パッチ移植術2例が選択されていた.各術式で術前後のJOAスコア,Constantスコアは有意に改善していた.各術式で術後成績に特徴を認め,JOAスコアとConstantスコアはPRとDPが有意に高かった.前方挙上はSCRとDPはPRより高値,外旋はPRとDPはSCR,RITよりも高値であった.内旋ではDPはPRとSCRよりも高位であった.以上のような各術式の特徴を理解した上で,症例に応じた術式選択を行うことが重要であると考えた.
  • 古川 龍平, 森原 徹, 木田 圭重, 祐成 毅, 黒川 正夫, 高橋 謙治
    2021 年 45 巻 2 号 p. 311-316
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     広範囲腱板断裂に対する治療法としては一次修復が勧められるが,高い再断裂率が報告されており,その手術適応には十分注意を要する.広範囲腱板断裂では棘上筋や棘下筋の筋萎縮や脂肪浸潤を伴っていることが多く,一次修復が困難な症例がある.われわれは広範囲腱板断裂に対して,腱板断端を剥離し大結節付着部まで低緊張下(30N未満)に引き出すことが不可能な場合では,欠損部を補填する術式ではなく,棘上筋,棘下筋の起始部を肩甲骨内側縁から剥離し,菱形筋と連続性を保持したまま外側に引き出す筋前進術を施行してきた.現在はより侵襲の少ない鏡視下での筋前進術(Debeyre-Patte変法)を行っている.筋前進術を用いた鏡視下腱板修復術は,パッチ法や筋移行術とは異なり,腱板と上腕骨大結節部の腱骨接合部の修復が可能なため,一次修復と同様に肩腱板機能の改善が可能な術式である.
  • 見目 智紀, 宮島 玄陽, 名倉 直重, 中脇 充章, 田澤 諒, 宗重 響子, 石井 大輔, 井上 宏介, 松本 光圭, 髙相 晶士
    2021 年 45 巻 2 号 p. 317-322
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板縫合術後30肩に対し超音波検査を用いて他動的肩甲骨面上の挙上動作中の上腕骨頭の動態を評価し,自動運動可動域および肩すくみとの関連性を評価した.超音波検査による評価は肩峰に対する大結節の位置でStage1:肩甲上腕関節が回旋しない,Stage2:縫合部が肩峰下インピンジメントを起こす,Stage3:大結節が肩峰下を通過する,の3段階に分類した.術後3か月では13肩(43%)が縫合部でインピンジメントを起こしていた.計測期間中に超音波検査の分類でStage1と2に分類された肩では全例が他動的挙上動作中に縫合部で肩峰を押し上げていた.超音波検査による他動的肩甲骨面上の挙上の上腕骨頭の回旋動態評価は術後リハビリテーションの進捗状況の客観的指標となり得るため,患者に合わせた腱板縫合術後リハビリテーションの一助になるものと考えられた.
  • 石谷 栄一, 原田 伸哉
    2021 年 45 巻 2 号 p. 323-326
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     我々は先行研究にて腱板断裂症例の術前MRI T2脂肪抑制画像において腱断端の信号強度(C)を三角筋の信号強度(D)と比較(C/D)し3群に分けStump分類と定義した.C/D値が1.3以上となるStumpタイプ3が高率に再断裂し,腱断端の組織学的変性と関連していた.本研究ではタイプ3に対してsuture bridge(SB)法の縫合方法と後療法の変更前をold群,変更後をnew群として術後成績について検討した.new群のSB方法はold群に対し内側列の糸を通した腱断端部を低緊張にし,後療法は術後1から2週の可動域訓練禁止時期を作った.タイプ3においてSB法による鏡視下腱板一次修復後1年の経過観察が可能であった131例中,old群80例とnew群51例を対象にした.再断裂率はold群が17.5%,new群が5.9%と有意に減少した.再断裂のオッズ比はnew群がold群よりも0.3倍へ減少した.内側列の糸を通した腱断端部を低緊張にするSB方法と早期の可動域訓練を禁止は再断裂率の減少につながった.
  • 島田 憲明, 井上 純一, 白木 克彦, 武井 良太, 税田 和夫
    2021 年 45 巻 2 号 p. 327-330
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術後に再断裂をきたした例に鏡視下大腿筋膜移植術を施行し,その臨床成績を検討した.対象は術後再断裂症例に対し施行した大腿筋膜パッチ法(PG)7例と上方関節包形成術(ASCR)5例である.両群を術前後での疼痛スケール,JOAスコア,可動域で比較した.また比較対照群として同時期に初回手術として施行した同術式の症例群とも臨床成績を比較した.結果は両群とも全項目で術後有意な改善がみられたが両群間で成績に有意差はなかった.また初回手術群と比較すると両群とも有意に臨床成績が劣っていた.術後再々断裂率はASCR群で低く,再々断裂をきたした症例は臨床成績が劣っていた.両術式とも一定の術後改善は見込めるがその改善には限界があると考えられた.術後再断裂への治療は困難で,さらなる研究,検討が必要であると考える.
  • 大石 隆幸
    2021 年 45 巻 2 号 p. 331-334
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術(以下ARCR)に肩峰外側切除(以下ALA)を追加した8例8肩を対象とし,術前後のCTデータから作成した3Dモデルを用いて骨切除量およびCritical shoulder angle(CSA)の変化を評価することを本研究の目的とした.術前CTデータを用いて,3Dモデル加工・解析ソフトウェアにより4mm幅のALAシミュレーションモデルを作成した.4mm幅のALA施行を試みた術後モデルをシミュレーションモデルと重ね合わせ切除幅を比較した.8肩の平均切除幅は肩峰前縁で1.4 ± 3.0mm(SD),前縁から10mm後方で-2.3 ± 2.2mm(SD),20mm後方で-2.3 ± 1.7mm(SD)であった.肩峰前縁において10mm後方と比較して有意に大きい切除幅であった(p = 0.042).平均CSAは術前で38.7 ± 2.6°(SD),シミュレーションで35.2 ± 2.5°(SD),術後で37.1 ± 2.5°(SD)であり,術前モデルとシミュレーションモデルの間に有意差を認めた(p = 0.027).3Dモデル加工・解析ソフトウェアを用いて,ALA施行後の骨切除量を詳細に評価することが可能であった.肩峰後方の骨切除が不十分であった.
  • 松原 佑貴, 中邑 祥博, 柏木 健児, 横矢 晋, 望月 由
    2021 年 45 巻 2 号 p. 335-338
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     肩甲骨関節窩上方傾斜と腱板断裂の関係は一定の見解を得られていない.腱板断裂症例と断裂のない症例における肩甲骨関節窩周囲の形態の違いを調査した.対象は断裂群59例と上腕骨近位端骨折で術中に腱板断裂を認めなかった非断裂群40例とした.肩甲骨3DCTの側面像で関節窩周囲を4区画に分類し,各区画の関節窩周囲の隆起の有無を調査した.また,β-angleとcritical shoulder angle(CSA)を計測した.断裂群における上方の隆起の割合は非断裂群と比べて有意に小さかった.β-angleは断裂群が非断裂群に比べて有意に小さく,CSAは断裂群が非断裂群に比べて有意に大きかった.断裂群の中で関節窩上方の隆起の有無で比較すると,隆起がある症例と比べて隆起がない症例はβ-angleが小さく,関節窩は上方傾斜していた.腱板断裂症例は関節窩上方隆起がないことが多く,関節窩上方傾斜が増大する傾向を認めた.
  • 魚水 麻里, 吉村 英哉
    2021 年 45 巻 2 号 p. 339-342
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術(以下ARCR)術後のMRIで見られる生体吸収性アンカー周囲の水腫・浮腫性変化の有無を評価し術中所見や術後成績との関連を検討した.ARCRを行い,術後1年以上の経過観察とMRI撮影が可能であった147肩を対象とした.手術はsuture bridge法を用いて内側列,外側列にアンカーを挿入し腱板の修復を行った.術後1年時に撮影したMRI T2脂肪抑制画像で,アンカー周囲の水腫・浮腫性変化の有無を評価し,水腫・浮腫性変化を生じた群をA群,生じなかった群をB群とし,Fisher正確検定を用い検討を行った.水腫・浮腫性変化は22例(15.0%)に見られ,A群において,女性の割合(50.0%)と大断裂例の割合(50.0%)がB群(順に37.6%,27.2%)に比し多い傾向にあったが有意差は認められなかった.両群で再断裂率に有意差は無かった(A群9.1%,B群9.6%).生体吸収性アンカー周囲の水腫・浮腫性変化は,過去の報告と概ね同等の出現率であった.
  • 古山 駿平, 阿蘇 卓也, 田村 将希, 野口 悠, 前田 卓哉, 高橋 知之, 井上 駿也, 尾﨑 尚代, 古屋 貫治, 鈴木 昌, 西中 ...
    2021 年 45 巻 2 号 p. 343-347
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     本研究は鏡視下腱板修復術(ARCR)後の屈曲可動域制限あり群と制限なし群の肩可動域,疼痛の比較および術前からの経時的変化を調査し,制限あり群の特徴を検討した.ARCR後に1年以上経過観察可能であった48例を対象とした.術後1年での屈曲可動域が120° 以上である制限なし群(42例)と120° 未満である制限あり群(6例)の2群に分類した.術前,術後3か月,術後6か月,術後1年での群間における肩関節可動域と疼痛の比較,また各群の肩関節可動域と疼痛の経時的変化の検討を行った.制限あり群では制限なし群に比較し術前から屈曲,外転可動域が低値であった.経時的変化について,制限なし群では外旋可動域は術後1年で,疼痛は術後6か月で改善したが,制限あり群は術前後の差はなかった.以上よりARCR後の制限あり群の特徴は術前からの可動域制限が挙げられ,また術後の外旋可動域と疼痛の改善が少ないことが示唆された.
  • 埜口 博司
    2021 年 45 巻 2 号 p. 348-353
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     2015~19年に行ったARCRで1年以上経過観察可能であった342肩を対象に,前向きに術後2週,3,6カ月,1,2,3,5年でMRIを撮影しRepair Integrityの推移を菅谷分類にて,臨床成績の推移を術前及び術後1,2,3,5年のJOA スコアにて評価した.Repair Integrityに影響を及ぼす因子を検討した.Repair Integrityは,最終経過観察時で,菅谷Type1:197肩,Type2:83肩,Type3:32肩,Type4:20肩,Type5:10肩で,再断裂は30肩(8.7%)に認めた.術後2週のMRIで菅谷Type4と5はなかったが,18肩(再断裂例の60.0%)が術後3カ月で再断裂した.術後6カ月で6肩,1年で3肩,2年で3肩が新たに再断裂していた.JOAスコアは術前59.0点から術後1年で改善し,年ごとに上昇する傾向があり最終経過観察時93.8点に改善していた .再断裂群より修復群の方がスコアは高かったが,再断裂群でも術前57.8から術後84.7点へと改善し,再断裂30肩中再手術を要したのは5肩(1.46%)であった.Repair Integrityに影響した因子は,脂肪変性度(GFDI)と断裂の大きさで,年齢も弱く相関し,罹患期間,性別,受傷機転,利き手は有意差がなかった.
  • 伊勢 昇平, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 広沢 直也, 梶原 大輔, 嶋田 洋平
    2021 年 45 巻 2 号 p. 354-357
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術(ARCR)を施行した症例のうち5年以上経過観察可能であった症例の臨床成績,術後再断裂を検討した.対象は2009年9月から2015年4月までにARCRを施行し5年以上経過観察した60例63肩.手術時平均年齢は66 ± 8.5歳(44~82),男性24例,女性36例で平均観察期間は73.6 ± 10.7ヵ月(60~132).臨床成績としてJOA ,UCLA,Constantスコア,可動域として前方挙上,下垂位外旋,内旋を評価.再断裂の有無はMRIによるSugaya分類で評価した.臨床成績は術前,術後2年,最終観察時,画像評価は術前,術後2年,術後5年に行った.臨床スコア,可動域は術前と比較し術後2年,最終観察時で有意な改善を認めたが,術後2年と最終観察時との間で有意差を認めなかった.再断裂は術後2年の時点で7例,術後5年で13例に認めたが修復良好群,再断裂群の臨床スコアに有意差を認めなかった.
  • 広沢 直也, 佐々木 裕, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 梶原 大輔, 嶋田 洋平, 伊勢 昇平
    2021 年 45 巻 2 号 p. 358-361
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     我々は,腱板断裂に合併した上腕二頭筋長頭腱(以下,LHB)病変に対し,鏡視下腱板修復術と同時にソフトアンカーとインターフェレンススクリューを併用した腱固定術を行っている.今回,その術後成績を報告する.1年以上経過観察し得た156例156肩を対象とした.腱固定方法は,大胸筋停止部近位で骨孔作成し骨孔底部にソフトアンカーを挿入,直上のLHBにアンカーの糸を通し,腱切離後に骨孔内に腱断端をアンカー糸にて誘導し5mm径のインターフェレンススクリューを用い最終固定を行う.検討項目は,臨床成績としてJOA, UCLA スコア,結節間溝の圧痛,ポパイサイン,MRI所見とした.術前平均JOA スコア62.3点,UCLAスコア 14.3点,最終経過観察時平均JOA スコア96.4点,UCLA スコア33.8点と有意な改善を認め,結節間溝の圧痛は2.6%,ポパイサインは3.2%で認めた.MRIは,94.2%で結節間溝内にLHBを認めた.我々の腱固定方法は,臨床成績,美容外観,MRI評価において良好な成績を示し有用な結果であると考えられた.
その他
  • 髙橋 知之, 田村 将希, 野口 悠, 前田 卓哉, 阿蘇 卓也, 井上 駿也, 古山 駿平, 尾﨑 尚代, 古屋 貫治, 鈴木 昌, 西中 ...
    2021 年 45 巻 2 号 p. 362-364
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     野球肘患者と健常野球経験者でゼロポジション近似肢位での肩外旋筋力(Zero外旋筋力)の比較をすることを目的とした.対象は成長期野球肘症例14名(野球肘群)と健常野球経験者9名(健常群)とした.両群間の背景因子と,投球側と非投球側のZero外旋筋力の差(Zero外旋筋力差),非投球側に対する投球側のZero外旋筋力の比(Zero外旋筋力比)の平均値についてt検定又はMann-WhitneyのU検定を用いて比較した(有意水準5%).野球肘群の年齢,身長,体重,Zero外旋筋力差,Zero外旋筋力比が有意に低値を示した.Zero外旋筋力を評価する際は両側の計測を行い投球側と非投球側の差や比を検討することが重要であり,投球障害患者におけるZero外旋筋力の評価の有用性が示唆されたと考察した.
  • 桐村 憲吾
    2021 年 45 巻 2 号 p. 365-369
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     2017年1月~2020年3月までに当院を受診した野球選手における第1肋骨疲労骨折の13例(平均年齢15.7歳)について,初診時疼痛部位,骨折タイプを評価した.骨折タイプはtype1(鎖骨動脈溝に一致するgroove型),type2 (中斜角筋付着部内骨折のintrascalene型),type3 (後方型)に分類された.また同時期に当院を受診し投球時肩痛を有した中高生野球選手57例(平均年齢14.7歳)の身体理学所見と比較検討をした.身体理学所見の評価は肩後方タイトネスの有無,股関節内旋角度,胸椎回旋制限の有無,Straight Leg Rising Testを用いた.初診時疼痛部位は肩甲骨内側部,骨折部位はType 2が多かった.骨折群と骨折なし群とでは有意な身体理学所見の差は認めなかった.
  • 後藤 英之, 杉本 勝正, 土屋 篤志, 大久保 徳雄, 竹内 聡志, 鷹羽 慶之, 武長 徹也, 吉田 雅人
    2021 年 45 巻 2 号 p. 370-373
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     社会人野球選手28名,投手20名,野手8名,平均年齢22.8歳(19-27歳)に対して,超音波検査による上腕骨頭の前方移動量の定量評価を行った.被験者を仰臥位とし,前方走査によって肩関節外転0° ,45° ,90° において肩関節最大外旋位とし前方から40Nの力を加えて骨頭を圧迫し,圧迫前後の骨頭の前後変位量(AHT)を測定した.外転0° ,45° ,90° でのAHTは投球側,平均0.3mm, 0.5mm, 0.6mm,非投球側,平均0.4mm, 0.5mm, 0.6mmで2群間で有意差はなく,投球側と非投球側での差は64-82%でその差が ± 0.5mm以内であった.しかし,1mm以上の差を認める選手が3名11%に認められた.またAHTはポジション,後方タイトネスや静的安定性の有無での有意差はなかった.AHTの投球側-非投球側差は野球選手の投球時の障害リスクの一つとして捉えることができる可能性がある.
  • 瀬川 大輔, 遠藤 和博, 山口 光國, 浜田 純一郎
    2021 年 45 巻 2 号 p. 374-377
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     投球の正面動画から肩水平内転運動の有無を評価し,プロ野球選手との比較と障害別で頻度を調査した.肩内旋制限19例,肘内側側副靭帯または内側上顆骨端損傷15例,上腕骨近位部骨端損傷11例の診断を受けた45例(平均15.5歳)を対象とし,投球動作を正面からデジタルカメラで撮影後,ボールリリース(BR)時の体幹と肩のなす角度,両肩と肘のなす角度,上腕と前腕のなす角度を画像処理ソフトで計測した.いずれの角度も障害別で有意差はなかった.障害群の多くはBR時に肘が前方に出る,かつ手を真上から投げ下ろす動作だった.正面画像で肩と肘が重なり上腕と前腕のなす角度が計測困難な症例は45例中34例であった.障害群はプロ野球選手と比較し両肩と肘のなす角度及び上腕と前腕のなす角度が有意に低下していたが,そこから肩水平内転運動が生じているかは断定できない.水平内転が起こるタイミングは投球の習熟度を示すと考えられた.
  • 西中 直也, 鈴木 昌, 田鹿 佑太朗, 古屋 貫治, 木村 亮介, 尾崎 尚代, 田村 将希, 阿蘇 卓也, 高橋 知之, 筒井 廣明
    2021 年 45 巻 2 号 p. 378-381
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     投球動作におけるゼロポジション近似肢位での肩外旋と肘伸展機能を評価するテストを考案し投球側,非投球側の代償運動の出現頻度を検討した.
     対象は肩あるいは肘痛を有する野球選手37例74肩(平均年齢21.4歳)とした.ゼロポジション近似肢位での外旋筋力をみるZero外旋テスト,同じく肘伸展筋力をみるZeroリリーステストを投球側と非投球側で行った.徒手抵抗時に開始前の肘の位置が維持できれば代償なし群,維持できなければ代償あり群とし,代償運動の出現頻度を検討した.
     Zero外旋テスト,Zeroリリーステストともに投球側で非投球側と比べ有意に代償運動がみられた.
     Zero外旋,Zeroリリーステストの代償運動は投球フォームでの「身体の開き」,「肘下がり」などに関連していると考えられる.これらは肩肘への過負荷になる可能性があり,代償運動は障害への危険因子と推察する.
  • 黒瀬 健太, 間中 智哉, 清水 勇人
    2021 年 45 巻 2 号 p. 382-386
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     凍結肩に対して非観血的関節授動術は,良好な成績との報告があるが,術後可動域の悪化や肩痛が再発したとの報告もある.そこで今回,凍結肩と診断され非観血的関節授動術を行った24例24肩を対象とし,術後1週~術後1年の自動可動域ならびに疼痛の推移について調査した.疼痛に関しては,Visual Analogue Scale(以下,VAS)で評価した.自動可動域は,術前で屈曲・下垂位外旋・内旋がそれぞれ,100 ± 12° ,14 ± 12° ,殿部 ± 1,術後1週で,163 ± 11° ,39 ± 12° ,L1 ± 1,と術前よりも有意に改善していた.疼痛においても,術前で,85 ± 18mm,術後1週で27 ± 25mm,と有意に改善しており,早期に自動可動域改善・除痛が可能であった.しかし,疼痛は,術後1か月でVAS 13 ± 15mmとなるものの術後2か月で24 ± 25mm有意に再燃していた.術後2か月時は自動可動域の改善が良好であるにも関わらず,疼痛が再燃する傾向にあるため,医師と連携し疼痛対策を講じる必要があるものと考えられた.
  • 大西 信三, 小川 健, 埜口 博司, 牧原 武史, 池田 和大, 小川 佳士, 渡部 大介, 道信 龍平, 照屋 翔太郎, 山崎 正志
    2021 年 45 巻 2 号 p. 387-391
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     初診時の身体所見上凍結肩と診断したが,その後に撮像したMRIにて腱板筋筋腹の信号変化を認めた症例を経験した.MRIにて腱板筋付着部・筋腹がT2強調像・STIR像共に高信号を呈した6肩である.初診時1例は疼痛強く自動運動困難で,他の5例の可動域平均は屈曲50° ,外旋8° ,内旋は第5腰椎レベルであった.それぞれバセドウ病,骨髄異形成症候群にて同種臍帯血移植後,腎機能低下あり尿中BJP陽性,RAとシェーグレン症候群合併,胃癌術後化学療法中,腎癌術後再発にて化学療法中であった.これらの症例は関節内ステロイド注射などの治療が奏功せず,原病の病勢に症状が関連し,原病の治療が重要であると考えられた.
  • 和才 志帆, 内山 善康, 今井 洸, 渡辺 雅彦
    2021 年 45 巻 2 号 p. 392-395
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     繰り返す肩関節血腫は比較的稀な病態であり,当院で治療を行なった症例について,その特徴を検討した.2015年1月から2019年3月の間に,繰り返す肩関節血腫を認め,当院で治療を行なった6例6肩(男性2例,女性4例),平均年齢69.5 ± 5.5歳を対象とし,平均経過観察期間は16.5 ± 5.6ヶ月であった.全例,関節鏡下滑膜切除術を施行した.検討項目は血液凝固異常,外傷歴,画像所見による腱板断裂,関節症性変化,滑膜増生,骨浸潤の有無,病理診断,肩関節血腫の再発の有無である.全例血液凝固異常はなく,外傷歴は2例33%に認め,全例で腱板断裂,関節症性変化,赤褐色絨毛様の異常滑膜増生を認めた.MRIでの骨浸潤は2例33%,びまん型腱滑膜巨細胞腫(D-TGCT)に特徴的な結節性病変は1例17%に認めた.病理所見よりD-TGCTの診断に至ったのは1例のみであった.術後,全例で肩関節血腫の再発は認めなかった.
治療法
  • 梶原 大輔, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 広沢 直也, 野島 大輔, 嶋田 洋平, 伊勢 昇平, 秋本 浩二
    2021 年 45 巻 2 号 p. 396-401
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     Os acromialeはリバース型人工肩関節全置換術(RSA)術後に三角筋機能低下を起こす可能性があり手術適応は慎重に検討すべきである.本研究の目的はOs acromialeを有する症例の RSA術後臨床成績および画像変化を検討することである.2016~2019年にRSAを施行したOs acromialeを有する4症例を対象とした.男性3名女性1名,平均年齢は77.8歳,平均経過観察期間は26.3ヶ月,術中に肩峰に対する処置は施行しなかった.評価項目は可動域,VASと臨床スコア,CTを用い肩峰とOs acromialeとのなす角(α角)を計測し,術前後の角度変化を検討した.
     前方挙上と内旋,VAS,臨床スコアは有意に改善した.画像上,Os acromialeは平均24.0° 尾側に転位した.Os acromialeの4例に対してRSAを施行し,術前後でOs acromialeの角度変化を認めたが良好な臨床成績が得られていた.
  • 大石 隆太, 村 成幸, 宇野 智洋, 結城 一声, 新宮 恵, 高木 理彰
    2021 年 45 巻 2 号 p. 402-406
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下肩腱板修復術(ARCR)の術後疼痛に対して,単回と持続の斜角筋間ブロックの鎮痛効果を前向き無作為で比較した.当院でARCR を行った38 例を対象とし,術前に斜角筋間ブロック単回のみ(単回群22 例)か,その後に持続用カテーテルを留置するか(持続群16 例)を無作為に割り付け,ブロック施行から術後疼痛増悪までの時間,術後7 日までのNumerical Rating Scale,術後追加鎮痛薬の使用回数,術翌日の朝と昼の食事摂取量を比較検討した.ブロック施行から疼痛増悪までの時間は単回群で平均16.4 時間,持続群で平均26 時間と,持続群で有意に長く(p=0.001),術当日の追加鎮痛薬使用回数は単回群で平均1.29 回,持続群で0.63 回と,持続群で有意に少なかった(p=0.01).術翌朝と昼の食事摂取量は両群で有意差を認めなかった.ARCR前に斜角筋間に持続カテーテル留置を行うことにより,単回ブロックに比べ術後鎮痛効果は約10時間延長され,術後追加鎮痛薬の使用を減らすことができた.
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