女子学生を対象に食嗜好度,食習慣についてアンケート調査を行い,同時に味覚官能検査を行った.その結果,(1)食嗜好度では,果実類8.3,菓子類が7.4と好まれ,味に対する好みでも甘い者が6.9と高く,女性特有の甘党嗜好を示した.(2)食習慣,食状況とも普通,もしくは良好以上が過半数を占め,健全な食生活を営んでいることがわかった.(3)4原味の識別結果は,甘味の正解率77.6%,酸味正解率67.3%,塩味正解率92.9%であった.苦みに対しては,99%の正解率であったので,試液濃度の再検討を要するものと考えられ,次回の研究課題とした.味覚識別検査正解者と誤答者の各食品における嗜好度について,t検定の結果,1%危険率で甘味正解者は誤答者に比べて漬物類を有意に好み,嗜好飲料類は有意に好まれなかった.酸味正解者についても10%危険率ではあるが,漬物類を好む傾向にあり,嗜好飲料類は1%危険率で有意に好まれなかった.塩味正解者も10%危険率ではあるが,嗜好飲料類は好まれない傾向であった.(4)塩味の閾値と食習慣,食状況の関係は,食習慣,食状況とも善し悪しにかかわらず,標準閾値を中心に正規分布をしていた.また,甘味の閾値との関係は,食習慣,食状況の悪い者が甘味を遅く感ずる者が多かったが,X
2検定の結果,有意差を認めるまでには至らなかった.(5)塩味の閾値と食品嗜好度の関係は,X
2検定の結果,5%危険率で果実類や砂糖類など甘味中心の食品を好む者は,塩味に対する感度が良好であった.また,豆類を好む者は5%危険率で,塩味に対する感度が鈍感であった.甘味の閾値と食品嗜好度の関係は,X
2検定の結果,1%危険率で漬物類を好む者は,甘味の感度が鋭敏であった.以上,女子学生の味覚感度について,味覚官能検査と食嗜好,食習慣との関連性をみると,塩味よりも甘味に関してより強く関係しており,亜鉛摂取量との関連性を支持する結果が得られたので,今後はこれらの点について,重点的に解析していきたい.なお,この要旨については,日本調理科学会平成元年度大会において発表した.
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