SNSの発達により、人々の声を直接聞けるようになった。しかし、人々の関心は断片化され、わずかな時間に入手した情報に影響されている。NIRAフォーラム2023「テーマ4:SNS時代の政策決定メカニズム」では、こうしたネット環境が世論形成に及ぼす影響、伝統的なメディアの役割、そして人々の声を適切に政治に届ける方策について、討論を行った。SNS上の意見は社会の意見から大きく乖離し、人権侵害や虚偽情報による制脳的な事態が懸念される。日本の社会の「空気」を乗っ取られないようにすることが重要だ。虚偽情報に対抗するには、様々な公的情報がオープンで常に検証可能な形になっていることが不可欠であり、省庁を横断する統計機構の整備を進め、統計データの充実を図ることも必要だ。一方、伝統的なメディアは、刺激的な単純化した記事で読者を集めようとしてさらに信頼を失うという悪循環になっている。個人の嗜好によらず、知っておくべき情報を、正確に、またタイムリーに伝え、国民のリテラシーの向上や政策立案に貢献できるよう、ビジネスモデルを変えていくことが求められよう。人々の声を政策に反映するには、データに基づき、きめの細かい国民像を描くことが肝要である。市場や検索データなど様々な情報を活用して、サイレントマジョリティを含めた人々の声を吸い上げ、政策に反映する。そのためには、政策決定のプロセスを理解し、人々の問題意識を官僚や政治家に咀嚼可能な形で伝える「ソーシャルセクター」の充実が不可欠である。
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