新型コロナウイルス感染症が社会および医療システムに大きな問題を起こしているが,機械的血栓回収術のような緊急度が非常に高い治療は提供し続ける必要がある.しかし一方で,コロナウイルス感染症は院内感染を来しやすいため,その予防にも努めなければならない.本稿ではCOVID-19 疑い例に対する緊急血管内治療における患者スクリーニングや評価,感染予防・環境汚染対策のための当院のプロトコールを紹介する.
【目的】コイルによる経動脈的塞栓術で治療した pial arteriovenous fistula(PAVF)の 2 例を報告する.【症例】56 歳男性.右前頭葉に前大脳動脈,中大脳動脈の末梢から feeding される PAVF を認めた.45 歳女性.右前頭葉に中大脳動脈の末梢から feeding される PAVF を認めた.どちらの症例も fistula のごく近傍に対してコイルにより feeder occlusion を行うことで arteriovenous shunt が消失した.【結論】fistula のごく近傍に対するコイルによる経動脈的塞栓術によって安全に PAVF を治療できる症例がある.
【目的】 頚動脈系と椎骨脳底動脈系を結ぶ血管吻合には原始血管の遺残や外頚動脈の分岐血管を介する吻合がある.両側頚動脈椎骨動脈吻合を伴った両側内頚動脈狭窄症に対して CAS を施行した症例を経験したので報告する.【症例】症例は 79 歳男性.右上下肢の脱力発作にて近医から紹介受診.精査にて両側内頚動脈狭窄および両側外頚動脈 - 椎骨動脈吻合を認めた.上記病変に対してflow reversal 法にて CAS を行った.【結論】われわれが渉猟した限りでは,両側の頚動脈椎骨動脈吻合を伴う内頚動脈狭窄症に対して血行再建術を行った報告は少ない.Flow reversal 法にて安全に手技を施行でき,かつ術後合併症なく経過した.
【目的】頚動脈ステント留置術後にステント内プラーク突出が残存し,6 週間後に浮動性プラークを生じて虚血性合併症を来した症例を報告する.【症例】72 歳男性.無症候性内頚動脈狭窄に対して頚動脈ステント留置術を施行した.術中にステント内プラーク突出を認め,ステントを追加留置してプラーク縮小を確認し手技を終了した.抗血小板薬 2 剤を継続しプラーク増大は認めなかったが,6 週間後に minor stroke を生じた.脳血管撮影でステント内浮動性プラークを認め,ステントを追加留置した.【結論】頚動脈ステント内プラークの残存は,増大傾向がなくとも遅発性に虚血性合併症を生じる可能性があり,積極的治療を考慮する必要があると考えられた.
【目的】稀な遺残血管である遺残性原始舌下神経動脈に発生した動脈瘤に対して複合的な治療を行った症例を経験したため報告する.【症例】38 歳,女性.くも膜下出血を発症し,遺残性原始舌下神経動脈と後下小脳動脈の分岐部に動脈瘤を認め,開頭クリッピング術を施行.経過良好につき独歩退院した.その発症から 20 カ月後の分娩中にくも膜下出血を発症し,動脈瘤の再発を認めたため脳動脈瘤コイル塞栓術を行った.【結論】遺残性原始舌下神経動脈を含めた遺残血管は血管の脆弱性が示唆される.治療後の動脈瘤再発も高率である可能性があり,慎重な経過観察が必要である.
【目的】脊髄硬膜動静脈瘻に対する経動脈塞栓術は外科手術に比して侵襲が少なく,試みられる治療である.動静脈瘻の部分に液体塞栓物質を到達させて塞栓することで根治が得られるが,注入に際しては流入動脈が細く屈曲していることも多いため,カテーテルの挿入が困難なことがある.挿入できたとしても椎骨動脈から流入動脈が分岐する場合には塞栓物質の椎骨動脈への逆流や血管ネットワークを介しての迷入などの危険性がある.【症例】54 歳女性.脳性麻痺のため全介助の状態であった.くも膜下出血にて発症した.右椎骨動脈造影で C4-6 レベルの根動脈から流入血管を受け,前脊髄静脈に流出する硬膜動静脈瘻を認めた.流出静脈には静脈瘤を認め,くも膜下出血の原因と考えられた.液体塞栓物質を用いて根治的に塞栓する方針とし,バルーンガイディングカテーテルを併用して右椎骨動脈の血流を逆流させた状態で液体塞栓物質を注入した.流出静脈から動静脈瘻にかけて塞栓した.術後,新たな神経学的異常はみられず,脳梗塞などの合併症もみられなかった.【結論】脊髄硬膜動静脈瘻に対する経動脈塞栓術における近位部バルーンテクニックは有用である.
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