ライフサイクルコスティング(Lcc)手法はシステムや製品及び社会システムに至るまでの大きな資源の創成や調達に際して有効であることは自明である.しかし,現産業構造の下での完全な適用には当該ライフサイクルの分断という大きな障壁を持つ.ライフサイクルの分断とは設計製造の段階を受け持つ供給者側と調達、管理、運用改善を担う所有者側と保全と保全支援活動の個々に独立したビジネス形態が存在していることを意味する.また、当該設計思想の維持継続から分離した改善、変更、保全の危険が内在することも意味する.ただ,理想的手法として棚上げしたり,品質コストで代用したり,一部の調達管理の手法として留めたりするべきものではない.そこには工学的合理性と全体的社会的効率という大きな利便が隠されているからである.一方,総合的資産管理に関する規格化,国際会計基準及び国際入札要件等にみられるように,Lccの見積り評価分析手法に対する要請が示唆されているのである.これはこの手法の有効性の認識と併せて手法導入に関する世界的動向を示唆している.ここではLcc手法の基盤としているディペンダビリティマネジメントシステムをより有効に適用すべく,拡張したシステム化の意義を説き,適正な新システム体系の構築を提唱する.社会システムという構造の中でディペンダビリティマネジメントシステムを有効化し,分断の弊害は社会的担保などで補う仕組みを持つ工学的システムを提唱し,その中でのLcc手法の有効性を認識する.
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