尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編
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53 巻
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  • 桑原 芳哉
    2021 年 53 巻 p. 1-15
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    社会教育調査及び日本図書館協会による調査(JLA 調査)において,公表されている「図書館数」の差異について分析した。2018年度の調査結果では,社会教育調査が3,360館に対しJLA 調査では3,296館と,64館の差異がある。また,図書館数に差異を生じている市区町村は130自治体であった。両調査では,調査対象とする図書館の相違があることから,差異を生じる主な要因として,公立図書館に関しては図書館設置条例または施行規則に規定されている「分館」「分室」等の扱いの相違が考えられる。一方で,各図書館や自治体の回答姿勢等の課題も内包されている可能性がある。
  • Magnet の葛藤とMary の死をめぐって
    田口 誠一
    2021 年 53 巻 p. 17-28
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    Theodore Dreiser はSister Carrie(1900)やAn American Tragedy(1925)を書いたアメリカの小説家である。ドライサーの作品にPlays of the Natural and the Supernatural(1916) やThe Hand of the Potter(1918)という戯曲があることはあまり知られていない。前者には,労働者のマグネットが主人公である“The Girl in the Coffin” を含む7編の一幕劇が収められている。この作品では,主人公のWilliam Magnet が,娘のMary の不名誉な死による個人的な悲しみの感情と,ストライキのリーダーとしての職責の葛藤に焦点を当てられている。この論文では,マグネットの葛藤ばかりでなく,メアリーの死について考察しながら作品の評価を行っている。
  • 「医者と医者の妻」を中心に
    竹下 裕俊
    2021 年 53 巻 p. 29-38
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    本稿ではヘミングウェイ作品の登場人物の指示表現研究の一環として,短編集『われらの時代に』の「医者と医者の妻」を取り上げ,言語学的文体論の立場から分析を試みた。ヘミングウェイが選択する指示表現は,ハードボイルドスタイルそのままに,一見,簡素で飾り気のないものばかりである。しかし,それが登場人物どうしの,あるいは語り手と登場人物 の心理的な距離感や関係性を示唆するうえで,料理の隠し味的な技法として作家には不可欠なものとなっていることがうかがえる。今回の「医者と医者の妻」の分析でも,作家による医師と妻の指示表現の巧みな選択と配置により,ふたりの心理的軋轢が暗示されていることが分かった。
  • 「文化適応パターン」を活用して
    中川 明夫
    2021 年 53 巻 p. 39-54
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    外国語および異文化の習得において,言語と文化の関連性を学習者自身で探求し,理解することは非常に有効である。本稿では,日本語スピーカーが韓国語の文化象徴語を日本語・日本文化と比較対照するための教育方法を考案した。特に,比較する道具として「文化適応パターン」を設定し,このパターンを活用した韓国語の文化象徴語に関する資料分析を試みた。
  • 畠山 真一
    2021 年 53 巻 p. 55-72
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    上代語のリ形が見せる多義性は,現在までさまざまな視点から分析が進められてきている。本論文は,動詞のリ形は「強い均質性」をもった局面を記述するという能力を持っていることを述べ,この能力こそが多義性を生み出していると主張する。さらに,本論文は,「均質性」に「強い均質性」と「弱い均質性」の2 種類があることを提案し,この区別が上代語の リ形と現代日本語のシテイル形の違いを分析するとき有用であることを明らかにする。
  • マタニティウエアの構成とサイズの分析
    小松 美和子
    2021 年 53 巻 p. 73-83
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    近年の衣生活の変化に伴い,市販のマタニティウエアは,妊娠期の体型の変化より見た目を重視し,またウエアのほとんどが産前産後に使える服として作られていた。さらに,デザインを優先したため,サイズ,素材,機能等の安全性や着心地の面から問題があることが明らかとなった。妊娠期の安全で快適な衣服設計をするにあたり,着装評価を行ったウエアのパターン分析を行い,寸法やサイズ,構成に関して課題を明確化することを目的とする。また,各メーカーが設定しているサイズ表記や基準が異なっており,現在のマタニティウエアの基準となっているサイズ分析の結果を報告する。
  • 明治30~40年代の熊本県の検証を基にした考察
    森 みゆき
    2021 年 53 巻 p. 85-105
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    筆者は,本論の先行調査として,明治年間の「九州日日新聞」(明治21年創刊)における西洋音楽に関連する記事を網羅的に調査した。その結果,学校における音楽教育の実態が明らかになった。その中でも特に,師範学校や高等女学校に勤務した音楽教員等の活動が多岐に渡ることが判明した。彼らは,学校での音楽教育に加え,演奏会での演奏,音楽教科書等の執筆,楽曲の作詞・作曲,県下の小学校教員等への音楽講習等を行っていた。つまり,彼らの活動は,県下の教育及び文化向上に貢献したと捉えることができる。本稿では,特に,高濱孝一,入江好治郎,犬童信蔵(球渓),成田蔵巳,長橋熊次郎について言及する。音楽教員等は,熊本師範学校,熊本高等女学校,尚絅高等女学校等に勤務していたが,彼らは単独で活動するだけなく,連携して活動していたことも分かった。
  • 倉橋惣三の「生活」概念①
    柴田 賢一
    2021 年 53 巻 p. 107-118
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    教育においては古今を問わず「生活」という文言が数多く用いられる。本研究では教育における生活概念の生成過程を明らかにするため,倉橋惣三の初期の著作を史料としてその分析を試みた。その結果,倉橋惣三の抱く理想の生活像が生活と教育が分離する以前のものであったことが明らかとなり,また生活と教育を接近させるうえで倉橋が重視していた点が明らかとなった。
  • 安村 由希子
    2021 年 53 巻 p. 119-127
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    本論では,言葉の6つの働きと「幼稚園教育要領」や「保育所保育指針」に示されている領域「言葉」のねらいとの関連性を述べた。また,今回の改訂で加わった「言葉に関する感覚を豊かにする」ための方法として,物語に着目し,それを日常の保育の中で場面に応じて自作する例も述べた。保育者が日常生活で子どもと言葉を使ったやり取りをする際,言葉の働きの中でも4つの点を特に意識すること,また物語を日常保育の中で取り入れていくことで,子どもの言葉が育ち,言葉に関する感覚が豊かになるための環境が整っていくものと考えられた。
報告
  • 福永 美佳
    2021 年 53 巻 p. 01-15
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    本稿は,『玲瓏倡和』一巻にもとづいて明代知識人による散曲創作について考察している。ここに収める序や跋は,本書が楊慎及び彼と親しい人物との交流の記録であることを示している。では,なぜこのような書が編纂されたのだろうか。 元代散曲に備わる卑俗性や饒舌さが,明代散曲において影を潜めたことは,従来散曲文学の消長とみなされてきた。しかし,明代の知識人らは自分たちが持っている教養のなかで非知識人による元代散曲を分析し,卑俗性や饒舌さをある程度飼いならした作品を新たに作り出した。その意味では,通俗性と崇高なる部分とを併せ持つ明代散曲は元代散曲に比べ多声的である可能性が指摘できる。
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