土木学会論文集D
Online ISSN : 1880-6058
ISSN-L : 1880-6058
64 巻, 3 号
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和文論文
  • 大渕 憲一, 川嶋 伸佳, 青木 俊明
    2008 年 64 巻 3 号 p. 325-339
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     1902名の市民に対する2度の社会調査によって社会資本整備に対する公共評価の構造を探り,意思決定領域で行政優先,住民優先,手続き的公正,結果領域で事業利益,住民弊害,広域弊害,分配的公正の計7次元を抽出した.現在の政策に対して回答者は全般的に批判的だが,行政優先と事業利益の2次元は満足度と正の関係を,手続き的公正と広域弊害の2次元は負の関係を示した.自民党支持者は事業利益と行政優先の2次元を重視し,弊害,公正さ,住民意思などの次元は軽視した.野党支持者や支持政党なしの回答者はこれと正反対だった.高所得者の評価は自民党支持者と類似していたが,行政に対する信頼は低かった.高学歴者は手続き的公正や弊害を重視する反面,事業利益に注目するなど多面的な評価を示した.
  • 中山 晶一朗
    2008 年 64 巻 3 号 p. 340-353
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     交通ネットワークの状況は一日の中で大きく変化するため,従来までの静的な均衡配分(日配分)による交通量配分は十分ではないことが多いと考えられる.この問題に対応するために,これまでに時間帯別配分モデルが提案されている.しかし,既存の時間帯別モデルでは,時間帯間での交通量の扱いに問題があるものが多い.本研究では,リンク上の交通量が次の時間帯に残留することによって,交通ネットワーク上で混雑の時間・空間移動を記述することが可能な時間帯別配分モデルを提案する.そして,解の存在及び一意性を示す.さらに,そのモデルを仮想ネットワークに適用し,従来の時間帯別配分モデルの計算結果と比較することにより,モデルの特性や妥当性について検証する.
  • 桑沢 敬行, 片田 敏孝, 及川 康, 児玉 真
    2008 年 64 巻 3 号 p. 354-366
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     水害による人的被害を低減するためには,適切な住民避難が行われることが必須である.このためには,住民が受け入れやすい的確な避難計画,そして,水害に対する住民自らの意識や知識の向上を促進する効果的な防災教育が重要である.本研究では,このような認識のもと,災害情報の伝達状況や住民避難,そして洪水氾濫といった水害時における一連の地域状況を総合的に表現するシナリオ・シミュレータを構築した.本シミュレータは,シミュレーション結果をわかりやすくアニメーション表示できることから,地域に予測される被害や適切な対応行動について具体的に説明する防災教育ツールとして利用できる.また,人的被害規模などの指標により情報伝達や避難計画を評価できることから戦略策定ツールとしても有効である.
  • ∼地区交通問題に関する調査を対象として∼
    小嶋 文, 久保田 尚
    2008 年 64 巻 3 号 p. 367-379
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     現在,住民の意見を反映した計画作りのための意見の集約方法や,そこで意見を言わない人々(サイレント層)の位置づけについて明確な基準が存在していない.本研究では,地区交通計画に関する意識調査を用いてサイレント層と調査内容との関係を検討し,適切な意見集約方法のための知見を得ることを目的とした.分析の結果,サイレント層は調査主題の交通問題と関りが浅いことが示唆された.自身が危険だと感じている道路とは別の道路のみに交通問題の対策案が提示されている場合,地区全体の交通問題の認識に関わらず,サイレント層になり易いことが分かった.また,サイレント層には単独世帯が多く,督促後の回答には無回答項目数が多いことから,サイレント層の交通問題への関りの低さが浮かび上がった.
  • 桑沢 敬行, 片田 敏孝
    2008 年 64 巻 3 号 p. 380-390
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     津波災害や地震災害を対象とした被害想定に関する研究は,数多く存在する.しかし,そのほとんどは各災害を単独で取り扱ったものであり,連動して発生する両災害の相互作用を考慮した人的被害構造が検討された事例は少ない.本研究では,このような問題認識から,地震発生から津波襲来までの地域状況を総合的に表現するシナリオ・シミュレータを構築した.具体的には,想定地震に対する家屋倒壊やそれに基づく道路閉塞を表現することで,地震による直接的な被害や避難路制約に基づく避難の遅延などを考慮した津波災害時のより現実的な人的被害の推計を可能としている.また,本研究では,本シミュレータにより,津波避難における家屋倒壊や道路閉塞の影響や家屋の耐震化による人的被害の低減効果について分析した.
  • 徐 飛, 小林 潔司
    2008 年 64 巻 3 号 p. 391-410
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,貯水池の所有と運営に関する上下分離型水力発電プロジェクト契約における最適発電政策について考察する.運営者は完全競争的な電力市場において,河川流量リスク,電力価格リスクという2種類のリスクを考慮しながら期待収益を最大にするように電力を生産する.所有者は,契約期間内のリース料金収益の最大化を図る.以上のプロジェクト契約における運営者の行動を,確率的動的計画法を用いて期待収益最大化モデルとして定式化し,プロジェクト価値とリスクを計測する方法を提案する.さらに,運営者が顧客と直接取引契約を締結する場合も取上げ,運営者と顧客の間のリスク分担構造を分析する.最後に,アメリカ合衆国におけるOroville Damを対象として,本研究で提案した方法論の有効性について実証的に検証する.
  • 森杉 壽芳, 岡松 明良, 河野 達仁
    2008 年 64 巻 3 号 p. 421-431
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/20
    ジャーナル フリー
     防災プロジェクトの費用便益分析マニュアル(治水・海岸及び道路事業マニュアル)では,便益を観察可能な期待被害額で計測している.しかし,人々は必ずしもリスク中立的とは限らず,完全保険の存在も現実的でないため,期待被害額は便益指標として適切ではない.本研究では,計測値の信頼性を高めるために,非現実的である完全保険や,観察が困難である効用関数形を仮定せず,実際に観察可能である個人の行動結果に基づく便益計測手法を提案する.具体的には,便益の定義として弱(Hicks)補償基準と等価であることがわかっているアレー余剰を採用して,防災プロジェクトによる個人の防災投資行動の変化を観察することによって,防災プロジェクトの便益を計測する方法を開発する.
  • 石倉 智樹, 竹林 幹雄
    2008 年 64 巻 3 号 p. 432-446
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/20
    ジャーナル フリー
     羽田空港の再拡張事業後に国際定期路線の乗り入れ制約を緩和する政策が検討されているが,首都圏に最近接する空港に新たな市場が創出されるという観点からも,国際航空市場へ大きな影響が生じることが予想される.本研究は,羽田空港の国際路線導入による市場への影響を推定するために,ネットワーク均衡モデルを用いた分析手法を提案し,複数の政策シナリオを想定してシミュレーション分析を行った.
     分析の結果,ソウルをはじめとする近距離地点においては,羽田空港の国際路線への容量割当量によって国際航空市場に及ぶ影響が敏感に反応することが示された.さらに本研究は,就航地点選定方法の変化による各国際航空市場への影響の変化についても定量的に推定した.
  • 清水 英範, 布施 孝志, 中田 真人
    2008 年 64 巻 3 号 p. 473-492
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/22
    ジャーナル フリー
     広重や北斎などの江戸の風景画には,富士山や江戸湾などの地形や江戸城の眺望を巧みに取り入れた素晴らしい都市景観が数多く描かれている.しかし,これらの風景画の多くは名所絵であり,江戸の都市景観の実態は,現代に至るまで,ほとんど明らかにされていない.本研究では,江戸絵図を基礎資料として,当時の都市景観をビジュアルに再現するための方法論を構築した.具体的には,江戸絵図の幾何学的な歪みを補正し,明治時代の東京の地形データと現代の広域地形データを統合し,さらに,江戸市中や江戸城の建造物について,主に高さ情報の時代考証を行った.そして,これらの成果を総合して,富士山や江戸湾,江戸城などの眺望を考慮に入れた,江戸の都市景観再現CGを構築した.
  • 小林 潔司, 貝戸 清之, 林 秀和
    2008 年 64 巻 3 号 p. 493-512
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/22
    ジャーナル フリー
     土木施設の劣化予測モデルとして,劣化過程を健全度間の推移確率を用いて表現したマルコフ劣化モデルが提案されている.土木施設の健全度の評価結果には,ランダム誤差や,多くの劣化事象の中から評価対象となる事象を選択する場合に生じるシステム誤差が存在する.本研究では,土木施設の劣化過程をマルコフ劣化モデルとして表現するとともに,健全度の測定結果に誤差が発生するメカニズムを隠れマルコフ劣化モデルを用いて表現する.その上で,真の健全度により定義されるマルコフ劣化モデルを,マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)シミュレーションによりベイズ推計する方法論を提案する.さらに,道路舗装を対象とした適用事例を通じて,隠れマルコフ劣化モデルの有効性について考察する.
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