日本静脈経腸栄養学会雑誌
Online ISSN : 2189-017x
Print ISSN : 2189-0161
最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集
  • 大柳 治正
    2019 年 34 巻 5 号 p. 289-296
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    日本静脈経腸栄養学会(Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition;以下、JSPENと略)の創設・発展期と学会の前身である各研究会の活動の軌跡を述べた。1970年に始まった完全静脈栄養研究会が経静脈栄養法の導入・発展を、1977年の成分栄養研究会を経て1982年に成立した経腸栄養研究会が経腸栄養法の確立・普及の道を開いた。1986年に両研究会を統合して成立したのが日本静脈経腸栄養研究会であり、1999年にこの研究会を引き継いだのがJSPENである。JSPENは静脈栄養法と経腸栄養法の代謝栄養学的特徴をより詳細に解明し、両臨床栄養法の適応と禁忌の基準を明確にした。これら学問的業績と並行して、JSPEN創設期・発展期の目標は安全な臨床栄養法の全国的な普及であった。その手段として、JSPENは日本独自の栄養サポートチーム(nutritional support team;以下、NSTと略)を考案し、会員の教育や認定制度の確立を行い、栄養療法に対する栄養療法管理加算獲得の環境整備に全力を尽くした。

  • 平田 公一, 鶴間 哲弘, 太田 盛道, 藤野 絋貴, 及能 依子, 谷口 香奈子, 鈴木 彩香, 秋月 恵美, 巽 博臣, 信岡 隆幸, ...
    2019 年 34 巻 5 号 p. 297-304
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    日本静脈経腸栄養学会が近未来において果たすべき多くの社会的課題、臨床的課題、基礎的課題の中から主な5つの課題に焦点を当てて概説した。第一に日本の危機時における栄養管理上の予防対策を行政に一任するのではなく救急系の医学会との連携による行政への提言内容の統括、そして企業の協力の下、具体的な必要数値の顕性化の役割、第二は一般医療現場の医療者の教育のみならず、国際的に通用する研究レベルでの優秀な人材の育成・支援・プロモーションの重要性、第三に人工知能(artificial intelligence;以下、AIと略)の活用を中心とした医療支援機器の開発提言と応用者の人材育成の重要性、第四に栄養不良者の個別化治療を目指した分子生物学的予知因子の可能性を探った研究の現状紹介、第五に安全で正確な栄養管理の在り方と支援機器の可能性の紹介がその内容である。栄養に関わるヒトの教育は重要であるが、完璧性の限界を認知し、また複雑な人間関係に心情的課題発生を回避した体制作りに尽力を望む。

  • 東海林 徹
    2019 年 34 巻 5 号 p. 305-310
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    日本の栄養療法を薬剤師の栄養教育の観点から考察した。薬剤師は栄養に関することを薬学教育で学んでいるものの、臨床においてそれを十分に活用できないでいた。必要がなかったのかも知れない。しかし、栄養サポートチーム(nutrition support team;以下、NSTと略)の一員として活動するためには、栄養学の知識が必要になった。そこで、日本静脈経腸栄養学会(Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition;以下、JSPENと略)薬剤師部会では、臨床に役立つ栄養学を会員薬剤師に教育することを考えた。その教育では薬剤師に特化したことも合わせて考えた。たとえば、製剤、無菌調製、薬と食物(栄養食)との相互作用などである。これらを薬剤師部会の活動指針としてまとめた。会員薬剤師教育は、この活動指針に基づいて、基礎知識、臨床への応用そして最新の話題の三部構成からなる。基礎知識は学術集会前日の「薬剤師部会セミナー」、臨床への応用は「スキルアップセミナー」における多職種との症例検討、最新の話題は「パネルディスカッション」で行った。今後も教育は重要である。薬剤師に特化した教育は、本学会先人薬剤師の努力と活躍を理解することから始まると思う。さらには薬学に臨床栄養に関わる教育を望む。

  • 山田 繁代
    2019 年 34 巻 5 号 p. 311-315
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    静脈栄養法や経腸栄養法が導入されて約半世紀が経過した。その間、静脈栄養輸液剤・経腸栄養剤、使用する器具・器材が次々と開発され、また、マニュアルやテキストも多く発行され、栄養管理は方法として確立し、質的にも飛躍的に向上した。今日に至るまで医療現場で医師、看護師、薬剤師、管理栄養士たちは、中心静脈栄養(total parenteral nutrition;以下、TPNと略)、経腸栄養(enteral nutrition;以下、ENと略)管理において種々のトラブルや合併症に遭遇し、その都度改善に向けて取り組みをしてきた。なかでも患者に一番近い存在である看護師は、患者が安全で効果的にTPN・ENを受けられるよう、試行錯誤を繰り返しながらその管理法を確立してきた。さらに患者のquality of life(以下、QOLと略)向上のため周期的輸液法や在宅静脈栄養法を導入するなど、その時々のニーズに応えられるよう学びながら工夫を重ねながら実践してきた。ここでは私が、看護師として栄養療法にどうかかわってきたかについて述べるとともに、日本静脈経腸栄養学会初代看護師部会長としての活動について振り返ってみる。

  • 中村 丁次
    2019 年 34 巻 5 号 p. 316-319
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    我が国の栄養療法は、病院給食を起点にて、医療の近代化、疾病構造の変化、さらに臨床栄養学の進歩により形成されてきた。疾病の予防、治療への有効性を追求した食事療法は、歴史の過程で、栄養が治療効果やquality of life(QOL)、さらに医療費や介護費に影響を与えることを明らかにしたことから、栄養状態の改善も目標にするようになった。食事のみならず静脈経腸栄養が発展する中で、栄養療法は包括的概念へと変化した。疾病が複合化する高齢社会では、栄養療法を実践するマネジメントケアによる総合的栄養管理が必要になった。

  • 東口 髙志
    2019 年 34 巻 5 号 p. 320-328
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    1970年に完全静脈栄養研究会が、1977年には成分栄養研究会が設立され、これらが私達の学会『一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会(2020年1月1日より日本臨床栄養代謝学会と改名):Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition;JSPEN』の最初の湧き水となった。この2筋の流れが1本となり、1998年には日本静脈経腸栄養学会となった。その後、TNTプロジェクトとNSTプロジェクトが発足し、JSPENは活き活きと活動する暴れる渓流となった。栄養管理実施加算とNST加算が承認され、2013年の法人化の際には会員数20,000名を超え、遂に大河となった。しかし、このままでは単に臨床栄養を実践する態勢を構築したに過ぎず、超高齢社会・日本を担うに相応しい確固とした栄養管理体制を構築することが求められるようになった。そこで「内固」として栄養療法に関する教育施設認定や各職医療スタッフの認定と質の向上、NSTの普及による栄養療法普及の実践、NST認定システムの確立などを全国的に展開。世界に向けても「外進」し、世界から大きな注目を浴び、すでに目指される立場となった。この先、最も必要となるのは、「世界に誇れるJSPENの伝統」である。多くの先輩諸氏から未来を担う若き力が繋がって、すべての方々に栄養を届けることができる、滔々と流れる巨大な大河にならねばならない。『変わらぬものは生き延びられない』これは人類が歩んできた歴史の教訓である。革新を繰り返していくこと、これが私達の常に求められている姿であり、『伝統は革新の上にこそ建てることができる』のである。

feedback
Top