日本ダニ学会誌
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6 巻, 1 号
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  • 松尾 智英, 毛利 孝之, 白石 哲
    1997 年 6 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    フタトゲチマダニにおける雄性生殖付属腺の外部形態と吸血・交尾に伴う組織学的変化,および組織化学的手法による雄付属腺分泌物と精包各部の比較検討を行った。雄性生殖付属腺は,射精管につながりダニの腹側を後方へと伸びる集合管から単独および対をなして突出する複数の葉から構成されていた。単独の葉は集合管の後端に直接開口して背側前方へ屈進する背中葉と,集合管の腹側前方に開口する中腹葉の2葉,対をなす葉は集合管の左右に突出する5対,すなわち前方から前腹葉,側腹葉,背側葉,後側葉および後腹葉であった。これら各葉の上皮細胞は吸血に伴って多様な分泌顆粒を生産し,交尾とともにそのほとんどを放出するという,吸血と交尾に同調したきわめて大きな形態変化を示した。これらの変化は,雄付属腺分泌物が精包を形成することを示唆している。この雄性生殖付属腺分泌物とそれらによって形成される精包の組織化学的観察によれば,外精包外層が前腹葉,外精包内層が背側葉および後側葉,精包内の3タイプの顆粒が中腹葉,後腹葉および側腹葉にそれぞれ由来することが示唆された。
  • 國本 佳範, 西野 精二, 大辻 純一, 有馬 毅
    1997 年 6 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    奈良県北葛城郡新庄町のキク圃場で,ナミハダニ黄緑型の寄主植物およびキク圃場での発生消長,キクへの寄生部位を調査した。
    1. キク圃場周辺の数種の雑草でナミハダニの寄生を確認した。
    2. 慣行の薬剤散布条件で栽培された2品種“紅葉”,“リンカーン”上でのハダニの発生消長はピークの期間などに違いはあったが,おおむね一山型であった。
    3. 両品種とも収穫後の株や翌春伸長したシュートにもハダニが寄生しており,挿し芽を経て,苗に寄生したまま新しい圃場へと移動し,繁殖した。
    4. キク上のナミハダニは定植後1ケ月以上経過した後の7月以降に急激に密度を増し,9月ころにピークを迎えた。その後,個体数は減少するものの,2月でも寄生が認められ,周年でキク上にハダニの寄生が認められた。
    5. キクヘのナミハダニの寄生部位は,植物の生育状況に左右されて変動した。
  • 角田 浩之, 広岡 禎, 毛利 孝之, 白石 哲
    1997 年 6 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    フタトゲチマダニの葉状付属腺は雌性生殖道の膣前庭部を裏打ちする上皮に由来するもので,吸血に伴って発達する。やがて上皮頂端部分は,膣前庭部クチクラから離脱し,膣前庭洞とよばれる空所が形成される。付属腺からの分泌物はこの膣前庭洞に貯められ,膣前庭部クチクラを通過して生殖道に放出される。よく発達した微絨毛,細胞間間隙及びミトコンドリアを伴う基底部細胞膜の嵌入構造などの微細構造的特徴は,この腺が輸送上皮であることを示している。産卵期間中に認められた高い分泌活性は,葉状付属腺分泌物の生殖道を通過する卵への関与を示唆する。
  • Gerald T BAKER
    1997 年 6 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Baker, G. T., 1997. Tick pulvillus: Cuticular structure and function(Acarina: Ixodida). J. Acarol. Soc. Jpn., 6(1): 25-31.
    The pulvillus in five ixodid ticks is a large, globular structure that has a thick well-sclerotized dorsal cuticle and a thin, flexible and pleated ventral cuticle. Only an endocuticle and a very thin epicuticle are found in the ventral pleated portion of the pulvillus. The pulvillus is simila in morphology and structure in all post-embryonic stages and no distinct sexual dimorphism is apparent in any of the five species. The central lumen of the pulvillus contains lipid and lipid compounds that are secreted on to the surface on which the tick walks. The material probably has adhesive properties that enable ticks to crawl along and up various kinds of surfaces. If the ventral pulvillar surface is coated, ticks are unable to crawl up a surface in order to reach a potential host.
  • 大倉 信彦, 古賀 公也, 毛利 孝之, 白石 哲
    1997 年 6 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    吸血期におけるフタトゲチマダニ雌成虫の胴体部の軟らかい皮膚の形態変化を光顕・電顕的に調べた。交尾前吸血期のクチクラ合成相において表皮細胞の円柱細胞化とクチクラの肥厚が,続いて,交尾後の急速伸長相において表皮細胞の扁平化とクチクラの厚さの減少が起こった。メタクリル樹脂包埋とトルイジンブルー染色法により,交尾前吸血期間におけるアウターエンドクチクラの肥厚は,インナーエンドクチクラがアウターエンドクチクラへと分化することによっておこることが示唆された。表皮細胞の電顕的観察は,交尾後における,クチクラ物質の開口分泌像の減少,クチクラ物質を含む大型顆粒の増加,そして粗面小胞体の減少を示した。これらは,交尾刺激が,まずクチクラ物質の分泌停止を,次にその物質の合成停止を誘導することを示唆する。
  • 山本 佳範, 青木 淳一
    1997 年 6 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    沖縄県西表島カンピレーの滝近くの非常に湿ったコケ類から,コナダニモドキ属の1新種を発見し,イリオモテコナダニモドキMalaconothrus iriomotensis sp. nov. と命名し記載した。本種は1994年に神奈川県箱根町原生花園から報告されたヨシノリコナダニモドキMalaconthrus yamamotoi Aoki, 1994と和歌山県すさみ町琴の滝から報告されているキイコナダニモドキMalaconothrus kiiensis Yamamoto, 1996によく似ているものの,吻毛が細く毛羽立っていない,後体部背毛の4対(e2,h1,h2,ps2)以外は毛羽立っている,桁の内側,胴背毛d1間,後体部後端における明点の存在,性扉および肛扉の毛の長さが短い点において相違している。
  • 大倉 信彦, 毛利 孝之, 白石 哲, 安藤 光一
    1997 年 6 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    交尾刺激によって誘導されるクチクラ柔軟化の神経内分泌的な調節機構を調べるために,フタトゲチマダニ部分吸血処女雌成虫にクチクラ柔軟化を人為的に誘導することを試みた。未交尾雌成虫の総神経節抽出液または交尾雌成虫の血リンパを未交尾雌成虫の血体腔にそれぞれ注射後,生理食塩水を48時間注入加圧すると,著しい体積増加すなわちクチクラ柔軟化が起こった。これら抽出液と血リンパの蛋白分解酵素処理は,クチクラ柔軟化誘導能を阻害しなかった。血リンパ中に注射された生理活性アミン,オクトパミンとノルアドレナリンもまた比較的低濃度(≧10-6M)でクチクラ柔軟化を誘導した。
  • 藤本 和義
    1997 年 6 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    ヤマトマダニとキチマダニの未吸血成虫の昼間における宿主探索活動を定時に屋外の実験条件下で観察した。ヤマトマダニの各個体は20日間の調査期間中,不規則にプラスチック円筒上への登り下りを繰り返した。しかし,キチマダニの各個体は調査期間中,ほとんど毎日プラスチック円筒上に登っていた。調査期間中にプラスチック円筒上に登っていた日数の割合は両種の間で明かに異なった。これは宿主探索における昼間活動性が両種の間で異なることを示唆する。宿主探索における昼間活動性の違いは両種の低湿度に対する耐性が異なることによって起こると考えられ,湿度条件は旗ずり法による両種の量的調査に影響を及ぼすものと思われた。
  • 石川 和男, Pairath SAICHUAE
    1997 年 6 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    タイ国カオヤイ熱帯雨林のリター層からトゲダニ亜目の2新種を記載した。ウデナガダニ科のPodocinum protonotum sp. nov. は,背板両側に切れ込みをもち,ジャマイカ産のP. jamaicense Evans et Hyatt に酷似している。日本産の4種には祖先形質である切れ込みはみられない。ホコダニ科のGamasholaspis khaoyaiensis sp.nov. は,♀の第1脚が無爪であるが,♂は痕跡的な爪を有していた。トゲダニ類の第1脚は歩脚から触角の機能へと進化がみられるが,本種はその移行期にあるものとして興味深い。
  • 1997 年 6 巻 1 号 p. 73-86
    発行日: 1997/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
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