アジア経済
Online ISSN : 2434-0537
Print ISSN : 0002-2942
61 巻, 3 号
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論文
  • 山尾 大, 浜中 新吾
    2020 年 61 巻 3 号 p. 2-27
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/10/14
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    本稿の目的は,ポスト紛争期のイラクの選挙において,政治動員が投票参加にどのような影響を及ぼすのかという問題を明らかにすることである。

    戦後イラクの選挙では,投票率が高い水準で推移してきた。だが,政治エリートの汚職や有権者を無視した政治利権をめぐる対立,イスラーム国(IS)掃討作戦にともなう行政サービスの質の低下などにより政治不信が深刻化し,2018年5月に行われた第4回議会選挙では,投票率が前回選挙を20ポイント近く下回った。こうした政治不信が蔓延した状況下では,政治動員を受けた有権者は投票所に足をむけるのだろうか。本稿では,著しい政治不信状況が広がった同選挙のキャンペーン期間中に電話動員の効果をはかるサーベイ実験を行った。実験データを計量分析にかけると,動員を受けた有権者は投票に行きにくくなるということが明らかになったのである。

    こうした結果から,われわれは政治不信が蔓延する状態では,政治動員が有権者の投票参加の意思を阻害する効果をもつ,という結論を導出した。

  • 宮川 慎司
    2020 年 61 巻 3 号 p. 28-60
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/10/14
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    途上国の貧困層は,生活の上で当局に認められないインフォーマルな活動を行うことが少なくない。本稿は,互いの苦境を理解するマニラ首都圏の貧困層自身が,なぜ2010年代半ばになって反インフォーマリティの規範をもつようになったかについて,スラム地域の「盗電」に関する調査から考察する。盗電を行う住民と行わない住民双方の論理から,盗電を許容しない規範が生じる理由を明らかにする。もとよりスラム住民は火災発生の恐れがある盗電に対して批判的な規範をもつ一方で,電力正規契約を得る障壁の高さから盗電を正当化していた。しかし近年の2つの法執行強化により,盗電は許容されなくなりつつある。第1に,技術的な取締りの導入により,盗電を取締られた住民が金銭的負担の不公平から盗電に対して批判を強めた。第2に,ドゥテルテ政権下における公的機関の行政手続き改善を背景に,正規契約を得る障壁低下の可能性が示され,盗電の正当化が難しくなった。

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