アジア経済
Online ISSN : 2434-0537
Print ISSN : 0002-2942
63 巻, 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
論文
  • 周 俊
    原稿種別: 論文
    2022 年 63 巻 4 号 p. 2-32
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/26
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    広義には調査研究に位置づけられる中央指導者による地方視察は,中国政治を理解する重要なポイントである。本稿は歴史学的アプローチとGISによる可視化の手法を用いて,これまで光が当てられてこなかった毛沢東などの中央指導者による視察の行動様式,諸機能の実態,及び政策過程における視察の意義を考察する。指導者の視察は国内外向けの宣伝材料に転じて宣伝機能を発揮した場合があるものの,その基本的な機能は情報収集であると思われる。しかし,それは往々にして空間的な「壁」と官僚制の「壁」によって阻まれ,「特殊な者」としての毛沢東でさえも例外ではなかった。1955年農業集団化の問題の考察を通じて,視察は末端の実態を客観的に認知する方法というよりも,むしろ,毛沢東が自らの正当性を裏づけるための道具であることが明らかになった。つまり,毛沢東が視察を利用して自らの主張に見合う証拠を探し,政策決定の主導権を握ろうとする構図が看取できる。

  • 石灘 早紀
    原稿種別: 論文
    2022 年 63 巻 4 号 p. 33-60
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/26
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    インフォーマル経済は多くの国ぐにで,当局から黙認あるいは容認されながら行われてきた。一方,それとは異なるあり方も存在している。本稿では,当局がインフォーマル経済に対して人道的観点から規制を行うことが,従事者にどのような影響を与えるかについて,スペイン領セウタとモロッコの国境地帯で行われていた「密輸」の事例をもとに考察する。「密輸」は,関税を支払わずにセウタからモロッコに商品を持ち込むものであるが,当局が事実上管理し,従事者の労働環境の改善を目指した規制を行ってきた。このような規制が従事者に及ぼす影響を,越境者やジェンダーの視点も取り入れながら論じる。本稿は,人道的観点からなされた規制が従事者の収入を減らし,従事者をより周辺的な経済活動に追いやるという再周辺化を引き起こしたことを明らかにした。そのような再周辺化の深刻度は,越境者や女性といった脆弱な属性をもつことにより増していた。

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『アジア経済』総目次 2022年
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