アジア経済
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論文
  • 中津 俊樹
    2024 年 65 巻 1 号 p. 2-28
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/27
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    バチカンと中国は2000年代に入ってから,外交関係樹立へ向けた協議を非公式に,断続的に続けてきた。その間には,2018年に両国間で合意したとされる,中国国内でのカトリック教会の活動に関する「暫定合意」に象徴されるように,進展の動きもみられた。だが,現実には両国間の外交関係樹立は実現していない。その背景には,カトリック教会およびローマ教皇庁と一体の存在としての前者と,無神論的価値観に基づく宗教政策を推進している後者のあいだでの,宗教の位置づけをめぐる認識の相違が影響を及ぼしている。加えて,習近平指導部が掲げる「宗教の中国化」も,この問題をより複雑なものとしている。このような状況のもと,バチカンによる対中政策は,「カテキズム」の内容に象徴される,カトリック教会の宗教的規範とそれに基づく伝統を「原則」とした上で,それらと合致する範囲での「一致」の実現を模索することを軸として,展開されている。

  • 上野 祥
    2024 年 65 巻 1 号 p. 29-56
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/27
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    なぜ権威主義体制において政府が抑圧によって大規模抗議行動の発生を防ぐことができない場合があるのだろうか。この問題に対し,本稿は「抑圧のミスマッチ」という視点を提示する。政府が主張と動員能力の両面で脅威と認識する反対派がすでに存在する場合には,主張と動員能力の両面で相対的に脅威が小さいと判断される反対派が新たに登場しても,政府は後者を脅威として認識しない。その結果,後者による大規模抗議行動が発生しやすい状況が形成されるのである。本稿は新聞記事や人権団体の報告書を用いて2000年代後半のエジプトにおける政府高官の脅威認識と抑圧の状況を分析した。その結果,政府がムスリム同胞団を脅威として認識する一方で,当時活発化していた抗議行動の中心となった活動家たちを脅威として認識していなかったこと,その結果後者への抑圧の程度が小さくなり,後者による抗議行動が1月25日革命に結びついたことを明らかにした。

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