アジア経済
Online ISSN : 2434-0537
Print ISSN : 0002-2942
64 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
論文
  • 近藤 高史
    2023 年 64 巻 4 号 p. 2-31
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー HTML

    パキスタンの水資源確保のためにインダス川に建設が計画されているのがカーラーバーグ・ダムである。小論の目的は同ダムが1960年代に着工が予定されていたにもかかわらず,いまだ計画段階のままとどまっている背景を明らかにすることにある。小論では同ダム建設計画の展開と建設反対派の動向を概観した後,現計画を形作った2000年代のムシャッラフ政権の取り組みと建設反対派への対応,政党の同計画への姿勢,計画をめぐるパキスタン国内の言説も検討した。そのなかで,計画停滞の背景にスィンド・パンジャーブ両州間の水配分争いを中心とした連邦・州,州間の不信感と相互の信頼醸成努力の欠如があり,これらの克服は容易でない点を指摘した。また,政治への介入を繰り返してきたパキスタン軍は水利計画にも利害関係を有しているために同ダム計画を後押ししてきたが,近年同ダム以外の水利計画の選択肢が増えたために優先順位が下がったことも背景として指摘した。

  • 烏尼爾
    2023 年 64 巻 4 号 p. 32-55
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー HTML

    内モンゴルの天然ソーダ資源は20世紀初頭の東アジアにおける近代化のなかで化学工業の原料として認識された。東部内モンゴルでは,19世紀中頃から入植してきた漢人によって天然ソーダ資源が知られており,小規模開発が行われていた。しかし,清末頃の中国における民族資本の勃興と外国資本の参入によって工業化が進み,天然ソーダの需要が高まったが,その後外国製ソーダ灰に市場を奪われた。20世紀に入ると東部内モンゴルは満蒙の一部として日本の勢力圏に入り,日本は満蒙鉱物資源として東部内モンゴルの天然ソーダ資源に興味を示していた。この時期に第一次世界大戦が勃発し,ソーダの輸入に困窮した中国と日本は東部内モンゴルの天然ソーダ資源に一層注目し,調査研究を行うと同時に開発にも取り組んだ。しかし,大戦による中国民族系ソーダ工業の自立を受け,東部内モンゴルの天然ソーダ資源の開発は衰退に向かった。本稿は,東部内モンゴルの天然ソーダ資源の開発と衰退の歴史的経緯を通して,東アジアにおける近代化学工業の発展のなかで内モンゴルの天然ソーダ資源の果たした役割の一端を明らかにする。

書評
『アジア経済』総目次 2023年
feedback
Top