アジア経済
Online ISSN : 2434-0537
Print ISSN : 0002-2942
62 巻, 4 号
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論文
  • 唐 成, 張 誠
    2021 年 62 巻 4 号 p. 3-24
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/01/07
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    本論文は,家計負債が急速に拡大している中国において,家計の金融行動を決定する重要な要素の1つである金融リテラシーと家計の借入行動の関係を明らかにするものである。具体的には,CHFSデータを用いて金融リテラシーが実際の家計負債にどのような影響を及ぼしているかについて,負債目的(経営負債・消費負債・住宅負債)に注目して実証分析を行った。

    本論文の主なファインディングは以下のとおりである。(1)世帯主の金融リテラシーが高いほど,家計は負債を持つ傾向にある。他方,金融リテラシーが低いほど,過剰負債を負う可能性がある。(2)住宅負債に対しては,金融リテラシーは有意な影響を与えないことが示唆されるが,それは中国の住宅ローン市場が非競争的であるためである。(3)消費負債に対しては,金融リテラシーが強い正の影響を及ぼしているが,これは消費者金融市場が競争的であるためであり,家計の金融リテラシーが大きな影響を与えていると思われる。

研究ノート
  • 石塚 二葉
    2021 年 62 巻 4 号 p. 25-48
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/01/07
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    大衆組織は,ベトナムの独立達成の過程において重要な役割を果たし,以後,情勢の変化に応じてさまざまに異なる任務を与えられてきた。しかしながら,いずれの時期においても,大衆組織が社会主義政治システムの基本的な構成要素であり,そのさまざまな活動を通じて共産党一党独裁体制を支えていることに変わりはない。革命や戦争,生産活動などのための大衆動員の必要性が低下したドイモイ期においては,大衆組織は,その構成員の利益を代表したり,構成員の間の相互扶助を促進するなど,一定の民主的ないし開発上の役割を果たすようになっている。このように構成員にとって有用な活動を行うことにより大衆組織は彼らの忠誠心を確保し,党の路線の伝達や当局への情報提供などの伝統的な役割を効果的に果たすことで,政治体制の安定性向上に貢献することが期待されているのである。本稿は,ベトナムで最多の構成員を擁し,最も活動的な大衆組織であるといわれる女性連合に焦点を当てる。その草の根レベルの組織・活動の実態調査を手掛かりとして,女性連合が日常的に多様な任務を遂行していることを示し,ベトナムの社会主義政治体制の安定性に貢献するその能力や直面する課題についての若干の評価を行う。

研究レビュー
  • 東島 雅昌
    2021 年 62 巻 4 号 p. 49-78
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/01/07
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    多国間統計分析と事例研究を組み合わせる実証分析は,比較政治学で広く実践され,途上国の政治分析でも数多くみられる。本稿では,この混合手法の(1)方法論的意義と問題点,(2)採用傾向,(3)問題への処方箋に焦点を当て,比較政治学における同手法を検討する。まず,統計分析と事例研究の混合を「入れ子分析」として定式化したLieberman[2005]以後に明らかになった問題を整理し,同手法にいかなる課題が残されているか論じる。次に,政治学主要誌とモノグラフで,多国間統計分析と国内事例研究を併用した実証分析の採用頻度がどう変遷してきたのか,他の分析手法や異なる混合手法と比較しつつ検討する。その結果,「入れ子分析」が時系列的に増え,特にモノグラフでの影響力が大きいことがわかった。最後に,「入れ子分析」の問題点は,統計的因果推論やビッグ・データの手法を援用することで緩和しうることを,最近の研究例を交えながら論じる。

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『アジア経済』総目次2021年
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