アジア経済
Online ISSN : 2434-0537
Print ISSN : 0002-2942
62 巻, 2 号
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論文
  • 山田 美和
    2021 年 62 巻 2 号 p. 2-23
    発行日: 2021/06/15
    公開日: 2021/07/03
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    「ビジネスと人権に関する国連指導原則」が2011年国連人権理事会において全会一致でエンドースされた。この指導原則を各国が実行すべく策定する政策文書が「ビジネスと人権に関する国家行動計画」(National Action Plan on Business and Human Rights:NAP)である。欧州各国によるNAP策定が先行する一方,タイ政府が2019年10月に初のアジア地域における国としてNAPを閣議決定し公表した。本稿では,なぜタイがアジア地域において最初にNAPを策定するに至ったのか,その過程を分析し,タイNAP策定の意義,その意義を具現するNAPの内容の特徴を分析する。軍事政権下にあったタイは,国連人権理事会における普遍的定期的レビューを逆手に取り,EU市場に応え,かつASEANのリーダーたることを示すためにNAP策定の機会を最大限に活用したと分析される。タイNAPの特徴は,国際社会から非難されてきたイシューに直截的に対応していることであり,なかでも越境投資・多国籍企業分野における政策には,投資受入国であり投資企業の母国でもあるというタイの経済的立ち位置が如実に表れている。

  • 伊藤 成朗
    2021 年 62 巻 2 号 p. 24-62
    発行日: 2021/06/15
    公開日: 2021/07/03
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    本論文では先行研究を選択的にレビューし,南アフリカでの雇用環境を考察した後に,最低賃金への雇用者の対応について南アフリカのデータを用いて吟味した。本論文は最低賃金引き上げ幅が地域によって異なるという自然実験的側面に着目し,引き上げ前の2002年の農業生産データと引き上げ期の2007年の農業データを用いて,その効果を推計した。用いたのは一階差分推計という標準的な推計方法である。推計結果からは全般的に最低賃金引き上げが利潤を圧縮したことが示唆され,一部作物では低賃金雇用を減らしたほか,単位当たり価値を高めたことが示された。この結果は最低賃金近傍での雇用が多いと負の影響があるという先行研究,機械化が進んだという先行研究と整合的でもある。最低賃金規制は賃金率を増やしたものの,一部では低賃金雇用を減らし,熟練や機械を集約的に用いる技術の採用を促して,貧困解消目標に反する結果をもたらした可能性がある。今後の研究では最低賃金の効果を推計するには生産技術の多様性に配慮することが望まれる。政策対応としては,失われた未熟練雇用の転職先を見つけるためにも,最低賃金引き上げ前から職業訓練や他職業経験の機会を提供することで,需給双方にとって転職や採用の費用を引き下げる試みが望まれる。

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