日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成25年度(一社)日本調理科学会大会
選択された号の論文の217件中201~217を表示しています
ポスター発表2日目
  • 中田 忍, 波多野 敦子, 竹井 かずえ, 角田 万里子
    セッションID: 2P-53
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】有馬温泉など日本各地の温泉地名物として、小麦粉を炭酸泉で溶いた、いわゆる“炭酸せんべい”が知られている。そこで、本研究では、種々の炭酸を含む飲料を用いてせんべいを調製し、その物理的な性質を比較すると共に、小麦粉以外の粉を用いた場合など、薄焼きせんべいに対する炭酸水の影響について検討し、利用の可能性を考察した。【方法】サンドベイカー(VHW-4300-H・三栄コーポレーションKK)を用い、市販の炭酸含有飲料(トニックウオーター、ペリエ、カントリーソーダetc.)や発泡酒で溶いた、薄力小麦粉、うるち米粉やタピオカでんぷん粉でせんべいを調製した。薄焼きせんべいの物理的性質は、レオメーター(山電製RE-3305)を用いて破断強度を測定した(圧縮速度1mm/分、圧縮歪率80%、くさび型プランジャー)。また、せんべいの色は測色色差計(日本電工製NE-2000)にて比較した。【結果および考察】レオメーターを用いて調製したせんべいの破断力を測定した結果、炭酸水で溶いた場合は、炭酸なしのものに比べいずれの場合も苛重量が低く壊れやすかった。栓を開けて24時間放置し、炭酸を一部抜いたものを用いた場合も同様であった。発泡酒を用いた場合は、特に柔らかく、炭酸なしの場合の1/5程度であった。また、米粉やタピオカ粉を用いた場合には、小麦粉より堅く、測色色差計による色の比較においては、小麦粉で焼いたものより白味の強いものが得られ、粉の違いが明らかとなった。市販の炭酸水を利用することで、乳幼児から高齢者まで、年代を問わず食することのできる、柔らかく軽いせんべいを、手軽に調製することができることがわかった
  • 菅野 友美
    セッションID: 2P-54
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】エクストルージョンクッキングとは押出し成形装置(エクストルーダー)を用いて高温高圧下で食品材料を物理的に圧縮変形し、スクリューで押出しながら加工・成形する調理法で、スナック菓子などに広く利用されている。一方、米の消費拡大の一環として米粉の利用が推進されている。そこで、米粉を利用しやすい形状に開発し、普及させることを目的とし、米の約70%を占める米澱粉のエクストルーダー処理による変化を検討した。【方法】試料はウルチ及びモチ米澱粉(島田化学工業製)を用いた。これを2軸エクストルーダー(㈱スエヒロEPM製)により処理し、バレル温度90℃、120℃、150℃、180℃、210℃の時に試料を採取した。これらの水分、保水率、水溶性糖量、X線回析などを測定するとともに、ゲル濾過クロマトグラフィー、極限粘度を分析した。【結果】水分含量、保水率は、エクストルージョンクッキンによりウルチ澱粉は生澱粉より高い値を示し、モチ澱粉は生澱粉との間に違いはみられなかった。水溶性糖量は、エクストルージョンクッキンにより著しく増加し、特にモチ澱粉はウルチ澱粉に比べて2倍近く多かった。ゲル濾過クロマトグラフィーにより分子構造を調べた結果、すべての試料は生澱粉に比べて低分子側にシフトしていた。極限粘度も同様に低下していたことから、エクストルージョンクッキンにより澱粉内部は分子が著しく崩壊し、低分子化されていることが示唆された。これらの結果から、エクストルージョンクッキンは、エクストルージョンクッキングにより米が容易に粉砕でき、新規の性状を帯びた米粉として調理・加工材料として広範囲に利用できる可能性が期待できるものと考える。
  • 渡邊 幾子, 植田 和美
    セッションID: 2P-55
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】阿波ういろうの嗜好には、香り、食感、甘さなどが関係しているとされる。これまでに、筆者らは上新粉のみで調製したものは保存日数の経過に伴いかたくなることを報告した。そこで、保存してもやわらかいういろうを調製することを目的とし、上新粉の一部を白玉粉に置き換えて調製したういろうの食品特性および嗜好性に与える影響について検討した。
    【方法】小豆あん、上新粉、水を基本材料とした阿波ういろうを0%添加試料とし、上新粉の5、10、15、20%を白玉粉に置き換えた試料を調製した。調製した試料について調製当日、保存経過3日目および5日目の破断強度、テクスチャー、水分含有量および色彩(L*、a*、b*値)を測定した。さらに、本学学生をパネラーとして調製当日の試料を用いて官能評価を実施し、嗜好性を検討した。
    【結果】調製当日試料の破断強度を測定した結果、0%添加試料は1.732×106N/m2であり、5、10%添加試料とでは有意差はみられなかった。一方、15、20%添加試料では破断強度は低くなり、有意差がみられた。しかし、5~20%添加試料において保存経過3日目までは、有意差はみられず、白玉粉添加が破断強度の上昇を抑制している可能性が考えられた。色彩では、白玉粉添加によりL値が低下し、肉眼では艶がみられた。0%と5~20%添加試料の色差(⊿E)では、「感知し得るほど異なる」と判定された。テクスチャーでは、白玉粉添加により凝集性は高くなり、口腔内でまとまりやすい特性をもつことが示唆された。官能評価の評点法と順位法では有意差はみられず、20%添加までは白玉粉添加による嗜好性への影響はないと考えられた。
  • 小林 美穂, 小笠原 優佳, 藤井 わか子
    セッションID: 2P-56
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】近年,米の自給率を上げるために,米粉の加工製造・開発が試みられている。岡山県でも多収穫米を使い,米粉の消費拡大のために加工製造が行われている。また,粉砕方法の開発でより小麦粉に近い粒子の微粒粉砕米粉が市場に出回っている。そこで多様な製品が作られている。本研究では,日本で昔から作られている団子に着目し,従来の上新粉と微粒粉砕米粉を使用して団子をつくり,水分量,添加物を変えて,その特性を見ることを目的として検討した。【方法】米粉は上新粉,気流微粒粉砕(乾式,湿式)米粉(以下乾式米粉,湿式米粉と称す)を使用した。団子の調整は米粉(50g)に砂糖(各0,5,10%)を入れて,水(各40,45,50%)を添加し,150回こねた。10gずつを丸めて,沸騰水に一定量入れ浮きあがってから1分30秒ゆでた。冷水に取り,30秒間さらし,物性の試料とした。物性測定は,レオメーター(サン科学)で,圧縮試験を行った。条件はアダプター径5mm,速度1mm/sec,クリアランス50%,圧縮回数2回。損傷澱粉量を損傷澱粉測定キット(日本バイオコン株式会社)で測定,走査電子顕微鏡で粒子の観察,官能評価を行った。【結果】上新粉と湿式米粉と乾式米粉を使用して団子を調整し,物性を測定した結果,3種類の米粉に対し水の添加量は湿式・乾式米粉使用の団子の方が上新粉使用の団子より硬く出来上がった。水分量50%では団子として湿式米粉の団子では形成できるが,他の2種では形成できなかった。粘性では上新粉の団子と比べ,湿式・乾式米粉とも粘性が高い。また,砂糖の添加(5,10%)では大きな違いは見られなかった。
  • 鏡田 早紀, 松本 雄大, 数野 千恵子
    セッションID: 2P-57
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】近年、多種類のミネラルウォーターが市販されているが、飲料水の他に、様々な調理に使用されている。そこで、硬度の異なるミネラルウォーターを用いて、葛餅を作成し見た目や味、硬さや歯ごたえ、色に影響を与えるかについて比較検討した。また、葛餅の出来上がりの色の違いが、無機成分が関係している可能性を考え検討した。【方法】1) 試料:市販のミネラルウォーター(硬度30, 315および1468)および葛澱粉2種類および甘藷澱粉を用いた。2) 葛餅の調製方法:各ミネラルウォーター250mLと葛粉50gあるいは300mLと60gを混合し、攪拌しながら約5分間加熱後、流し箱に詰め、20分間蒸した後、45分間冷却した。3) 破断測定はクリープメーター(RE2-33005S ㈱山電製)を、葛餅の表面の色は分光測色計(CM-3500d コニカミノルタセンシング(株))を用いて測定した。4)無機成分は葛粉を灰化後、ICPを用いて測定した。5) 官能評価:各ミネラルウォーターで作成した葛餅について外観、金属臭、硬さ、弾力等の他に総合的な美味しさを調査した。【結果】1)同じ硬度の水を使用した場合、葛澱粉に比較して甘藷澱粉で作成すると比較的硬い葛餅となった。2)葛餅の色は、硬度30のミネラルウォーターに比較して硬度315および1468の水では茶色味を帯びる傾向がみられた。3)官能評価では硬度30の水で作成した葛餅は比較的硬く弾力やプルプル感があった。それに対し硬度315および1468では柔らかくなり、やや粘性のある葛餅となった。葛餅は硬水に比較して軟水を使用した方が高い評価が得られた。
  • 白川 小稀, 深井 康子
    セッションID: 2P-58
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】超高齢化に伴い咀嚼やえん下機能が低下した高齢者が増え誤嚥に伴う肺炎の症状が多い。そこで本研究では、栄養士として食べ物の安全性の視点に立ち、えん下困難者用食品の許可基準に適したスイカゼリーの調製法およびテクスチャー特性を比較、検討した。【方法】平成24年富山県産入善ジャンボスイカの果汁を使用し、糖度、pHを測定後-30℃で冷凍保存した。その後、解凍したスイカの栄養成分及び果汁の色調を測定した。スイカゼリーの調製はスイカ果汁、砂糖及びレモン果汁を加え糖度12brix%にし、寒天(A:S-7、B:UP37K、C:UX30、D:イナアガーL、E:N65P、(株)伊那食品製)を用いて行った。テクスチャーはえん下困難者用食品の試験方法により測定し、その基準に適した濃度のスイカゼリーについて短大生および高齢者を対象にSD法にて行い、主成分分析を用いて解析した。【結果・考察】試料のスイカ果汁の糖度は8.5brix%、pH5.5であった。果汁の色調は、平均して明度はL*19.85、a*8.25、b*4.14で、水分91.2、カロテン70μg、シトルリン190mgであった。日本食品成分表のカロテン830μgに比べて著しく低かったのは、解凍後こした際にカロテンが取り除かれたためと考えられる。テクスチャー特性を許可基準と照らし合わせた所、A以外の寒天で適合濃度が認められた。主成分分析の結果、短大生では「飲み込み易さ」、「後味」、「やわらかい」、高齢者では「スイカのさわやかさ」、「やわらかい」という変量が得られ「やわらかい」のみが共通の印象として評価された。短大生ではDが、高齢者ではCが評価され、スイカゼリーの特性が異なることがわかった。
  • 寺本 あい, 治部 祐里, 桒田 寛子, 渕上 倫子
    セッションID: 2P-59
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】寒天ゲルは凍結損傷が大きく解凍後のテクスチャーが著しく悪くなる。高圧力下では0℃以下でも凍らない不凍域(液相)が存在し、200MPaで加圧後-18℃まで冷却し、この不凍域に食品を保持した後急激に圧力解除する(圧力移動凍結)と、急速凍結するため組織的に良好な状態を保つことができる。本研究は従来ゼリー材料として広く一般的に使用されている粉末寒天(寒天クック,伊那寒天)と近年市販されるようになった高粘弾性寒天(大和,伊那寒天)の冷凍耐性の違い、および圧力移動凍結がそれぞれのゲルに与える影響について検討を行った。
    【方法】1.5%寒天濃度、0%、10%砂糖濃度の寒天ゲルを直径約20mm,高さ約140~150mmの円柱状の試料とし、食品高圧処理装置(Dr.Chef、神戸製鋼所製)を用いて約-20℃、0.1MPa、200MPaで63分間冷凍し、-30℃の冷凍庫で一夜保存後大気圧下で解凍した。冷凍庫中で冷凍後大気圧下で解凍したものと比較した。これらの物性をクリープメータ(山電製)で測定し破断強度解析を行った。また、氷結晶とゲルの微細構造をクライオ-SEMで観察した。
    【結果】両寒天とも200MPaで圧力移動凍結すると、高圧処理中には凍結せず、圧力解除時に急速凍結しており、生成された氷結晶は小さくゲル全体に均一にできていた。解凍後の外観は良好で離漿は少なく、物性も未処理に近い値を示した。本研究のゲル作成条件では大和の高粘弾性はみられず、クックとほぼ同じ破断歪率であった。破断応力は大和の方が小さく,低強度のケルであることが分かった。解凍後のゲルを比較すると、外観、離漿率、物性ともに大和の方が良好な状態を示し、大和の方が冷凍耐性が良いことが分かった。
  • 板津 彩虹, 森髙 初惠
    セッションID: 2P-60
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】生活習慣病の発症予防のためには、食べ物の味の強さについても考慮する必要がある。呈味物質としては、食塩や砂糖の過剰摂取が、生活習慣病発症リスクの要因として挙げられる。本報告では、アガロースゲルを用いて、塩味と甘味における、感覚的な呈味強度と実際の呈味物質の溶出量について検討した。 【方法】分子量の異なるアガロースa、b、c(分子量:AGa>AGb>AGc)を用い、3×3×3mm3および15×15×15mm3に切断した2.0%のアガロースゲルを試料とした。呈味物質には塩味として塩化ナトリウムを、甘味としてアスパルテームを用いた。被験者は20代女子大学生10名とし、各試料を1~50回咀嚼したときの呈味強度を0~7の採点法により評価した。また、3~50回咀嚼での口腔内における呈味物質の溶出量および唾液分泌量を測定し、あわせて破断特性値を計測した。 【結果】破断特性値はAGaが最も大きく、次いでAGb、そしてAGcが最も小さかった。塩味と甘味における呈味強度は、咀嚼初期の段階では咀嚼回数が増すに従い増加したが、さらに咀嚼回数が増すと最大を示した後、減少した。しかし、呈味物質の溶出量は、咀嚼回数が増しても増加した。一方、唾液の分泌量は咀嚼回数と共に増加した。また、塩味強度では、1回咀嚼および3回咀嚼において、甘味強度では1~15回咀嚼において、AGc の3×3×3mm3ゲルはAGa の15×15×15mm3ゲルよりも有意に高い評価であり、塩化ナトリウムによる塩味は、アスパルテームによる甘味よりもゲル化による呈味の抑制は弱いものであった。
  • 加藤 静香, 平島 円, 高橋 亮, 磯部 由香, 西成 勝好
    セッションID: 2P-61
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】こんにゃくの食感や味のしみ込みやすさにはこんにゃく中の気泡量が関係すると考えられるが,こんにゃくの調製方法と気泡の関係については不明な点が多い。そこで本研究では,こんにゃく粉水懸濁液調製時の撹拌の方法,気泡安定剤や起泡剤の添加がこんにゃく粉水懸濁液の物性に及ぼす影響について検討した。
    【方法】こんにゃく粉(優良こんにゃく粉(株)丸山商店)の濃度は1.0wt%とした。気泡安定剤としてアラビアガム(和光純薬工業(株)),メチルセルロース(信越化学工業(株)),大豆多糖類(不二製油(株)),プルラン((株)林原商事)を用い,それらの濃度は0.2wt%とした。25℃の水にこんにゃく粉をハンドミキサーで約950rpmにて撹拌しながら加えた。10分撹拌後,25℃の恒温槽内で80分マグネチックスターラーにて撹拌し,さらに0~60分ハンドミキサーで撹拌したものを試料とした。各気泡安定剤はこんにゃく粉と水を撹拌する前および後に添加した。比重測定により,こんにゃく粉水懸濁液の気泡量について検討した。また,定常ずり粘度測定も行った。
    【結果】こんにゃく粉水懸濁液の比重は撹拌時間や撹拌のタイミングにより変化がなかった。したがって,試料中の気泡量は撹拌方法によらず一定だとわかった。そのため25℃での粘度も同様だった。一方,いずれの気泡安定剤を添加したこんにゃく粉水懸濁液の比重も無添加の試料に比べ低くなった。すなわち,気泡安定剤を添加するとこんにゃく粉水懸濁液中に気泡が多く混入するとわかった。今回使用した気泡安定剤の中ではメチルセルロース添加試料の比重が最も低かったことから,気泡を多く混入させるにはメチルセルロースが最も有効と考えられる。
  • 時藤 亜衣, 三成 由美, 吉岡 慶子
    セッションID: 2P-62
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】  ケーキの膨化は調製時に用いる鶏卵と小麦粉の気孔構造に影響を及ぼし、膨化率をはじめ、食感、食味や色調など、ケーキの性状を左右することが考えられる。本研究ではスポンジケーキおよびシフォンケーキを調製し、膨化率の算出、気孔構造の観察、物性測定および官能評価を行い、鶏卵の起泡性がケーキの食感および食味に及ぼす影響を検討した。【方法】  ケーキの調製は鶏卵A:ヨード強化鶏卵、B:白色レグホーン鶏卵を用いた。スポンジケーキの配合割合は薄力粉:上白糖:鶏卵=1:1:1とした(スポンジケーキA、B)。シフォンケーキの配合割合は、薄力粉1に対して、卵黄0.7、卵白2.2、上白糖0.9、サラダ油0.4、水0.5とした(シフォンケーキA、B)。各々ケーキの膨化率(菜種法)、電子顕微鏡による気孔構造観察、表皮および内相の測色、物性測定および官能評価を行った。【結果および考察】スポンジケーキの気孔構造は、Aは連続した気孔がみられ、気孔壁に小孔が認められたことに対し、Bでは部分的に気孔の亀裂が認められた。シフォンケーキの内相の色相では、明度はAの方が若干高く、黄の度合が高値を示し、A、 B間の色差は3.77であった。テクスチャー特性のかたさは、スポンジケーキではAの方がBよりも低い値を示したが、シフォンケーキではAの方が高い値を示した。官能評価は両ケーキ共に、風味、味の項目でAの方が高く評価され (p<0.05)、特に、シフォンケーキでは総合評価と最も高い相関関係を示した (r=0.728)。さらに、シフォンケーキAの方がBよりも弾力があるとされ、鶏卵Aの安定した起泡性が影響したものと考えられた。
  • 大門 奈央, 與田 昭一, 金光 智行
    セッションID: 2P-63
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】卵黄レシチンには澱粉の老化防止、クリーム類の離水防止効果などを有することが知られている。また、風味面では卵風味やコク味の付与が知られている。本研究では、卵黄が多く配合されるプリンにおいて、卵黄レシチンにおける風味やコク味の向上などの味に対する効果と物性改良効果を検討した。
    【方法】卵黄レシチン無添加、卵黄リゾレシチンLPL-20S(キユーピー㈱製)添加、卵黄レシチンPL-30S(キユーピー㈱製)添加の3群を用いて、85℃で30分間蒸したプリンを調製した。官能評価で風味や食感(口どけ)を、機器評価で硬さを評価した。また、卵黄レシチンの添加方法の違いによる硬さを比較した。
    【結果】卵黄レシチンを配合すると、プリンの卵風味と卵のコク味が付与された。プリンの硬さは、卵黄レシチン無添加>>卵黄レシチンPL-30S>卵黄リゾレシチンLPL-20S添加の順に破断応力および圧縮距離が大きく、卵黄レシチンの添加により、プリンがなめらかになることが確認された。また、卵黄レシチンを牛乳に添加するより卵黄に添加し、均一に混合することで、よりなめらかな食感のプリンが得られた。生ムリームを配合したなめらかなプリンにおいても、卵黄リゾレシチンLPL-20Sを配合すると、さらになめらかさが付与された。これらの結果は、卵黄レシチンの乳化性が卵の熱凝固に作用したものと考えられる。
  • 三浦 加代子, 今西 あみ, 西川 有香, 坂内 綾乃, 藤井 千紗, 守山 由佳理, 杉原 正治
    セッションID: 2P-64
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】手動の泡だて器や電動ハンドミキサーで撹拌した場合、ホイップクリームの含気率(オーバーラン)には限界がある。しかし、撹拌器「キスワン」は、圧力を調節しながら撹拌ができ、通常よりも大きなオーバーランが得られ、通常の器械ではいくら撹拌しても泡立たないものでも泡立てることができるという特徴をもっている。この器械を用いて新規食品開発を行うための基礎的なデータを得ることを目的として研究に着手した。今回は、生クリームを試料として圧力をかけて撹拌し、どのような特性をもったホイップクリームができるのかを検討した。また、ホイップクリームの保存性についても調べた。【方法】ステンレス製ボールに生クリームを一定量入れ、圧力を加えて5℃で撹拌した。撹拌回数は70回転/minとし、圧力は0.2MPa, 0.4MPaで行った。同様に常圧で撹拌したものを対照とした。生クリームの種類を変え、撹拌時間とオーバーランの変化を調べた。また、調製したホイップクリームの保存性をオーバーランおよび色調の変化等で検討した。【結果】生クリームの種類により、撹拌時間ごとのオーバーラン値は大きく異なった。例えば、乳脂肪分47%(種類別名称:乳等を主要原料とする食品)では、最高オーバーラン値が、常圧では撹拌時間6分で146%となったが、0.2MPaにすると105秒で約330%、0.4MPaでは105~120秒で約400%となった。即ち、1/3の時間で2倍以上の最大オーバーラン値が得られることがわかった。また、乳脂肪分35%(種類別:クリーム)の生クリームを圧力(0.2MPa)を加えて撹拌し、250%のオーバーランになったホイップクリームを調製し、その泡の安定性を経時的に調べた結果、保存温度が重要であることがわかった。
  • 後藤 月江, 遠藤 千鶴
    セッションID: 2P-65
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】近年、豆腐製造工程で大量に生じるオカラを乾燥させた「乾燥オカラ」は、食物繊維や大豆たんぱく質、イソフラボンを豊富に含む健康食品として見直され、それらを利用した食品が注目されている。「乾燥オカラ」を揚げ物料理の衣として用いた場合の、衣の付着率、吸油率、極性化合物量を求め、さらに官能評価を行い、乾燥オカラの衣としての利用について検討した。
    【方法】乾燥オカラはソヤミールおよびおからパウダー(さとの雪食品(株))を使用し、衣の付着率を求めた。植物油5種類を用い調理を行い、調理前後の油の重量差から吸油率を求めた。極性化合物量はデジタル食用油テスター((株)テスト- testo270)を用い、調理前後の油の極性酸化物量を測定した。官能評価は本学の学生と教員を対象に、5段階評点法により行った。統計解析はSPSS ver.20を使用し、クロス集計を行った。
    【結果】「トンカツ」、「エビフライ」、「コロッケ」、「唐揚げ」の、衣の付着率を求めた結果、パン粉に比べ乾燥オカラの方が低かった。吸油率は油の種類により違いが認められた。しかし、揚げ物の素材料によって同一の油であっても衣の種類により吸油率が異なり、パン粉の方が低くなる場合もあった。極性化合物量でも素材料が異なると同一の油であっても極性化合物増加量が異なったが、唐揚げは全ての油で乾燥オカラの方が極性化合物量の増加が非常に高かった。官能評価では「トンカツ」、「エビフライ」は全ての項目でパン粉を衣にしたものが、好ましい評価を得た。しかし、唐揚げは10歳~40歳代で乾燥オカラのものが高い評価を得た。揚げ物料理の種類により、乾燥オカラを揚げ物料理の衣として利用できることが示唆された。
  • 諸橋 敬子, 野呂 渉
    セッションID: 2P-66
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    【目的】油揚げの伸びは、豆乳中に含まれる空気量や加熱によるタンパク質の会合度に影響されることが報告されている。そのため、油揚げの伸びを向上させる目的として、豆乳中に空気を吹き込み油揚げ生地を製造する手法が一部メ-カ-で採用されている。しかし、豆乳中の空気量を直接的に測定することは難しく、簡易な方法として溶存酸素濃度が測定されているが、油揚げの伸びとの関係を詳細に検討した報告は少ない。そこで、様々な溶存酸素濃度の異なる豆乳を調整し、油揚げの伸びに及ぼす影響を検討した。【方法】溶存酸素濃度の異なる豆乳は、加熱しぼり後の豆乳をホモジナイザ-(AM-8(株)日本精機製作所製)で回転数や攪拌時間を変えて調整し、溶存酸素濃度の測定には低濃度ポ-タブル溶存酸素計(DO-32A 東亜DKK(株)製)を用いた。油揚げ生地は豆乳温度約60℃で凝固剤(塩化マグネシウム)を最終濃度が0.2%になるように添加し30分間凝固させた後型枠に入れて水切りを行い製造した。油揚げは、この生地を、105℃で5分間加熱後170℃で3分間加熱して製造した。油揚げの伸びは、油揚げの面積を揚げる前の油揚げ生地面積で除した値とした。また製造した油揚げの物性はテンシプレッサ-(TTP-50BXⅡ タケトモ電機製)で測定した。【結果】ホモジナイザ-で攪拌することにより豆乳中の溶存酸素濃度は増加し、攪拌した豆乳から製造した油揚げは、攪拌しないものに比べて伸びが良くなった。しかし攪拌が一定以上になると溶存酸素濃度は平衡に達し油揚げの伸びの差は小さくなった。また、加水倍率が12、13、14倍では溶存酸素濃度及び油揚げの伸びに大きな差は認められなかった。
講演
  • —考古学から見た日本人の食文化
    松井 章
    セッションID: S-1
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
    会議録・要旨集 フリー
    日本人は縄文時代まで盛んに肉食をしていたが、約2500年前の弥生時代に稲作農耕が始まり、ご飯(主食)とおかず(副食)という食文化が確立し、さらに古代、奈良時代に仏教に帰依して以来、殺生・肉食を忌避し、動物性タンパク質をもっぱら魚介類にたよるようになったが、幕末〜明治になって西洋文化の受容により、肉食に親しむようになったと考えられてきた。私自身も奈良文化財研究所に勤務し、歴史時代の遺跡出土の牛馬骨の報告をはじめたころ、そのように思い込み、散乱してバラバラで出土する動物の骨を肉食伝統の証拠とは結びつけて考えなかった。しかし近年、大規模な国土開発、特に新幹線や高速道路網の建設により、建設予定地の周囲に鋼矢板を打ち込んで、深く長いトレンチを発掘することが可能になったおかげで、地下水に浸され、酸素から遮断されて保存された動植物性の遺物が、全国各地、各時代の遺跡から出土するようになった。そうした動植物性の遺物は、土坑、濠や溝、河川跡など湿地状態から出土することが多く、そこには各時代の台所ゴミも含まれ、その中には食用となったことが明瞭な刃物痕をもつ魚類、鳥類、哺乳類の骨が多く含まれ、いつの時代でも、日本列島に居住した人々は、貴重な動物性タンパク質を無駄にしてこなかったことが明らかになった。実際、牛馬の骨の出土状態は、解剖学的な位置関係を保ったまま埋葬された例は皆無で、ほとんど全ての出土例は皮や肉が取り去られ、頭蓋、胴部、四肢が解体、廃棄され、その結果、溝・河川、土坑から各部位の骨が散乱状態で出土することが明瞭になった。
    私自身は学生時代に関東や東北に多い縄文時代の貝塚を専門とし、奈良に勤務してからは西日本に多い弥生時代の集落をめぐる環濠、古代〜中近世の貴族、武士の邸宅や都市住民の台所のごみ捨て場から出土する動物骨を一つ一つ調べ、その動物の骨の種類や部位を同定し、報告書の執筆を重ねてきた。また環境考古学の研究として、湿地に残されたトイレ土坑の土壌を水で溶かして浮遊する種子や昆虫をすくい取るフローテーション法により、消化されずに排泄された種子や花粉、魚骨、糞虫の存在を明らかにし、さらに土壌を遠心分離や薬品処理によってプレパラートを作成し、高倍率による顕微鏡観察を行って、寄生虫卵、食用あるいは薬用となった花粉などの研究手法を開発し、古来、日本人がコイ・フナ類、アユ、サワガニなどを生食か、充分に加熱しないまま摂食し、それぞれ特有の寄生虫の宿主となっていたことや、薬効成分のある生薬を服用していたことも証明した。
    今回は自分自身が中心となって30年以上、すすめてきた動物考古学や環境考古学の成果をもとに、従来の文字記録を中心とした、日本人の「肉食を忌避した食文化史」が、「神国日本」といった類の神話であったことを明らかにし、新たに明らかにすることができた食文化史について紹介したい。
  • 西山  厚
    セッションID: S-2
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    正倉院の内部は3つの部屋に分かれており、北倉には聖武天皇遺愛の品々、中倉にはさまざまな献納品と造東大寺司関連のもの、そして南倉には東大寺の宝物が納められている。そのいずれにも飲食に用いる器物が含まれており、あるいは楽器などの宝物に飲食の場面が描かれているものもある。人のための飲食器ばかりではなく、仏のための飲食器もみられる。中倉には厖大な古文書(正倉院文書)が伝わっており、それは写経所の帳簿であるのだが、紙背は反古となった公文書で、役人のための食糧についての記述も少なくない。正倉院宝物からみえてくる古代人の飲食の世界を、美しい画像を用いて紹介したい。
  • —南都諸白 奈良酒について—
    今西  清悟
    セッションID: S-3
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/23
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    平城京の造酒司(みきのつかさ)の酒造りは大陸文化の影響を受けた醞(しおり)方式という酒造法で、蒸米と米麹、水で最初の仕込みを行い、十日間醗酵させた後、熟成醪(もろみ)を筌(せん)等で濾(こ)して粕を取除き、得た酒に米麹、蒸米を仕込み十日間醗酵させる。これを都合四度繰返すことにより高濃度の酒を造る方式である。この方法で造られた酒では日本書紀の神代巻にでてくる八岐大蛇退治に用いられた八(や)醞(しおり)酒(さけ)がよく知られている。(古事記では八塩折之酒)このように平城京で本格的に始められた朝廷の酒造りは都が長岡、平安と移っても続けられました。 
    奈良の地に残された興福寺やその末寺では、酒を多量に醸(かも)して、一般市民に販売して寺の財政を賄(まかな)うようになりました。これが中世に於いて大層有名な僧房酒の始まりであります。ここで注目すべきは商品としての酒という観点。蒸米、麹米共に精白米を用いて仕込む諸白造(もろはくづくり)という原料面で大きなグレードアップがはかられると共に朝廷の酒造りの醞(しおり)方式とは全く異なる酘(とう)方式という、今日の日本酒醸造法の根幹をなす劃期的な方式で行われました。何時、誰がこの方式を工夫したのか明確な記録がないのでたぶん僧侶達が幾多の試行錯誤を積み重ねて技術革新を行ったと思われます。 
    さて酘(とう)方式とは、先ず少量の蒸米、麹、生米、水で菩提酛(もと)と名付けられた酵母培養基を造り、それを母体として三度に分けて蒸米、麹、水を加えてゆく方式であります。専門的に云うなら菩提酛(もと)段階では空中の乳酸菌を積極的に利用して乳酸醗酵を行わせ、酸度を高くして雑菌の混入や増殖を抑制し、酸に強い酵母を純粋に培養する技術であり、又、四日間で三度に分けて蒸米、麹、水を仕込む醪(もろみ)段階では麹の酵素力で蒸米の蛋白質を液化分解し旨味の素である各種アミノ酸をつくりだすこと、蒸すことによりデキストリンとなった米澱粉を糖化し、その糖分を酵母菌がアルコールに変える、即ち醗酵させるということを同時進行させる、大変複雑且つ精緻そのものの併行複醗酵(へいこうふくはっこう)と呼ばれる方式であります。 
    この醸造方法は世界の醸造酒の中でも最も高濃度のアルコール度数と旨味の多い酒を造り出しました。 人口の増加と共に酒の需要が増え、酒の仕込みを大きくしようという動きが出てきましたが陶製の壷や甕ではその要求は満たされませんでした。大型の大桶を作るのに必要な大鋸が十四世紀末から十五世紀に、前挽き鋸は十六世紀に、側板(がわいた)や底板を滑らかに仕上げる台鉋(かんな)は十五世紀中頃に、それぞれ中国や朝鮮等大陸から相次いで伝来しました。これ等の工具が日本各地いたるところにある柾目で工作し易い巨木の杉と結びつき、これまた、いたるところにある孟宗竹を細かく割り、何本も束ねて箍(たが)を作り、底板と側板(がわいた)を組合せ、締めあげて作る大型の結桶(ゆいおけ)が量産され、陶製の甕や壷に替ってゆきました。 
    このように木工技術の革新は容器革新につながり、酒の生産は一挙に大型化してゆきました。 仕込みの量の大型化は当然の帰結として産業化が可能になることを意味し、奈良町の中の良質の井戸水が湧出する処に酒造業者が誕生しました。
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