遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT, hereditary hemorrhagic telangiectasia)とは、Osler 病とも呼ばれる遺伝性全身疾患で難病指定されている。①皮膚・粘膜・内臓の多発性毛細血管拡張病変、②それら拡張血管からの反復する出血(鼻出血を含む)、③常染色体優性遺伝の3 つの特徴を有する
1)。罹患率は、5,000 ~ 8,000 人に1 人で、国内に1万~ 2 万人程度の患者が存在すると推定されている
2)~4)。病因としては、血管新生やtransforming growth factor(TGF) superfamily に属する3 つの遺伝子変異が知られている。HHT1 型(原因遺伝子:endoglin)は肺と脳動静脈奇形、HHT2 型(ACVRL1)は肝臓と脳動静脈奇形(AVM, arteriovenous malformations)の合併が多いとされている
5)~ 8)。その他、HHT の病状に加えて消化管の若年性ポリポーシスを呈する型も存在する(
表1)。主な合併症とその頻度を
表2 に示す。鼻出血は約90% の症例に起こるとされている。内臓の合併症では肺動静脈奇形(PAVM, pulmonary arteriovenous malformations)が50% と比較的高く、PAVM を有する患者の5 ~ 9% に脳膿瘍を発症するとされている
9),10)。今回、HHT患者の歯科治療時の周術期管理を経験したので、文献的考察を加え報告する。
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