千葉県立保健医療大学紀要
Online ISSN : 2433-5533
Print ISSN : 1884-9326
13 巻, 1 号
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原著
  • ─擬似的関節可動域制限による異常歩行を用いた検討─
    江戸 優裕, 大谷 拓哉, 三和 真人
    2022 年 13 巻 1 号 p. 1_3-1_11
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/12/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

     観察による歩行分析の能力向上を目的とした演習を考案し,その教育効果と改善点を検討した.対象は理学療法学生26名であった.演習内容は,健常者の下肢単関節をテーピングで擬似的可動域制限の状態とし,それによる歩容の変化について2次元動作解析ソフトを併用して捉え,さらに歩容変化の理由を考察するものであった.演習前後で歩行分析能力を評価した結果,演習前は歩行分析の内容が抽象的であったが,演習後は既習である歩行周期を実践的に用いた分析ができるようになった.また,歩行分析の精度が高い対象者は下肢の動きを運動連鎖の観点で分析し,かつ正常歩行や対側下肢の動きと比較しつつ捉えていた.これらのことから,疑似的ではあるが異常歩行を分析する演習の必要性は高く,さらに演習効果を底上げするためには運動連鎖の観点と,正常歩行からの逸脱や非対称性を捉えることで運動の異常性を解釈する視点を強化することが重要であると推論された.

  • ─食塩含有量の少ないソルセイブを用いて─
    阿曽(染矢) 菜美, 東本 恭幸, 渡邊 智子, 細山田 康恵
    2022 年 13 巻 1 号 p. 1_13-1_19
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/12/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

     高齢女性を対象とし,塩味の認知閾値と血圧や食・生活習慣との関連を調査した.塩味の認知閾値の測定には,食塩含浸濾紙「ソルセイブ®」を用いた.塩味の認知閾値が0.2mg/cm2の者(18名)を低閾値群,0.4mg/cm2以上の者(25名)を標準~高閾値群とし,年齢,Body mass index(BMI),血圧,罹患歴,エネルギーおよび栄養素摂取量,食事および運動習慣について比較した.年齢,BMI,血圧,エネルギーおよび栄養素摂取量については,いずれも両群間の有意な差はなかった.また,高血圧者の割合や,食習慣に関する質問に対する回答の割合も,両群間で有意な差はなかった.一方,運動習慣に関する質問に対して,体を動かす仕事や運動をよくする,体を動かすことが好きと答えた者の割合は,標準~高閾値群と比較して低閾値群で有意に高かった.以上のことから,塩味の認知閾値が低い者では,好んで体を動かす習慣がある可能性が示唆された.

報告
  • 西村 宣子, 富樫 恵美子
    2022 年 13 巻 1 号 p. 1_21-1_28
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/12/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

     一般病院に勤務する看護師長のセカンドキャリアに関する意識を明らかにすることを目的に,勤務継続意向,希望する職位・場所・雇用形態,活かせる看護管理能力などの質問紙調査を行った.看護師長のセカンドキャリアにおいて「働き続けたい」が43.2%であり,「現在の職場」で「スタッフ」として「非常勤」で働くことを希望していた.また,勤務継続希望の理由は「経験を活かして役に立ちたい」「看護の仕事が好き」など働くことに前向きな回答と,「生活のため」「年金の不安」など経済面でやむを得なく働くという回答に大別された.一方で看護師長は,役割を後退してスタッフとして働くことや,看護技術・即戦力などの面で不安が大きい事も明らかになった.そのため,看護管理者としての経験や能力を活かした人材活用と共に看護師長のセカンドキャリアの選択肢の幅を広げられるよう,雇用側や看護管理研修などで積極的な情報発信や技術訓練が必要であると考える.

  • 田口 智恵美, 坂本 明子, 大内 美穂子, 内海 恵美, 三枝 香代子, 浅井 美千代
    2022 年 13 巻 1 号 p. 1_29-1_38
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/12/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

     本研究では,本学を卒業した新人看護師が職場で直面した困難を明らかにした.卒業生6名に対し,アンケート調査で困難と回答した項目について具体的な内容をインタビュー調査した.
     アンケート調査を単純集計した結果,104項目中,家族への支援,褥瘡の予防,人工呼吸器の管理など13項目で困難の割合が高かった.インタビュー内容を質的帰納的に分析した結果,【情報を関連づけて患者の状態を理解することが難しい】【経験知のない臨床状況への対応が難しい】【患者の状態に合わせてケア技術を実践することが難しい】【多重課題への対応が難しい】【他の医療者との関わりの難しさがある】など12の大カテゴリーが抽出された.
     本学を卒業した新人看護師の困難の特徴は,知識不足を感じる中で情報を関連づけて患者の状態を理解する,経験知のない臨床状況で患者の状態に適した看護実践を行う,限られた時間の中で多重課題を効率よく適切に行う,看護師として関わる全ての人と良好な関係性を築く,であると考察された.

資料
  • 河部 房子, 今井 宏美, 椿 祥子, 石田 陽子, 松田 友美
    2022 年 13 巻 1 号 p. 1_39-1_44
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/12/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

     目的:一般病院に勤務する看護師のフィジカルアセスメント(以下PA)技術修得に関する学習ニーズを明らかにする.
     方法:研究参加に同意の得られた300床以上の病院に所属する卒後3年以上の看護師を対象とした.調査内容は,学生時代・就職後のPAの学習経験,系統別・症候別PA学習ニーズであり,各項目の単純集計を行った.自由記載への回答は質的に分析した.
     結果:研究協力施設は9施設,回答数は103(回収率38.1%),平均経験年数 14.6年であった.PA学習経験について,学習経験のない対象者が11.7%であった.学習ニーズが高かったのは,系統別PAでは循環器系,呼吸器系,症候別PAではショック状態,胸痛・動悸であった.自由記載からは5つのカテゴリーが見いだされた.
     考察:生命危機に直結するPA技術修得の学習ニーズが高いことや,臨床判断能力の向上に関する関心の高さが明らかとなり,これらの学習ニーズを満たすPAの教材作成が必要との示唆を得た.

  • 川城 由紀子, 石井 邦子, 川村 紀子, 北川 良子
    2022 年 13 巻 1 号 p. 1_45-1_50
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/12/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

     目的:母性看護学実習における産後の女性へのオンラインインタビューによる学生の学びを明らかにすることを目的とした.
     方法:半構成的面接と実習後アンケートの自由記載とから得られたデータから,学びに関する内容を抽出し,質的帰納的分析を行った.
     結果:対象者は9名で,151コードが抽出された.【周産期の身体的苦痛】【周産期の心理的変化】【子どもに対する愛着】【産後の疲労と家族サポートの重要性】【母子・家族への継続的視点での看護の必要性】【母子・家族の個別性に合わせた看護の必要性】等の8カテゴリーに集約された.
     結論:オンラインによる当事者参加授業において,産後の女性の心理・社会的側面における対象理解や,継続的視点や個別性に合わせた看護の必要性を学ぶことができていたが,児に関する学びは確認されなかった.臨地実習にはない学びも得られていることから,教育方法の改善により充実した実習となる可能性が示唆された.

その他
  • 佐藤 紀子, 細山田 康恵, 今井 宏美, 大内 美穂子, 岡村 太郎, 麻賀 多美代
    2022 年 13 巻 1 号 p. 1_51-1_57
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/12/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

     他県の看護医療系の単科公立大学が発揮している地域貢献機能と連携状況を調べてその特徴を見出し,本学の今後の地域貢献機能の発揮のあり方を考察する.
     看護医療系の単科公立大学20大学(本学を除く)を対象とし,公立大学協会が発行した地域貢献プログラム事例集の記載内容と各大学の公式HPから地域貢献に関連する連携状況等を抽出し,データ源とした.
     プログラム事例において,Assure機能はすべての大学で発揮されており,17大学はLink機能とともに発揮していた.双方の機能により,人々の健康やくらしの価値および知をつなぎ,持続可能な安心できる地域の構築に貢献できると考えた.また,Enhance機能とDevelop 機能が加わることで,地域に求められる人づくり・魅力的な地域づくりという視点から大学と地域が互いに活性化していくことができると考えられた.これらの機能を発揮するためには,多方面の分野が連携・協働する必要があり,大学はその核となることが求められる.

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