千葉県立保健医療大学紀要
Online ISSN : 2433-5533
Print ISSN : 1884-9326
4 巻, 1 号
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原著
  • 金澤 匠, 土橋 昇
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_3-1_9
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     卵巣を摘出されたラットではエストロゲン欠乏が生じ,高コレステロール血症や肝臓への脂肪蓄積などを引き起こす.本研究では,卵巣摘出ラット(OVXラット)における脂質代謝異常の改善を目的として,食品に含まれる難消化性成分の効果について検討を行った.難消化性成分を含む食品として低グルテリン米「ゆめかなえ」,食物繊維のペクチンを用いた.また標準米として「コシヒカリ」を用いた.
     コシヒカリ米粉の摂取によりOVXラットの血中コレステロール濃度が他の群に比べて低値を示した.ペクチンの摂取で肝機能低下に伴うBUNの減少を抑制する傾向が見られ,肝機能低下を改善する可能性が示唆された.ペクチン摂取はビフィズス菌を顕著に増加させた.また,コシヒカリ及びゆめかなえの米粉摂取では乳酸菌を増加させる傾向が見られた.
     今回の結果から,コシヒカリ及びゆめかなえの米粉やペクチンの摂取によりOVXラットにおける腸内細菌叢の悪化が改善されることが示唆された.さらにコシヒカリ米粉の摂取はOVXラットの血中コレステロール濃度を減少させるかもしれない.
短報
  • 大内 美穂子, 佐藤 まゆみ, 浅井 美千代, 阿部 恭子, 三枝 香代子, 白鳥 孝子, 田口 智恵美, 広瀬 由美子
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_11-1_17
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     成人看護学実習では実習中の事故を予防し,学生と患者の安全を確保するため,実習中の事故予防に関する実習前演習を,急性期実習前と慢性期実習前の2回実施している.演習は事例を用いた自己学習とグループ討議で構成される.この演習における学生の学びと学びの実習への活用状況,演習を2回繰り返すことによる学生の学びの変化と実習中の事故予防意識の変化を明らかにすることを目的として,成人看護学実習を履修した3年次看護大学生を対象に,急性期実習と慢性期実習の終了時の計2回の質問紙調査を行った.分析の結果,9割の学生が自己学習で事故状況を思い浮かべ,事故原因を見出し,事故予防行動を考えることができていた.また,8割の学生がグループ討議で学びを深めることができていた.さらに,実習では学習成果を活用し,事故を予測する,未熟な知識や技術を補う等の事故予防行動を取っていた.演習を2回繰り返した学びの変化について7割の学生が学びの深さは変わらないと回答した.このことから,学生の知識を実践につなげる演習方法の示唆を得た.
  • 広瀬 由美子, 佐藤 まゆみ, 阿部 恭子
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_19-1_25
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     若年女性生殖器がん患者への看護支援の現状と課題を明らかにすることを目的に,病棟及び外来の看護師21名にグループインタビューを実施した.その結果,看護支援の現状は<治療後生じ得る問題を予測するために関わりの初期からパートナーや挙児希望の有無などの背景を把握する><治療の影響の理解を促し,納得のいく意思決定を助ける><人には話しにくい胸中を表出できる環境を作る>等,課題は<時間の制限や連携の不足により患者や家族のニーズを把握していない><早期閉経や生殖に関する苦悩には関与できていない><若い患者の気持ちを推測して援助関係の構築に構えてしまう>等が明らかになった.関わり初期からの挙児希望等の把握や後悔のない意思決定の促進,若さ故に他者と共有できない苦悩の表出を促す工夫は,若年女性生殖器がん患者への看護の特徴と考える.また,患者との援助関係の構築や性に関する苦悩の軽減を図る支援の必要性が示唆された.
  • 西野 郁子, 石川 紀子, 堂前 有香
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_27-1_31
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     医療的ケアを必要とする乳幼児期の子どもの母親を対象とし,生活上で困難に感じることと必要とするサポートを明らかにする目的で調査を行った.対象者は医療的ケアを必要とする1歳から6歳の子どもの母親で,調査協力への同意が得られた9名であった.生活上で困難に感じること,得られているサポート,必要とするサポートについて,面接ガイドを用いた半構成面接を実施した.
     調査の結果,調査時までの生活で困難を感じたことには,医療的ケアに関連したこと,疾患に関連したこと,社会生活に関連したこと,きょうだいに関連したことがあった.必要なサポートは,家族で対応できない時の一時預かりなどのサービスであった.また,福祉サービスの情報や,集団保育や小学校などの情報が必要とされていた.安定した医療的ケアの継続と成長発達に伴うニーズに対し,個々の家族を継続的に支援する体制の整備が求められていると考えられた.
  • 佐藤 まゆみ, 佐藤 禮子, 片岡 純, 森本 悦子, 高山 京子, 阿部 恭子, 広瀬 由美子, 大内 美穂子
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_33-1_40
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本研究の目的は,外来通院がん患者と家族が,がんを抱えながらも自分らしく療養生活を送るために,外来の場で看護師にどのような関わりを求めているかを明らかにすることである.患者会に所属する外来通院がん患者と家族42名を,患者会ごとに5つのグループに編成しグループインタビューを行い,得られたデータを質的記述的に分析した.分析の結果,外来通院がん患者と家族が求める外来看護師の関わりは92得られ,それらは意味内容の類似性から,患者と話す時間を看護師自ら作る,話しやすい落ち着いた雰囲気で関わる,患者の病状や生活背景をよく理解して関わる,患者の気持ちを受け止め寄り添う,病気や治療についてわかりやすく説明する,問題解決方法を一緒に考える,患者が自宅で困ったときに電話相談に応じる,患者を励ます,など22にまとめられた.これらの22の関わりは,関わりの機会を作り出すことについての要望,患者や家族に関わる上での外来看護師の知識・態度についての要望,患者や家族への関わり方についての要望,と考えられた.
資料
  • 柴田 純子, 佐藤 まゆみ, 西 育子, 笠谷 美保, 瀬尾 智美, 増島 麻里子
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_41-1_46
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本研究の目的は,がん患者を対象としたサポートグループ(以下SG)の評価方法を検討するために,和文献のレビューを通して,SG参加者はSGにおいてどのような体験をしているか,また,SGの評価はどのような方法で行われているかを明らかにすることである.
     医学中央雑誌を用い発行年数を2000年~2012年に限定してキーワード検索した結果,対象文献は「SG参加者の体験を明らかにしている研究」が12件,「SGの評価をしている研究」が8件であった.多くのSG参加者に共通して見られた体験は,「参加者同士の交流によるカタルシスと分かち合いに関する体験」等5つであった.SGの評価は短期・長期的評価とも多くの場合が既存の測定尺度や自作の質問紙を用いていた.尺度を用いた量的評価はSGの評価に有効と考えられたが,特に長期的評価においては,尺度では捉えきれない参加者の体験を質的に継続して評価する必要性が示唆された.
  • 堀之内 若名, 白鳥 孝子, 榎本 麻里, 浅井 美千代, 三枝 香代子
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_47-1_54
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本研究の目的は,客観的臨床能力試験(OSCE)を適切に行うための国内での取り組みや課題を明らかにし,看護系OSCEにおける適切な評価方法についての示唆を得ることである.医学中央雑誌Web版を用いて国内の25文献を選出して内容の検討を行ったところ,【教員による評価】,【SPによる評価】,【教員・SP・学生による評価】,【評価の適正化への試み】,【OSCE評価に関連する課題】の5つのカテゴリーに整理された.看護系OSCEにおける適正な評価のための具体的課題として,曖昧な表現を避けるなどの項目を含む[評価項目設定],多段階評価や加点方式の評価導入の是非やSPによる評価の扱い方などの内容を含む[評価方法の検討],評価者の主観の排除と客観性の向上などの内容を含む[評価者の育成],SP間の差などの内容を含む[SPの育成],ならびに目的に応じたSPを活用するべきという[SPの活用法]が挙げられた.
  • -看護師の年齢・経験年数・自覚症状に注目して-
    堀之内 若名, 榎本 麻里, 桝本 輝樹, 笹本 喜美江
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_55-1_59
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     運動器看護に携わる看護師のストレスならびに対処方法の特性を明らかにしストレス対処への示唆を得ることを目的に,八尋らが作成したSSCQを用い,A県内で運動器看護に携わる看護師を対象にアンケート調査を実施した.18施設500名に郵送し,有効回答率は63.1%(164通)であった.調査の結果,年齢ではUplift,Nervousness,TypeCに有意差が認められた.看護師経験年数ではUplifts,TypeCに有意差を認めた.ストレス自覚症状数ではDailyhassles,Hardiness,Anger,TypeAにおいて有意差を認めた.明確な自覚症状を多く訴える看護師への配慮の必要性や,患者特性ならびに職場環境の調査の必要性が示唆された.
その他
  • 片倉 直子, 阿部 恭子, 榎本 麻里, 松澤 和正
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_61-1_65
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     医療整備課の委託を受け,千葉県立保健医療大学看護学科が「特別養護老人ホーム(特養)で働く看護職のためのフィジカル・アセスメント研修」を平成24年8月20日と9月4日に実施した.研修内容は,循環器・呼吸器・消化器の視診・触診・打診・聴診と嚥下機能の評価等のフィジカル・アセスメントを含む講義と,京都科学製看護教育教材の人型シミュレーターを用いた演習を中心に行った.県下245施設の特養のうち,67施設67人の研修希望の申し込みがあり,そのうち28人の看護職が受講した.研修終了時に,参加の意義と職務への役立ちの程度を評価する質問紙を受講者に依頼した.特養の看護職の学習ニーズは多様性があると予想したが,受講者は研修の意義・役立ちの度合いに関して,概ね前者は「満足」,後者は「役に立った」と回答した.質問紙の回答を参考に,来年度も県下の特養の看護職のためのフィジカル・アセスメント研修を実施していく予定である.
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