(緒言)
2020年4月1日より施行された理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則の一部を改正では,臨床実習の指導内容について学生が患者に理学療法を実施する場合,「侵襲性のそれほど高くない技術項目は何か」を具体的に示すことが求められた.発達障害理学療法分野の臨床実習において「学生が経験可能な疾患」と各疾患に対する「心身の侵襲性のそれほど高くない行為」を明確にするために,本研究では発達障害理学療法分野の臨床実習の現状を把握することを目的としたアンケート調査を実施した.
(研究方法)
対象施設は,日本国内の理学療法士が所属する病院・施設268施設(以下,実習施設)および,理学療法士養成施設258施設(以下,養成校)とした.
本研究代表者と共同研究者計2名が各々,理学療法診療ガイドライン第1版,平成31年理学療法学教育モデル・コア・カリキュラム,平成28年版理学療法士作業療法士国家試験出題基準の中から,発達障害分野の臨床実習で「学生が経験可能な疾患の候補(以下,疾患の候補)」をリストアップした.
次に理学療法診療ガイドラインおよび各疾患別のガイドラインをもとに疾患別の「心身の侵襲性のそれほど高くない臨床行為の候補(以下,臨床行為の候補)」をリストアップした.
実習施設には1を全く経験させていない,5を毎回経験させている,養成校には,1を経験する必要はない,5を必ず経験させてほしいとして,5段階で回答を求めた.
実習施設と養成校の間での差の検定のためにMann-WhitneyのU検定を用いた.
無記名調査とし,アンケート調査票の提出をもって,同意とみなすことを研究協力の依頼文に記載した.
(結果)
「疾患の候補」のリストの中で,脳性麻痺と重度心身障害児で有意差を認めなかった.
脳性麻痺と重度心身障害児で,各々の「臨床行為の候補」のリストの中で,両疾患ともに,スタンダードプリコーション,情報収集,フィジカルアセスメント,形態測定,反射検査,筋緊張検査,関節可動域計測,姿勢観察,動作観察,日常生活活動評価,各種発達評価,関節可動域運動,基本動作練習が有意差を認めなかった.
(考察)
本研究では,「疾患の候補」のリストの中から,両群間で有意差を認めないかつ,4以上の値となった疾患を抽出し,「疾患の候補」として選択した.また,選択した疾患の「臨床行為の候補」のリストの中から,両群間で有意差を認めないかつ,4以上の値となった疾患を抽出し,「臨床行為の候補」として選択した.
「学生が経験可能な疾患の候補」として,脳性麻痺,重度心身障害児が選択された.また,両疾患ともに,スタンダードプリコーション,情報収集,フィジカルアセスメント,形態測定,反射検査,筋緊張検査,関節可動域計測,姿勢観察,動作観察,日常生活活動評価,各種発達評価,関節可動域運動,基本動作練習が「心身の侵襲性のそれほど高くない臨床行為の候補」として選択された.
「心身の侵襲性のそれほど高くない行為の候補」については,2019年10月に公表された「臨床実習において学生が実施可能な基本技術の水準について」と本研究を比較しても内容が合致しているという結果となった.
(倫理規定)
本研究は,千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会の承認を得て実施した(申請番号2019-11)
(利益相反)
本論文に関して,開示すべき利益相反関連事項はない.
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