千葉県立保健医療大学紀要
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8 巻, 1 号
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総説
  • 小川 真
    2017 年 8 巻 1 号 p. 1_3-1_8
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     血清アルブミン(Alb)の測定には従来bromcresol green(以下,BCG)色素法が広く用いられてきた。しかしこの方法には,急性相反応物質とも反応するという欠点があり,現在はこの欠点の少ないbromcresol purple(BCP)改良法が普及してきた.本稿では現在使用中の病態・栄養状態診断や分類基準に加え公的サービス対象患者認定に至るまでAlb値は基本的にBCG法に基づいておりBCP改良法への対応に課題が残ることを改めて示した.臨床検査医学会からはBCP 改良法で 3.5g/dL以下なら,病態識別値の換算への使用に限り,BCP 改良法による測定値に 0.3g/dLを加えた値をBCG 法での推測値と近似するという提案がなされたが,治療方針の決定や予後判定にAlb値が用いられる場合があり慎重な対応が必要となる.2つの測定法が混在する現状では測定方法の確認が必須であり,Alb値を含むデータの公表に際して測定法の明示が必要であることが再確認された.
原著
  • 佐藤 まゆみ, 大内 美穂子, 豊島 裕子, 塩原 由美子, 笠谷 美保, 小宮山 日登美, 小坂 美智代
    2017 年 8 巻 1 号 p. 1_9-1_18
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    【目的・方法】訪問看護師が抱える終末期がん患者の食事/栄養サポートに関する困難を明らかにすることを目的に,終末期がん患者の看護に携わっているA県下の訪問看護師を対象に質問紙調査を実施した.【結果・考察】質問紙調査1:終末期がん患者の食事/栄養サポートに関して訪問看護師が抱く困難の内容として22項目が明らかになった.質問紙調査2:調査1の結果及び文献検討の結果から得られた34項目について困難の程度を調査したところ,困難の程度が最も高い項目は「食べることを妨げている症状をコントロールすること」94.6%であった.困難の程度は,年齢,看護師経験年数,1年間に関わる終末期がん患者の人数,終末期がん患者の食事/栄養サポートに関する研修会への参加経験により違いが認められた.2つの調査結果より,在宅療養中の終末期がん患者の食事/栄養サポート充実のための訪問看護師教育プログラムに盛り込むべき内容等が示唆された.
  • 大滝 千智, 石井 邦子, 麻生 智子, 日下 和代, 岡田 忍
    2017 年 8 巻 1 号 p. 1_19-1_25
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     更年期女性の口腔の健康状態および保健行動に関連する要因を明らかにするために,PRECEDE-PROCEEDモデルを基にした項目から成る調査票を作成し,更年期女性を対象に量的記述的研究を実施した.
     口腔の健康とQOLは,40歳代後半から50歳代前半の更年期に低下し,50歳代後半から改善に転じることが明らかとなった.口腔の健康とQOLおよび口腔保健行動の関連では,『口腔保健行動(方法)』には『実現要因』『口腔の健康』との関連,『口腔保健行動(頻度)』には『実現要因』『準備要因』との関連が明らかとなった.
     口腔の健康障害やQOL低下を自覚する更年期前半から口腔保健行動を促すことで,更年期女性の口腔の健康維持とQOL向上につながると考えられる.そのためには,『準備要因』である口腔の健康に関連した知識を歯科衛生士や看護職といった専門職から提供できるようにし,『実現要因』であるお金に関して無料もしくは低額負担で受検できる市町村実施の歯周病検診の周知を行い,口腔保健行動実施から口腔の健康につながるように支援していく必要があると考える.
  • 麻賀 多美代, 麻生 智子, 吉田 直美, 大川 由一
    2017 年 8 巻 1 号 p. 1_27-1_33
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本研究は,徒手による口腔内のマッサージが及ぼす生理的・主観的効果を明らかにすることを目的とした.健康な成人女性12名を対象者として,口腔内に10分間のマッサージを行い,効果を検証するためマッサージ前後に生理的・主観的評価を行った.結果は統計的分析を行ったところ,マッサージ後は唾液中のアミラーゼ活性が有意に低下し,心電図におけるR-R間隔は有意な増加がみられ,リラックスした状態であると考えられた.また,マッサージにより顔面の皮膚温は有意に上昇し,歯肉へのマッサージでは下顎中切歯部の血流量が有意に増加を示し,マッサージは血液循環の促進が期待できる.一方,主観的評価のPOMSのT得点は,マッサージ後に「緊張‐不安」,「疲労」の得点が有意に低下し,気分チェックリストにおいても,「緊張覚醒度」が有意に低下した.口腔内のマッサージは緊張や疲労感を軽減させ,リラクゼーション効果を与えることが示唆された.
  • 島田 美恵子, 岡村 太郎, 松尾 真輔, 三宅 理江子, 保坂 誠, 麻賀 多美代, 麻生 智子, 山中 紗都, 雄賀多 聡, 雨宮 有子 ...
    2017 年 8 巻 1 号 p. 1_35-1_40
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー

     本研究は,軽度認知障害(MCI)が疑われる高齢者の体力とQOL尺度(SF-36)を,健康な高齢者と比較し,MCIと強く関連する指標を検討することを目的とした.MMSE(Mini Mental State Examination)26点をカットオフ値として,地域在住高齢者126名をMCI疑いの有無で2群別した.健康な高齢者(101名 平均年齢73.8±5.6歳 MMSE29.3±1.0点)は,MMSE26点以下の高齢者(25名 平均年齢76.8±6.9歳 MMSE24.6±1.6点)と比較して,握力を除いて,体力は有意に高かった.SF-36の8下位尺度は社会生活機能,心の健康を除いて,健康な高齢者が有意に高かった.ロジスティック回帰分析の結果,「日常役割機能-身体」のみが,両群を判別する有意な項目として算出された.本研究では,「日常役割機能-身体」がMCIを予測する指標となりうることが示唆された.

  • 桝本 輝樹, 柚原 剛, 多留 聖典, 風呂田 利夫, 西 栄二郎, 駒井 智幸, 黒住 耐二, 佐々木 美貴, 中川 雅博
    2017 年 8 巻 1 号 p. 1_41-1_52
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     潮間帯における生物種の調査は,観察報告,定性調査,定量調査など複数の手法が使われることがあり,またその同定精度も様々である.このため,異なる調査の結果を評価しようと試みても,その結果精度の信頼性が問われることが多い.
     本研究では,後背湿地から前浜干潟にわたるさまざまな湿地をもつ千葉県木更津市の小櫃川河口干潟で,種の同定精度と調査場所を揃え,定量採集(コアサンプリングによる定量採集)と,観察と掘り返しという定性調査(「干潟生物の市民調査」手法)という2つの手法で得られる調査を比較することで,それぞれの調査の特性を明らかにした.また,その結果を対比するためのアグリゲートの手法についても議論し,分類群変更や誤同定の起こりやすい種を整理することの必要性を論じた.また,これらの調査のクラスター分析やnon-metric MDSといった群集構造解析結果が非常に近似しており,得られた群集構造に強い相関がある可能性を示した.
  • 川城 由紀子, 宮宗 秀伸, 石井 邦子, 松野 義晴
    2017 年 8 巻 1 号 p. 1_53-1_59
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     中高年女性の酸化ストレス状態について,更年期に伴う月経周期の状態や食生活,QOL(quality of life)との関連について検討することを目的とした.40歳以降の女性に対して,酸化ストレス度(d-ROMs値),抗酸化力(BAP値),潜在的抗酸化能である修正比(BAP/d-ROMs値/7.541)に加え,BMI,血圧,総コレステロール,LDLコレステロール,HDLコレステロール,食事摂取,血中ビタミンC・E濃度,健康関連QOLなどを調査した.対象は26名であった.性成熟期・閉経移行期・閉経後で酸化ストレス状態には差はみられなかったが,多重ロジスティック回帰分析ではBAP値・修正比においてBMIの影響がみられた.血中ビタミンC濃度とBAP値の間に正の相関があり,健康関連QOLでは身体的健康度とBAP値・修正比それぞれに正の相関がみられた.本調査では,中高年女性においてBMIは潜在的抗酸化能の低下と関連し,ビタミンC摂取は抗酸化力を亢進させ,結果的に身体的なQOLの向上につながる可能性が示唆された.
報告
  • 杉本 知子, 森 一恵
    2017 年 8 巻 1 号 p. 1_61-1_68
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本研究では,終末期にある高齢がん患者の療養生活を支えるために,看護師が高齢がん患者に対して提供している支援の特徴について明らかにすることを目的とした.
     2012年8月~12月に,病院等で就労している看護師15名を対象とし,半構成的面接調査を実施した.調査では,「終末期にある高齢がん患者に関わった時の状況」を具体的に尋ねた.面接データは,逐語記録にした後で内容分析の手法に従い質的帰納的に分析した.
     その結果,終末期にある高齢がん患者が抱える療養生活上の困難として,《空き待ちをしたりショートステイで繋ぎながら療養生活の場を確保する》など,5カテゴリーが抽出された.抽出したカテゴリーの中には医療面に限らず,高齢がん患者が抱える社会・経済面の困難を反映したものが多数みられた.このことは,地域包括ケアシステムの構築がすすめられる中で,看護師の担う責務が多様化している現状を示しているのではないかと考えられた.
  • 平尾 由美子, 原田 光子, 山田 志枝, 大桐 四季子, 佐藤 富子
    2017 年 8 巻 1 号 p. 1_69-1_76
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー

     本研究の目的は,病棟から訪問看護業務に移行した看護師がその直後に抱く戸惑いや困難の具体的内容を分析し,明らかにすることである.病棟での勤務経験を2年以上経た後,訪問看護に従事して1年前後の看護師5名に対してインタビューを行い内容を分析した.その結果,訪問看護に移行した直後に感じる戸惑い・困難は【利用者と家族の意向や家庭の状況に合わせて妥協する】【病棟にはある材料や薬剤がその場にないため工夫が必要】【一人で訪問する不安】【利用者の治療方針や薬剤の情報不足】【病棟で行ってきた看護が通用しない】【判断基準が病院と異なる】等,12のカテゴリーに集約された.以上の結果より,治療を主な目的とする病院の看護方法を身につけた看護師は,相手に合わせた看護展開を「妥協」と捉える傾向があり,それまでの看護実践方法が「通用しない」場面で,戸惑いや困難を感じていることが明らかとなった.

資料
  • ─ 国内文献の検討によるプロセスの構造 ─
    鳥田 美紀代, 杉本 知子, 佐伯 恭子, 上野 佳代
    2017 年 8 巻 1 号 p. 1_77-1_82
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本研究は,要介護高齢者が主体的に療養生活の場を移行するための要因と移行プロセスの構造を,国内文献の知見を統合して明らかにする事を目的とした.医学中央雑誌Web版,JDreamⅢ,CiNiiをデータベースとし,主体性,退院,高齢者等のキーワードを組合わせて収集した18文献を対象とした.分析対象文献の結果の記述から要介護高齢者が主体的に療養生活の場を移行するための要因を抽出してコードとし,質的帰納的方法により分析した.また,要因間の関連性を検討し移行プロセスの構造図を示した.その結果,《移行の方向性に関連する要因》,《移行の具体的な支援に関連する要因》,《移行のプロセスにおける意思決定と遂行に関連する要因》,《移行プロセスのモニタリングに関連する要因》,《移行の帰結に関連する要因》が示された.また,これらの要因の関係性から,要介護高齢者が主体的に療養生活の場を移行するための移行プロセスの構造図が示された.
  • ─ 二次資料を用いた分析から ─
    成 玉恵, 平尾 由美子
    2017 年 8 巻 1 号 p. 1_83-1_90
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     今後,急増が予測される在宅療養者に対し,地域包括ケアシステムの一つの要素として在宅看護提供システムを構築することが必要と考える.そこで,今後の在宅における看護資源の資料として,千葉県内の在宅看護に関わるNPO法人の活動内容と特性を,二次資料を用いて明らかにした.「千葉県認証NPO法人一覧表」,内閣府の「NPO法人情報」等から対象団体を抽出し分類,整理し在宅看護に関わる8団体の活動内容を【活動対象】【事業】【活動の目的】,財政状況を【財政規模】【収益の種類】【収益】ごとにまとめた.以上により1.訪問看護ステーションを運営しているNPO法人が多い 2.多彩な事業を運営しているNPO法人が多い 3.事業内容により収益に差がある,の3つが特性として導き出された.今後NPO法人による在宅看護の提供や,看護資源としての参加に向け,具体的な活動内容の調査・研究が必要であると考える.
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