海洋深層水研究
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4 巻, 1 号
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  • 藤田 大介
    2003 年 4 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2003/09/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    北海道南西岸の磯焼け地帯で採集した転石 (無節サンゴモが被覆) やエゾイシゴロモ (無節サンゴモの1種, 岩から剥がした藻体) を屋外水槽各1基 (コシダカガンガラ10個体を入れた小型巻貝区と入れない対照区) に入れ, 11℃ に加温した富山湾深層水 (取水水深321m) をかけ流して植生変化を調べる2実験を行った. 最初の実験では予め転石やエゾイシゴロモ (水深3mから採集) の表面にホソメコンブの遊走子を播種してその生育状況を観察した. 小型巻貝区では, 転石の裏側, 無節サンゴモの間隙・突起間あるいは小型海藻の基部にホソメコンブが繁茂したのに対して, エゾイシゴロモは表面が貝に嘗め尽くされてホソメコンブは全く生えなかった.対照区では転石, エゾイシゴロモともにホソメコンブが生えたが, 付着珪藻の繁茂が著しいために生育密度は低かった. 2回目の実験では, 深所 (水深7m, 岩盤と砂地との境界) の転石におけるコンブ等発芽体の有無を確かめるために, コンブ遊走子の播種を行わずに小型巻貝区と対照区の実験区を設けて観察した.その結果, 小型巻貝区ではホソメコンブに加え, ワカメやスジメが出現したが, 対照区でもホソメコンブが若干出現した.前報も含めた一連の実験により転石や貝殻の表面で合計22種に及ぶ海藻の生育が確認されたことから, 北海道南西岸の磯焼け地帯には広くコンブなどの潜在的植生 (成長が抑制された発芽体) が存在し, これらの海藻は成長に必要な栄養塩や付着珪藻を除去する植食動物が存在すれば繁茂できると考えられる.コンブ遊走子の供給はコンブ群落の回復の機会を増やすことになるが, 小型海藻の茂みがコンブの避難領域となることから考えると, 安定した群落の維持を図るためには複数種からなる群落の構築を検討すべきである.
  • 須藤 明治, 角田 直也, 高里 久三, 平良 朝幸, 大道 敦, 八木 良訓
    2003 年 4 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2003/09/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    久米島で採取している海洋深層水は, 水道水や海洋表層水と比べて比重が大きく, 人体に及ぼす水圧の影響が大きいと予想される.そこで, 今回はこの深層水と水道水を用い, 34℃ の水温及び剣状突起水位での大腿部の筋循環動態の観察と血圧の測定を行った.
    被検者は, 男性10名・女性5名 (16歳~55歳: 平均28.1歳) の計15名で, 右側の大腿内側広筋に経皮的レーザー組織血液酸素モニターのセンサーを取り付け, 深層水および水道水に浸水した. その結果, 血圧値において, 陸上座位時の127.23±12.85/81.38±10.44 (mmHg) と比較して深層水直立時が113.54±13.45/65.31±12.65 (mmHg) と統計上有意に低下していることが判明した. そして, 筋循環動態の観察より, この血圧の低下は, 深層水の水圧により静脈の帰環流が増加し, 心拍出量が増加したことにより血管の末梢抵抗が低下したことが要因ではないかと推察された.
  • CO2排出量を指標としたLCA
    大塚 耕司, 松本 吉倫
    2003 年 4 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2003/09/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    本研究では, 海水系水道インフラへの展開を前提とした海洋深層水大規模取水一分配システムにっいて, 経済面, 環境面から実現可能性について考察することを目的としている. 本報では, 相模湾から首都圏に海洋深層水を供給する陸上型および洋上型の取水システムを想定し, 環境面からの実現可能性評価としてCO2排出量を指標としたライフサイクルアセスメントを行った. その結果, 建設時におけるCO2排出量としては, 備蓄施設からのものが最も大きいことがわかった. また運用時のCO2排出量としては, 洋上型システムにおけるシャトルタンカーの排気ガスが最も大きく, ライフサイクル全体の排出量に占める割合も非常に大きいことがわかった.
  • 池谷 透, 川延 京子, 高橋 正征
    2003 年 4 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2003/09/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    水産生物資源の増産, 地球温暖化減速のための大気中二酸化炭素の吸収, 海洋深層水の効率的な資源利用などで, 貧栄養な表層水へ富栄養な海洋深層水を添加して植物プランクトンの生産を加速することが真剣に考えられている. そのためには, 実際に海域を肥沃化する前に現場モデル実験や数値シミュレーションによる効果予測が必要である. 特に, 深層水によってもたらされる栄養塩類量とそれによる植物プランクトンの生産増加 (一次生産) 効果の定量把握が重要である. 亜熱帯外洋の試水を用いた屋外培養実験を整理した結果, クロロフィルα濃度の比増殖速度は0.3日-1/μM-硝酸態窒素で増加し, クロロフィルα濃度の収量は1.48μg/μM-硝酸態窒素となった. これらの変化は表層水中にごく僅かに存在していた珪藻類を主とする植物プランクトンが増加したためで, ナノ・ミクロ植物プランクトンの割合は20%以下から80%前後に増加し, クロロフィルα濃度の増加と共に消費されたSi/N比は0.87に達した. ここで得られた速度や係数は深層水による海域肥沃化効果のモデル推定に役立つと考えられる.
  • 西川 正夫, 栗原 明夫, 五明 美智男, 加藤 謙, 佐見 誠
    2003 年 4 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2003/09/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    深層水取水施設の建設コスト削減を目的として新しい取水工法 (TUJ取水工法) を開発した.本工法では, 取水管として新しく開発した自在継手 (TUJ: Toa Universal Joint) で接続された鋼管 (内面はポリエチレンコーティングを施す) を用い, 管内空気排出量と取水管に作用させる張力の調整により敷設を行う. この敷設工法に関して取水管の基本的な挙動を把握するために室内実験を行い, 管内圧力, 管の沈降速度等に影響を与える要因を明らかにした・また・実海域での敷設実験を行い, 室内実験で得られた知見の確認を行った.
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