海洋深層水研究
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6 巻, 1 号
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  • 松村 航, 渡辺 健, 南條 暢聡, 浦邉 清治, 林 正敏, 池田 知司, 藤田 大介
    2005 年 6 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2005/12/22
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    富栄養かつ低温の富山湾深層水 (以下, 深層水) 排水・余剰水の沿岸への放流がテングサ場に与える影響を調べるため, マクサGelidium elegans Kützing枝片の流水培養を行った. 深層水の換水率4条件 (1, 3, 5, 10回転/日) では5~10回転/日, 水温5条件 (10, 15, 20, 25, 30℃) では20~25℃, 光量子密度4条件 (20, 60, 100, 200μE/m2/sec) では60~100μE/m2/secで高い相対成長率 (RGR) を示した.5段階の深層一表層混合水 (深層水濃度;100, 75, 50, 25, 0%) で培養した結果, 深層水の割合が大きいほどRGRは高かった.以上の結果から予測すると, 深層水 (3℃) を放流した場合は夏季 (表層水温27℃) のみ, 15℃ 昇温させて放流した場合は冬季 (同10℃) にもマクサの成長は促進される.ただし, 深層水の割合が高いと付着珪藻の増加が懸念される.
  • 松永 明信, 中山 恵理子, 大津 順, 南條 暢聡, 辻本 良
    2005 年 6 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 2005/12/22
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    海洋深層水の栄養塩類濃度の変動の要因を解明するために, その硝酸塩濃度の連続測定を実施した.富山県滑川市及び入善町の施設へ揚水されている海洋深層水について, 2003年1月から2004年12月まで, 硝酸塩濃度を1時間毎に計測した.滑川海洋深層水の硝酸塩濃度は通常は23~24μMで推移し, 時々8.8~25.0μMの濃度変動が観察された.一方, 入善海洋深層水の硝酸塩濃度は24~25μMで推移し, 17.6~25.4μMの濃度変動がみられた.前回の滑川での調査で既に報告した現象であるが, 濃度変動は時間単位でみられ, 数時間から数日に及ぶこと, 硝酸塩の濃度減少と水温の上昇が対応することは入善での調査でも確認された.滑川と入善における硝酸塩濃度の変動を比較すると, 入善での硝酸塩濃度が僅かに高いが, 濃度変動の幅は明らかに小さいこと, 入善での濃度減少は数時間遅れで発生する頻度が高いことが判明した.これらの現象は, 富山湾における硝酸塩濃度と水温の深度分布の測定結果から, 硝酸塩濃度が低く水温の高い水塊が両深層水取水口付近へ移動・降下すること, その降下距離は150mに及ぶこと, 入善での硝酸塩の濃度変動が小さいのは取水口深度が深いことに起因することが推定された.
  • 森岡 泰三, 堀田 和夫
    2005 年 6 巻 1 号 p. 19-29
    発行日: 2005/12/22
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    富山湾では深海産の有用魚種ハタハタの資源が激減しているため, 著者らは, 海洋深層水を用い, 人工種苗の大量放流を想定した親魚養成を試みてきた.前報で報告したように, 1歳魚の養成と採卵は既に成功しているので, 今回は受精卵の大量確保を目的として, 2歳魚の養成 (200尾) と1歳魚の大量養成 (3, 250尾) を行った結果, いずれの親魚も成熟した.産卵は2ヵ月以上に及んだが, 水温制御 (4~12℃ の段階的昇温) によってふ化の同調を行い, 70%以上のふ化を12月末の1週間に集中させ, 通常よりも2ヵ月早く種苗生産を始めることができた.ふ化仔魚を水槽と網生簀で育成した結果, 5月には通常より全長で30mm大きい稚魚が得られたが, 生残率は48%と低かった.今回の試験では, 産卵期間の長期化, 産卵魚の割合, 卵の発眼率とふ化率, ふ化仔魚の活力などに問題があり, 餌料, 日長, 水温, 飼育密度および産卵基盤の観点から考察を試みた.
  • 二村 和視, 岡本 一利, 高瀬 進
    2005 年 6 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2005/12/22
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    駿河湾深層水がサガラメEisenia arborea Areschoug配偶体の生長・成熟に及ぼす影響を調べた.雄性および雌性配偶体の8日間の体細胞平均増加率は, 表層水区で139, 93%, 397m深層水区で200, 175%, 687m深層水区で245, 247%, 鉄無添加Provasoli栄養塩補強海水 (以下PES) 区で266, 213%であった.その後, それぞれの培地に鉄を添加したものに交換し, さらに21日間培養を行った.試験終了時の雌性配偶体の成熟率は, 表層水区, 397m深層水区, 687m深層水区, PES区で, 30, 50, 80, 100%であった.以上から, 駿河湾深層水はサガラメ配偶体の生長および成熟に適していた.
  • 森野 仁夫, 滑川 隆志
    2005 年 6 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2005/12/22
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    最近の海洋深層水利用では, 深層水の清浄性を維持するため, 表層水との混合によらず, 深層水のみを飼育用水として利用する場合が多い.このような場合には深層水の水温が低いため, 水産生物の飼育に好適な水温まで深層水を加熱する技術が要求される.
    本開発では, 飼育排水や表層海水などの熱源水から熱回収を行うことにより, 効率的に温度調節を行う深層水温度管理システムを開発し, 運転状況の実測調査を行い, システムの運転性能と省エネルギー効果を明らかにした
    その結果, 熱源水の温度や流量などの条件によって異なるものの, 熱回収を行なわないシステムに比べて大きな省エネルギー効果が得られることを明らかにした.また, 実験結果を基に, 飼育排水や表層海水から熱回収を行う場合の年間の熱回収率を, 熱源水と深層水の流量比をパラメーターとして推定した.
  • Hajime ISHIKAWA, Yuki MATSUURA, Rumi YUNOKIHARA, Ryosuke MOCHIZUKI, Ad ...
    2005 年 6 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2005/12/22
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    駿河湾海洋深層水中からジテルペンの一種であるsandaracopimarinolおよびβ-sitosterolを単離同定した. Sandaracopimarinolは, 東日本の多くの森に大規模に植林されている杉から単離された化合物で, 今回, 駿河湾から取水されている焼津の海洋深層水から初めて検出された. この物質は, 山から川を通して海水まで流れていったものと考えられる.
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