沖縄本島の南方沖合で取水した表層水と海洋深層水をメソコスム内で混合して太陽光下で培養し, 主要栄養塩類, クロロフィル
a (Chl
a), ミクロ植物プランクトン相の変化を調べた.実験は1999年9月と10月の2回実施し, 実験1では培養開始時に800mの深層水を13および27% (体積比) で表層水と混合し, 実験2では400mの深層水を0.6および1.2%ずつ毎日添加した.両実験では, 硝酸塩濃度で0.15μM日
-1以上の深層水添加によって, クロロフィル
a 濃度が5~7日間の誘導期の後に硝酸塩添加量に比例した比増加速度で増加し10~12日間で最大に達した.その結果, クロロフィルα は硝酸塩1モルあたり1.4g増加した.また, 培養開始時には15%程度であった粒径2μm以上のクロロフィル
a 画分が70%以上に増加し, ナノ・ミクロ植物プランクトンの選択的な増殖促進が示唆された.原水の表層水中に極めて少数存在した珪藻類の一部の種の急速な増加が確認された.植物プランクトンの増殖刺激までの誘導期を考えると, 実験を行った亜熱帯海域で有用水産物にっながるミクロ植物プランクトンの生産性の向上には, この期間, 少なくとも硝酸塩濃度で0.1μM日
-1程度を保っような海洋深層水の施肥濃度の維持が必要になる.
抄録全体を表示