海洋深層水研究
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  • 山田 勝久, 柴田 雄次
    2023 年 23 巻 3 号 p. 81-88
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    海洋深層水(DSW)は持続可能な冷熱エネルギー源である.それは全国15箇所で取水されて,様々な分野で幅広く利活用されている.また冷熱エネルギー以外にも人類の生活に有用な物質が多様に含まれていることから,再生可能自然エネルギー資源の中でも特異な位置付けにある. DSWの取水地域では食品の土産物としてDSWを利活用した菓子類をよく見かけるが,その利活用意義を示す科学的な知見は見あたらない.そこで本研究では,菓子類を構成する材料として広く用いられている小豆餡の製造におけるDSWの利活用意義を調査することを目的として,小豆餡製造時の重要な工程である渋切処理にDSWを供した.その結果,DSWは小豆餡製造時の軟化を促進すると共に色調低下を抑止しつつ渋切効果を発揮すること,そしてそれらの効果は,同濃度に調整した食塩水よりも顕著に優れていることが示唆された.
  • 二村 和視, 清水 一輝, 野田 浩之, 岡本 一利
    2023 年 23 巻 3 号 p. 89-94
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    静岡県では,静岡県焼津市地先から駿河湾深層水を取水しており,この深層水には海藻類の成長の制限要因となる硝酸態窒素が豊富に含まれている.本研究では,サガラメEisenia nipponica胞子葉の硝酸態窒素吸収速度に対する硝酸態窒素濃度,光量子束密度および水温の影響を調べた.硝酸態窒素吸収速度はMichaelis‒Mentenの式に当てはまり,最大吸収速度(Vmax)と半飽和濃度(Ks)はそれぞれ0.024 μmol cm-2 h-1と11.3 μmol L-1であった.硝酸態窒素吸収速度と光量子束密度の関係は指数関数で表され,最大吸収速度は光量子束密度400 μmol m-2 s-1で0.033 μmol cm-2 h-1,暗黒条件では硝酸態窒素を吸収しなかった.また,水温と硝酸態窒素吸収速度との関係は二次関数で表され,13.5℃で最大吸収速度を示した.駿河湾深層水の硝酸態窒素濃度は年間を通して20 μmol L-1 以上で,サガラメ幼胞子体の高い栄養要求を満たすと考えられた.
  • 山田 勝久, 柴田 雄次
    2023 年 23 巻 3 号 p. 95-103
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    今日,海洋深層水(DSW)の摂取により様々な疾患が改善するという臨床報告が多数あるが,その改善メカニズムについての情報はまだ見当たらない.一方近年,多くの疾病の原因として,小胞体ストレス(ERストレス)の存在が知られるようになっている.これまでのUVA照射による線維芽細胞(NHDF)石灰化の研究で,DSWの石灰化抑制効果を報告した.その作用機序として, UVA照射によりNHDFに惹起されたERストレスから誘導されるアポトーシスをDSWが制御した可能性が推察された.そこで本研究は,UVA照射されたNHDFのERストレスの惹起とアポトーシスの誘導に至る経路について検討することを目的とした.さらにその経路におけるDSW添加の効果についても検討した.その結果,NHDFに対するUVA照射はERストレスを惹起し,アポトーシスが誘導されることが示唆された.またこれに対してDSWの添加は,ERストレスは制御しなかったが,アポトーシス誘導は制御することが示唆された.これらの結果から,臨床的所見に報告されているDSW補給による疾患改善効果の機序として,それらの根底にあるERストレスで誘導されるアポトーシスの抑制による可能性が認識された.
  • 舟見 恵一
    2023 年 23 巻 3 号 p. 105-109
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    海洋深層水は栄養塩やミネラルが豊富で,かつ清浄性,低温安定性に優れた特徴を持つことから様々な施設で活用されている.しかしながら,大部分は栄養塩の活用や清浄性の活用に留まり,低温安定性の利用については活用事例が少なかった.近年,SDGsについての話題が増える中「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」そして「13.気候変動に具体的な対策を」に合致する取り組みとして,2009年から操業を開始した株式会社ウーケの海洋深層水の冷熱源利用について,これまでの実績を取りまとめた.まずは海洋深層水そのものを利用するための加温におけるCO2排出量削減と燃料代に関する数値,続いて海洋深層水の空調冷熱としての利用に対するCO2排出量削減に関する数値をまとめた.そしてこれら利用実績における考察とこれからの展望について述べる.
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