富山湾深層水の多目的・多段利用の一段階として, コンブの介生生長を利用した餌料自給型のアワビ養殖システムを考案した.このシステムでは, コンブの先端部を切断し, 加温したコンブ培養排水で飼育するアワビに与え, 切断後のコンブの生長を深層水培養によって促す.本研究では, 深層水の原水 (3℃) または加温深層水 (11℃) を屋外水槽にかけ流し, 全長約50cmのマコンブを培養した. 毎月, コンブの葉状部の基部 (葉と茎の境目) から15cmの部位で切断し, 切り取った葉片をエゾアワビに与えた.コンブの生長量は2001年3月から2002年1月まで毎月一度, 穿孔法を用いて測定した.切断したコンブはすべて, 11回の剪断を行っても生長し続けた.平均の伸長は1.3~8cm/週で, 3月には最高16.7cm/週を記録した.殻長41mmのアワビ稚貝は15℃で0.25g, 18℃で0.75gのコンブ先端片を摂餌した.コンブ剪断法を用いれば, 丈の低い水槽の利用が可能となり, 深層水の水量が節約できるだけでなく, 高密度のコンブ培養が可能となり, 伸びたコンブを無駄なく利用することができる.今回提案したシステムでは, 十分な量のコンブ葉片をアワビに供給するため, 屋外水槽のコンブを1/4ずつ毎週勇断する.このシステムにより, 12, 000本のコンブを培養すれば, 12, 000~16, 000個体のアワビ (殻長40mm) を育成することができる.なお, 切り取ったコンブ葉片は, 屋外水槽に入れて加温深層水 (11℃) で培養しておくと, どの月も2週間で子嚢斑を形成するので, これを利用すればコンブ種苗の周年供給が可能である.
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