海洋深層水研究
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3 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 松村 航, 藤田 大介
    2002 年 3 巻 2 号 p. 53-63
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    富山湾深層水の多目的・多段利用の一段階として, コンブの介生生長を利用した餌料自給型のアワビ養殖システムを考案した.このシステムでは, コンブの先端部を切断し, 加温したコンブ培養排水で飼育するアワビに与え, 切断後のコンブの生長を深層水培養によって促す.本研究では, 深層水の原水 (3℃) または加温深層水 (11℃) を屋外水槽にかけ流し, 全長約50cmのマコンブを培養した. 毎月, コンブの葉状部の基部 (葉と茎の境目) から15cmの部位で切断し, 切り取った葉片をエゾアワビに与えた.コンブの生長量は2001年3月から2002年1月まで毎月一度, 穿孔法を用いて測定した.切断したコンブはすべて, 11回の剪断を行っても生長し続けた.平均の伸長は1.3~8cm/週で, 3月には最高16.7cm/週を記録した.殻長41mmのアワビ稚貝は15℃で0.25g, 18℃で0.75gのコンブ先端片を摂餌した.コンブ剪断法を用いれば, 丈の低い水槽の利用が可能となり, 深層水の水量が節約できるだけでなく, 高密度のコンブ培養が可能となり, 伸びたコンブを無駄なく利用することができる.今回提案したシステムでは, 十分な量のコンブ葉片をアワビに供給するため, 屋外水槽のコンブを1/4ずつ毎週勇断する.このシステムにより, 12, 000本のコンブを培養すれば, 12, 000~16, 000個体のアワビ (殻長40mm) を育成することができる.なお, 切り取ったコンブ葉片は, 屋外水槽に入れて加温深層水 (11℃) で培養しておくと, どの月も2週間で子嚢斑を形成するので, これを利用すればコンブ種苗の周年供給が可能である.
  • 隅田 隆, 渡辺 貢, 土居 聡, 谷口 道子, 田辺 信介
    2002 年 3 巻 2 号 p. 65-69
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    豊富な無機栄養塩類, 清浄性, 表層海水との温度差などの特性を持っ海洋深層水は, 天然資源の乏しい我が国にとって有用な資源としてその早急な利用技術開発が期待されている. 高知県海洋深層水研究所では, 海洋深層水利活用の促進に必要な特性を把握するため様々な分野での専門家に分析を委託している. 今回は, 環境汚染物質の調査結果を報告する. 分析の結果, 測定項目のほとんどは検出限界以下の濃度であった. 今後, 深層水の利用のためには, 定期的な測定が必要と思われる.
  • 久保 義博, 小善 圭一, 瀬戸 陽一
    2002 年 3 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    富山湾の深層水から単離した珪藻Nacicula directa (W.Smith) Ralfs (以下N. directaと略す) の水抽出液にhyaluronidase阻害活性が認められることを明らかにした.水抽出液のエタノール不溶性画分におけるhyaluronidaseの50%阻害濃度 (以下IC50と略す) は28μg/mlを示し, 市販の抗アレルギー剤として有効性が注目されているクロモグリク酸ナトリウム (以下DSCGと略す, IC50: 110μg/ml) より4倍も高いことが明らかになった.また, エタノール不溶性画分に含まれるhyaluronidase阻害成分は熱や広い範囲のpHに対して安定であった.このようなことから, N. directaのエタノール不溶性画分はアトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー性疾患の新しい治療薬の可能性を示唆しているように思われる.
  • 安川 岳志, 筒井 浩之, 三森 智裕, 黒山 順二, 豊田 孝義, 中島 敏光
    2002 年 3 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    1999年11月に, 駿河湾焼津沖の深層水取水口設置予定地点 (取水予定深度: 350mおよび700m) を主対象として, 富栄養, 清浄性に係わる水質特性と水塊構造について調べた. 取水口設置予定地点近傍の測点の350mおよび700mにおける水温は, それぞれ10℃ と5℃ であり, 塩分は150m付近と500m付近に各々極大と極小を示し, 水温, 塩分データによる水塊解析から, 両取水予定深度における海水は, 亜寒帯系中層水に分類された. 栄養塩類の濃度は, 深度と共に増加し, 同測点の400mおよび700mでは, それぞれ硝酸塩26.1μM, 燐酸塩1.9μM, 珪酸塩58.3μM, および硝酸塩35.6μM, 燐酸塩2.6μM, 珪酸塩103μMであり, 富栄養性であることが示された. 清浄性に関する水質項目としての生菌数, 溶存態有機炭素濃度, 懸濁態有機炭素濃度については, 深層水の方が表層水に比べて少なかった. 懸濁物質濃度は深層水の方が表層水に比べて高くなったが, 懸濁物質中に占める有機物の割合は, 表層よりも深層の方が小さかった.
  • 井関 和夫
    2002 年 3 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    有光層内に汲み上げた海洋深層水の挙動把握と深層水による海域肥沃化効果 (植物プランクトンの増殖等) の同時判定を行う目的で, 漂流ブイを用いた湧昇水塊及び散布深層水の追跡実験に関する研究レビューを行うとともに, 自己自動昇降型CTD・クロロフィル計の性能試験を実施した.これらの知見により, 深層水の挙動把握・肥沃化効果判定としての多項目センサー搭載型漂流ブイシステムの有効性と技術的問題点を検討した.
  • 高橋 正征, 池谷 透
    2002 年 3 巻 2 号 p. 91-100
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    海洋深層水の3大特性の一つである清浄性に関して, 内外の知見の整理を試みた. ここでは, 清浄性を1) 一般生物, 2) 病原・汚染生物, 3) 汚染化学物質, 4) 懸濁物質, 5) 有機物, 6) 重金属類, 7) 放射性物質の7項目に分けて検討した. 各項目では, 海洋深層水のもっている特性を整理し, 深層水を利活用する際の効果について例をあげた. さらに, 深層水を保存する際の清浄性の変化についても取り上げた.
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