Sustainable development goals(SDGs) の概念に合致した持続可能なエネルギー資源の一つである海洋深層水(DSW)の特徴は,太陽,波,風,地熱等とは異なり,それ自身に人類に役立つ様々な物質を含んでいることである.本研究では,DSW中に存在するが未だ十分に利活用されていない微生物に着目した.その中でも特に健康産業分野に利用されてきた乳酸菌を選択した.これまでに伊豆赤沢海洋深層水から分離されている19株の乳酸菌候補株から無作為に4株を選出して同定した.その結果,4株はいずれもLactiplantibacillus plantarumであり,分離株は基準株との比較において,生理・生化学的諸性状に若干の違いがあることが示唆された.さらに,分離株が生産する酵素にも相違がみられた.DSWからの分離株であるBF1‒13株の培養上清が,正常イヌ腎臓尿細管上皮由来細胞(MDCK細胞)を用いた研究でタイト結合関連タンパク質(TJs)およびアクアポリン3(AQP3)の遺伝子発現を亢進することを示した.一方,基準株の培養上清には効果はなかった.