本研究では伊豆赤沢海洋深層水取水設備の深層水の懸濁物の除去に用いるバッグ状フィルター
から正常ヒト皮膚由来線維芽細胞を用いて細胞賦活物質を生産する微生物の分離を試みた.分離された614株のうち3株に細胞賦活効果が確認された.これら3株の分離株の中で最も高い細胞賦活効果を示した株(No. 265株と命名)について,16S rRNA遺伝子の塩基配列解析により種の同定を行ったところ,Vibrio gallaecicus CECT7244Tと98.74%の相同性が得られた.しかしNo. 265株はこの標準菌株と生理・生化学的性状にいくつかの点で相違がみられた.No. 265株の生産する細胞賦活物質を培養上清から,硫酸アンモニウムによる塩析と限外濾過処理で分画した.その結果,3 kDa以上の画分に活性が見られた.そこで,3 kDa以上の画分と主要な細胞増殖因子であるヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(以後,human bFGF)とのタンパク質レベルの相同性を酵素結合免疫吸着検定法(ELISA法)で調べたところ,human bFGFと抗原抗体反応を示さないことがわかった.以上の結果から,No. 265株はhuman bFGFとは異なる細胞賦活物質を生産していることが示唆された.
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