日本外科感染症学会雑誌
Online ISSN : 2434-0103
Print ISSN : 1349-5755
19 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集:遠隔感染
巻頭言
総説
  • JPICS ’15から
    新妻 徹
    2022 年 19 巻 6 号 p. 400-407
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    術後感染症は周術期合併症の中で大きな比重を占めており,その感染制御は医療従事者の大きな課題である。本邦では従来,術後感染症として手術部位感染(surgical site infection:以下,SSI)のみが調査されることが多かった。消化器外科手術後はSSIに限らず,さまざまな遠隔感染症(remote infection:以下,RI)が発生する。今回われわれは,日本外科感染症学会で行われた術後感染性合併症サーベイランス2015年度特別集計(Japan post-operative infectious complication surveillance in 2015:以下,JPICS ’15)で集積された臨床データを用いて,SSI,RIとともに,耐性菌の保菌症例も含めた術後感染症の検討を行ったので,総論として述べさせていただく。

委員会報告1
  • “JPICS ’15”と“遠隔感染が入院期間と直接医療費に及ぼす影響に関する研究”からみた遠隔感染
    草地 信也
    2022 年 19 巻 6 号 p. 408-409
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    日本外科感染症学会では,学会主導のJPICS ’15(Japanese Postoperative Infectious Complications Surveillance 2015)を行い3編の論文を発表した。また,遠隔感染が入院期間と直接医療費に及ぼす影響に関する研究(postoperative remote infection on length of stay and medical costs in hospitals in Japan)を行い2編の論文を公表した。日本外科感染症学会では,手術部位感染(Surgical Site Infections:SSI)だけではなく,遠隔感染(Remote Infections: RI,肺炎,血管内留置カテーテル関連性感染,尿路感染,抗菌薬関連性腸炎)を含めて術後感染性合併症として検討した。

委員会報告2
  • JPICS ’15サブ解析
    草地 信也
    2022 年 19 巻 6 号 p. 410-415
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    JPICS ’15は日本外科感染症学会(Japan Society for Surgical Infection:以下,JSSI)の医療の質・安全委員会の主導により,2015年9月から2016年2月の間に実施された,内視鏡外科手術を含んだすべての開腹・開胸操作を伴う消化器外科手術症例を対象とし,JSSI術後感染性合併症サーベイランスでのweb入力によって症例集積が行われた。参加28施設で抗菌薬関連性腸炎(MRSA腸炎およびClostridioides difficile 腸炎)の検討には全7,574例が有効登録され,内視鏡下外科手術は6.8%,開腹手術は18.7%だった。これらのうち感染総症例数は905例(12.0%)であった。抗菌薬関連性腸炎は51例(0.7%)に発症し,MRSA腸炎は2例(0.03%)に,Clostridioides difficile 腸炎は36例(0.5%)に発症していた。術後感染性合併症のサーベイランスで世界的にも貴重な院内感染の情報を提供できた。

総説
  • 丸山 弘, 牧野 浩司
    2022 年 19 巻 6 号 p. 416-424
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    術後肺炎は重症化すると予後が悪い。消化器外科領域では食道癌手術,肝移植手術,胃癌に多く発症している。術後肺炎の危険因子は術前の慢性閉塞性肺障害と高齢者であり,他にはサルコペニアや肥満などがある。手術方法では鏡視下手術のほうが開腹手術に比べ発症率は少ない。多数の危険因子を組み合わせたリスクインデックスを作成し発症予測をする試みもある。1つの危険因子に対策をとっても効果はないと考えられ,多職種による対策チームを立ち上げ,さまざまな危険因子に対してバンドルを作成してその発症予防を行うことが大切である。術後肺炎の起炎菌は緑膿菌とMRSAが多い。治療抗菌薬の選択はできればグラム染色を行い各施設で作成しているアンチバイオグラムを利用して行ったほうが効果的で,薬剤耐性菌を誘導しないよう注意をするべきと考える。

原著
  • 田中 亮, 今井 義朗, 松尾 謙太郎, 吉本 秀郎, 朝隈 光弘, 李 相雄
    2022 年 19 巻 6 号 p. 425-431
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    消化器癌手術において術後の遠隔感染(remote infection:以下,RI)は,術後在院日数の延長,QOLの低下や医療費の増大につながる。高齢者の消化器癌患者の増加に伴い,RIの予防・対応の重要性は増してくると思われる。胃癌手術におけるRIの発生率,リスク因子について概説する。当科において,2013年から2017年までに施行した胃癌に対する胃切除610例を対象とした。RIは40例(6.6%)に認め,内訳は肺炎27例(4.4%),尿路感染11例(1.8%),手術部位以外の蜂窩織炎2例(0.3%)であった。RIを認めたRI群40例とRIを認めなかった非RI群570例を比較検討した。単変量解析では,年齢,ASA,PS,PNI,modified GPSがRI発生に影響を与える因子であった。多変量解析では,PNI<51が,リスク因子として同定された。RI対策として,術前からの栄養介入が必要と考えられた。

症例報告
  • 齊藤 慈円, 鳥山 和宏, 曽根 良晃, 沼田 幸英, 神谷 信次, 浅野 實樹
    2022 年 19 巻 6 号 p. 432-436
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は82歳男性。25年前に両側膝窩動脈瘤に対して両側浅大腿動脈膝下膝窩動脈バイパス術が施行されている。1年程前から左大腿部の拍動性腫瘤を自覚されていたが自己判断で経過観察を行っていた。同部位の疼痛を自覚され,左大腿吻合部仮性動脈瘤破裂(浅大腿動脈伏在静脈グラフト吻合部)の診断で手術方針となり,同日緊急で左大腿部にステントグラフト内挿術および血腫ドレナージを行った。その後,破裂部位の皮膚壊死を生じたため術後14日目に左腹直筋皮弁を行った。術後25日目にステントグラフト周囲の血腫に感染を起こしたため再度洗浄およびデブリードマンを行い,持続洗浄・持続陰圧療法の併用を要した。初回手術から66日目に創部はすべて閉鎖されて退院となった。術後12ヵ月現在,動脈瘤の再発および感染を認めずに経過している。

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