周術期感染性合併症を防止する対策を実施することと同様に重要なことが,実際に減少しているかどうかを継続的に監視する活動としてサーベイランスを行うことである。医療機関において発生する感染症のサーベイランスは,すでに構築されたシステムに沿って行うのが一般的である。その理由は,医療機関の感染症防止対策を評価する上で感染症発生状況(発生頻度など)を医療機関同士で比較することが有用であり,そのためには同じデータ収集項目や感染症に関する同じ判定基準を用いることが必要だからである。周術期感染性合併症の中でサーベイランスの対象となっている代表的なものは手術部位感染(SSI)である。日本では2000年頃から徐々に普及し,現在は約1,000施設がSSIのサーベイランスを行っている。これによって日本におけるSSIの発生状況が明らかになり,日本全体の発生状況と比較することで自施設におけるSSIの発生が多いのか少ないのかが言えるようになってきている。比較の際には,単純なSSI発生率ではなくさまざまな要因を調整することが必要であるが,その手法も研究が重ねられ進化している。
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