【目的】心臓胸部大血管術後創部感染の発生は術後の成績に大きな影響を及ぼす。2018年の本邦で施行された心臓胸部大血管術後創部感染の現状を検討した。【方法】データは2018年の日本心臓血管外科手術データベースから抽出した53,186例を対象。Japanese Healthcare Associated Infections Surveillance(JHAIS)に準じ大伏在静脈(SVG)を使用した冠動脈バイパス(SVG+)14,246例,SVGを使用しない冠動脈バイパス(SVG-)5,535例,冠動脈バイパス以外の心臓胸部大血管手術(CABG以外)33,405例に分類。術後創部感染は深部胸骨感染,下肢創感染を対象とし,発生数を集計。術後成績への影響として90日以上の長期入院,退院時転帰,術後30日以内の再入院について検討した。【結果】深部胸骨感染発生率は全体で770例(1.4%),SVG+群1.7%,SVG-群1.2%,CABG以外1.4%であった。深部胸骨感染例の術後在院死亡率は24.7%(非感染例4.8%,P<0.01)と有意に高かった。とくにCABG以外で深部胸骨感染死亡率が30.1%と高かった。深部胸骨感染症例の長期入院率(9.5% vs 0.8%),30日以内の再入院率(1.9% vs 0.2%)も高値であった。【結論】本邦における2018年の心臓胸部大血管手術における深部胸骨感染の発生頻度は低く抑えられているが,発生した場合の死亡率,入院日数に与える影響は依然として大きいことがわかった。
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